結婚相手の連れ子に相続させる方法や、実子との違いを広島オフィスの弁護士が解説
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厚生労働省が発表した人口動態統計特殊報告によると、広島県で平成27年に結婚した夫婦のうち、夫が初婚で妻が再婚の割合は6.9%、夫が再婚で妻が初婚の割合は10.1%、夫婦とも再婚の割合は10.1%となっています。
27.1%の夫婦はどちらかが再婚者であることから、結婚相手に連れ子がいるケースも今や珍しくはないでしょう。結婚相手の連れ子を実の子どものようにかわいがる中で、気になるのは相続の問題です。「自分が亡くなったときに相続権が発生するのか」「結婚相手との間に新しく子どもが生まれた場合は?」など疑問があるのではないでしょうか。そこで本コラムは、連れ子と相続の問題について、広島オフィスの弁護士が解説します。
1、連れ子に相続権はない
結論からいえば、配偶者の子どもである「連れ子」に法律上の相続権はありません。その根拠を確認します。
民法では相続できる者の範囲と順位を次のように定めています。
- 配偶者は常に相続人
- 第1順位……直系卑属(子ども、孫など)
- 第2順位……直系尊属(父母、祖父母など)
- 第3順位……兄弟姉妹
子どもは第1順位グループに属していることから、相続の法律においては配偶者とともに、もっとも優遇された立場にあります。しかし、連れ子は血のつながりがありません。したがって、法律上の子どもには該当しませんので、上記の相続人にはあたらないのです。
たとえ一緒に暮らし、愛情を注いでいたとしても、民法で定められている規定を覆すことはできません。
2、連れ子に相続権がないことで起きること
「配偶者は正当な相続人なのだから、いったん配偶者に財産が渡り、いずれは連れ子が受け取れば問題ない」と考える方もいるでしょう。しかし、他の権利者がいれば配偶者がすべて相続できるわけではありません。
相続割合について、主な組み合わせでは次のようになります。
- 配偶者と直系卑属……配偶者1/2、直系卑属1/2
- 配偶者と直系尊属……配偶者2/3、直系尊属1/3
- 配偶者と兄弟姉妹……配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
配偶者と子ども以外の者が相続することは、状況によっては厄介です。特に問題となりやすいのは、兄弟姉妹や甥姪にまで相続順位がまわってきたケースです。兄弟姉妹に対して今ある不動産などを現金化して渡す必要すらでてきます。連れ子とはいえ支え合って暮らしていた子どもではなく、ほとんど親交のない遠い親戚に一部の財産を渡すことになる可能性があります。
3、連れ子に財産を譲る方法
連れ子に財産を譲るには、主には3つの方法があります。
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(1)養子縁組を行う
連れ子と養子縁組をすることで法律上の親子となります。連れ子は養子縁組の日から相続権を有します。被相続人または連れ子の本籍地か、住居地を管轄する市町村役場に養子縁組届を提出します。なお、認知は血縁関係の事実を認める行為ですから、前提として血縁関係にある子どもに対して行うものです。
連れ子の場合は血のつながりはありませんので、ここでは養子縁組をすることが通常の方法になります。 -
(2)遺言書を残す
遺言書を作成し、連れ子に財産を譲る旨記載しておく方法です。親子関係を結ぶことで相続させる方法ではありませんが、連れ子は受遺者の立場として財産を受け取ることができます。
注意点としては、連れ子に遺贈する割合は法定相続人の遺留分を侵害しない範囲が好ましいでしょう。遺留分とは一定の法定相続人が、最低限の取り分を主張できる権利のことです。
たとえば「連れ子の○○に全財産を残す」と書いたとしても、法定相続人が遺留分を主張することは十分に考えられ、相続争いに発展しがちです。不要なトラブルを避けるためにも、弁護士などに相談し、最初から遺留分を侵害しない範囲の遺言をしておくことを検討してみてはいかがでしょうか。 -
(3)生前贈与、死因贈与
生前贈与は被相続人が存命のうちに財産を贈与することです。死因贈与は贈与者の死亡をもって効力が生じる贈与契約のことです。
いずれも相続権をもたない連れ子に対して財産を渡すことが可能です。ただし、一定額以上の贈与を行うと贈与税がかかります。さらに死因贈与を行ったときは「贈与」と名がつくものの相続税がかかることになります。
贈与税率と相続税率を単純に比べたときは贈与税率の方が重くなるものの、いずれも財産の額や受け取る者の状況に応じた優遇措置が設けられています。どちらがよいとは一概に言い切れない部分があるため、弁護士や税理士と相談しながらの慎重な検討を行うことをおすすめします。 -
(4)どの方法が適切?
養子縁組は法律上の親子関係を生じさせる方法なので、連れ子に財産を渡したい場合にはもっとも効率的だと考えられます。一方で、法律上の権利をもたせることで、他の権利者との相続争いに巻き込まれるおそれもあります。
単に連れ子にも一定の金銭を渡すことが主目的であれば、遺贈や贈与も選択肢としてあがります。法律上の親子となる意義はどこにあるのかも踏まえ、相続問題に対応した経験が豊富な弁護士などに相談しておく方がよいでしょう。
4、連れ子との養子縁組にまつわる疑問
ここからは、養子縁組についてもう少し掘り下げ、よくある疑問を解説します。
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(1)養子と実子の法定相続分は違う?
自分に実子がいた場合、連れ子との相続割合は異なるのでしょうか。
結論を言えば、養子縁組をした子ども(連れ子)と実子の相続分は同じです。
実子は、自分が親権者となって育てている場合もあれば、前妻が親権者となり育てている場合がありますが、いずれの場合も同様です。
現在の妻、養子縁組をした子ども(連れ子)1人、実子1人という状況で相続が発生したとすれば、現在の妻が1/2、養子が1/4、実子が1/4を相続します。
なお、前妻には相続権はありません。 -
(2)養子縁組に種類があるの?
養子縁組にも2種類あり、普通養子縁組と特別養子縁組といいます。
「普通養子縁組」は、実の親(生みの親)との親子関係を保ったまま養親(ここでは被相続人)とも親子関係を結ぶことです。連れ子の立場から見ると、実親からも、養親からも相続する権利をもちます。
「特別養子縁組」は、実親との親子関係を終わらせ、養親と新たな親子関係を結ぶことです。連れ子は実親から相続する権利を失いますが、養親から相続する権利をもちます。
ただし、連れ子はそもそも結婚相手が連れてきた子どもなので、特別養子縁組の趣旨である「父母による監護が著しく困難または不適当である」ことになじみにくいとされています。そのため、連れ子の場合の特別養子縁組は認められにくい傾向があり、普通養子縁組を結ぶケースが多いといえます。 -
(3)養育費が減ると聞いたけど本当?
連れ子が実の親から養育費を受け取っていた場合、養子縁組をすることで養育費が減額または終了することがあります。
養子縁組をしなければ連れ子の扶養義務は実の親のみにありますが、養子縁組をすれば被相続人にも扶養義務が生じるためです。もっとも、実の親が納得し、これまで通りの養育費を支払ってくれれば問題はありません。
養子縁組の事実を根拠に実親が養育費の減額や終了を請求してくると、その主張が認められることがあり得るという点に注意が必要でしょう。
5、まとめ
今回は結婚相手の連れ子と相続の問題、養子縁組の疑問などを中心に解説しました。連れ子との関係を曖昧にしておくと、いざというときに連れ子がつらい思いをすることがあります。「自分はまだまだ元気だからそのうち……」と先延ばしにするのではなく、できるだけ早い段階で弁護士をはじめとした専門家を頼り、対策しておくことをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでもアドバイスを行っています。連れ子と相続について疑問や悩みごとがあればお気軽に相談してください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています