保釈の条件は? ご家族が逮捕されたときに知っておきたい手続きについて
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平成30年、広島高等裁判所管内の全地方裁判所では、合計2724件の刑事事件が新たに起訴されています。
刑事事件で逮捕されてしまった場合、まず目指すべきは早期の釈放ですが、刑事裁判になることが避けられない場合は、保釈を目指すことになります。ところが、保釈を受けるために身柄を拘束された本人ができることは限られます。しかし、ご家族などが適切な対応をとることにより、逮捕された本人の今後は大きく変わる可能性があります。
そこで、保釈の基本的な考え方や保釈を受けるための条件、および身柄を拘束された被告人が保釈されるための最適な対処法を、広島オフィスの弁護士が解説します。
1、保釈とは?
保釈とは、保釈金の納付や住居の指定などを条件に、刑事事件により起訴され刑事施設などに拘束(勾留)されている被告人の身柄を解放することです。
刑事事件で逮捕されて裁判にかけられることになると、逮捕後、最大23日間の身柄拘束を受けたあと刑事事件の被告人として起訴され、裁判にかけられることになります。このプロセスにおいて、保釈は起訴されたあとの身柄解放措置です。
なお、保釈はあくまで暫定的に身柄を解放する措置に過ぎません。したがって保釈は、無罪放免あるいは処分が終わるものではありません。保釈されたとしても、その後の住居や行動には制限が付けられることが一般的であり、公判期日には必ず出廷する必要があります。
そして、裁判の結果が懲役や禁錮の実刑判決になったときは、保釈は失効し再び刑事施設へ収監されることになります。つまり、保釈されたとしても裁判で無罪または執行猶予付きの判決にならない限り、身体拘束からの解放は一時的なものにすぎないのです。これが、いわゆる不起訴処分による釈放と大きく異なるポイントです。
2、保釈を受けるメリット
裁判の結果次第では再び収監されてしまう可能性があるとはいえ、保釈を受けることには以下のようなメリットがあります。
もし起訴が避けられない場合は、できるかぎり早期の保釈を目指すべきでしょう。
- 刑事施設よりも家庭にいることで、精神的・肉体的安定を得られる。
- 基本的に保釈期間中も働くことができるため、勾留が継続することによる経済的な影響を抑えることができる。
- 早期に職場へ復帰することにより、就業を継続できる可能性が高くなる。
- 弁護士との打ち合わせなど裁判への準備に、十分な時間を確保することができる。
- 刑の酌量を受けるために重要な、被害者への賠償金や示談金などの準備が自らできる(ただし、被害者への接触は基本的に禁止)。
- 実刑が避けられない場合でも、身辺整理や家族をケアする時間が確保できる。
3、保釈の種類とは?
刑事訴訟法では、保釈について3つの種類を定めています。
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(1)権利保釈(必要的保釈)
保釈を請求することができる人を、保釈請求権者といいます。保釈請求権者には、被告人本人・弁護士・被告人の配偶者や直系親族、兄弟姉妹、保佐人が該当します(刑事訴訟法第88条)。権利保釈とは、このような保釈請求権者の請求に基づく保釈のことです。
刑事訴訟法第89条では、保釈請求権者から被告人を保釈する請求があった場合、被告人が以下6つの事由に該当しない限り裁判所は保釈を認めなければならないと規定しています。① 死刑、無期または法定刑の刑期の下限が1年以上の懲役または禁錮に当たる罪を犯した場合
② 過去に、死刑、無期または法定刑の刑期の上限が10年を超える懲役または禁錮に当たる罪について、有罪判決を受けたことがある場合
③ 常習として、長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯した場合
④ 罪証を隠滅するおそれがある場合
⑤ 被害者や証人あるいはその親族などに対し、何らかの危害を加えたり畏怖させる行動をとるおそれがある場合
⑥ 氏名や住所が不明な場合
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(2)裁量保釈(職権保釈)
裁量保釈(職権保釈)とは、その名の通り裁判所が職権で認める保釈のことで、刑事訴訟法第90条に規定されています。
実際のところは、被告人が上述した刑事訴訟法第89条に規定する保釈を認めない6つの事由のいずれかに該当しているなかで保釈の請求があったとき、裁判所が被告人の状況などを総合的に勘案したうえで保釈を認めるときに裁量保釈が適用されます。
したがって、保釈請求権者による請求がないとき、裁量保釈されることはまずありません。 -
(3)義務的保釈
刑事訴訟法第91条では被告人の勾留による拘禁が不当に長くなったとき、裁判所は、保釈請求権者の請求または職権で、勾留の取り消しまた保釈を許さなければならない旨規定されています。これを義務的保釈といいます。
ただし、実際に義務的保釈が適用されるケースはほとんどないといってよいでしょう。
4、保釈を受けるための条件とは?
保釈を受けるための条件は、裁判所の許可のほかに「保釈金の納付」および「指定条件の受け入れ」があります。
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(1)保釈金の納付
刑事訴訟法第94条第1項では「保釈を許す決定は、保証金の納付があった後でなければ、これを執行することができない」と規定しています。
ここでいう保証金とは、一般的にいう保釈金のことです。被告人を保釈する際に保釈金を納付させる理由は、裁判所が被告人から金銭を預かることで、裁判への出廷など被告人が守るべき義務の履行を担保することにあります。
保釈金の額は、事件の態様や被告人の状況などを総合的に勘案したうえで決められます。また、保釈金は裁判所の許可があれば保釈請求権者ではない人でも納付が可能(刑事訴訟法第94条第2項)です。現金で用意できない場合は有価証券や保釈保証書で納めることもできます(同条第3項)。また、弁護士を通して日本保釈支援協会より500万円を上限として保釈金の立て替えを受けることもできます。 -
(2)指定条件の受け入れ
保釈を受けるためには、裁判所による指定条件を了承しなければなりません。この指定条件は被告人の逃亡や罪証隠滅を防止することを目的としており、保釈期間中の禁止行為や遵守事項について定めています。
指定条件は法律で明記されているわけではありません。しかし、刑事訴訟法第96条第1項に規定された保釈取り消しの要件に沿いつつ、事件の態様や被告人の状況などを総合的に勘案した内容が定められます。
具体的には以下条件などが指定されることがあります。- 保釈期間中の被告人の生活や行動を監視し、裁判への出頭を促す役割を担う「身元引受人」がいること
- 公判期日、あるいは裁判所からの呼び出しがあったときは必ず出頭すること
- 裁判所の許可なく、外泊や旅行、転居をしないこと
- 被害者や証人、またはその家族に接触しないこと
- 共犯者と接触しないこと
- 定期的に動静を裁判所へ報告すること
- 法令違反に該当する行為をしないこと
5、保釈条件を違反するとどうなる?
保釈中に、指定条件の違反や刑事訴訟法第96条第1項に規定された保釈取り消しの要件に該当する行為があった場合は、保釈が取り消され再び刑事施設に収容されてしまいます。
さらに、保釈時に納付した保釈金の一部または全部が没取され、保釈金に代わり保釈保証書を納めていた場合は取り立てを受けることになるのです(同法第96条)。
6、保釈申請の流れは?
保釈申請の手続きは、保釈請求権者が裁判所宛てに行います。
実際の保釈申請においては、権利保釈および裁量保釈いずれの場合でも弁護士が請求者となるケースが一般的です。
保釈申請の流れは以下の通りです。
② 保釈の可否について、裁判所は検察官に意見を聴取する(求意見)。
③ 裁判所からの求意見に対し、検察官は「相当(保釈してもよい)」、「不相当(保釈すべきではない)」、「しかるべく(裁判所に判断を任せる)」のうち、いずれかの意見を述べる。
④ 保釈請求権者の希望があった場合、保釈請求権者は裁判官と面接する(保釈面接)。このとき、保釈の見込みがある場合は、保釈金の額について保釈請求権者と裁判官が協議。
⑤ 保釈金の額や指定条件が決められ、保釈許可が決定。または保釈却下が決定。
⑥ 保釈が決定した場合は、即日で保釈金を納付することにより当日夕方頃には保釈。
⑦ 保釈却下が決定した場合は、裁判所に不服申し立て。
7、保釈に向けてご家族ができること
被告人となっているご家族の保釈を目指すためには、保釈請求の手続きを刑事事件の解決に豊富な実績と経験をもつ弁護士に依頼することです。保釈を受けるためには、保釈請求書の書き方が極めて重要です。
弁護士であれば、保釈申請に関するこれまでの経験やノウハウを活かし、被告人やご家族に代わって保釈申請の手続きを行います。これにより、ご自身で保釈申請するよりも保釈が認められる可能性が高くなります。
8、まとめ
起訴されたあと、早期の保釈を目指すためには弁護士のサポートが必要不可欠となるでしょう。特に逮捕された直後からの動きが、保釈を得るための重要なポイントになります。
万が一ご家族が逮捕されてしまったら、できるかぎりお早めにベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士までご相談ください。逮捕されてしまったお身内が1日でも早くあなたのもとへ戻れるように、ベストを尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています