会社が強制残業を強いてくる! サービス残業ではないか確認を

2024年07月22日
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会社が強制残業を強いてくる! サービス残業ではないか確認を

広島県が公表する「毎月勤労統計調査 令和5年平均の動き(概要)」によると、令和5年の広島県内の事業所における現金給与総額は、事業所規模5人以上で32万1396円(前年比1.2%減)、事業所規模30人以上で362534万円(前年比0.9%増)となりました。ただし、いずれも所定外給与(いわゆる残業代)は前年比で減少傾向にあります。名目上は減ったものの、強制残業をさせられている方からみると、世間的には残業が減っているとはにわかに信じがたいかもしれません。

理不尽な残業指示を受けている場合や、残業代が未払いとなっている場合には、お早めに弁護士にまでご相談ください。本コラムでは、会社の強制的な残業指示に従うべきかどうか、サービス残業を強いられている場合にはどのように対処すべきかなどについて、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。


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1、会社の強制残業指示が違法ではないケースとは

そもそも、労働者は、会社からの残業の指示には必ず従わなければならないのでしょうか?

大前提として、会社が労働者に残業を指示する場合には、以下の要件を満たす必要があります。

  1. (1)労働契約・就業規則に残業に関する規定があるケース

    労働者が働かなければならない時間は、原則として、労働契約や就業規則で定められる「所定労働時間」です。

    しかし、労働契約や就業規則において特に定めることにより、会社の指示によって、所定労働時間を超えて労働者を働かせる(=残業をさせる)ことができます。
    逆に言えば、労働契約や就業規則において、残業が発生することがある旨を定めていなければ、会社は労働者に対して残業を指示することはできないのです

  2. (2)36協定が締結されているケース

    労働基準法では、「1日8時間・週40時間」という「法定労働時間」が定められています(同法第32条第1項、第2項)。
    原則として、会社は、労働者に対して法定労働時間を超える残業を指示することはできません。

    ただし、「36協定」と呼ばれる労使協定を締結することによって、例外的に法定労働時間を超える労働(=時間外労働)を指示することができます(同法第36条第1項)
    時間外労働に対しては、後述するように、一定の割合以上の割増賃金を支払うことが必要となります。

2、残業の指示を拒否できる場合とは?

労働契約・就業規則・36協定などによって残業が許容されている場合でも、会社は労働者に対して、無制限に残業を指示できるわけではありません。

以下のいずれかに該当する場合には、労働者は会社の残業指示を拒否できます。

  1. (1)残業を拒否する正当な理由がある場合

    法令上、労働者に残業を拒否する権利が認められているケースが存在します。

    (例)
    • 妊産婦(労働基準法第66条)
    • 3歳に満たない子を養育する労働者(育児介護休業法第16条の8第1項)


    このように、法律の根拠にのっとった正当な理由がある場合には、労働者は会社の残業指示を拒否できます。

    また、体調不良などで就労が難しい場合にも、会社の残業指示を拒否できる可能性があります。

  2. (2)残業指示が濫用的なものである場合

    会社が労働者に対して残業を指示する権限を有しているとしても、その権限を濫用的に行使することは許されません
    たとえば、以下のような業務を内容とする残業の指示は、権限濫用として違法・無効になりうると考えられます。

    • 明らかに不必要な業務
    • 不当な動機・目的からなされている業務
    • 反社会的な内容の業務
    • 労働者の人格を蹂躙(じゅうりん)するような業務
    など


    もしこのような残業指示を会社から受けた場合には、速やかに、労働基準監督署や弁護士までご相談ください。

3、サービス残業の強制は違法! 残業代の支払いが必須

会社が労働者に残業を指示した場合、所定労働時間を超えて働いた時間に対しては、残業代を支払わなければなりません。
無給でのサービス残業を強制することは違法であり、労働基準法に基づく処罰の対象となります

残業代の計算方法は、以下のとおりです。

残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増率×残業時間数

<割増率>
法定内残業
(所定労働時間を超え、法定労働時間の範囲内の残業)
通常の賃金
時間外労働
(法定労働時間を超える残業)
通常の賃金+25%
(大企業の場合、月60時間を超える部分については通常の賃金+50%)
深夜労働
(午後10時から午前5時までの残業)
通常の賃金+25%
休日労働
(法定休日の残業)
通常の賃金+35%
時間外労働+深夜労働 通常の賃金+50%
休日労働+深夜労働 通常の賃金+60%
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4、会社に未払い残業代を請求する方法

会社にサービス残業を強制された場合には、未払い残業代を請求しましょう。

未払い残業代を請求する方法としては、主に、会社との協議・労働審判・訴訟の3つが考えられます。

  1. (1)まず弁護士に相談する

    未払いの残業代があることを発覚した場合、まずは労働基準監督署(労基署)に相談することを検討される方は少なくないようです。しかし、労基署は原則、違法性がある会社を取り締まる機関であり、個人が支払ってもらえていない残業代を取り戻すために、会社に対して直接的な行動をしてくれるわけではありません。

    したがって、少しでも早く、ご自身に支払われるべきだった残業代を取り戻したいのであれば、直接会社と交渉できる弁護士に対応を依頼することで、解決までサポートを受けることができるでしょう

    協議・労働審判・訴訟のいずれの手続きを選択すべきかについては、弁護士にご相談いただければアドバイスいたします。
    実際の未払い残業代請求の手続きも、弁護士が一括して代行いたしますので、依頼者に大きな負担がかかることはございません。

    サービス残業について未払い残業代を請求したい場合には、まずは、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

  2. (2)弁護士を通じて会社と協議する

    協議によって会社に支払いを認めさせることができれば、早期に未払い残業代を回収できる可能性もあります。

    会社に残業代の支払い義務を認めさせるためには、残業の証拠をそろえたうえで、労働基準法に沿って正確に残業代を計算することが大切です。
    弁護士のサポートを受けることにより、法的な根拠にのっとった適正な残業代の請求が可能となります

  3. (3)労働審判を申し立てる

    労働審判は、労務紛争を迅速に解決するために設けられた法的手続きです。
    裁判に近い構造で審理が行われますが、裁判官とともに労働審判員が参加している点や、非公開の手続きである点が特徴的となっています。

    労働審判は、原則として3回以内の審理で終結するため、訴訟よりも早期解決を期待できる点が大きなメリットです。
    ただし、労使のいずれかから異議申し立てが行われた場合には、自動的に訴訟手続きへと移行するため、強制力の点において訴訟に劣ります。

    労働審判に臨む際には、最初の期日までに主張と証拠書類を整理するなど、入念な準備を行うことが大切です

  4. (4)残業代請求訴訟を提起する

    訴訟は、裁判所の公開法廷において行われる、法律紛争を終局的に解決するための法的手続きです。

    残業代請求訴訟では、労使の双方が残業の有無などについて主張や立証を展開したのちに、裁判官がその内容を踏まえて判断を行います。
    最終的に裁判官が言い渡す判決が確定した場合、判決内容は、労使双方に対して法的拘束力を有します。

    訴訟は、強制力をもって残業代請求の問題を解決できる反面、期間が長期化しやすいことが難点です。
    事案によっては、判決確定までに1年以上かかるケースもあるため、徹底抗戦を覚悟する必要があります

    訴訟手続きは裁判所で行われる専門的な手続きであり、準備・遂行の各段階で慎重な法的検討が要求されるため、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

5、強制残業やサービス残業のお悩みは弁護士にご相談を

理不尽な強制残業やサービス残業など、会社との間で残業に関するトラブルを抱えている場合には、弁護士のサポートを受けることが早期解決へのポイントです

残業に関して不当な取り扱いを受けている場合には、会社の側に何らかの違法行為が存在する可能性があります。
弁護士は、あらゆる事情を総合的に分析したうえで、会社の違法行為の責任を追及して、労働者の方の権利を守るために尽力いたします。

弁護士にご相談いただくことで、資金力・マンパワー・専門的知識などで有利な会社に対して、対等な立場で法的な主張を行うことができます。
残業に関して、少しでも疑問や納得できない気持ちをお抱えの方は、お早めに弁護士にまでご相談ください。

6、まとめ

会社が労働者に残業を指示するには、労働契約または就業規則において、残業が発生する旨が規定されていなければなりません。
また、法定労働時間を超えて労働者を働かせるためには、「36協定」の締結が必要です。

労働者側としては、正当な理由があれば、残業の指示を拒否することが認められます。

仮に残業命令に従わなければならないとしても、会社が労働者に対して、無給でサービス残業を強制することは違法です。
もしサービス残業を強制された場合には、未払い残業代の請求を行いましょう。

ベリーベスト法律事務所は、理不尽な強制残業や違法なサービス残業など、会社の労働基準法違反から労働者の方を救うために、弁護士が中心となってサポートします。

広島県にご在住で、残業に関して会社から不当な扱いを受けている方は、お早めに、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスにまでご相談ください

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