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会社から解雇されたのに、離職理由が「自己都合」だった場合の不利益について

2020年10月20日
  • 労働問題全般
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  • 広島
会社から解雇されたのに、離職理由が「自己都合」だった場合の不利益について

広島労働局管内の労働基準関係法令違反をした企業(ブラック企業)として公表されたのは、平成30年12月1日~令和元年11月30日分で11社ありました。いずれも送検された事案なのでかなり悪質なものだと言えます。

このように広島県内にもブラック企業はあるわけですが、会社から解雇されたのにもかかわらず、離職理由には「自己都合」と書いてくるような企業もあります。なぜ、「会社都合」ではなく、「自己都合」と書いてくるのでしょうか、また、「会社都合」と「自己都合」で労働者に不利益はあるのでしょうか。

そこで、今回は、失業保険の受給条件や手続きを紹介すると共に、不当解雇として争う場合や未払い残業代を請求する場合の流れについてベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。

※公開:2020年04月08日、更新:2020年10月20日

1、失業保険の受給条件や手続きの流れ

失業保険は、雇用保険の被保険者が離職した場合、失業中の生活を一定期間保障し、新しい仕事先を早く見つけてもらうために支給されるものです。一般的に「失業保険」と言われていますが、正式には、雇用保険の「基本手当」と言います。基本手当を受給するためには、受給要件を満たす必要があります。

  1. (1)受給要件

    受給要件は3つあります。

    ①本人に就職する意思と能力があること
    失業保険を受給できるのは、働くことができる人で本当に就職活動をしている人です。したがって、働くつもりのない人や就職活動をしない人、病気、ケガ、妊娠などで働けないという人は、失業保険は受給できません。

    ②積極的に求職活動を行っていること
    仕事は待っていても来るものではありませんから、積極的に求職活動をしなければなりません。失業保険を受給するためには、積極的に求職していることを示す必要があります。具体的には、ハローワークに再就職の相談に行くことや、実際に求職の申し込みをすることが必要になります。

    ③離職日以前の2年間に被保険者期間が12か月以上あること
    「被保険者期間が12か月以上ある」とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金支払いの基礎となった日数が「11日以上」ある月が12か月以上あるということです。

    そのため、たとえば、パートなどで、賃金支払いの基礎となった日数が10日しかないような月があった場合、その月は1か月としてカウントされず、結果として1年間勤務していても、12か月の被保険者期間を満たさないことがあります。

    なお、「特定受給資格者」または「特定理由離職者」については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも受給できます。

  2. (2)受給手続き

    失業保険を受給するためには、管轄のハローワークに行き手続きをする必要があります。ハローワークに行く前に必要書類をそろえる必要があります。そろえるべき書類は以下のとおりです。

    1. ① 雇用保険被保険者離職票(退職した会社から発行してもらう)
    2. ② マイナンバーカード(マイナンバーカードを発行していない場合には、マイナンバー通知カードと運転免許証などの身元確認書類が必要)
    3. ③ 顔写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
    4. ④ 印鑑
    5. ⑤ 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
    6. ⑥ 雇用保険被保険者証


    書類がそろったら、ハローワークに行き書類を提出し、求職の申し込みをします。「雇用保険説明会」の日時について担当者から案内されるので、その日に再度ハローワークに行き、雇用保険受給者初回説明会に参加します。ここで、「失業認定日」が指定されます。

    その「失業認定日」にハローワークに行き、失業認定申告書を提出します。失業手当を受給するためには、月に2回以上、求職活動をすることが必要なので、認定日にそれが確認されれば、失業認定を受けることができます。

    退職の理由が、会社都合や正当な理由がある自己都合であれば、失業認定日から通常5日前後で、指定の口座に失業手当が振り込まれます。他方、正当な理由のない自己都合の場合、3か月の給付制限があるので、すぐには給付を受けられません。

    なお、その後は、4週間に一度、失業の認定をハローワークで受け、その5日後位に基本手当が振り込まれます。

    失業保険の申請期限は、原則として、離職した日の翌日から1年間です。その間に病気などで30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数だけ、受給期間を延長することができます。ただし、延長できる期間は最長で3年間となっています。

  3. (3)受給額

    失業保険で給付される1日あたりの金額(基本手当日額)は、「賃金日額」の50~80%(60歳~64歳については45~80%)の金額になります。年齢と賃金日額によって割合が細かく定められており、賃金の低い場合ほど高い率になります。

    「賃金日額」とは、1日あたりに換算した平均賃金で次の算式で算出します。

    賃金日額 = 退職前6か月の給与総額 ÷ 180日


    また、基本手当日額については、年齢ごとにその上限額が定められており、①30歳未満は6815円、②30歳以上45歳未満は7570円、③45歳以上60歳未満は8335円、60歳以上65歳未満は7150円となっています。

  4. (4)給付日数

    雇用保険の一般被保険者に対する求職者給付の基本手当の所定給付日数は、受給資格に係る離職の日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間及び離職の理由などによって決定され、90日~360日の間でそれぞれ決められます。

    倒産・解雇等により離職した人は、再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされているので、「特定受給資格者」として日数などが多くなっています。また、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職した者についても「特定理由離職者」として、一般の離職者に比べ手厚い給付日数となっています。

2、「自己都合による退職」と「会社都合による退職」の違いとは?

  1. (1)「自己都合退職」とは?

    自己都合退職は、労働者が希望して会社を退職することです。転職するために退職する場合や会社が嫌になって辞めるというのが典型例です。日本では解雇をすることが厳しく制限されているので、多くの退職者は、自己都合退職に当てはまります。その他、転居、結婚、介護、病気療養などのための退職も含まれます。

  2. (2)「会社都合退職」とは?

    会社都合退職は、会社の都合により労働者が退職を余儀なくされることです。会社の倒産や業績悪化に伴う人員整理のため会社から一方的に解雇される場合が典型例です。その他、退職勧奨や希望退職に応じた場合や、勤務地移転に伴い通勤が困難になった場合、何らかのハラスメント被害を受けた場合、勤務条件が労働契約時と著しく違う場合など、自分の意志に反して退職を余儀なくされたケースも当てはまります。

    ただし、解雇の場合であっても、懲戒解雇の場合には、労働者本人に帰責事由があるので、自己都合退職となります。

  3. (3)給付の違い

    自己都合退職か会社都合退職かによって、失業保険の給付内容が変わってきます。自己都合の場合には、失業保険の支給を受けるまでには、7日間の「待機期間」と3か月の「給付制限」(※)があります。
    これが会社都合の場合、7日間の「待機期間」だけで、3か月の「給付制限」(※)はありません。
    (※)令和2年10月1日以降に離職した方は、正当な理由がない自己都合により退職した場合であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が2か月となります。

    また、給付日数も会社都合退職よりも自己都合退職の方が少なくなります。10年未満の自己都合退職の給付日数は全年齢で「90日」なのに対し、会社都合の場合、5年以上10年未満であれば、45歳以上60歳未満で「240日」になります。

    このように、給付制限の点でも給付日数の点でも自己都合は会社都合に比べて不利になるのです。そのため、解雇なのに離職理由を「自己都合」とされた場合には、修正を求める必要があります。

3、「自己都合退職」を「会社都合退職」に変えることはできる?

事実関係として、離職理由が「会社都合」なのに「自己都合」と書かれているわけですから、正しい内容に修正できることは当然のことです。
問題は、会社が修正に応じない場合です。

雇用保険では、会社都合である「特定受給資格者」の条件として次の内容を定めています。

  1. ① 倒産に伴い離職した者
  2. ② 事業所において大量雇用変動の場合
  3. ③ 事業所の廃止
  4. ④ 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者
  5. ⑤ 解雇により離職した者
  6. ⑥ 労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
  7. ⑦ 賃金が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者
  8. ⑧ 賃金が、85%未満に低下したため離職した者
  9. ⑨ 一定基準を超える時間外労働が行われたため離職した者
  10. ⑩ 妊娠等を理由として不利益な取り扱いをしたため離職した者
  11. ⑪ 労働者の職種転換等に際して、必要な配慮を行っていないため離職した者
  12. ⑫ 期間の定めのある労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
  13. ⑬ パワハラやセクハラで離職した者
  14. ⑭ 退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者
  15. ⑮ 休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
  16. ⑯ 事業所の業務が法令に違反したため離職した者


したがって、これらに該当する場合には、会社都合と認められますので、労働者がハローワークに申し出ることで、自己都合から会社都合に変更してもらうことが可能です。離職理由が会社都合の「解雇」なのに「自己都合」と扱われたケースでは、⑤の解雇により離職した者に該当するので、解雇となる事実を証明できれば会社都合に変更してもらうよう請求した方がよいでしょう。

4、不当解雇や未払い残業代請求を争いたいときの流れ

会社都合の解雇であっても、そもそも解雇自体に納得がいっていないという場合、不当解雇として会社と争うということも考えられます。また、解雇は受け入れるとしても、残業代が支払われていなかったとして未払い残業代を請求したいということもあるでしょう。

①労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、労働関係法令が順守されているかを監督する機関で、企業に対して臨検を実施し、違反事実が認められれば是正勧告をするなどの指導を行っています。もし、会社から不当に解雇されたという場合には、管轄の労働基準監督署に相談に行くことが考えられます。もし、違反事実が認められそうな場合には、労働基準監督署が企業を臨検し、違反事実が認められれば、勧告等の措置をしてもらえる可能性があります。

ただ、是正勧告したとしても、企業がそれに従わなければ、解雇の効力を取り消すことはできないため、その場合には、最終的には裁判などをするしかありません。

②労働委員会によるあっせんを利用する
労働委員会または都道府県の労働局では労働問題に関してあっせんを行っています。このあっせんを利用するという方法もあります。ただ、あっせんはあくまでも話し合いの延長なので、相手が話し合いに応じる可能性が低い場合には、使えません。

③弁護士に相談する
弁護士に相談し、会社と交渉してもらうというのも有効な手段です。弁護士に相談したからといって、いきなり裁判に発展するわけではありません。弁護士は法的にどのような点が違法なのか整理した上で、会社に対して主張と交渉を進めていきます。労働者個人が主張しても相手にしないような会社であっても、弁護士から連絡が来ればきちんと応じる会社は多いものです。

④ 労働審判を申し立てる
労働審判とは、地方裁判所で行われる手続きであり、調停を試みたり、調停が成立しない場合には審判を行うことで紛争の解決を図る手続きです。裁判に比べ迅速な解決が期待できます。

⑤ 裁判
最終的決着がつかない場合には、裁判ということになります。裁判の場合には、基本的に弁護士に依頼した方がよいでしょう。厳格な手続きとなるため、解決までに数年を要することもあります。

5、まとめ

今回は、解雇されたのに、離職理由を「自己都合」とされた場合の不利益とそれを解消するための方策について解説してきました。

ブラック企業の場合、解雇なのに「退職願」を書かせる会社もあるようなので、退職について納得できないという場合には泣き寝入りせず、すぐに弁護士まで相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、労働問題について経験豊富な弁護士が在籍していますので、お困りの際はぜひお気軽のご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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