相手の女性が未成年なら児童買春? パパ活が犯罪になる場合とは
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広島県警察のデータによると、令和元年中に広島県内で検挙された犯罪の件数は6459件(前年比277件増)、そのうち風俗犯(強制わいせつなど)は214件(前年比88件増)でした。
最近、経済的に余裕がある男性が、出会い系サイトやマッチングアプリなどで知り合った若い女性と、デートなどをする見返りに金銭的な援助を行う「パパ活」が流行しています。
パパ活は、援助交際などの違法な買春行為との境目が非常にあいまいであり、特に相手の女性が18歳未満(未成年)の場合は、逮捕されて犯罪に問われてしまう可能性があるのです。
本コラムでは、児童買春について成立する犯罪や量刑などを中心に、パパ活に関与した男性が注意すべき法律問題について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。
1、パパ活は犯罪になることがある?
コロナ禍により若い女性の経済状況が苦しいこともあってか、風俗店などに勤めていない一般人である若い女性に男性が金銭を渡して、食事を供にしたり性行為を行ったりする、いわゆる「パパ活」が世間で流行しています。
しかし、パパ活は、場合によっては犯罪に問われる可能性もある行為なのです。
特に18歳未満の女性に対するパパ活は、児童買春として重い刑罰が科される可能性があります。
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(1)「買春」自体は違法だが罰則はない
売春防止法第3条では、「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。」と規定されています。
ここにおける「売春」とは、金銭的な見返りを受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交することを指します。
同規定では、売春をする行為と同時に、売春の相手方になる行為(いわゆる「買春」)も禁止されています。
パパ側である男性が法律的な意味での「買春」をしているといえるかどうかは、微妙な場合も多いです。しかし、仮に性交と金銭的な援助の間に対価関係が認められた場合には、パパ活行為が「買春」にあたる可能性は高いでしょう。
ところが、売春防止法には、「買春」に対して刑事罰を科す規定が存在しません。
同法で罰則の対象とされているのは、売春の周旋(いわゆる仲介行為)や、売春の場所を提供する行為などであり、単純な売春や買春は処罰の対象とされていないのです。
したがって、日本においては、「買春」は違法ではあるものの、罰則はない、という扱いになります。 -
(2)パパ活相手が18歳未満の場合は犯罪になる可能性がある
上述したように、売春防止法では、単純な買春行為に対する処罰は規定されていません。
しかし、パパ活の相手が18歳未満の女子児童である場合には、児童を保護することを目的とした別の法律によって処罰の対象になる可能性があるのです。
なお、問題となる行為があった時点で、パパ活相手が18歳未満であることを知らず、知らなかったことに過失もない場合には、基本的には犯罪が成立することはありません。18歳未満であることを知らなかったことに過失があった場合に犯罪が成立するかどうかは、各都道府県の条例によって異なります。
ただし、相手の同意を得ずにわいせつ行為などを行った場合には、強制わいせつ罪などの犯罪が成立する可能性があります。
また、パパ活相手が18歳未満であることを高い確率で疑わせる事情を認識していた場合には、「未必の故意」が認定されて、犯罪が成立する可能性があるので注意が必要です。
たとえば、- 高校に通っていることを推察させるような言動があった
- 高校の制服を着ていた
などの事情がある場合には、常識的に考えると相手が未成年である可能性を推察することができるので、「未必の故意」が認定される可能性が高くなります。
2、パパ活相手が18歳未満だった場合に成立する犯罪と量刑
パパ活相手の女性が18歳未満だった場合に、男性の側に成立する可能性がある犯罪の内容と量刑について、解説いたします。
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(1)青少年保護育成条例違反
各都道府県では、青少年を有害行為から保護することを目的として、青少年保護育成条例が制定されています。
青少年保護育成条例の内容は都道府県によって異なりますが、18歳未満の青少年を相手とするみだらな性交などは、ほぼ例外なく禁止されているのです。
たとえば、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」第18条の6では、「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行ってはならない」と定められています。
なお、「青少年」とは18歳未満の者を指します(同条例第2条第1号)。
この規定に違反した場合には犯罪が成立し、「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されるのです(同条例第24条の3)。
青少年保護育成条例違反の犯罪は、相手方が性交などについて同意を与えていた場合にも成立する可能性がある点に、注意が必要となります。
さらに、金銭的な対価の授受は、犯罪の成立要件に含まれません。金銭を渡していなかったり、食事をご馳走したりしていなかったとしても、18歳未満の相手とみだらな性交をしたという時点で、犯罪が成立する可能性があるのです。
純粋な恋愛関係から生じた性交などであれば、「みだらな」行為ではないため、犯罪が成立しない場合もあります。
しかし、パパ活のように実質的な対価が発生する関係性の場合には、「みだらな」行為と認定されてしまう可能性が高いでしょう。
なお、性交などを行わなかった場合でも、深夜に正当な理由なく保護者に無断で18歳未満の相手を連れ出すなどする行為も青少年保護育成条例違反に該当するので、注意が必要です。 -
(2)児童買春法違反
金銭的な対価の授受が行われたうえで、18歳未満の女性と性交などを行った場合には、児童買春法(正式名称:児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)で禁止される「児童買春」が成立する可能性があります。
「児童買春」とは、18歳未満の児童に対して、金銭的な見返りを与え、またはその約束をして性交などを行うことをいいます。
児童買春をした者は、「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます(同法第4条) -
(3)児童福祉法違反
パパ活の一環として、18歳未満の女性に対してみだらな行為をするように仕向ける行為は、児童福祉法違反として、さらに重い犯罪に問われてしまう可能性があります。
児童福祉法第34条第1項第6号では、「児童に淫行をさせる行為」が一律禁止されています。
「児童」とは、18歳未満の者を指します(同法第4条第1項)。
同規定に違反した場合には「10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」が科されるか、懲役と罰金が併科されることになるのです(同法第60条第1項)。
児童福祉法違反が成立するかどうかは、児童に淫行を「させる行為」があったかどうか、という点にかかっています。
判例をみると、児童に淫行を「させる行為」とは、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」と定義されています(最高裁平成28年6月21日決定)。
そして、このような行為にあたるかどうかは、下記の具体的な状況を考量して判断されることになるのです。- 行為者と児童の関係
- 助長、促進行為の内容および児童の意思決定に対する影響の程度
- 淫行の内容
- 淫行に至る動機、経緯
- 児童の年齢 など
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(4)強制わいせつ罪・強制性交等罪
相手方女性の同意がないにもかかわらず、暴行・脅迫を用いてわいせつな行為を強制した場合には、「強制わいせつ罪」が成立し、「6月以上10年以下の懲役」に処されます(刑法第176条)。
また、暴行・脅迫を用いて性交・肛門性交・口腔性交を行った場合には、「強制性交等罪」が成立し、「5年以上の有期懲役」に処されるのです(刑法第177条)。
さらに、酒や薬物などを用いて相手方を心神喪失・抗拒不能の状態にさせたうえで、わいせつ行為や性交などをした場合にも、強制わいせつ罪・強制性交等罪の例により処罰される可能性が高まります。
3、相手が成人でも同意のないわいせつ行為は犯罪
パパ活相手の女性が成人ないし18歳以上だったとしても、暴行・脅迫を用いて同意のないわいせつ行為や性交などをした場合には、「強制わいせつ罪」や「強制性交等罪」によって処罰される可能性があります。
なお、パパ活には、お金を払って合意のうえで性交などを行ったつもりであったのに、相手の女性が示談金などを獲得するために脅迫する目的で「無理やり性交された」と主張してくる、いわゆる「美人局(つつもたせ)」の被害にあうリスクが潜在しています。
合意が成立していたことを示す証拠がなく、泣く泣く、相手に言われるがまま、示談金を支払ってしまう男性もおられるようです。
しかし、相手が美人局をしてきた場合には、場合によっては相手の側に恐喝罪などの犯罪が成立する可能性があります。そのため、もし美人局の被害にあった場合には、自分自身で相手に対応するのではなく、まずは弁護士に相談することが最善でしょう。
4、パパ活が犯罪になるか不安な方は弁護士に相談を
パパ活をした結果、相手の女性とトラブルになってしまった場合などには、女性側から刑事告訴をされて、罪に問われてしまう可能性があります。
もし相手の女性とトラブルになってしまった場合には、告訴される前に、速やかに弁護士に相談しましょう。
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(1)示談などにより重い刑事処分を避けられる
女性側に一定額の示談金を支払うことで示談をまとめられた場合には、被害女性からの刑事告訴を避けることができることもあります。
パパ活により成立する犯罪には、刑事告訴がなければ訴追されない「親告罪」に該当するものが多くなっております。親告罪であれば、示談を成立させることで、刑事処分を回避することができる可能性があります。
また、親告罪ではない犯罪についても、被害女性との示談が成立しているという事実は、被疑者・被告人にとって有利な事情としてはたらきます。そのため、不起訴処分や執行猶予付判決につながる可能性が高まるのです。
弁護士に依頼すれば、示談金の金額の適切な相場をふまえつつ、被害女性に対して示談に応じるように説得して、事件を穏便に解決するためのサポートが得られます。 -
(2)美人局(つつもたせ)に対しても適切に対応できる
女性側が金銭の支払いなどを求めて脅迫を行うことは、それ自体が、「恐喝罪」にあたる犯罪行為です(刑法第249条第1項)。
この場合は、こちらから女性側を逆に刑事告訴する旨を伝えることで、要求を取り下げさせられる可能性があります。
また、弁護士を通じて告訴の旨を伝えることで、「本気で告訴するつもりである」ことが相手に伝わり、相手が要求を取り下げる可能性も高くなるでしょう。
5、まとめ
18歳未満の女性とパパ活をした場合、児童買春などの犯罪に問われてしまう可能性があります。
また、パパ活の相手が美人局を行い、金銭を要求してくる場合もあるのです。
ベリーベスト法律事務所では、自分が行ったパパ活行為について犯罪に問われるのではないかと、懸念している方のご相談を承っております。
犯罪が成立するのかどうか、あるいは女性側との示談などについて、法律の専門家である弁護士がアドバイスやサポートをいたします。
女性側が美人局を行ってきた場合にも、示談を成立させたり告訴取り下げさせたりするための最善なサポートをいたします。
自分が行ったパパ活行為についてお悩みの男性は、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています