自首すると罪が軽くなる? 自首と出頭の違いを広島市の弁護士が解説

2019年11月14日
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自首すると罪が軽くなる? 自首と出頭の違いを広島市の弁護士が解説

広島県警察が発表した平成30年の犯罪統計資料によると、平成30年に検挙された刑法犯は6182件ありました。広島県内だけでも多数の犯罪が発生しており、日々多くの犯人が取り調べを受けています。

すでに罪を犯してしまった方にとって気になるのは、逮捕されて有罪になった場合の罪の重さでしょう。まだ逮捕されていないのであれば、「自首して罪が軽減するなら自首した方がよいのでは」と考えるのではないでしょうか。

そこで、本記事では自首と出頭の違いや自首すると罪が軽くなるのか、など自首に関するさまざまな疑問を解消すべく広島オフィスの弁護士が解説します。罪を犯して、逮捕されていないものの今後の流れに不安を感じている方は参考にしてください。

1、自首と出頭はここが違う

まずは、自首と出頭の違いを解説します。両者は似た言葉で、日常生活では区別することは少ないかもしれません。しかし、罪を犯した方にとっては大きな違いがあります。

  1. (1)自首は事件が発覚前に捜査機関に罪を申告すること

    自首とは、事件の存在を捜査機関が知る前に、捜査機関に本人が自発的に罪を告白することを指します。

    たとえば、酔っ払って店舗の看板を破壊したものの、警察に通報されていない状態で、警察に「あのお店の看板は私が壊しました」などと申告するのが自首です。看板の所有者が看板を壊されたことを知っていても、捜査機関に通報していなければ、自首になります。

    刑法では自首は刑罰を軽減できる可能性がある行為とされています。

  2. (2)出頭はすでに警察・検察に知られている事件の犯人として申し出ること

    出頭は、自首とは異なり「すでに警察や検察が事件を知っている状態」で犯人であることを申し出ることをいいます。

    深夜に店の看板を壊された店舗のオーナーがあなたの犯行だと警察に通報したあとに、「私があのお店の看板を壊しました」と警察に申し出たとしましょう。それは「出頭」にあたります。

    刑法では出頭しても罪が軽減されるとは規定していません。ただし、罪を犯したにもかかわらず逃げ続けた末に逮捕されるよりは、裁判官や検察官の心証はよいといえるでしょう。

2、自首すると罪は軽くなるのか

自首すれば、罪が軽減されることがあると刑法に規定されています。まずは、自首などについて規定している刑法第42条の条文を確認してみましょう。

「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その罪を減軽することができる」

刑法には、しっかりと罪を減刑できると明記されています。でも、どれほど減刑されるのかは記載されていません。また、「罪を減刑することができる」としており、必ず減刑されるとも記載されていません。

自首した事件について、罪を軽くするかどうかは一部の犯罪を除いて裁判官の裁量に任せられています。任意で減刑になりますので、必ず、減刑されるわけではないことは留意しておきましょう。もちろん、逃亡してから逮捕されるよりも、メリットは多いのは確かです。

3、自首したあとはどうなるのか

自首したあとはどうなるのでしょうか。逮捕された場合と、在宅事件になった場合の2パターンにわけて解説します。

・ 在宅事件になった場合
勘違いしている方も多いようですが、逮捕は刑罰ではありません。したがって、すべての罪を犯した方が全員逮捕されるわけではないことを知っておきましょう。

逮捕されるのは、「逃亡の恐れがある」、「住所不定である」、「証拠隠滅の恐れがある」などの条件を満たしている場合のみです。

罪を認めていて、定住所があり、サラリーマンである、身元引受人がいる、などの場合は逮捕する必要はないと判断されることもあります。逮捕されなかったからといって、無罪になったわけではなく、捜査や取り調べは随時行われます。

これを「在宅事件扱い」と呼ばれています。在宅事件扱いになった事件は、警察の捜査ののち、検察に事件が引き継がれ、検察が所定の捜査を行ったのちに、起訴・不起訴が判断されます。

起訴されれば刑事裁判が開かれます。不起訴になれば前科はつきません。在宅事件扱いの場合は、刑事裁判が開かれている最中も身柄が拘束されることなく、会社や学校に通うことができる可能性が高いでしょう。

・ 逮捕された場合
前述の条件を満たせず、証拠隠滅の恐れがある、などと警察が判断した場合は逮捕されます。

逮捕されると警察によって最大48時間の身柄拘束を受けます。その間は捜査官による取り調べが続きます。所定の時間が経過すると、検察に事件は引き継がれ、検察官が取り調べ等を行います。検察官は、24時間以内に勾留の必要性を判断します。勾留が必要と判断されたら、その後最大20日間、留置場や拘置所などに身柄が拘束されることになるでしょう。

勾留期間が終わるまでに検察官は「起訴・不起訴」を判断します。なお、公判請求となった場合、保釈が認められない限り、刑事裁判が完了するまで身柄の拘束が続きます。数ヶ月にわたって帰宅すらできなくなる可能性があります。

・ 刑事裁判が開かれたら有罪はほぼ免れない
逮捕されたとしても在宅事件扱いとなっても、起訴されて刑事裁判で裁かれたら有罪を免れることは非常に困難です。

日本の刑事事件の有罪率は99.9%で、起訴される=ほぼ有罪と考えてもよいでしょう。有罪率がこれほどまでに高い理由は、検察は「確実に有罪にできる」と判断した事件しか起訴しないからです。

その反面、起訴される割合はそれほど高くなく、平成28年に起訴された割合は全体の33.4%です。罪を犯した方は、刑事裁判での無罪を目指すのではなく、起訴猶予や不起訴といった処分を目指していくケースがほとんどです。

4、自首のメリットと弁護士ができること

次に自首のメリットと、自首の前に弁護士に相談するメリットを解説します。

  1. (1)減刑される可能性がある

    自首の大きなメリットは、減刑です。刑法に明記されているように、自首することで減刑される可能性があります。懲役刑が短くなる、罰金が減るなどの効果が期待できます。

  2. (2)逮捕されない可能性がある

    前述どおり、逮捕されてしまうと長期にわたって身柄の拘束が続くことがあります。社会生活に多大なる影響を与えてしまう可能性は否定できません。

    しかし、自首することで罪を認めていることなどから「逃亡や証拠隠滅の可能性がないため、逮捕の必要性がない」と判断され、在宅事件扱いとなる可能性が高まります。

  3. (3)勾留されない可能性がある

    たとえ逮捕されたとしても、自首をしていることからその後の勾留は回避できる可能性があります。

    逮捕されても勾留されなければ身柄の拘束は3日間ですみます。3日であれば、病欠等と連絡すれば会社や学校を休んでも怪しまれることはありません。罪を犯したことを知られたくない方にとっては大きなメリットといえます。

  4. (4)突然自宅や会社に警察が来る恐れから解放される

    罪を犯して、自首をしていない状態では「いつ逮捕されるのか」、「いつ事件が露見するのか」と毎日不安な思いを抱えて暮らすことになります。 警察や検察に事件が発覚し、捜査のあとにあなたにたどり着いた場合、逮捕状を請求後、自宅や会社に警察官が訪問してきて逮捕に踏み切ることがあります。もし、それが他人の目にふれてしまったら、逮捕された事実があっという間に拡散されてしまい、社会生活に大きな影響を与えるでしょう。 しかし、自首をすれば自宅や会社に警察等の捜査機関が訪れる可能性はほとんどありませんので、日常生活を守ることができます。

  5. (5)弁護士に相談することで逮捕・勾留の回避確率が高くなる

    当事務所では、自首の前に弁護士に相談することを強くおすすめしています。

    なぜならば、弁護士に事前に相談して自首に同行してもらうことで、精神的な安心感を得るとともに逮捕や勾留の可能性をさらに低減できるためです。警察は「逃亡」や「証拠隠滅」を恐れて逮捕に踏み切ります。しかし、弁護士が同行することで、逃亡や証拠隠滅などの恐れが低いと判断される可能性が高いと考えられます。

  6. (6)被害者がいる場合は示談交渉に早期に取りかかれる

    まだ捜査機関が事件を把握しておらず、ご本人が被害者を特定できていれば被害者との示談交渉も可能です。自首前に示談が成立すれば、被害者が被害届や告訴状の提出をしないよう依頼できます。したがって、逮捕もされず前科がつくことなく事件を解決できる可能性もあるでしょう。

    ただ、被害者が特定できていなければ、示談はできません。すべての事件において自首前に示談交渉ができるわけではありません。

5、まとめ

「自首」とは、警察や検察に事件が露見していない状態で、捜査機関に罪を申告することです。自首には減刑される可能性があるという大きなメリット以外にも、逮捕や勾留を回避できる可能性があるなどのメリットがあります。また自首の際に弁護士に相談することで、示談交渉に早く取りかかったり、自首の際に同行したりすることも可能となります。

自宅や会社に、突然警察が訪れる恐怖と戦いながら暮らすことは非常につらいものです。まずは弁護士に相談して今後のベストな対応についてアドバイスを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは自首や出頭についての相談を承ります。ひとりで悩まず、まずはご連絡ください。親身になってお話を伺い、最適な対処法を助言します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています