ごみの不法投棄でまさかの逮捕! 初犯なら罰金で済むのか?
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産業廃棄物はもちろん、粗大ごみを捨てるのにもお金がかかる世の中なので、ついどこかに捨ててしまいたいと思う気持ちはわかります。しかし、それをしていたら、街中がごみだらけになり大変なことになってしまいます。また、家庭ごみについても決められた日に分類に従って所定の場所に捨てなければなりません。これを無視して不法投棄をすれば法律で処罰されます。
「ゴミ捨てくらい」と思われるかもしれませんが、悪質な場合には、逮捕されることもあります。自治体では、分別を守らない違反者について、ごみ袋を開封して手作業で紙片などかき集めて、個人を特定する作業を行っているところもあります。
今回は、不法投棄とはどのような場合をいうのか、不法投棄で逮捕された場合、その後どうなるのかなどついて、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。
1、不法投棄とは
不法投棄とは、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に違反して定められた処分場以外に、廃棄物を投棄することをいいます。廃棄物とは、「ごみ・粗大ごみ・燃えがら・汚泥・糞尿・廃油・廃酸・廃アルカリ・動物の死体・その他汚物・その他不要物であって、固形状又は液状のもの」を言います。
山中、海、川、道路、空き地、私有地などの廃棄物を捨てる場所と決められていない場所にごみを不法に捨ててしまうと廃棄物処理法違反となり、罰則の適用があります。悪質な場合には、逮捕されてしまうこともあります。
個人としては、決められた場所に捨てなければならない家庭ごみを適当な場所に捨ててしまうという行為が該当します。隣のマンションのごみ置き場にごみを捨てるなどの行為も含まれます。また、不要になった粗大ごみを車に積んで捨てに行くなどの行為も不法投棄になります。最近はいたるところに防犯カメラがあるので、後日、警察から呼び出しを受けるということもあります。
業者で多いのは、廃品回収として個人からお金をとって粗大ごみを回収しておきながら、その粗大ごみを山中などに捨てるという行為です。その他は、事業で出たごみは産業廃棄物として有料で処分しなければなりませんが、それをせずに公園などに捨てたり、解体業者が解体で出たごみを空き地に捨てたりするなどの行為です。
2、不法投棄の量刑について
不法投棄をした場合、廃棄物処理法違反となります。個人の場合と法人の場合とで刑罰の種類が違いますので、個別に見ていきます。
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(1)個人の場合
個人が不法投棄をした場合、1000万円以下の罰金若しくは5年以下の懲役またはその併科となります(廃棄物処理法第25条第1項第14号)。なお、未遂であっても処罰の対象になります。不法投棄の程度にもよりますが、逮捕されることもあります。
また、不法投棄を実行しなくても、不法投棄を目的として廃棄物を収集したり、運搬をしたりしただけで処罰の対象となります。この場合、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金または併科となります(廃棄物処理法第26条第6項)。 -
(2)法人の場合
法人が業務上で関わる産業廃棄物を不法投棄した場合、法人に対して3億円以下の罰金となります(廃棄物処理法第32条第1号)。廃品回収業者がお客から廃棄処分代としてお金を取っておきながら、そのごみを山中などに放棄した場合が典型例です。
たかがごみ捨てと思われるかもしれませんが、不法投棄の罰則は意外にも重く、逮捕や懲役刑ということもあり得ます。
3、逮捕された場合
不法投棄をした場所、不法投棄したごみの量、不法投棄をしてきた期間などにより、悪質と判断された場合、逮捕されることも十分にあり得ます。不法投棄で逮捕された後の流れは以下のようになります。
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(1)逮捕
不法投棄の場合、不法投棄されやすい場所というのがあり、そこに警察が張り込んでいて、ごみを不法投棄した瞬間、現行犯として逮捕されるということがあります。それ以外は、不法投棄された現場から足取りを追って、犯人を特定し、後日、裁判所で令状を取って通常逮捕となります。
警察に逮捕後、警察は48時間以内に事件を検察庁に送致しなければならないので、厳しい取り調べが行われます。この間は、原則として弁護士以外との接見はできません。はじめて逮捕されると精神的に非常に不安になりますし、その後どうなるかなど聞きたいこともたくさんあると思います。できるだけすみやかに弁護士に接見に来てもらうようにすると良いでしょう。
弁護士は、知り合いがいればその人に依頼してもいいですし、知り合いがいなければ当番弁護士制度というのがあるので、警察官に当番弁護士を呼んでほしいと依頼してください。当番弁護士は初回の接見は無料なので、費用を心配する必要はありません。 -
(2)検察への送致
事件が検察に送致されると、次は検察から取り調べを受けることになります。検察からの捜査は送致後24時間以内と決められています。その間に、検察官は、起訴するか、勾留請求するか、釈放するかを決めます。
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(3)勾留
検察官から裁判所に対して勾留請求がなされ、勾留が認められると、原則10日間勾留されます。さらに捜査が必要な場合には、勾留延長の請求がなされ、それが裁判所に認められるとさらに最大10日間の延長が認められます。
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(4)起訴
検察官が起訴相当と判断した場合、起訴され刑事裁判がスタートします。起訴されると検察官の請求により裁判所が許可すれば、起訴後勾留がスタートします。保釈請求がなされない場合、起訴後勾留は2ヶ月間で、その後1ヶ月単位で更新されます。特に期限はなく、裁判が続く限り勾留が続きます。
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(5)裁判
刑事裁判では、検察官が犯罪事実について立証を行い、求刑を行います。被告人の弁護士は、検察官の立証に疑義を持たせるような弁護活動や、被告人に有利になるような情状証拠を提出してできるだけ軽い刑になるような弁護活動を行います。審理が終わると、有罪か無罪の判決が言い渡されます。
4、弁護士に依頼すべき場合
不法投棄で逮捕された場合は、迷わず弁護士に依頼すべきです。逮捕中は家族でも面会はできないので、弁護士が唯一の相談相手になるからです。逮捕中に注意すべき点や今後の流れについて説明を受けておくことで精神的にだいぶ楽になるはずです。
警察に逮捕された後は、検察庁に送致され基本的に勾留されますが、この間、弁護士が付いていれば、不法投棄事案において起訴されないようにするため、常習性がないことや悪質性がないことなどを検察官に迅速に示し、不起訴になるよう活動します。身柄が拘束されている場合、自分自身でこれら情報を収集することはできないので、一刻も早く弁護士に依頼して動いてもらうことが重要になります。
通常は、逮捕から最大23日身柄が拘束されて、起訴か不起訴か決定されます。不起訴になるか略式起訴の場合には釈放されます。一方、残念ながら公訴提起された場合には、その後、基本的に起訴後勾留がはじまりますので、身柄拘束が続きます。
起訴された場合には、99.9%が有罪になります。長い身体拘束は精神的につらいものですが、弁護士が付いていれば、保釈されるよう弁護士から裁判所に請求します。保釈の場合には保釈金が必要になりますが、この保釈金は、逃走などを防止する担保として納めさせるものなので、逃走などをしなければ後日返還されます。
裁判が始まった後は、情状証拠を提出して、できるだけ罪が軽くなるよう弁護します。罰金刑と懲役刑では大きく異なりますし、懲役刑でも執行猶予が付けば、事実上普通の生活に戻れるので、しっかりとした弁護活動を行います。
なお、ごみの不法投棄くらいで実刑になることはないと思われるかもしれませんが、不法投棄した廃棄物の量が多く、長期間に及ぶような場合、検察官が公判請求する可能性が高くなります。略式起訴ではなく、公判請求する場合、求刑は懲役となると考えられますので、実刑判決ということもあり得ます。
その他、不法投棄に不随する犯罪としては、他人の敷地に無断に入り、不法投棄している場合には「建造物侵入罪」、道路にゴミを捨てた場合は「道路法違反」、川にゴミを捨てた場合は「河川法(河川法施行令)違反」など、罪が重なることもあります。そうすると、実刑になる可能性も高まります。
5、まとめ
今回は、不法投棄とはどのような場合をいうのか、また、ごみを不法投棄して逮捕されてしまった場合、その後どうなってしまうのかについて解説してきました。結論として、本人が罪を認め、真に反省している場合には、初犯なら不起訴か、起訴される場合でも略式起訴で罰金ということになるでしょう。
しかし、ごみの量が多かったり、長期間にわたり不法投棄していたりしたような場合には、初犯であっても実刑ということもあり得ます。
刑事弁護は、身柄拘束後、迅速に弁護活動することが重要になりますので、もし、不法投棄で逮捕されたという場合には、すみやかに弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所には、刑事弁護の経験が豊富な弁護士がおります。お困りの際は、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスにご用命ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています