遺言書は保管場所も重要! 相続人に見つけてもらえて改ざんされない保管場所は?

2019年09月20日
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遺言書は保管場所も重要! 相続人に見つけてもらえて改ざんされない保管場所は?

「終活」が浸透したこともあり、遺言書の作成は多くの方にとっての関心事項となっています。広島市にお住まいの方でも、まだまだ元気なうちにと先々のことを考えて遺言書を作成しようと考えておられる方も多いのではないでしょうか。

しかし、頭を悩ませるのは遺言書の内容だけではありません。親族に遺言書の内容を知られたくない方にとって、遺言書の保管場所も気になるポイントでしょう。そこで本コラムでは、遺言書の種類と適切な保管場所について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。

1、知っておくべき遺言書の種類

まずは遺言書の種類を確認していきましょう。遺言書でよく用いられる形式は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

「自筆証書遺言」は、本文を手書きで作成する遺言書です。特別な手続きはいりません。費用がかからず、思い立ったときに作成でき、好きな場所に保管できるというメリットがあります。ただし、法律上の要件を満たしていなければ無効となってしまう点や、改ざんや紛失のリスクがある点に注意が必要です。

他方、「公正証書遺言」は公証人のもとで作成し、公証役場で保管してもらう遺言方式です。法律実務に長年携わってきた公証人が確認してくれるため、形式の不備を予防することができ、確実に効力を発揮する遺言書を作成できます。遺言者が存命中は本人しか照会請求や閲覧をできないので、相続人に内容を知られるおそれもありません。2名の証人が必要であることや、費用がかかるなどの負担はありますが、確実かつ安全に遺言書を残す方法ことができます。

その他の遺言に「秘密証書遺言」があります。これは作成した遺言書の存在を公証役場で公証してもらう方法です。ただし、公証人が内容を確認するわけでも、保管をしてくれるわけでもなく、ただ「遺言書がある」ということを証明してくれるという遺言方式です。そのため、自筆証書遺言同様の形式不備や紛失改ざんのリスクは消えず、2名の証人が必要で費用がかかるなどの負担が発生するというデメリットがあります。そのため、あまり使われていないのが現状です。

2、遺言書の保管場所と作成のタイミング

ここではよくある遺言書の保管場所を紹介していきます。遺言方式によっては内容を知られる心配もないので、それぞれの特徴も併せて確認していきましょう。

  1. (1)自分で保管する

    自筆証書遺言や秘密証書遺言を自宅で保管するのであれば、保管場所として金庫やタンス、仏壇などが考えられます。しかし、家族に見つかりやすく、改ざんされてしまうおそれがある点は否定できません。

    だからといって誰も分からないような場所へ保管してしまうと、見つけてもらえない可能性があります。あなたに万が一のことがあって、遺言書が必要になったとき、相続人が遺言の存在をないものとして話し合いを始めてしまう懸念があるということです。そうなれば、せっかく遺言書を作成したとしても、あなたの遺志を反映してもらうことができません。

    これらの条件を踏まえると、自宅外で本人しか開けることができない銀行の貸金庫などが比較的おすすめできる自筆証書遺言や秘密証書遺言の保管場所といえるでしょう。銀行の貸金庫は契約者以外の人が簡単に開けることができず、厳重に管理されている保管場所です。ただし、故人の貸金庫を開けるためだけに「相続人全員の同意が必要になる」など、遺言書の早期確認という点で問題が残ります。

  2. (2)信頼できる人に預ける

    信頼できる相続人に預ける方法もありますが、その人に改ざんされるリスクのみならず、改ざんしなくても他の相続人からあらぬ疑いをかけられるリスクが考えられます。預けられた人の負担が非常に大きくなってしまいかねないでしょう。

    たとえば、親友などの第三者に預ける場合も、先に亡くなってしまう、遠方へ引っ越してしまう、紛失してしまうなど、必要なときにすぐ遺言書を確認できない可能性も否定できません。

    そのため、もっともおすすめなのは、遺言の作成と同時に遺言書の保管を弁護士に依頼してしまうことです。遺言書を作成するタイミングから弁護士に依頼して進めれば、遺言書に不備が残る可能性もありませんし、相続が発生した際、適切に処理してくれます。ただし、年配でかつ個人事務所の弁護士で、後継者がいないケースでは、遺言書が紛失してしまう可能性があることは否定できません。万が一のときにはどのように備えているのかについて確認したほうがよいこともあります。

    もし、弁護士に依頼せず個人で進めたいというのであれば、公正証書遺言をおすすめします。手間やある程度の費用がかかりますが、法律の専門家に作成してもらえる上、遺言書の原本を公正役場に保管してもらえるでしょう。

  3. (3)遺言書作成のタイミング

    遺言書の作成および保管のタイミングは、思い立ったときです。

    いつ亡くなるのかは誰にも分かりませんし、高齢になり認知症となることや判断能力の低下が起きることも想定できます。早いうちに動き出すことをおすすめします。

    遺言書は、何度でも書き直しや修正が可能です。しかし、まずは資産の洗い出しなどに時間がかかることがあります。したがって、とにかく遺言書の作成に着手することが大切です。

3、新しい保管場所

令和2年7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになります。

法務局で保管されるようになれば、遺言者の生存中は、公正証書遺言と同様に遺言書を閲覧できるのは遺言者に限られます。そのため、自筆証書遺言を生前に見られることなく、かつ確実に保管することができます。

また、法務局で保管される遺言については法務局の事務官の確認を受けるので、相続人が裁判所の検認手続きをする必要がなくなります。ただし、内容が遺留分などの法的要件を満たしているかどうかは別の問題です。そのため、形式だけでなく内容まで確実にしておきたい方は、弁護士などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。

また、相続人がこの制度を利用した事実を知らなければ意味がありません。遺言書を法務局に預ける場合は、家族にもその旨を伝えておくようにしましょう。

4、遺言書に書いておくべき内容は?

遺言書は故人の遺志に法的な効力をもたせるためのものです。そのため、何でも書けばよいというものではなく、「法定遺言事項」と呼ばれる項目をおさえることが大切です。

法定遺言事項には次のような項目があります。

  • 相続財産に関する事項:遺産分割の方法、割合の指定、遺贈、寄付など
  • 身分に関する事項:婚外子の認知、未成年者に対する後見人の指定など
  • 手続きに関する事項:遺言執行者の指定、祭祀(さいし)継承者の指定など


どのような事項を書くかは、財産や相続人の数など状況によって異なります。複数の財産がある場合や、相続が複雑になる場合は弁護士に相談するようにしましょう。相続問題に対応した知見が豊富な弁護士であれば、争いが起きてしまわないように配慮したり、不備がないように確認をしたり、税金面についてアドバイスできます。

また、各相続人に対する感謝の気持ちや遺言書を作成した理由などは、付言事項として残すことができます。法的な効力こそありませんが、相続人の争いを避ける効果や、思いを確実に伝える効果が期待できます。

5、遺言書の作成・保管前に弁護士へ相談を

仲のよい家族でも、相続トラブルが起きてしまうケースは多々あります。弁護士に相談すれば、トラブルを事前に回避できる内容の遺言書を作成できますし、形式不備で無効になるリスクもありません。

また、遺言書の作成には財産や相続人調査、戸籍謄本や不動産登記謄本などの資料収集など、慣れない作業がいくつもあります。しかし、弁護士に依頼することによって、正確な情報収集と書類作成をスムーズに進められます。他にも相続人の相続税申告手続きに役立つ「財産目録」の作成も依頼できます。

さらに、弁護士を「遺言執行者」に指定すれば、作成や保管だけでなく遺産分割の手続きまで一任することができます。隙のない遺言書を作成するためにも、状況によって適切な対応をしてくれる弁護士に相談することをおすすめします。

6、まとめ

せっかく遺言書を正しく作成しても、保管場所の選択を誤る、相続人が見つけられなかったり、改ざんを疑われたりとトラブルに発展してしまうことがあります。それでは作成した意味がありません。

だからこそ、遺言書を作成するときは、内容とともに保管場所についてもよく考えておくようにしましょう。自身の希望をしっかりと反映させ、なおかつ相続トラブルにならない遺言書を作成するのであれば、遺言書の作成から保管、執行まですべての流れを把握している弁護士に依頼することをおすすめします。

遺言書の作成や保管場所などでお悩みのときは、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでご相談ください。遺言書や相続の問題の知見が豊富な弁護士が、状況に適したアドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています