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医師が病院に対して未払い残業代を請求する方法を解説

2018年09月13日
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医師が病院に対して未払い残業代を請求する方法を解説

医師の方には「人命を守る」という職業上の特性があるため、どうしても時間内に業務をきっちり切り上げることが許されにくく、時間外労働が多くなりやすいです。
しかし昨今では勤務医の超過労働が問題になっています。
医師が時間外労働や深夜労働、休日労働をしている場合、労働者である以上は残業代が発生するため、勤務先の病院に対して未払いの残業代を請求できる可能性があります。

今回は、医師が残業代請求をする際に必要な証拠や請求手順などを、弁護士が詳しく解説します。

1、広島市内の病院で違法残業!医師の残業が多くなる理由とは?

まずは、広島市内の病院において医師の違法残業が発生した事案をご紹介します。

  1. (1)広島市民病院の違法残業の事例

    広島においても医師の過重労働が起こったのは「広島市民病院」です。
    2017年11月、広島市民病院が勤務医に対し、労使協定の上限である月80時間を超えて残業をさせていたとして、広島中央労働基準監督署から是正勧告を受けています。
    報道によれば、広島市民病院では1ヶ月の残業時間を労使協定で最大80時間としていたものの、2017年4月は275人のうち38人が超過。最大で134時間に上る残業をおこなっていた医師もいたということです。
    過労死ラインと言われる100時間を超える残業が行われている実態が明らかになった広島市民病院ですが、その要因は、軽症から重症までの救急患者を受け入れており、その対応が長時間勤務につながったということのようです。

  2. (2)病院で医師の残業や過重労働が多くなる理由

    実際にこうした医師の過重労働は全国で起こっていますが、病院で時間外労働や過重労働が起こりやすいのは、以下のような理由によります。

    ●患者からの診療要求を拒めない(応召義務)
    1つは、医師が患者からの診療要求を拒めないことです。このことを「応召義務」といいます。
    医師法19条において「診療に従事する医師は、患者から診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、拒んではならない」とされているのです。これは、医療行為が人の命を救う重要な仕事であるが故の特性です。

    しかし医師にとっては、時間の区別なしに患者を受け入れなければならないことを意味し、時間外労働につながります。

    ●「残業は当たり前」と考える慣習がある
    2つ目は、病院などの医療関係者において「残業は当然」と考える慣習があることです。
    医師や看護師、技師などによる時間外労働が常態化しており、それらについていちいち残業代を支払わないことがむしろ一般的となっているので、誰も文句を言わずに時間外労働を重ねているのです。

    ●診療以外の仕事も多い
    医師の仕事は「診療」だけではありません。ただでさえ診療に忙殺されているのに、加えて以下のような仕事をしなければならないので、時間外労働によって対応するしかなくなります。

    • レセプト(診療報酬明細書)作成
    • カルテのチェック
    • 委員会活動
    • 会議
    • スタッフの教育や指導
    • 医師としてのスキルアップのための勉強や研究


    ●「労働時間」の意識が低い
    医師は、救急対応もしますし宿日直や深夜労働、休日労働も多い業種です。そこで「労働時間」の意識が低く、一般の労働者のように「時間外労働」「深夜労働」「休日労働」などの区別がないと思われていることがあります。
    また、医師は専門職なので「裁量労働制」が適用されて残業代が発生しないと思われているケースも多いです。

2、医師でも残業代請求できる?

以上のように、医師の場合には時間外手当なしの残業が一般的になってしまっていますが、それでも残業代請求できるのでしょうか?

まず、医師が「勤務医」や「研修医」であり、病院側と労働契約を締結している場合には「労働者」となります。そこで、労働基準法が適用されて、使用者側である病院や医療法人、企業に対して残業代を請求できます。つまり、医師でも「労働者」として時間外労働や深夜労働、休日労働をすれば「割増賃金(時間外賃金)」の支払いを受けられるのです。

また、医師の場合、「裁量労働制」が適用されると思われていることもあります。
裁量労働制とは一部の専門職の職種について、一定の要件を満たせば時間外労働が適用されなくなる制度です。しかし勤務医である医師や獣医師、歯科医師などの医療業種は「専門業種型裁量労働制」の対象に含まれていません。
よって、裁量労働制が適用されず、残業代を請求できます。

3、医師の残業代が支払われない4つのありがちなパターン

医師が病院から残業代を支払われていない場合には、以下のようなパターンが多いです。

  1. (1)固定残業代(定額残業代、みなし残業)が適用される

    まず、医師が病院に残業代を請求すると「固定残業代制度」が適用されるので残業代が出ないと言われるケースがあります。固定残業代制度とは、月々の給料に残業分まで含まれているので、別途残業代を支払わない制度です。「定額残業代」や「みなし残業」とも言われます。

    しかし固定残業代制度を採用するためには、固定残業代を採用していることとその内容について、就業規則によって労働者に周知するか、個別に雇用契約内で明示する必要があります。また、給料のうちいくらの部分までが基本給で、いくらの部分からが残業代なのかも明らかにしなければなりません。
    さらに、固定残業代が有効になるケースであっても、あらかじめ定められた時間を超えて労働したら、時間外の割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。
    以上のようなことから、「固定残業代が適用されるので一切残業代が発生しない」ということはあり得ません。

  2. (2)年棒制を理由にされる

    医師の場合「年俸制なので残業代が発生しない」と言われることもよくあります。
    確かに医師と病院が雇用契約を締結する際、年俸制を導入することも多いのですが、年俸制だからといって残業代が発生しないというものではありません。
    年俸制でも、あらかじめ予定された労働時間を超過して働いたら残業代を請求することができます。

    医師の高額年俸と残業代の問題について、高裁や最高裁の裁判例も出ているのでご紹介します。
    2018年2月22日、東京高裁において「医師の高額年俸に残業代が含まれるのか」争われた裁判の差し戻し審が行われました。東京高裁差し戻し審では、2017年7月に下された最高裁判決の内容を踏まえ「年俸に残業代が含まれない」と判断し、病院側に対して約550万円の未払い残業代の支払い命令を下しています。
    この事件では、一審と二審判決が「残業代は年俸に含まれる」と判断していましたが、最高裁判所は「残業代と他の賃金を判別できないのであれば、残業代を支払ったと言えない」と判断して、審理を差し戻していました。
    つまり、医師が高額な年俸を受け取っている場合でも、時間外労働をしたら残業代請求をできることが明らかになっているのです。

  3. (3)管理監督者と言われる

    医師が残業代を請求しようとすると、病院経営者側から、「医師は労働基準法上の『管理監督者』に該当するため残業代が発生しない」と言われるケースがあります。
    労働基準法上の「管理監督者」は労働者ではないので、割増賃金が適用されず、残業代請求できません。

    確かに医師は、看護師や技師、研修医などに対して指導教育をしたり指示を出したりするので、「管理監督」をしているように見えます。
    しかし、労働基準法上の管理監督者とは「経営者側」の人間であることを意味します。
    つまり、自分の労働時間について裁量を持っており、病院経営の重要な意思決定に参画していて、役職にふさわしい手当を受け取っている状況が必要です。
    単に周囲の人に指示を出しているというだけでは「管理監督者」にはならないので、大多数の勤務医や、ましてや研修医は管理監督者に該当せず、残業代請求できます。

  4. (4)宿日直勤務の場合

    医師は、宿日直勤務の多い仕事です。
    病院側からは、こういった時間が「労働時間」に入らないと主張される可能性が高いです。
    宿日直の場合、待機時間や仮眠時間があり、そういった時間には「労働」しているとは言えない可能性があるためです。

    しかし待機時間や仮眠時間であっても「使用者の指揮命令下にある」時間であれば、労働時間に入ります(最高裁判決平成12年3月9日。三菱重工業長崎造船所事件)。
    つまり宿日直勤務であっても、病院側の指揮監督下にあって何かあったらすぐに対応しなければならない緊張状態が続いているならば、労働時間と認められて残業代を請求できる可能性があるのです。特に、救急患者に対応したなど現実に労働した時間があれば、労働時間に入ることに争いはないでしょう。

    ただし宿日直の待機時間や仮眠時間については「断続的な業務(労働基準法施行規則23条)」に該当する可能性もあります。「断続的な業務」とは、業務が途切れ途切れに行われ、待機時間が長い労働のことです。
    断続的な業務に該当する場合、病院側が労働基準監督署において許可を受ければ残業代を支払わなくても許されます。

    医師の宿日直時間の取り扱いについては個別的なケースの検討が必要となるので、考え方が分からない場合には、弁護士までご相談ください。

4、医師が残業代請求するときに必要な証拠とは?

以上より、医師であっても病院に対して残業代を請求できる可能性が非常に高いですが、そのためには残業を証明するための証拠が必要です。
医師が残業代請求のために集めるべき証拠は、以下のようなものです。

  • タイムカード、業務記録、日報
    労働時間を証明するためにタイムカードや業務記録、日報の記録が必要です。
  • 医療記録
    医療記録により、いつからいつまでどのような業務に就いていたかを証明できます。
  • カルテ等
    カルテには日付が記載されるので、その時間に労働していた事実を立証できます。
  • 病院への入退所の記録
    病院に入退所する際、ICカードなどで時間を記録されるケースがあります。その場合には、そのような記録が残業代の証拠となります。
  • パソコンのログデータ
    パソコンにログインした時点からログオフした時点までは業務に就いていたと考えられるので、ログデータをとると残業時間の証明になります。
  • メールの送受信記録
    業務に関連してメールを送受信すると、送受信した時間が記録されるので残業代の証明となります。
  • 労働契約書
    残業代は就労条件との関係も深いので、病院側との労働契約書を用意しておきましょう。
  • 給与明細書
    毎月の給与明細書は未払い残業代計算の根拠となりますので、すべて捨てずにとっておきましょう。
  • 就業規則
    就業規則の内容も残業代発生の有無や金額に大きく関わってきます。コピーを入手しましょう。


5、病院や使用者に残業代を請求する方法や手順

医師が病院や使用者側に対して残業代(割増賃金)を請求するにはどのような手順で進めたら良いのか、順を追って説明します。

  1. (1)病院側と直接交渉する

    まずは病院に対して直接残業代が未払いになっていることを伝え、残業代を払ってくれるように請求しましょう。
    このとき、残業代発生根拠となる証拠資料を提示し、残業代の計算書を示して残業代がいくらになっているのかを明らかにする必要があります。
    話し合いによって残業代を支払ってもらうことができたら、労働環境も悪化せずそのまま病院勤務を続けやすいですし、早期に残業代の支払いを受けられるメリットもあります。

    病院側との残業代についての交渉を進めると、病院側から何らかの条件提示があり、どこまでの条件で折り合えば良いかわからない場合があるものです。そういったケースでは弁護士にご相談いただけましたら個別の状況に応じてアドバイスするので、お気軽にご相談ください。

  2. (2)内容証明郵便で請求する

    病院側に直接話を持ちかけても相手にしてもらえない場合には、内容証明郵便を使って未払い残業代の請求書を送ってみましょう。内容証明郵便には、未払い残業代の発生期間や金額を記載し、支払いがない場合には労働審判等の裁判所の手続きを利用する可能性があることも伝えると効果的です。これにより病院側にプレッシャーを与え、残業代がスムーズに支払われる可能性があります。

    内容証明郵便を送付するときには、弁護士名で送付すると、より強いプレッシャーを与えることができますし、医師の方がご自身で話し合うことが難しければ、交渉を弁護士に依頼することも可能です。

  3. (3)労働基準監督署に通報する

    病院側に残業代請求をしても、まったく対応してくれない場合などには「労働基準監督署」に申告することも考えられます。
    労働基準監督署は、域内の事業者が労働基準法を始めとした労働法規を遵守しているかどうかを監督する機関であり、刑事的な捜査権限も有しています。
    そこで労働者である医師が労働基準監督署に病院の違法行為について通報すれば、労基署が病院に対して是正勧告や指導をすることがありますし、悪質な場合には摘発・送検に発展するケースもあります。
    このことで、病院が未払い残業代の支払いに応じる可能性があるので、試してみる価値があると言えるでしょう。

  4. (4)労働審判を申し立てる

    労基署(労働基準監督署)に申請をしても状況が変わらない場合には、病院に対して「労働審判」を申し立てましょう。労働審判を利用すると、裁判所の労働審判員が間に入ってくれて、医師と病院が未払い残業代についての話し合いを進めることができますし、話し合いが成立しない場合には、「審判」によって裁判所から未払い残業代の支払い命令を出してもらうことも可能です。
    労働審判にかかる期間は平均して2ヶ月半くらいであり、訴訟と比べるとスピーディーな解決が可能ですし、最終的な解決率も高いので、ぜひとも利用すると良いでしょう。
    お忙しい医師の方の場合、弁護士に手続きを依頼していただきましたらほとんどすべての手続きを弁護士が代行できます。日頃の業務に負担をかけずに請求手続きを進められますので、ぜひともご利用ください。

  5. (5)通常訴訟で請求する

    労働審判をしても、当事者双方が決定内容に納得できなければ最終的な解決は不可能です。
    その場合には、通常の労働訴訟によって未払い残業代の問題を解決する必要があります。
    通常訴訟では、残業代の発生や金額について、証拠によって厳格に証明しなければならず、証拠がない事実は認められません。
    訴訟を有利に進めるためには法的な専門知識とノウハウが必要となりますので、弁護士に依頼しましょう。

6、病院や使用者への残業代請求権の時効は2年

医師が病院経営者側に対して残業代請求を行うときには「時効」に注意が必要です。
残業代には2年の時効があるので(労働基準法115条)、その期間を超えるともはや未払いの残業代を請求できなくなってしまうからです。
残業代の時効の起算点は、給与支払日です。早めに請求しないと、毎月の残業代請求権がどんどん時効消滅してしまいますので、心当たりのある方は、なるべく早期に対応を開始すべきです。

7、医師が病院や使用者に残業代を請求するときは弁護士にご相談を

一般的に、医師は長時間労働が当たり前の職業だと思われており、宿日直や深夜出勤、休日出勤をしても時間外手当が支払われていないケースが多いです。しかし医師も労働者の一種であり、法的には残業代請求権が認められます。

残業代請求をするときには、まずは残業代を正確に計算しなければなりませんし、残業代請求のための証拠が必要です。日頃忙しくしておられる医師の方は、ご自身でこういった作業を進めることが難しい例が多いでしょう。
そのようなとき、弁護士にご依頼いただけましたら正確に残業代を計算し、残業代請求に必要な証拠収集方法をアドバイスいたしますし、必要であれば病院側に照会して資料を取り寄せることも可能です。
労働審判や労働訴訟も代理して進めることが可能ですので、病院に対する残業代請求を検討されておられる医師の方がおられましたら、ぜひとも一度、弁護士までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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