辞めたくても会社が退職させてくれない……違法なケースと対処法は?

2019年03月06日
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辞めたくても会社が退職させてくれない……違法なケースと対処法は?

平成30年、広島東洋カープの丸が読売ジャイアンツにFA移籍して、広島ファンは騒然としました。プロ野球選手は、契約によって守られているため契約さえ満たせば新天地に移籍することができます。
ところが、企業に勤める会社員は、退職したい、転職したいと考えても会社側が退職を認めてくれないために辞めることもできず、不本意なまま働くことが少なくありません。

そこで、今回はベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が、辞めたくても退職させてくれない場合の相談先や対策をわかりやすく解説します。

1、原則「会社を辞めるのは労働者の自由」です!

ブラック企業と呼ばれる悪徳な企業に限らず、退職したいと言っているのに受け入れてもらえないという話はよく耳にします。ところが本来、一部の場合を除いて退職は労働者に認められた正当な権利なので、会社側が止めることはできません。

民法では、退職の2週間前に退職の通知さえすれば、退職することができると規定しています。ただし、会社の就業規則で「1ヶ月前までに通知すること」など、法律が定める2週間とかけ離れていない期間を定めている場合はその期間までに通知したほうが無難です。

退職の意思表示の方法は、法律上では規定されていません。退職届を提出しなくても、人事や上司にメールや電話などで「退職します」と告げるだけでも問題ありません。ただし、在職強要するような会社では「そんな話は聞いていない」と言い張る可能性があるので、郵送&メール、電話&郵送のように2つ以上の方法で通知し、聞いていないなどの主張ができない状況を作っておくとよいでしょう。

会社側の退職の承認を待つ必要はありません。すぐに行動可能です。繰り返しになりますが、労働者には退職する自由があるのです。

ただし、期間の定めがある雇用契約を結んでいる場合、最初の1年間のみ好きなときに退職することはできません。1年間のみの労働契約を結んでいる場合は、退職したくなってもその期間が到達するまでは退職できません。

ただし、会社の就業規則により「1ヶ月前までに通知すれば退職できる」などと明記されていれば、その期間までに通知すれば退職することができます。「1年以上の契約期間で、1年を経過した場合」は、会社の承諾を得ることなくいつでも退職できると労働基準法で定められています。

2、会社が退職させてくれない、違法な3つのケースとは

次は、会社が退職させてくれない3つのケースをご紹介します。

・ 退職届を受け取らない
そもそも、会社側には退職を拒否する権利がありません。働く意思がない労働者を拘束することは労働基準法違反となります。

退職届を受け取らない場合は、メールと内容証明郵便で通知するなど、退職の意思表示をすることをおすすめします。送付後、期間が到来すれば、特に許可がなくても退職してしまっても問題ありません。

・ 退職したら損害賠償請求をしてきた
労働基準法第16条では、会社側が労働者に違約金や損害賠償請求をしてはならないと規定しています。したがって、退職することを理由に損害賠償請求をしてくる行為は違法となりえます。応じる必要はありません。

・ 退職したら給与を支払わないと脅してきた
勝手に退職するのだから、最終月の給与を支払わないと脅してくる会社も少なくありません。しかし、給与の未払いも重大な労働基準法違反です。ひるむことなく退職を通知しましょう。


以上のケースはいずれも違法な行為となりえます。したがって、労働基準監督署などに通報すれば、会社が指導を受けたり逮捕されたりする可能性があります。

それでも、退職させてくれない会社の社員や経営者に対して、従業員が「退職したい。あなたたちが言っていることは違法だ」と通告することは現実問題難しいものです。そこで、会社が退職させてくれない場合は、ひとりで問題を抱え込まず、しかるべき人や機関に相談して問題を解決することをおすすめします。

3、違法に在職強要された場合の有効な相談先

先ほど解説したような違法な在職強要をされた場合は、専門家や公的機関に相談しましょう。在職強要の代表的な相談先がこちらです。

  • 労働局
  • 労働基準監督署
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会保険労務士


労働局や労働基準監督署は、企業が違法な雇用を行っていないか監視したり、労働者との間で起きたトラブルの解決をあっせんしたりする役割があります。

無料で相談に乗ってくれるので、相談先としてはハードルが低いでしょう。ただし、違法ではないと判断された場合は、対応してもらえませんし、公的機関の指導には強制力がありません。退職後、未払いとなってしまった給与などの請求を代行してもらうことはできないと考えてください。

公的機関以外にも、社会保険労務士、司法書士、そして弁護士が在職強要問題についての相談を受け付けています。相談を受け、アドバイスを行うだけであれば、どの資格保持者でも可能です。在職強要問題に詳しい事務所に相談するとよいでしょう。

ただし、その後、退職についての手続きなどを依頼するつもりがあるのであれば、すべての法律手続きの代理人が可能となる弁護士にするのがベストです。なぜなら、途中で相談先を変えると、最初からまた相談しなおす必要があります。たとえば未払い給与や残業代などを請求するときも、退職できる前から対応しておいたほうがよいこともあるかもしれません。

昨今は、資格を持たない「退職代行業者」が話題になっています。しかし、退職代行業者が弁護士などの資格を保持していない場合、「代理で交渉する権利がない」ことを理由に、会社側に主張される可能性があります。費用面などが気になるかもしれませんが、国家資格を持つ専門家に相談することをおすすめします。

4、違法な在職強要されたら弁護士に依頼すべき理由

在職強要をされた場合の相談先は公的機関や専門家など多数あります。しかし、退職問題については弁護士に相談することをおすすめします。

その理由は、前述のとおり、「すべての手続きを代行した上で、依頼者の利益を優先することができる」ためです。

前述したさまざまな公的機関は、企業の違法な雇用を監督指導する立場にはありますが、基本は中立です。相談者の代理人となって交渉してくれるわけではありません。退職する際のすべての手続きを代行することはないので、あなた自身が退職の通知や交渉を行う必要があります。

また、社会保険労務士は代理で交渉する権利を持っていません。したがって、退職について、あなたのかわりに会社と交渉することはできないのです。

司法書士は請求金額が140万円までであれば、交渉できますがそれを超えると対応できません。退職金の支払いを交渉することや、未払い残業代などを請求することになったとき、上限を超えてしまうと対応できなくなってしまいます。

その点、弁護士は、対応金額に上限はありません。また、労働審判や訴訟などの法廷闘争になった場合も代理人としてあなたのサポートをし続けることができます。

弁護士は、公的機関のように仲裁するのではなく、依頼者の利益を優先して行動します。したがって、「残業代の未払いも請求したい」などの退職に付随して請求したい項目も合わせて依頼することも可能です。

在職強要する会社の中には、在職強要だけでなく、残業代の不払いや給与の不払いなどの問題を抱えているケースが少なくありません。退職の際には、正当に給与などは受け取るべきですから、総合的に対応できる弁護士に相談することをおすすめします。

実際に、相談当初、相談者自身は在職強要だけが問題だと考えていたとしても、実際に詳細を聞けば聞くほど、残業代未払いやパワハラ被害などさまざまな問題が浮き彫りになるケースは意外なほど多いのです。その際も、弁護士であれば速やかな対応が可能となります。

在職強要の問題を抱えている方は、ひとりで問題を決めつけず、労働問題の解決実績豊富な弁護士に相談すべきと考えます。

5、まとめ

在職強要は、一部の場合を除き違法です。民法では退職の2週間前に通知さえすれば、会社側の承諾がなくても退職ができると規定していますので、在職強要する会社や勤務先の指示や主張を聞く必要はありません。

しかしながら、在職を強要する会社の多くが、常識や法律の話が通じることが少ないという問題点があります。つまり、従業員の立場で退職を通知するのは非常に大変なことでもあります。また未払いの給与や残業代を合わせて請求するのであれば、専門家への相談が必要不可欠です。

ベリーベスト法律事務所 広島オフィスには、退職トラブルに対応した実績が豊富な弁護士が、個別の状況に合わせた適切なアドバイスをいたします。ひとりで悩まず、気軽に相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています