会社からの不当解雇の対処法と、弁護士を依頼するために必要な費用は?

2020年02月21日
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会社からの不当解雇の対処法と、弁護士を依頼するために必要な費用は?

会社から突然解雇を言い渡されることがあります。

しかし、会社は自由に従業員を解雇できるわけではなく、会社からの解雇が不当解雇とされることも多くあります。

今回は、どのような場合が不当解雇となり、会社から解雇を言い渡されたときにどうすればいいのか、不当解雇の対処法について、広島オフィスの弁護士が解説します。

1、会社は自由に解雇をすることができるのか?

会社から、1か月分の給与を支払うことを条件に一方的に解雇が言い渡されることがあります。このような会社からの解雇は不当解雇にならないのでしょうか。
労働基準法では、使用者が、労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告をしなければならず、30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとされています。
そして、会社側から、30日分の給与を支払うことで、従業員を解雇することができると主張されることがあります。

しかし、上記労働基準法の規定は、解雇をするときに30日前に予告をするか、30日分の平均賃金を支払う義務を会社に課しているにすぎず、30日分の平均賃金を支払えば解雇することができるという規定ではありません。そのため、会社から1か月分の給与を支払うから解雇をすると言われたとしても、不当解雇に該当し、解雇が無効になる場合もあります。

2、解雇が不当解雇となる場合

労働契約法では、解雇は、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であると認められる場合でなければ無効となると規定されています。
したがって、理由なき解雇はもちろん、何らかの理由があるという程度で有効な解雇となるわけではなく、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当なものでなければ不当解雇となります。
以下のようなケースでは、有効な解雇と認められない可能性があります。

  • 理由のない解雇
  • 成績不良を理由として直ちに解雇すること
  • 数分間程度の遅刻を理由として直ちに解雇すること
  • 退職希望者の募集や、従業員に十分な説明をしないまま、経営不振を原因として解雇すること
  • コミュニケーション不足を理由として直ちに解雇すること


また、法律上、以下のケースでは不当解雇に該当すると規定されています。

  • 業務上の病気やけがで休業している期間及びその後30日間の解雇
  • 産休期間及びその後30日間の解雇
  • 裁量労働制に同意をしなかったことを理由とする解雇
  • 育児休暇や介護休暇を取得したことを理由とする解雇
  • 労働基準監督署に申告をしたことを理由とする解雇
  • 裁判員制度のために休暇を取得したことを理由とする解雇


不当解雇に該当する場合、その解雇は無効なため、従業員としての地位が依然として認められ、会社に対して給与の支払いを請求することができます。

3、解雇を言い渡されたときの対応

実際に解雇を言い渡されたときは、会社に対して解雇が無効であることを主張していくことになります。そのための手段としては、交渉、労働審判、訴訟などがあります。

  1. (1)交渉

    会社との交渉は、裁判所などを利用しない、もっともシンプルな手段です。
    会社に対して内容証明などを送り、解雇が無効であることを主張します。
    解雇が無効であることを主張し、会社が不当解雇であること認めて従業員の復職を受け入れると、職場に復帰して働き続けることができるようになり、当然給与も支払われることになります。
    また、会社は、従業員の復職を受け入れないものの、会社が一定の金額を従業員に支払い、会社都合の退職にするという合意をすることで金銭的な解決ができる場合もあります。

  2. (2)労働審判

    労働審判は、裁判所を利用する手続きですが、訴訟のように期間を要することなく、原則として3回以内で終了します。従業員が復職を強く希望している場合よりも、金銭的な解決で会社との間で折り合いがつかない場合に利用することが多いです。
    労働審判は、訴訟と異なり、裁判官と二名の労働審判員で構成される労働審判委員会において行われます。労働審判員は労働者側の弁護士と使用者側の弁護士がそれぞれ一人ずつ担当するのが通常です。

    裁判官と二名の労働審判員の面前で、本人が直接口頭で話をし、裁判官や労働審判員、相手方からの質問に答えます。当事者の話をおおむね聞き終えると、裁判官と労働審判員の間で評議がされ、多くの場合、当事者の話をもとに和解案が提示されます。
    労働審判では、弁護士に依頼した場合であっても、本人が出頭するのが原則です。
    もっとも、単に当日、本人が話をするだけではなく、申立書の作成や相手方から提出された答弁書の検討もしなければならず、会社の解雇が不当解雇に該当するという法的な主張もする必要があります。

    労働審判は上記のように原則として3回以内で終わるので、迅速に解決したい場合に利用されます。

    ただし、労働審判の結果に対して会社が異議を出すなどにより、訴訟に移行することもあるので、注意が必要です。

  3. (3)訴訟

    訴訟は、裁判所を利用する手続きですが、労働審判のように回数の制限はなく、解決までに長期間必要となることがあります。
    訴訟は、手続きの大部分を弁護士だけで対応することが可能なため、弁護士に依頼をしていれば本人が毎回裁判所に出廷する必要はありません。訴訟になったとしても必ずしも判決になるとは限らず、判決前に和解となれば、本人が裁判所に出廷することなく解決できることもあります。しかし、当事者双方で和解がまとまらず、判決となると、判決の前に尋問が行われ、その尋問には本人が裁判所に出廷して供述をする必要があります。

    訴訟は解決までに長い時間を要する場合があり、労働審判に比べて手間もかかるといえます。もっとも、本人が復職を強く希望しており、会社が断固として復職に応じない場合や、会社の解雇が不当解雇であることを明らかにしたいという場合は、訴訟を利用することになります。

4、解雇が言い渡されたときの注意点

不当解雇を言い渡された場合には上記のような手段で解雇の無効を主張することができます。しかし、不当解雇を言い渡されたときには注意すべき点があります。

  1. (1)解雇通知書や解雇理由書をもらう

    口頭で解雇を言い渡された場合は、後に会社から解雇をしたわけではないと主張されてしまうことがあります。また、不当解雇が言い渡された時点で会社が解雇した理由を明らかにしておく必要があります。そこで、会社が解雇をしたことや、解雇をした理由が記載された解雇通知書や解雇理由書を会社に対して請求しておくことが重要です。

  2. (2)退職に合意しない

    会社は解雇したい従業員に対して、執念深い退職勧奨をしてくることがあります。客観的に合理的な理由がなければ従業員を有効に解雇することはできず、従業員を解雇するためには高いハードルが存在するからです。
    会社からの退職勧奨に応じて退職に合意してしまうと、後になってその合意を覆すとこはかなり困難になります。そのため、会社から退職勧奨をされたとしても、退職をしたくないのであれば、退職に合意することは避けるべきです。会社からの退職勧奨があまりにも執念深い場合は、弁護士に相談し、会社に対して執念深い退職勧奨の中止を求めるようにしましょう。

  3. (3)退職金や解雇予告手当などを請求しない

    退職金や解雇予告手当は、会社を退職したり会社から解雇されたりした場合に会社から支払われるものです。そのため、退職金や解雇予告手当を請求すると、自ら退職や解雇を認めたとされてしまう可能性があります。不当解雇を争うのであれば、退職金や解雇予告手当は請求しないようにしましょう。

  4. (4)その他、解雇を承認したと認められるような対応をしない

    不当解雇の主張をすることについては、残業代請求などのように時効があるわけではありません。しかし、不当解雇に対して長期間不当解雇であることを主張しないでいると、会社からの解雇を受け入れたとされてしまうおそれがあります。そのため、会社から解雇されたときは、速やかに対応した方がいいでしょう。

    また、従業員から解雇予告手当の請求をしなかったとしても、会社から一方的に解雇予告手当などとして金銭が振り込まれることもあります。このような場合は、解雇を承認していないことを示すために、会社から振り込まれた金銭は、給与の一部として受け取っているということを会社に対して明確に示しておくといいでしょう。

5、弁護士を依頼するために必要な費用は?

弁護士に依頼するための費用は、それぞれの弁護士事務所で自由に決めています。しかし、依頼内容によっておおよその相場はあります。交渉のみとなるケースや、労働審判や訴訟となったケース、対話が可能なケースかどうかなどによっても弁護料は異なることになるでしょう。まさに個々の事情によってケース・バイ・ケースとなるため、実際に詳しい問い合わせをして比較してみてはいかがでしょうか。

一般的に下記の事情があると、弁護料が高額になってしまう可能性があります。

  • 依頼した弁護士が所属する弁護士事務所から、労働審判、裁判を行う場所などが遠い
  • (交通費などの実費だけでなく、出張手当などが加算されます)
  • 会社からの解雇に理由がある場合


もっとも、「安いからよい」「高いから悪い」という判断でもありません。弁護士との相性は非常に重要です。初回相談は無料の事務所も多くあるため、最寄りの弁護士事務所などに問い合わせてみることをおすすめします。

6、まとめ

今回は、会社からの不当解雇に対する対処法について説明しました。

会社からの解雇が不当解雇であることも多くあります。個人で会社に不当解雇であることを主張しても、会社が不当解雇であることを認めないことも多く、法的な手続きを経なければならないことも少なくありません。
ベリーベスト法律事務所では、これまで不当解雇事件を多数取り扱っており、さまざまな不当解雇案件に対応できます。不当解雇ではないかと疑問を持たれたら、ぜひベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士に相談してください。

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