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警察官に「公務執行妨害」と言われてしまった…。逮捕の可能性や、逮捕された場合の対応は?

2019年01月11日
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警察官に「公務執行妨害」と言われてしまった…。逮捕の可能性や、逮捕された場合の対応は?

2018年11月、広島市内の住宅で、詐欺容疑で捜査中だった広島県警の警察官ふたりが住民の女性に包丁で刺される事件が発生しました。県警は警察官を刺した女性を、殺人未遂と公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕しました。

本事件のように、警察官の捜査を妨害すると、公務執行妨害罪に問われる可能性があります。公務執行妨害という罪名はドラマなどでも聞いたことがある方が多いかもしれません。しかし、具体的に、どのようなときに公務執行妨害罪が成立するのか、もし逮捕されたらどうすればいいのかは、あまり知られていないかもしれません。今回は、家族や友人などが警察官と争いになったケースを前提に、広島オフィスの弁護士が解説します。

1、公務執行妨害罪が成立する場合とは

公務執行妨害罪が規定されているのは、刑法第95条1項です。成立要件は、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者」と明記されています。

ここで示されている「公務員」、「職務」、そして「暴行または脅迫」の具体的内容はどのようなものなのかについて解説します。

  1. (1)「公務員」について

    刑法第7条1項に定められた「公務員」は、日本の公務員に限られます。

    • 国・地方公共団体の職員
    • そのほかの法令によって公務を行う議員や委員、職員

    代表的な公務員の種類としては、警察官や役所職員、税務職員、消防士、公立校の教員などが該当します。

    さらに、みなし公務員など、公務員の職務に密接な関連を有する補助者も、ここで示す「公務員」に含まれることになります。「みなし公務員」とは、立場上公務員ではないものの、職務内容が公益性や公共性を有するもの、あるいは公務員の職務代行をする方を指します。特殊法人の職員や駐車監視員、公証人などが「みなし公務員」に含まれることになります。

    ただし、公務執行妨害罪の設定によって守ろうとしているものは、公務員やみなし公務員個人ではありません。公務員やみなし公務員が委託され遂行している「公務」を守るために設定されている犯罪です。つまり、休憩中や休暇中の公務員に暴行をふるったとしても、公務執行妨害は成立せず、暴行罪などが成立することになります。

  2. (2)「職務」について

    原則として、すべての公務が含まれます。公務執行妨害罪が保護しているのは、公務の円滑な遂行によってもたらされる国民の利益だからです。

    適法な職務のみを指し、休憩時やプライベート時は含みません。
    たとえば、非番のときの警察官に暴行や脅迫を加えたとしても、公務執行妨害罪は成立しません。
    ただし、職務の執行中である必要まではなく、今から執行しようとしているときや執行が今しがた終わったというときも含まれます。

  3. (3)「暴行または脅迫」について

    公務執行妨害罪のポイントは、妨害方法が「暴行または脅迫」に限定されているというところにあります。

    暴行とは「公務員に向けられた有形力の行使」をいいます。脅迫とは「人を畏怖させるに足る害悪の告知」です。なお、「暴行」とは、冒頭の事件のような公務員の身体に直接向けられた物理力に限りません。警察官に直接的な暴力をふるわなくとも、間接的な行為も「暴行」に含まれます。

    たとえば、警察官が差し押さえた証拠物である覚せい剤注射液入りアンプルをその場で踏み、損壊したという行為が暴行と認定され、公務執行妨害が成立したことを認める判例があります(昭和34年8月27日最高裁による判決)。本件でも、警察官は直接殴られたり蹴られたりしたわけではありません。しかし、職務の遂行は明らかに妨害されているため、暴行にあたると判断されたのです。

    よって、警察官の職務中に肩をつかんで押し戻す、パトカーを蹴る、差し押さえられようとした証拠物を奪い取って壊す、といった行為は公務を妨害する「暴行」にあたると考えられます。

  4. (4)罰則について

    公務執行妨害罪の罰則は、以下のとおり規定されています。

    • 3年以下の懲役もしくは禁錮
    • 50万円以下の罰金

    具体的にどのような暴行・脅迫を加えたか、常習か否かなどの悪質性などによって、判決で下される刑罰の重さが変わることになります。また、冒頭の事件のように警官がケガをしてしまった場合は、さらに重い罰則が設定された罪が問われることになります。詳しくは次項で解説します。

2、警察官ともみあいになったら公務執行妨害罪になる?

たとえば、親や友人などが警察官から職務質問を受け、腹を立ててもみあいになった、肩を強く押し返してしまったという場合、どのような罪に問われるのでしょうか。

1度の行為で複数の容疑で逮捕されたり他の罪が成立したりする可能性や、その場合はどのような処罰を受けることになっているのかを知っておきましょう。

  1. (1)公務執行妨害罪が成立する可能性は高い

    警察官は「公務員」であり、職務質問は「職務の執行中である」といえます。したがって、もみあいになったことや肩を強く押し返したことが暴行といえる程度のものであれば、公務執行妨害罪が成立する可能性が高いでしょう。

    つい感情的になってとっさにとってしまった行動であっても、刑法上の構成要件に当てはまれば罪を問われることになります。本人にとっては、何も悪いことをしていないのに職務質問をされれば気分を害するかもしれません。しかし、そのようなときほど、冷静に対応したほうがよいものなのです。

  2. (2)相手がケガをした場合

    前述したとおり、公務執行妨害は、公務中の警察官などに対して、暴行や脅迫をしたことで成立します。

    つまり、とっさにもみあったり肩を押したりしたことによって、警察官が転倒などをして負傷した場合は、公務執行妨害罪のほかに「傷害罪」が問われることになります。

    このように、刑法の規定に従えば、ひとつの行為が複数の罪名に触れることを「観念的競合(かんねんてききょうごう)」と呼ばれています。冒頭の事件でも、捜査中の警察官2名を包丁で刺したことから、公務執行妨害罪だけでなく殺人未遂罪に問われています。

    「観点的競合」のケースでは、複数の罪名のうち、もっとも重い刑によって処罰されることとされています(刑法第54条1項前段)。

    傷害罪(刑法第204条)は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められており、公務執行妨害罪よりも重くなっています。冒頭の事件ではまだ容疑段階ですが、「殺人未遂」が成立するとみなされれば、5年以上の懲役に処されることになります。

3、公務執行妨害罪で逮捕された後はどうなるか

公務執行妨害罪により逮捕されてしまったらどうすればいいのでしょうか。逮捕後の流れとともに、解説します。

  1. (1)逮捕後の取り調べと勾留

    逮捕後には警察で48時間、検察で24時間、合計で72時間を上限とする取り調べが行われます。期限内に取り調べが終了せず、身柄を拘束したまま取り調べを継続する「勾留(こうりゅう)」を行う必要があると検察が判断し、裁判所が認めれば、20日以上も帰宅できない可能性があります。

    なお、逮捕から勾留の有無が決まるまでの最長72時間は、たとえ家族といえども面会は制限されます。自由な接見を行えるのは、弁護士のみに限られるため、注意が必要です。

    公務執行妨害罪では、計画的であったり、犯行が悪質な内容だったり、常習だと認められるケースでは、長期間にわたる身柄拘束を受けることもあります。しかし、職務質問に反発して肩を強く押してしまったといった程度で、しっかり反省している状態であれば、証拠の隠滅や逃亡のおそれもあまり考えられないため、数日で身柄が解放されるケースもあるでしょう。

  2. (2)裁判になる可能性

    たとえ逮捕されても、罪を犯した嫌疑がなかったり、悪質性が低いと判断されたりすれば、不起訴処分となります。不起訴処分となったときは、裁判によって罪が裁かれることはありません。

    公務執行妨害罪においても、暴行の態様や程度からして悪質ではなく、一時的にカッとなって手が出てしまった程度なら、不起訴となる可能性も考えられます。そのためにも、しっかりと行為についての反省を示す必要はあるでしょう。

  3. (3)弁護士への相談がカギを握る

    前述のとおり、逮捕から最長72時間以内は、被疑者として逮捕された方が面会できるのは弁護士のみに限られます。それでも、最終的に不起訴となるか、あるいは起訴されたとしても執行猶予がつくかどうかは、取り調べ中の対応にもよります。

    特に、公務執行妨害罪の被害者は、相手の警察官などの公務員ではなく、「国」として扱われます。概念上、個人の被害者が存在しない前提となるため、示談によって解決することができないという問題があります。

    取り調べに対してさらに反発し、敵意を向けてしまうと、拘束期間も長引き、罪が重くなる可能性があります。家族が反省を促そうにも、面会したり、電話などを通じて説得したりすることもできません。できるだけ早いタイミングで弁護士に相談し、捜査機関への対応についての助言を求めることをおすすめします。

4、まとめ

家族やご友人が公務執行妨害罪に問われてしまえば、誰でも戸惑うものです。本人にとっては、「警察官の対応が横柄に感じられた」などの理由で腹を立て、ちょっと肩を押しただけのつもりかもしれません。言い分もあるでしょう。しかし、長期の勾留となるのは、日常に大きな差しさわりが出る可能性も高く、できるだけ避けたいはずです。そのためには下手に言い逃れをするのではなく、反省の意を示すことが必要となります。

公務執行妨害罪の場合、示談は原則としてできませんが、暴行や脅迫の程度が軽く、悪質ともいえないような場合は、不起訴となったり執行猶予がついたりすることも珍しくありません。逮捕されてしまった場合、なるべく速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

万が一、公務執行妨害罪で身近な人が逮捕されたときには、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスまでご相談ください。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、状況に適した弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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