離婚の財産分与。会社名義の資産は財産分与請求できる?
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広島県の発表によると、平成29年度の離婚件数は4484組、離婚率は1.62%であり、全国で28位でした。
昭和44年1月、会社名義の資産を財産分与の対象にすることを求めた裁判において、札幌高等裁判所は、「会社の実質が家族経営の域を出ないものである場合には、財産分与の対象とする」という旨の判決を下しました。
離婚を検討されている方のなかには、「会社名義の資産について、財産分与の請求はできるのか?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。本コラムでは、会社名義の資産の財産分与について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説いたします。
1、会社名義の資産は財産分与請求できる?
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(1)財産分与とは
財産分与とは、婚姻中に夫婦で築いた共有財産を分割することです。民法では「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定められています。
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(2)基本的に、会社名義の資産は財産分与の対象にならない
基本的に、会社名義の資産は財産分与の対象にはなりません。
会社の資産は、社員などの個人ではなく法人が独立して管理・所有していると認められているためです。そのため、いくら経営者や役員であっても、離婚時に会社の資産を財産分与の対象とすることはできないのです。 -
(3)会社名義の資産が財産分与の対象となる場合はあるか?
前述の通り、基本的に会社の資産は財産分与の対象にはなりません。
しかし、法人の実態が個人経営の域を出ず、実質上夫婦の一方又は双方の資産と同視できる場合や法人格を否認することができるような場合には、例外的に、会社の資産であっても財産分与の対象となる場合があります。
2、財産分与の対象となる資産、対象とならない資産
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(1)財産分与の対象となる資産
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦で共に築いてきた共有財産です。
なお、自分では働かずに収入などを得ていない専業主婦(主婦)などであっても、配偶者が収入を得るための援助を行ってきたと見なされて、共有財産が認められます。 -
(2)現金
婚姻期間中の貯金は財産分与の対象となります。
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(3)不動産
土地やマンションなどの不動産についても、財産分与の対象となります。
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(4)有価証券
有価証券(社債や株式・債券)も、財産分与の対象となります。
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(5)家具や家電
婚姻期間中に購入した家具や家電なども、財産分与の対象となります。
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(6)年金や退職金
退職金や各種年金も、財産分与の対象となることがあります。場合によっては、婚姻期間中に支払った年金保険料に対応する年金額のみが対象となることもある点に注意してください。
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(7)保険
婚約中に加入した保険や、子どものための学資保険も、財産分与の対象となりえます。
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(8)各種ローン
家族の生活のための住宅ローンや教育ローンも、財産分与の対象となりえます。私的なギャンブルによる借金の場合は、財産分与の対象となるかどうかは個々のケースによって異なります。
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(9)財産分与の対象とならない資産
「特有財産」は、財産分与の対象となりません。
特有財産は、婚姻前から配偶者が保有していた財産または婚姻中に、夫婦の協力とはまったく関係なく得た財産のことです。 -
(10)結婚前の貯金や資産
配偶者が独身時代に働いて得た貯金や築いた資産は、財産分与の対象にはなりません。たとえば、婚約中に購入した車は財産分与の対象となりますが、独身中に購入した車は原則として財産分与の対象になりません。
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(11)相続財産
家族から相続した土地や家、現金などの資産は、財産分与の対象にはなりません。
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(12)会社の資産
会社の資産は、経営者だけのものではなく、会社の独立した資産とみなされます。そのため、「法人の実態が個人経営の域を出ない」などの例外を除いて、基本的には財産分与の対象にはなりません。
3、財産分与はいつ、どうやって決める?
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(1)財産分与の決定時期
財産分与については、離婚が成立する前に夫婦で話し合いをして、決めることが通常です。
また、離婚成立前に決めていなかったとしても、離婚後2年以内であれば、家庭裁判所に対して財産分与を請求することができます。 -
(2)財産分与の決定方法
財産分与の決定には、現物分割と換価分割、代償分割という方法があります。
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(3)現物分割
現物分割とは、財産を現物の状態で分ける方法です。
たとえば、財産分与の対象に車と土地があった場合には、「妻は車を所有して、夫は土地を所有する」といったかたちで分けることができます。 -
(4)換価分割
換価分割とは、現物の財産を売却して、現金に換えた後に夫婦で分割する方法です。
たとえば、「家を売って得た現金を、二人で分ける」ということができます。 -
(5)代償分割
現物分割を行う場合には、分割するものによっては市場価値に乖離(かいり)があり、片方の配偶者が損をしてしまうことがあります。
代償分割では、不利になる方の配偶者に対して、有利になる方の配偶者が代償的に金銭を支払います。
4、財産分与でもめたらどう決着をつける?
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(1)財産分与の手順
基本的に、離婚時の財産分与は夫婦間の話し合いによって決定していきます。
しかし、夫婦間で意見が一致せずに、もめてしまう場合もあります。
以下では、財産分与でもめてしまったらどのようにして決着をつけていくのかを解説します。 -
(2)話し合いによる交渉
まず、財産分与について、夫婦間の話し合いによる任意の交渉を行います。
財産分与の対象となる財産をあらかじめリストアップしたうえで、そのリストに基づきながら、財産分与の交渉をすすめていきます。 -
(3)調停
財産分与について夫婦間の話し合いでは合意に至らない場合には、「調停」を行うことになります。
離婚する前で、夫婦の両者が離婚に合意していない場合には、「夫婦関係調整調停」を申し立てることになります。
離婚した後では、「財産分与請求調停」を申し立てる必要があります。
調停では、調停委員が介入して、夫婦間意見の調整を行います。また、財産分与の対象となる財産について、裁判所で財産が適切に評価されることになります。
そして、調停での話し合いで双方の合意が得られれば、「調停調書」が作成されることになります。
調停不成立になった場合には、財産分与請求調停では裁判官が判断を下します。夫婦関係調整調停では、不成立で終わる場合がほとんどです。 -
(4)離婚裁判
調停にて合意が得られず、引き続き相手と財産分与について争っていきたい場合は、離婚訴訟に進行することになります。
裁判では、調停と比べてより客観的な証拠が必要となります。離婚裁判では、複数回の口頭弁論を繰り返して判決に至ります。裁判での決定事項については、法的な拘束力があります。
5、財産分与を弁護士に相談するメリットやタイミング
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(1)財産分与のアドバイスを得られる
財産分与の交渉時に、相手から提示された条件が妥当かどうか判断に困ることがあります。弁護士に相談することで、条件や資産の評価について、適正なアドバイスが得られます。そのため、知らず知らずのうちに不利に財産分与の交渉がすすむことを避けられます。
その他にも、養育費や慰謝料、離婚後の生活など個々の状況に合わせてアドバイスを受けることができます。 -
(2)交渉などの代理を依頼できる
離婚を成立させるためには、配偶者との交渉が必要です。また、調停や訴訟にすすむ場合には、申立書や訴状を作成して、裁判所での手続きを行っていく必要もあります。配偶者との交渉や調停・訴訟の代理人、書類作成や裁判所での手続きなどを弁護士に依頼することができるので、法的な観点から作成された書面を提出することができるうえ、労力も大きく削減することができます。
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(3)精神的な負担の軽減
離婚の交渉がスムーズに進むことはまれであり、難航することのほうが一般的です。
離婚の交渉時は、夫婦双方とも多大なるストレスがかかってしまいます。その際には、個々の状況に合わせて適切なアドバイスをくれたり、親身になって相談に乗ってくれたりする弁護士がいることで精神的な負担は大幅に軽減されます。
離婚問題について、気が重かったり、つらいと感じたりする方は弁護士に離婚の対応を依頼することをおすすめします。
6、まとめ
離婚時の財産分与において、基本的には会社の資産は財産分与の対象にはなりません。
しかし、会社の資産が経営者の資産と同一視できる場合などには財産分与の対象となることがあります。
財産の適正な評価を行うことは難しいですが、弁護士に依頼することで、評価の妥当性を検証でき、有利に財産分与の交渉をすすめることができます。また、調停や訴訟の際の書類の作成や代理人を弁護士に依頼することもできるのです。
会社名義の資産の財産分与についてお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士にご相談ください。
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