個人再生できない人はいる? 個人再生ができる条件を弁護士が解説

2019年11月14日
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個人再生できない人はいる? 個人再生ができる条件を弁護士が解説

最高裁判所の司法統計によりますと、平成29年の広島地方裁判所では破産が1485件、小規模個人再生が155件、給与所得者等再生が11件、それぞれ新規に受理されています。

借金を抱えてしまう原因や借金の額、返済するための収入源は、人によりさまざまです。そして、どうしても個人では返済できない状態になってしまったとき、「個人再生」という手続きを活用して借金を減額する方法があります。

本コラムでは、個人再生ができる・できないを判断する基準、さらには個人再生以外の債務整理手段について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。

1、個人再生とは?

個人再生とは倒産処理制度のひとつであり、個人民事再生とも呼ばれます。個人再生の趣旨について、民事再生法第1条は以下のように規定しています。

  • 経済的に困っている債務者について、債権者の多数の同意を得て、裁判所の認可を受けた再生計画を定める。
  • 上記のように当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整することで、当該債務者の事業または経済生活の再生を図る。


裁判所に個人再生手続きを申し立て手続きが開始されると、民事再生法第85条1項の規定に従い借金の返済は一度ストップします。そして、借金の額または適用する個人再生の種類に応じて減額したうえで、それを原則として3年で分割返済する再生計画を立てます。

この再生計画について、債権者から同意が得られ、裁判所からの認可がおりれば、その後は再生計画に沿って返済をしていくことになります。このように個人再生は、ある程度の自助努力による借金返済を前提としていることから、すべての借金をゼロにする制度ではないことに注意が必要です。

2、個人再生の種類と条件は?

個人再生は、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。以下でその概要および適用を受けるための条件をみてみましょう。

  1. (1)小規模個人再生

    小規模個人再生は、もっとも一般的な個人再生の方法です。

    小規模個人再生の適用を受けるための要件は、民事再生法で以下のように規定されています。

    • 将来において、継続的に、または反復して収入を得る見込みがあること。
    • 住宅ローン、および抵当権など担保権の実行により回収できる額(別除権)を除いた借金の額が5000万円を超えないこと。
    • 同条および裁判所の定める手続きに従って、小規模個人再生を求める申述および再生手続開始の申し立てを行うこと。
    • 債権者総数の2分1以上の反対がないこと、かつ借金の金額ベースで2分の1を超える債権者から反対がないこと。


    小規模個人再生では、「最低弁済額」もしくは「清算価値」(保有している財産の合計金額)のうち、いずれか多い額を返済していくことになります。借金の額に応じた最低弁済額は、民事再生法第231条2項4号により以下のように定められています。

    • 100万円未満……借金全額
    • 100万円以上500万円未満:100万円まで
    • 500万円以上1500万円未満:借金総額の5分の1まで
    • 1500万円以上3000万円以下:300万円まで
    • 3000万円超5000万円未満:借金総額の10分の1まで


    このように、小規模個人再生の適用を受けると借金総額を最大で10分の1まで減らすことが可能になるのです。

  2. (2)給与所得者等再生

    給与所得者等再生とは小規模個人再生の特則のようなものであり、収入がある程度安定しているといえる人が適用を受けることができます。収入が安定しているか判断する基準は、過去2年間の年収において20%以上の変動があるか否かとなります。

    そして、給与所得者等再生は収入が安定していれば会社員や公務員のほか、アルバイトやパート、年金生活者でも適用を受けることが可能です。一方で、自営業者はその特質から収入が安定しているとされないため、給与所得者等再生の適用を受けることはできません。また、給与所得者等再生は過去7年以内に自己破産や給与所得者等再生をしている人は適用を受けることができません。

    小規模個人再生と異なり、給与所得者等再生は「債権者の反対が不要」というメリットがあります。その一方で、給与所得者等再生では最低弁済額と清算価値に加えて、「可処分所得の2年分」(住民税の課税証明書と源泉徴収票から算出)のいずれか大きい額まで借金を返済しなければなりません。したがって、借金の減額割合は小規模個人再生よりも小さくなることが多くなる場合があります。

    このためか、小規模個人再生に比べると給与所得者等再生はあまり利用されていないという現状があるようです。

3、個人再生のメリットとデメリット

借金の総額を減額できることが個人再生の最大のメリットです。その他のメリットや、デメリットについて解説します。

  1. (1)個人再生のメリット

    個人再生では可能な限り早く債務者が経済的に立ち直ることができるようにすることを目的に、個人再生では自宅不動産を没収せずに借金が整理することを目的とした「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度があります。

    この制度は、金融機関など住宅ローンの債権者から承諾を得ていることを前提に、住宅ローンなどの住宅資金貸付債権については従来通りあるいは返済スケジュールを変更したうえで債権者への返済を継続することを認めるものです。これにより、金融機関による抵当権の実行によって、自宅不動産が差し押さえられる心配はなくなります。

  2. (2)個人再生のデメリット

    個人再生の適用を受けると、裁判上の手続きによって個人の住所氏名が官報に掲載されます。このため、個人再生の適用を受けざるを得ないほど借金をしていたという事実が公表されることになります。ただし、官報を日常的にチェックする方は限られているため、悪意があるケースではない限り広く知られることはないでしょう。

    また、信用情報機関のリストに名前が掲載されることになります。これにより、少なくとも数年の間は新たなクレジットカードの作成や住宅ローンなどの借金ができなくなってしまいます。したがって、個人再生に踏み切ることについては慎重な判断が必要です。

4、その他の債務整理の方法について

債務整理には、個人再生以外にも方法があります。個々の事情により適した債務整理方法は異なります。弁護士と相談して決定することをおすすめします。

  1. (1)特定調停

    特定調停とは、簡易裁判所の調停委員を介して、債権者と返済計画や利息などについて話し合いにより合意を目指す方法です。債権者と顔を合わせることはないため、冷静な話し合いが期待できます。

    ただし、調停委員が必ずあなたの味方になってくれるわけではなく、話し合いの結果、借金が減らないという可能性があるでしょう。

  2. (2)自己破産

    自己破産とは、裁判所に借金を帳消しにしてもらう手続きです。

    自己破産は保有している資産や今後の収入見込みを考慮しても、債務返済のめどが立たなくなった場合、まず、裁判所に自己破産したい旨を申し立てます。裁判所に「支払い不能」の状態であることが認められると破産手続きが開始し「免責許可」が決定されるという流れになります。結果、借金を返さなくてもよくなるのです。

    ただし、無条件に借金がきれいになるわけではありません。たとえばギャンブルや無計画な浪費が原因の借金は「免責不許可事由」という区分に該当するため、借金が帳消しにならない可能性もあります。

    自己破産では、最低限の財産を除き、自宅不動産を含む私財がすべて没収されます。それでも返せなかった借金に対して、返済義務がなくなるのです。これが、個人再生と大きく異なる点です。

    自己破産には、自宅不動産すらも没収されること、自己破産手続き中は一定の職業に就けないことなど、個人再生よりもデメリットが多いという特徴があります。自己破産は最終手段であると考えたほうがよいでしょう。

  3. (3)任意整理

    任意整理は、交渉のうえ、金利分を減額するなどの方法によって債務を整理する方法です。

    債務者は、債権者と結びなおした和解契約に基づいて返済し、借金を整理していきます。和解契約の内容次第では、自宅不動産に住宅ローンが残っていても処分せずにすむでしょう。また、任意整理の手続きには裁判所は一切介在しません。このため、借金があることの事実が家族や勤務先に知られることはまずないと考えてよいでしょう。このようなメリットから、任意整理を選ぶ人は多いようです。

    任意整理は、債務者個人でも行うことが可能です。しかし、任意整理では債権者と直接交渉をする必要があります。したがって、法手続きの知見と経験があり、交渉力を発揮できる弁護士を代理人とすることが一般的です。

5、まとめ

個人再生の適用を申請する際は、弁護士に依頼することをおすすめします。これは、他の再生手続きや過払い金請求などにおいても同様です。

まず、弁護士に依頼した時点であなたに対する直接的な督促を、一時的に止めることができます。そして、債務整理に豊富な経験と実績もつ弁護士であれば、債務者の状況を理解し、解決に向け最適な提案を行います。

あなたの状況次第では個人再生以外の債務整理を提案することがあります。あなたが一人で債務整理に取り組むよりも、適した結果が期待できるのです。また、弁護士はあなたの代わりに書類の作成など裁判所への手続きなども代行しますし、裁判所で対応することも可能です。

ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士は、個人再生をはじめとする債務整理に関するご相談を受け付けております。個人再生についてご検討であれば、ぜひお早めにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています