離婚しないで不倫相手に慰謝料請求したい。不貞行為の慰謝料を請求する方法とは?

2019年04月19日
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離婚しないで不倫相手に慰謝料請求したい。不貞行為の慰謝料を請求する方法とは?

広島県の統計情報によると、平成29年中には広島県内で4603組の夫婦が離婚したということです。人口千人あたりの離婚率は1.65と全国平均である1.70は下回ったものの、全国では23番目の離婚率となったようです。

最終的には離婚に至っていなくとも、たとえば配偶者が不倫をし、離婚の危機に見舞われたものの、離婚はなんとか思いとどまり、婚姻関係を継続している夫婦もいるかもしれません。

今回は、離婚はしないものの、不倫相手に対してのみ慰謝料請求する場合の方法について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説していきます。

1、離婚しなくても不倫相手に慰謝料を請求できる

あまり知られていないことですが、「不貞行為の慰謝料」という言葉は、法律に書かれている言葉ではありません。ですが、「不貞行為の慰謝料」という言葉は、法律家の間でも、日常用語としても、よく使われています。
一般に、「不貞行為の慰謝料」とは、夫婦の一方が不貞行為をしたときに、夫婦の他方が不貞行為をされたことによって被った精神的苦痛を償う損害賠償のことを指すことが多いようです。

不貞行為の慰謝料を誰に請求できるかという相談を受けることが多いのですが、
① 不貞行為をした配偶者
に加えて、
② 不貞行為の時に結婚していることを知っていた不倫相手
であれば(これについては、2で詳しくお話します)、不倫相手にも請求ができるとされています。

この不貞行為の慰謝料を請求する権利は、夫婦が離婚したことを条件としていませんので、夫婦が離婚していなくても請求をすることが可能です。

とはいえ、お財布を1つにしている夫婦が、離婚しない場合には、配偶者から慰謝料を受け取っても、家計の中でお金が行き来するだけですので、経済的メリットに乏しいといえるでしょう。
そのため、離婚しない場合の慰謝料請求は、不倫相手に対して、請求していくケースが多いようです。

2、不倫相手に慰謝料請求できない場合があるので注意!

不倫相手に慰謝料を請求する場合には、不法行為の要件を満たしている必要があります。代表的なものとして、不倫相手に「故意・過失」があり「権利の侵害」があったことなどが必要です

要件として、「故意・過失」が必要ですから、不倫相手が、不倫した夫婦の一方が既婚者であることを知っていたり、既婚者であることを知りうる状況であったにもかかわらず、不貞行為に及んでいた場合には、慰謝料を請求することができますが、不倫相手が、夫婦の一方が既婚者であることを過失なく知らなかった場合には、慰謝料を請求できません。

また、不貞行為があった時に、夫婦仲が悪く、別居をしていた場合などには、婚姻関係がすでに破綻していたと判断されて、慰謝料請求が認められない可能性もあります。

この他にも要件がありますので、注意が必要です。

3、不貞行為の慰謝料請求額の相場とは?

不貞行為の慰謝料の金額について、当事者で合意できれば、公序良俗に反するような金額でない限り、合意した金額が不貞慰謝料の金額です。

これに対し裁判では、慰謝料の金額は浮気の回数や期間や程度のほか、社会的地位といったさまざまな事情が考慮されて慰謝料の金額が決まります。

4、不倫相手に慰謝料請求する方法とは

不倫相手に慰謝料を請求する方法としては、次のような方法があります。

  1. (1)相手に内容証明郵便などで直接請求する

    まず、不倫相手に直接交渉して慰謝料を請求するという方法があります。

    具体的な請求方法として、相手に「内容証明郵便」を送付して慰謝料請求を行う方法があります。内容証明郵便は、送られた相手に心理的なプレッシャーを与えることができますが、内容証明郵便には文字数の制限など厳格な決まりごとがありますので、慣れていない方が内容証明書面を作成するのはなかなか大変なものです。
    ですが、そのような内容の手紙を送ったという証拠が残りますので、「内容証明郵便」を送ることによって、「催告」をしたという証拠が残りますから、後に説明する時効完成を妨げるためには大変便利です。そのため、弁護士も、時効の完成ぎりぎりにご依頼いただいた場合には、応急処置として、内容証明郵便を送ることが多いです。

    逆に言うと、書いた内容は証拠として残ってしまいますので、うっかりこちらに不利なことを書いてしまった場合には、後で覆せなくなります。
    ですから、内容証明郵便を送る際には、よくよく勉強するか、弁護士に依頼する方が無難でしょう。

  2. (2)調停や離婚裁判で請求する

    次に、調停や裁判で請求をする方法があります。

    調停は、調停委員を交えて当事者で話し合い、合意による解決を目指す手続きです。
    調停で合意できれば、調停調書が作成されます。調停調書を得ておくと、支払ってもらえなかった場合に、一定の手続をふめば給与差押えなどの強制執行ができるようになるという効果があります


    これに対し、裁判は、当事者の主張や提出された証拠をもとに、裁判官が判断して言い渡す判決によって、解決を図る手続きです。
    不貞行為の慰謝料請求を裁判で行う場合には、判決で、慰謝料支払義務の有無や慰謝料の金額が決まります。

5、慰謝料請求で注意すべきこととは

  1. (1)時効に注意する

    不貞行為の慰謝料請求には時効があります。
    そのため、不貞行為および不倫相手を知ったときから3年が過ぎると、慰謝料請求ができません。ですから、離婚しないことを決断したものの、不倫相手への慰謝料を請求せずに放置していると、慰謝料を請求できなくなります。

    この時効の完成を阻止する方法がいくつかあります。
    例えば、先ほどご説明した内容証明郵便により、正しく請求をしたうえで、6ヶ月以内に裁判などを起こしたりすれば、時効の完成が猶予されます(平成31年4月現在)。この時効に関する法律が近いうちに改正される見通しですから、最新の情報を入手するため、弁護士に相談することをお勧めします。

    また、裁判を起こして慰謝料請求を行うという方法も、時効完成を阻止する方法の1つです。
    いずれにせよ、不倫相手に慰謝料請求したい場合には、時効に注意することが重要です。

  2. (2)証拠をそろえておく

    慰謝料請求を行う場合には、不貞行為の証拠を集めることが重要です。
    証拠がなければ、相手が不貞行為を認めなかった場合に、慰謝料を内容証明等で請求しても、慰謝料を払ってもらえない可能性が高くなります。
    また、裁判では、証拠に基づいて判断されますので、証拠が全くないと、負けてしまう可能性が高くなります。
    しかし、不貞行為の証拠を集めておくと、交渉において有利に進められるだけでなく、早期解決にもつながりやすくなるほか、裁判においても慰謝料請求が認められる可能性が高まります。

    不貞行為を立証する証拠としては、肉体関係を持ったことがわかる写真やビデオのほか、メール、ホテルの領収書、クレジットカードの明細書、配偶者が自白した際の録音なども証拠になる可能性があるので、可能な限り多くの証拠を集めておくとよいでしょう。

    また、筆者が法律相談をしてきた経験上、一般の方が証拠を集める際は、「肉体関係をもったことがわかる写真、書類、データ、物はないか」と考えるとイメージがわきやすいようです。

6、不貞行為の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットとは

不貞行為の慰謝料請求をするなら弁護士へ依頼することをおすすめします。弁護士に依頼した場合には、次のようなメリットがあります。

  1. (1)適切な慰謝料額で請求できる

    弁護士に依頼した場合には、弁護士は、多くの裁判例に照らし、そのケースに応じた適切な慰謝料額を算出して請求することができます。あまり知られていないことですが、あまりに高額な慰謝料額を取り決めても、後に、公序良俗違反であるとして無効とした裁判例もあります。

    そのため、慰謝料の金額に関して有利になる事情があれば、そのご事情を踏まえて算出することができる他、後で裁判になっても覆されにくい適切な金額を判断することができます。

  2. (2)弁護士が代理して交渉するので負担が軽減できる

    不貞行為の慰謝料を請求する場合でも、「不倫相手と顔を合わせたくない」「関わり合いになりたくない」と思うことがほとんどでしょう。

    そういった場合、弁護士はご依頼者の方の代理人として相手方と交渉することができるので、ご依頼者の方は不倫相手に直接会うことなく慰謝料を請求することができます。
    弁護士に依頼した場合には、ご依頼者の心理的な負担を軽減できるというメリットがあります。

  3. (3)早期に解決できる

    不倫相手に慰謝料請求する場合には、当事者間の交渉では感情的になってしまい交渉がこじれたり、長引いてしまう場合があります。

    しかし、弁護士は相手と冷静に交渉を進められるので、早期の解決を期待することができます。
    また、弁護士は法的な根拠や、証拠などの根拠を示して交渉を行う他、支払ってもらえなければ裁判にする可能性があるなど、今後の見通しを示して相手方を説得するので、相手も早期に慰謝料請求に応じる可能性が高くなります。

  4. (4)不倫相手にプレッシャーをかけることができる

    弁護士からの慰謝料請求は、不倫相手に精神的なプレッシャーを与えることができます。
    それは、弁護士が入ることで、話がまとまらなければ裁判も辞さないということが相手にも伝わるからです。

    そのため、本人による慰謝料請求に向き合わなかった相手が、弁護士の請求には、きちんと対応することが期待できるというメリットがあります。

  5. (5)こちらの慰謝料額を減らされたり、刑事罰を受けたりするリスクを回避できる

    通常、不倫されると、相手に対し、多かれ少なかれ、怒りや憎しみ、恨みを持つものです。
    そのため、慰謝料請求に際し、カッとして暴力を振るってしまったり、暴言を吐いてしまったりすることもままあります。

    しかし、暴力や暴言は、刑法上、暴行罪や侮辱罪にあたり得ますので、こちらが刑事罰を受けるリスクがあります。そのうえ、暴力や暴言によって、かえって、相手方から損害賠償請求を受けることになり、慰謝料請求からその金額を差し引くとの主張をされてしまうことにもなりかねません。

    また、自分で請求した際に「仕方ないね」などの何気なく言った一言で、慰謝料請求権を放棄した、などと主張され、後で弁護士に依頼しても、慰謝料請求が困難になることもあります。
    そのようなリスクを回避するためにも、ご自身で請求するよりも、早めに弁護士に依頼したほうが良いでしょう。

7、まとめ

本コラムでは、離婚しないという決断をしたうえで不倫相手に慰謝料請求する場合の請求方法について解説してきました。
離婚しない場合でも、不倫相手に慰謝料請求できる可能性があります
弁護士に依頼せず直接請求した場合には、感情的な争いになり大きなストレスとなるほか、うっかり慰謝料額を減らすような言動をしてしまうこともあり得ます。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士は、ご相談者さまの代わりに慰謝料請求を有利に進められるよう全力を尽くします。
不倫相手に慰謝料を請求したいとお考えの方はぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています