子どもを妊娠したら、相手は既婚者だった…。子どもの認知を拒まれたときの対処法は?
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広島市内にお住まいの方でも、お付き合いがある男性との間に子どもができたものの、相手とは結婚しないことを選択するケースもあるかもしれません。たとえば、子どもの父親となる方が既婚者だった場合は、離婚してもらってから結婚して子どもを出産する……という未来を得ることは簡単ではありません。しかし、たとえシングルマザーになっても子どもを産みたいと思う女性もいるのではないしょうか。
結婚していない母親から生まれた子どものことを、「婚外子」と呼ばれています。平成27年度版厚生労働白書によると、婚外子の割合は諸外国と比べて日本は非常に低く、たったの2.11%という数字が公表されていることをご存じでしょうか。日本では、子どもの父親となる人物と婚姻、もしくは「認知」してもらえなければ、嫡出子と比べて受けられる権利が減ってしまうなどのデメリットが大きいと思われているからかもしれません。
今回の記事では、妊娠したものの結婚ができない場合に、相手の男性に認知してもらうための方法や注意点について弁護士が解説します。
1、そもそも認知とは
現状の民法において、不倫相手や結婚する予定のない相手の子どもを妊娠した場合に、父親が認知をするかどうかは非常に重要な問題になります。まずは認知について知っておきましょう。
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(1)認知制度の概要
「認知」とは、父や母が子どもに対して自分が親であることを認める行為のことです。民法第779条において任意認知の基本が記され、第780条では認知能力のある者について定められています。
そのほかにも、成人している子どもの認知についてはもちろん、生まれる前の子どもの認知、認知の効力、認知を訴える方法など、詳細に民法で定められています。 -
(2)認知制度の利用方法
認知の方式は、民法第781条によって2通りあることが明記されています。
- 戸籍法によって規定されている内容に沿って届け出る
- 遺言によって認知できる
認知制度を利用するには所定の手続きを踏む必要があります。具体的には認知届を作成し、市町村の役所窓口に提出します。認知届には、認知する親と認知される子どもの氏名や生年月日、母親の本籍地などを記載します。
出産前に認知する場合には胎児認知として届け出るため、胎児の氏名や生年月日は未確定になり、空白にして提出します。
2、認知の種類
認知には複数の種類があります。任意認知と裁判認知です。認知の種類によって、得られる効果や、手続き方法が異なります。
置かれている状況によって、選択するべき種類が異なるため、それぞれの違いを解説します。
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(1)任意認知
任意認知とは、文字通り任意に行う認知のことです。
父が認知を拒まず受け入れた場合には、父親が認知届を作成し市町村役場の窓口に提出します。なお、任意認知は遺言でも行うことができます。 -
(2)裁判認知
裁判認知とは、強制認知ともいい、父親が認知に同意しない場合に、子ども側から強制的に認知をさせることです。
妊娠した際に父親である男性が認知をしない場合、女性は泣き寝入りをすることもあります。しかし裁判認知を活用することで、男性に強制認知させ、子どもを守ることができます。
3、認知されるメリット
「認知してもらったほうがいい」とよく言われるのは、認知されることで、父親に対して請求できる権利と子どもの法律的な立ち位置が変わるためです。
それでは実際のところ、認知がなされるとどのような変化やメリットがあるのかについて解説します。
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(1)父親に養育費を請求できる
認知による最大ともいえるメリットは、子どもが父親に養育費を請求することができる点です。
認知すると、父親には子どもを養育する義務が発生します。ただし、認知をめぐる問題が起きている場合は、父親と子どもが別居しているケースも珍しくありません。そこで子どもは父親に対し養育費を請求することができるのです。通常は、子どもに代わって母親が養育費を求めることになります。 -
(2)相続権の獲得
認知がなされると法律上の親子関係が成立します。したがって、認知をした父親が亡くなった際には、子どもに相続権が発生します。民法第784条では、認知の効力は出生時点にさかのぼるものとされています。
そのため、仮に父親が亡くなった後に裁判で認知されたり、遺言で認知が行われたりした場合でも、子どもは相続権を主張し相続人になることができます。
4、認知の種類別手続き方法
認知の手続き方法は種類ごとに異なります。特に裁判認知の場合は、認知をするつもりがない相手に認知をさせることから始める必要があります。ここでは、2種類の認知について、手続き方法を解説します。
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(1)任意認知
任意認知は、父親である男性が認知することに同意している場合に行われます。そのため、トラブルも少なく比較的スムーズに行われるでしょう。手続き方法は、父親が認知届に必要事項を記載し署名押印の上、市町村の窓口に書類を提出することで完了します。
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(2)裁判認知
裁判認知は、任意認知と比較すると時間と手間がかかります。相手に認知させるところから開始する必要があるからです。
まずは、父親に対して子どもや法定代理人などが調停を申し立てます。調停がまとまらず父親が認知を認めない場合は、認知請求訴訟を起こします。認知請求訴訟を起こすと、子どもと父親の間に実際に父子関係が存在するかどうかが調査され、判決が下されます。
裁判認知が認められたら、確定証明書や判決書を認知届とともに提出します。以上の手続きを行うことで、裁判認知は完了します。
5、認知を求めるときに気をつけたい点
認知されるとメリットが生じる一方で、デメリットや注意点もあります。
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(1)認知のデメリット
認知が成立すると正式に父子関係が成立します。親子関係が成立することは、メリットとなる反面デメリットにもなりえます。
たとえば、父親に多額の借金があった場合には、相続放棄や限定承認をしない限り、子どもは実子としてマイナスの財産も引き継ぐ必要があります。さらに、子どもが成人している場合で、父親が自分の生活を保つことができない何かしらの事情がある場合、子どもは親を扶養しなくてはならない義務も発生することを知っておく必要があるでしょう。
親子関係が成立する以上、相続権や養育費請求権などの権利も与えられる反面、将来的に扶養義務なども発生する可能性がゼロではないことにも注意しましょう。 -
(2)認知が認められない場合もある
父親に認知の意思がない場合は裁判認知を選択することになります。裁判認知をするには、父子関係が存在することが立証されなくてはなりません。具体的な証明方法はDNA鑑定などが一般的でしょう。
しかし、たとえば父親の所在が不明で連絡も取れず、DNA鑑定の協力が得られない場合には、父子関係を証明することができず、認知が認められないことがあります。
6、シングルマザーが知っておくべき手当
妊娠しても男性と結婚できない場合、認知をしてもらうことで経済的負担を軽減することができます。しかし、認知をしても実際に養育費を支払わない男性もいるため、シングルマザーの方は助成金や行政からの手当を有効に利用することで、経済的負担の削減につながります。
ここではシングルマザーの方が知っておきたい手当を紹介します。
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(1)児童手当
中学校を卒業するまでの子どもがいる親に対して支給される手当です。実際に支給される金額は、子どもの年齢や人数に応じて変動します。児童手当は、子どもがいる家庭に自動的に支給されるものではなく、家庭ごとに申請が必要です。
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(2)児童扶養手当
18歳年度末までの子どもか、障害がある20歳未満の子どもであり、かつ下記のような条件に該当する子どもが対象です。
- 親が障害状態にある子ども
- 父親や母親が亡くなっている子ども
- 両親が離婚している子ども
- 母親の婚姻によらずに生まれてきた子どもで、かつ父親または母親から養育を受けていない子ども
児童扶養手当も、児童手当と同様で申請が必要です。また所得制限もあるため、ご自身が手当を受けられるかどうかは自治体の保健福祉課などで確認してみましょう。
7、まとめ
あなたが交際相手の子どもを妊娠したとき、相手の男性が事実を受け入れてあなたと結婚するとは限らないという現実があります。特に、不倫の結果であれば、離婚した場合は慰謝料などの問題が発生します。そのほかにも結婚にはさまざまな弊害が生じ、期待するような現実にならないことも多いでしょう。
そのようなときは、結婚せずに男性から認知してもらう方法も選択肢のひとつです。認知してもらえれば、養育費を請求し、子どもの相続権を確保することもできます。不倫相手に対する子どもの認知でお悩みならば、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスで相談してください。子どもの将来のためにも、広島オフィスの弁護士が、認知成立に向けて全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています