内容証明郵便で残業代請求する方法と注意点とは? 弁護士が解説
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平成28年の広島県の事業所数を業種別にみると、「卸売業・小売業」が多数を占め、次いで「宿泊業、飲食サービス業」が続く結果となっています。当然、サービス業に従事している方も少なくありません。
サービス業はお客さま相手の仕事ですから、勤務時間通りに仕事が終わらないことも多いでしょうし、研修などがある職場もあります。しかし、その時間について労働時間として賃金が支払われていないケースも多くあるようです。そのような場合、どうすれば残業代を支払ってもらえるでしょうか?
今回は、残業代請求をする際によく利用する、内容証明郵便について、広島オフィスの弁護士が説明します。
1、残業代の請求には内容証明郵便が有効?
弁護士が残業代請求を行うときは、多くのケースでまずは「内容証明郵便」を利用します。まずは、そもそも内容証明郵便とはどのようなものなのかと、なぜ内容証明郵便を使うのかという基礎知識について知っておきましょう。
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(1)内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、郵便局で利用できる郵便サービスのひとつです。その名の通り、郵便局が送付した文書の内容を証明してくれるものです。郵便局で配達を依頼するほか、インターネットを通じて利用できるe内容証明郵便(電子内容証明郵便)があります。
内容証明郵便では、以下のものを証明してくれます。- 差し出した日付
- 差出人の住所と氏名
- 受取人の住所と氏名
- 郵便物の文書に記載されている内容
なお、この制度はあくまでも内容を証明するものです。内容証明郵便を使って残業代請求を行うときは、受取人が「いつ郵便物を受け取ったのか」を証明する「配達証明」を合わせて利用することをおすすめします。 -
(2)内容証明郵便を送るメリットは?
残業代請求を請求するために、なぜわざわざ内容証明郵便の形にする理由は、第三者にも残業代の請求をしたことがわかるように証拠を残すためです。
具体的には、内容証明郵便には次のような効力があります。・ 証拠としての効力
内容証明郵便は郵便局や電子内容証明郵便サイトを経由することにより、第三者のもとに「どのような内容を誰に送ったか」という証拠が残ります。
当事者間だけの場合、文書やデータを処分されると証拠がなくなってしまうものです。相手がそのような手紙は受け取っていないと主張すれば、証拠を示すことが困難となります。しかし、内容証明郵便を使って残業代請求を行うことで、「あなたが残業代請求を行った」という記録を残すことができます。
・ 心理的影響
メールや電話などよりも、証拠として残る内容証明郵便のほうが強く印象に残ります。正式な文書で請求されると、差出人の意志が固いことがわかり、無視することも心理的に難しくなる可能性が高まります。
・ 時効を遅らせる
残業代請求には時効があります。請求権は2年となっていますので、2年経過した残業代については時効となり、請求ができなくなります。
ただし、配達証明付き内容証明郵便を送ることで「何月何日に相手に残業代請求を行った」証拠を残すことができるため、最大6カ月間、この時効を遅らせることができるようになります。なお、示談がうまくいかなかった場合にこの6カ月間で裁判に移行すれば、その間も時効は中断されます。何もしなかった場合は時効が成立してしまいますので注意が必要です。
このように、内容証明郵便は大きな影響力を持ちます。裁判でも証拠として使われますので、軽々しい気持ちで送るわけにはいきません。本当に内容証明郵便で送るべきものなのか、しっかりと判断しましょう。
また、差出人の記載内容も記録されるので、自分にも影響があることを覚えておきましょう。
2、内容証明郵便の書く際の注意点
内容証明郵便を利用するためには利用条件を満たしている必要があります。自分で作成する場合は、しっかり確認して作成する必要があります。
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(1)内容証明郵便の作成におけるルール
① 同封できるもの
内容証明郵便で送ることができるものは文書のみです。次のような資料も一切同封できません。- 未払い賃金の請求書
- 他の証拠品
- あいさつ状など
② 使用可能文字
使える文字には次の文字に限られます。一般的な文字は使用可能なので、それほど気にしなくても大丈夫です。- 仮名文字
- 漢字
- 数字
- 英字(会社名など固有名詞のみ)
- 括弧
- 句読点
- その他一般的に記号として利用されているもの
③ 1ページあたりの字数や行数
内容証明郵便では1ページあたりの字数や行数に制限があります。この条件を満たしていないと発送できません。- 縦書き
1行20字以内、1枚26行以内 - 横書き
1行20字以内、1枚26行以内
1行13字以内、1枚40行以内
1行26字以内、1枚20行以内
④ 訂正
誤字などの訂正があれば、印鑑を持っていくことで郵便局の窓口で訂正できます。 -
(2)内容証明郵便の記載項目
請求書は必要項目を記入したうえで、簡潔にまとめましょう。ポイントは請求する意志の強さを示すことです。ただ請求するだけではなく、「支払いの意志がなければ法的な措置をとるつもりである」ということまで伝えます。会社としては支払ったほうが、ダメージが少ないと判断することも多いのです。
内容証明郵便は通常、次の内容を記載します。- 文書の表題(タイトル)
なくても構いませんが、相手に趣旨が伝わるものをわかりやすく書きます。 - 通知内容
残業代が未払いであること・未払い金額を請求すること・応じない場合は法的な措置をとることなどを記載します。 - 日付
- 相手の住所・氏名(法人の場合は住所・社名・代表取締役名)
- 自分の住所・氏名
書くべき内容について迷ったら、弁護士に相談することをおすすめします。 - 文書の表題(タイトル)
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(3)送付の際の注意点
内容証明郵便を送る際にはいくつか注意点がありますので、確認しておきましょう。
- 文書は3部用意する
内容証明郵便では発送するものと同じ内容の文書を3部用意する必要があります。1部は受取人に送られ、1部は郵便局に保管されます。もう1部は郵便局のはんこが押された状態で差出人の控えとして渡されます。 - 文書が2ページ以上ある場合はホチキスで留め、契印を押印する
- 封筒に相手の住所氏名、または社名と自分の住所氏名を記載する
- 配達証明をつける
内容証明郵便だけでは、受取人が受け取ったことは証明されません。受け取りを証明するにはさらに「配達証明」のオプションをつける必要があります。
なお、内容証明郵便を受け付けない郵便局があります。事前に日本郵政グループのホームページで発送できる郵便局をチェックしておきましょう。近くになければインターネットを通じて送る「電子内容証明郵便サービス」を利用してもよいでしょう。
内容証明郵便の作成が難しいときはもちろん、以降の交渉、審判手続き、裁判などを視野に入れているときは、弁護士へ依頼するほうがよいでしょう。
内容証明郵便の送付は残業代請求における最初の一歩になることが多く、ここで内容に問題があると、交渉が長引いてしまう可能性もありえます。万全を期すのであれば、まずは残業代請求問題を熟知している弁護士に相談することをおすすめします。 - 文書は3部用意する
3、まとめ
今回は内容証明郵便について書き方や注意点などを説明しました。内容証明郵便はメールや電話と違い、郵便局にも記録されるので、相手方にとって無視しにくい手段です。また、自分の意志の強さを示すことができるので残業代請求においては効果的な手段となるでしょう。
事前に証拠集めもしておけば、請求金額がはっきりして、会社側も請求に応じやすくなります。サービス業に従事している方は勤務時間が明確ではない、タイムカードがないなど、残業代計算の証拠集めが難しい傾向がありますが、証拠として認められる資料にはいろいろな種類があります。
広島で残業代請求をお考えであれば、ベリーベスト法律事務所広島オフィスへお気軽にご相談ください。内容証明郵便の書き方や証拠の集め方など、状況に適したアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています