遺言書を勝手に開封するのはNG! 遺言書の検認と手続きを弁護士が解説

2019年09月03日
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遺言書を勝手に開封するのはNG! 遺言書の検認と手続きを弁護士が解説

相続の際に重要となるのが遺言書の有無です。

広島県の公表する人口動態統計によれば、平成29年の広島県内の死亡者は3万795人でした。中には相続トラブルに発展するケースも多くありますが、そのトラブルの大部分は法律要件を満たした明確な内容の遺言書を用意しておくことで避けられます。

そこで今回は、遺言書を開封する際の手続きである「検認」と注意点について広島オフィスの弁護士が解説します。

1、遺言書の種類

  1. (1)遺言書とは

    遺言書には「効力を発揮するときに作成者が死亡している」という事情があるため、遺言書を作成した本人に記載内容の意図や解釈を直接確認することができません。そこで、残された相続人の間で無用な混乱や争いが生じないように、遺言の方法や遺言書の形式は法律できちんと定められています。具体的には以下の3種類です。

    • 自筆証書遺言
    • 公正証書遺言
    • 秘密証書遺言


    これら以外の方法や形式で遺言書を残したとしても無効となります。通常の贈与などは生きている人の意思表示によってなされますが、遺言書は本人の死亡の時からその効力が生じます。そのため、有効となる要件も厳格に定められています。

  2. (2)遺言書の特徴

    それでは3種類の遺言書について、それぞれの特徴を解説しましょう。

    ① もっとも手軽な「自筆証書遺言」
    自筆証書遺言とは、その名の通り自筆の遺言です。いつ書いたかという日付、誰が書いたかを示す氏名、そして具体的な遺言の内容を全文自筆で書き、印を押します(民法第968条第1項)。自分ひとりで完成させられるので、もっとも手軽かつ簡便な遺言と言えます。パソコンやワープロで作成したものや手書きをコピーしたものは無効として扱われますので注意しましょう。
    ただし、自筆証書に添付する財産目録だけはパソコン等で作成することができることになりました。

    ② 厳格に作られる「公正証書遺言」
    公正証書とは、法務大臣に任命された「公証人」という準公務員が作成する公文書のことです。自分だけで作成する自筆証書遺言とは異なり、作成にあたり公証人のチェックが入ります。また、遺言の原本は公証役場で保管されるため、誤記や紛失などの心配がなくなるという利点もあります。ただし、相続財産の額に応じた作成費用や手続きの手間がかかります。

    ③ 遺言内容を伏せておける「秘密証書遺言」
    秘密証書遺言は、内容を秘密にしておける遺言です(民法第970条)。証人や公証人に内容を確認しなければならない公正証書遺言と違い、遺言書が開封されるまで本人以外は内容を知ることができません。また、本人だけに遺言内容をとどめておけるという点では自筆証書遺言も同じですが、秘密証書遺言は署名が自筆であれば、内容は代筆でも問題ありません。ただし、内容のチェックを受けない以上、不備があれば無効になるおそれもあることを知っておきましょう。

2、遺言書を確認するときに必要となる手続き

  1. (1)検認とは

    自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合、見つけたら家庭裁判所に申し立てを行い、検認を受けなければなりません。
    検認とは、遺言の存在と内容を相続人らに知らせ、遺言書の形式や内容を明らかにしておく手続きです(民法第1004条)。検認は、遺言書の偽造や変造を防ぐために行われます。あくまでも様式の確認であり、記載内容の有効・無効を確かめる手続きではありません。
    なお、公正証書遺言の場合は、あらかじめ公証人と証人によって形式や内容の真正がチェックされているので、検認は不要です。

  2. (2)検認の方法

    では、検認の方法を具体的なケースとともに解説しましょう。
    相続人が、亡くなった被相続人の部屋で自筆証書遺言を発見したとします。遺言に封がされている場合は、その場で開封しないようにしてください。封がされていなかった場合も、様式と内容が適切であれば遺言として効力を発揮します。
    発見した遺言書は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に検認手続きを申し立てる必要があります。たとえば遺言者の居住地が広島市だった場合、広島家庭裁判所(所在地:広島市中区上八丁堀1-6)への申し立てを行うことになります。申し立ての際には遺言検認申立書のほか、遺言者や相続人全員の戸籍謄本などの書類を用意しなければなりません。
    申し立てから1、2週間~1カ月ほどで、検認期日通知書が送られてくるとともに、家庭裁判所から電話連絡が入ります。そして検認の期日に申立人が家庭裁判所へ赴き、裁判官らが同席の上、遺言についてすべての事項が確認され、検認調書が作成されます。検認を終えたら、遺言書は検認済み証明書と併せて返却されます。これで検認は完了し、遺言を執行することができます。

  3. (3)検認をしなかったら罰則がある?

    もしも検認を行わずに遺言の執行や開封をした場合、5万円以下の過料に処せられます(民法第1005条)。そのため、勝手に封を開いて遺言書を見るようなことはせず、まずは家庭裁判所へ申し立てを行うようにしましょう。

3、遺言書に関する手続きを弁護士に依頼するメリット

遺言書の検認手続きは、家庭裁判所へ問い合わせれば自分たちだけでも進めることが可能です。しかし、相続税の納税期限や相続放棄の熟慮期間が迫っていたり、相続人同士で争いが生じていたりする場合は、スムーズに手続きを行うために弁護士に相談することをおすすめします。先述した通り、検認手続き自体は遺言の有効性の判断とは別なので、遺言が有効かどうかを知りたい場合も弁護士に聞いてみるとよいでしょう。

4、まとめ

今回は遺言書の種類や検認手続きの流れ、注意点について説明しました。自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、遺言の開封や執行前に家庭裁判所での検認手続きが必要であり、適切に手続きを行わないと罰則を科せられます。相続が開始すると、熟慮期間や相続税の支払期限などの時間的な制約もあり、さまざまな手続きや調査を速やかに進めなければなりません。遺言書を見つけた後にどうすべきかがわからない、期限が迫っていて早急に確認したいといった事情がある方は、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士にご相談ください。検認申し立ての手続きや遺言の有効性チェックなど、迅速に法的なサポートをいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています