貸したお金を返してくれない! 弁護士に頼むメリットを解説

2019年09月20日
  • 債権回収
  • お金を返してくれない
  • 弁護士
  • 弁護士
貸したお金を返してくれない! 弁護士に頼むメリットを解説

お金の貸し借りはできればしたくないものですが、知人から頼まれた場合、やむなく貸してしまうこともあると思います。きちんと返済がなされれば問題ありませんが、返済が滞った場合、困ってしまいます。

そのような場合に、自分でお金を回収するにはどうすればよいのか、また、弁護士に依頼した方がよいのかなど悩まれる方も多いと思います。

そこで、今回は、お金を回収する方法と弁護士に依頼した場合のメリットについてベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説していきます。

1、債権回収のための準備

法律の世界では、ある人が他の人に対して一定の行為を請求することができる権利を「債権」と言います。貸金は、お金を借りた人にお金を返すよう請求することができる権利なので債権になります。請求する人が「債権者」で、請求される人が「債務者」になります。そして、債権者が債務者にお金を返してもらうことを「債権回収」といいます。

  1. (1)債権の有効性について確認

    相手に債権を持っていても時効によって債権が消滅していたら、裁判をしても勝つことはできません。そのため、債権が時効消滅していないか確認する必要があります。 債権の種類によって、時効期間に違いがありますので、わからない場合には弁護士などに確認するとよいでしょう。時効期間の満了が近い場合、時効の中断という、時効をリセットする手続きが必要になりますので、その点でも時効を確認することは重要です。

  2. (2)債務者の資力を確認

    たとえ裁判で勝っても、相手にお金や資産がなければ債権を回収することはできません。「ない袖は振れない」わけです。そのような場合、裁判をするだけお金と時間の無駄なので、あらかじめ債務者に資力があるか確認しておくことが必要になります。

    債務者は不動産を所有しているから大丈夫と思っていても、すでに多額の抵当権が設定されていれば、不動産からお金を回収することは期待できません。抵当権は、抵当権を設定した抵当権者に優先的に債権を回収することを認めるものなので、一般の債権者はその残りしか債権を回収することができないからです。なお、抵当権が付いているかどうかは、不動産登記事項証明書を法務局で発行してもらい確認することができます。

  3. (3)他の債権者がいるかどうか確認

    支払いが滞っている債務者というのは、経済的に困っていることが多いので、他にも債権者がいるのが一般的です。そのような場合、信用不安が広がると、どの債権者もわれ先にと債権回収をしてきます。早い者勝ちの競争に負けないためにも他の債権者の存在を把握しておくことが重要です。

  4. (4)債務者との話し合い

    本格的な債権回収を始めると、債務者との関係もこれまでとは違うものになってきます。特に債務者が友人であるような場合、友人関係にヒビが入ることになるかもしれません。そうなると、気軽な話もできなくなるので、本格的な債権回収を始める前の本音で話せるうちに、債務者と話し合うことをおすすめします。

    具体的には、弁済のめどはあるのかどうか、毎月いくらなら払えるのかなど、具体的に実現可能な話し合いをする必要があります。話し合いの結果、具体的返済プランが実現可能と判断できる場合には、少し様子を見るというのも選択のひとつです。それに対し、のらりくらりと返済しそうにないときには、これ以上は待てないので、法的手続きも検討すると口頭で警告しても良いかもしれません。

2、債権回収の手段

  1. (1)一般的な債権回収の手法

    債権回収の方法としては、以下の方法があります。

    ① 債務者に請求する
    もっともオーソドックスなのが債務者に対して、お金を返すよう請求するというものです。まずは、電話やメールなどで請求しないことには始まりません。それでも反応がない場合や返してくれない場合には、期限を定めて文書で請求書を送付するようにします。

    ② 内容証明郵便を送付する
    文書で請求しても期限にお金を返してもらえないときは、内容証明郵便で再度、請求します。内容証明郵便というのは、送付する文書と同じものを郵便局で保管し、その内容について証明してくれるとい郵便方法です。そのため、債務書が請求書を受け取っていないという主張はできなくなります。また、裁判においても証拠として利用することができます。

    ③ 支払督促
    支払督促は、金銭の支払いなどの請求について認められている制度で、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に対して債権者が申し立てることができます。支払督促は、裁判のように公開法廷で審理がなされるのではなく、書面審査のみで裁判所から債務者宛に送達されます。 債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申し立てをしない場合、債権者は仮執行宣言の申し立てをすることができ、支払督促に仮執行宣言が付されると、債権者はこれに基づいて強制執行の申し立てをすることができます。債務者は、仮執行宣言付支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申立てることができます。なお、仮執行宣言付支払督促に対して異議を申し立てても、執行停止の手続をとらなければ強制執行を止めることはできません。時間のかかる裁判をせずに強制執行ができ、手数料は、訴訟の場合の半額なのでその点が魅力です。

    ただし、債務者が異議を申し立てると、請求額に応じて地方裁判所か簡易裁判所の民事訴訟の手続きに移行してしまうので、それを踏まえた上で、申し立てを行うか否かを検討しなければなりません。

    ④ 少額訴訟
    60万円以下の金銭の支払い求める請求である場合、少額訴訟が利用できます。原則として1回の審理で判決をもらうことができます。 また、訴訟の中で話し合いにより和解をすることも可能です。判決書や和解調書に基づき、強制執行を申し立てることができます。通常訴訟と違い、1回の審理で終わるので負担が少なく、支払督促に比べ債務者と話し合いの機会が持てるので、柔軟な解決ができることがメリットです。

    ただし、債務者から、通常訴訟での審理を求められた場合には、通常訴訟に移行することになるので、支払督促と同様はじめから通常訴訟に移行する可能性があることを踏まえて訴えを提起する必要があります。

    ⑤ 通常訴訟
    任意での支払いに応じない場合や支払督促や少額訴訟に適しない場合には、裁判所に訴えを提起することになります。もっとも確実で強力な手続きですが、時間がかかるのが難点です。内容にもよりますが、1年程度かかることもあります。訴える場所は、請求する金額が140万円以下の場合は「簡易裁判所」、140万円を超える場合には「地方裁判所」になります。

    ⑥ 強制執行
    強制執行とは、判決などの債務名義に基づき、国が強制的に債権の回収を実現してくれる制度です。裁判で勝っても、債務者が実際にお金を支払ってくれなければ意味がないので、判決に基づき債務者の財産を強制的に取り上げて、債権の回収をすることになります。

  2. (2)一定の条件を満たす場合に有効な手法

    ① 相殺
    直接的な回収ではありませんが、債権者が債務者に別の債務を負っているような場合、自己の債権と債務を相殺することによって、事実上の回収をすることができます。相殺するためには、そのことを相手に伝えなければなりませんので、通常は、内容証明郵便で通知します。

    ② 債権譲渡
    債権譲渡は、文字通り、債権者が債権を売ってしまうことです。たとえば、貸付金が100万円あるとして、その債権を70万円で売るなどです。債権を売った方は、100万円の内、70万円を回収できることになります。債権譲渡の方法は、通常、債務者に対し内容証明郵便で通知することで行います。なお、譲渡禁止の債権もあるのでその点は注意が必要です。

    ③ 代物弁済
    代物弁済は、本来の債務の支払いに代えて、他の物で弁済するというものです。たとえばお金がないので、代わりに時計で支払うなどということです。この場合、代物弁済を受け入れると、資産の価格が債権の額を下回る場合であっても全額弁済となるので、その点は注意が必要です。

    ④ 債権者代位権
    債権者代位権は、債務者に資力がないのに、債権を行使せず、債権者の債権を回収できなくなるおそれがある場合に債務者に代わって、債務者の権利を行使することができるというものです。債務者は、債権を持っているけど、それを回収しても借金に持っていかれるだけだからと放置しているような場合に有効な手段です。

3、自分でできる回収方法

これまで述べてきた債権回収手段は自分でしようと思えば、実施することは可能です。ただ、普段文章を書きなれてない方の場合、内容証明郵便を作るにしても、相手に正確にその内容を伝えることができるかは別問題です。また、比較的簡単な督促手続きや少額訴訟でも、法律の知識が全くない場合には、作成することは難しいと思います。

4、弁護士に依頼するメリットは?

弁護士に債権回収を依頼する場合には、任意の交渉から法的手続きまですべてを任せることができます。

弁護士に債権者回収を依頼すると、債権回収の効果についても違いが表れることが多いと言えます。たとえば、内容証明郵便を送付する場合でも、債権者名で送付するよりも、弁護士名で送付した方が効果は絶大です。なぜなら、弁護士名で通知が来た場合、「このまま債務の弁済をしなければ訴えられるかもしれない」と思うからです。これが弁護士を頼る最大のメリットと言えます。

弁護士名で内容証明郵便を送付しても弁済しない場合、法的手続きにすみやかに移行することができます。たとえば、財産を保全とする手続きとして仮差し押さえをしたり、訴えを提起したり、適切な手続きをすぐに実行してもらうことができます。

裁判では、法的主張をするために必要は事実を正確に主張・立証しなければならず、それをしないと裁判で勝つことはできません。弁護士を利用すればその点は心配いりません。

5、返済計画を確実に履行させるためには

返済計画を確実に履行させるためには、新たな返済プランについて書面化しておくことが大事です。

なお、書面は裁判の有力な証拠にはなるものの、支払いが行われない場合、裁判を行わなければならず、お金と時間がかかります。そこで、非常に有効なのが公正証書にしておくことです。

公正証書とは、公証人が契約内容を確認した上で、公証人が作成する文書です。契約書の条項に「債務不履行の場合には、強制執行を受けても異議はありません」とする旨の執行認諾条項を設けておくことで、債務不履行の場合、裁判をすることなく強制執行をすることができます。

公証人役場に行って内容の確認を受ける必要があり、費用も掛かるので、少額の場合にはおすすめできません。しかし、金額が高額である場合や返済期間が長期にわたる場合には、公正証書にしておくことはおすすめです。

この他、即決和解(訴え提起前の和解)によって裁判所に和解調書を作成してもらうという方法があります。即決和解は、裁判せずに双方当事者の合意内容によって調書が作成されます。この調書は確定判決と同一の効力がありますので、裁判をすることなく強制執行をすることが可能です。

民事調停という手続きもあり調停が成立すれば確定判決と同一の効力がある調停調書が作成されますが、相手が調停に出席しない場合や調停案に応じない場合には、調停不調となるので、弁護士が介入する場合あまり利用されません。

6、まとめ

債権回収の方法にはいろいろなものがあり、どの方法を選択するのがベストなのか判断するのは非常に難しいものです。また、時効や財産保全などにも配慮しなければならず、迅速な処理が求められます。何より、お金が返ってこないだけでストレスなのに、取り立てとなると精神的にも疲れてしまうものです。
そのようなときには、債権回収について経験豊富な弁護士がいるベリーベスト法律事務所 広島オフィスまで、ぜひご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています