引っ越し時に転出届を出し忘れると罰則?! 住所変更時の注意点
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広島市内に在住されている方でも、「最近に引っ越しをしたものの、住所変更の手続きを面倒だからまだやっていない」という方がおられるかもしれません。しかし、市区町村役場での住所変更手続きや、車検証の住所変更登録申請は、広島市のサイトでも記載があるとおり、法律で義務付けられています。後でペナルティを受けたりすることがないように、引っ越しをした後は、早めに住所変更の手続きを済ませておくことが最善です。
本コラムでは、引っ越し時に住所変更を行うべき法律上の根拠や、住所変更を怠った場合の不利益について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。
1、引っ越しの際には住所変更手続きは必須
引っ越しにより住む場所が変わったときには、新しく住む場所の自治体へと住所を移す手続きが必要になります。
住所変更手続きについては、住民基本台帳法第22条から第24条にて、以下の通りに定められております。
(転入届)
第二十二条 転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。以下この条及び第三十条の四十六において同じ。)をした者は、転入をした日から十四日以内に、次に掲げる事項(いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者にあっては、第一号から第五号まで及び第七号に掲げる事項)を市町村長に届け出なければならない。(略)
(転居届)
第二十三条 転居(一の市町村の区域内において住所を変更することをいう。以下この条において同じ。)をした者は、転居をした日から十四日以内に、次に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない。(略)
(転出届)
第二十四条 転出をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならない。
手続きの基本的流れとしては、まず旧住所の自治体に「転出届」を提出して、その後に新住所の自治体に「転入届」を提出する、という順番になります。
なお、同じ市区町村の中で引っ越しをする場合には、「転出届」「転入届」の代わりに「転居届」を提出することになります。
2、住所変更をしなかった場合に生じる不利益とは?
住所変更手続きを怠った場合には、「過料」の徴収などの制裁を受けるおそれがあるほか、日々の生活においても不利益が生じる可能性があります。
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(1)住民基本台帳法違反に基づく過料
住民基本台帳法第52条第2項では、正当な理由なく住所変更の届け出をしない者について、「5万円以下の過料」に処する旨が定められています。
「過料」とは、行政罰の一種であり、金銭的なペナルティーを負わせられる制度です。刑事罰ではないために、前科や前歴はつきません。
しかし、数万円の経済的損失を避けるために、手続きを適切に済ませておくことが大切だといえるでしょう。
なお、住所変更義務違反による過料が科されない「正当な理由」の例としては、以下のものが挙げられます。- 定期的に旧住所地に戻るなど、生活の拠点に変更がない場合
- 1年以内に旧住所地へ戻ることが確実であるなど、一時的な移動に過ぎない場合
ただし、上記の場合には過料の制裁は行われないといっても、法律上は、住所変更の届け出義務が免除されるわけではありません。
また、住所を変更しないと、下記のように生活上の不利益が生じるおそれがあります。そのため、やはり、手続きはきちんと済ませておくほうがよいといえるのです。 -
(2)自治体からの郵便物が届かない
住民票を置いている自治体からは、地域行政に関する重要なお知らせを行うため、住民に対して郵便物が送付される場合があります。
しかし、住所変更をしていなければ、自治体からの郵便物は旧住所に届くのみであり、新住所には届きません。
そのため、新住所の自治体からの重要な発信情報を見逃してしまうおそれがあるのです。 -
(3)選挙で投票できない
国政選挙や自治体選挙の投票権は、住民票の情報に基づいて発行されています。
国政選挙の場合、住所変更をしていなければ、旧住所の投票所において投票を行わなければなりません。
しかし、旧住所が新住所から離れた地である場合には、タイミングよく旧住所に戻る機会がない限り、投票の機会が実質的に失われてしまうことになります。
また、都道府県知事選挙・都道府県議会議員選挙・市区町村議会議員選挙では、旧住所地の選挙に関する投票権は得られるものの、新住所地の選挙では投票できません。
本人にとっては、実際に居住している新住所で行われる選挙のほうが、関心が高いはずです。したがって、新住所で投票できないことは不利益といえるでしょう。 -
(4)新住所で公的書類の発行を受けられない
住民票・課税証明書・印鑑登録証明書などの公的書類の発行が必要になった場合には、住民票を置いている自治体の役所で手続きをする必要があります。
しかし、住民票を移していなければ、旧住所地で手続きを行わなければなりません。したがって、移動などに煩雑な手間を強いられることになってしまうのです。
また、公的書類に記載される住所も旧住所となります。
そのため、仮に公的書類の発行を受けたとしても、不正確な情報が掲載されたものとして、正式な証明書としては使用できないおそれもあります。
3、引っ越し時の転出・転入手続きを解説
引っ越しの際の住所変更手続きは、まず旧住所の役所に転出届を提出して、引っ越しが完了した後に、新住所の役所に転入届を提出する流れで行います。
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(1)旧住所の役所に転出届を提出
違う市区町村へと引っ越す場合、まず旧住所の役所に「転出届」を提出します(住民基本台帳法第24条)。
転出届に必要な書類等は以下の通りです。転出時の必要書類等- 本人確認書類(運転免許証、保険証、在留カードなど)
- 印鑑
- 国民健康保険証(加入している場合のみ)
- 印鑑登録証(登録している場合のみ)
- マイナンバーカードまたは住民基本台帳カード(交付されている場合のみ)
転出届を提出すると、窓口で「転出証明書」を受け取れます。
転出証明書は手元で保管しておいて、転入届を提出する際に利用しましょう。 -
(2)新住所の役所に転入届を提出
違う市区町村への引っ越しが完了したら、新住所の役所に「転入届」を提出します(住民基本台帳法第22条第1項)。
転入届の提出は、引っ越しが完了した日から14日以内に行う必要があります。
転入届に必要な書類等は、以下の通りになります。転入時の必要書類等- 転出証明書
- 本人確認書類(運転免許証、保険証、在留カードなど)
- 印鑑
- マイナンバーカードまたは住民基本台帳カード(交付されている場合のみ)
転入届を提出すれば、住所変更の手続きが完了します。
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(3)同じ市区町村内で引っ越す場合は転居届を提出
同一の市区町村内で引っ越す場合には、その市区町村の役所に「転居届」を提出すれば足ります(住民基本台帳法第23条)。
転居届の提出期限も、引っ越しが完了した日から14日以内です。
転居届に必要な書類等は、以下の通りです。転居時の必要書類等- 本人確認書類(運転免許証、保険証、在留カードなど)
- 印鑑
- 国民健康保険証(加入している場合のみ)
- マイナンバーカードまたは住民基本台帳カード(交付されている場合のみ)
4、引っ越し時には、車検証の住所変更も必要
市区町村の役所での住所変更に加えて、車を所有している場合には、車検証の住所変更も忘れずに行っておきましょう。
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(1)道路運送車両法に基づく変更登録申請義務
道路運送車両法第12条第1項では、自動車の所有者の住所に変更があった場合、住所変更から15日以内に、その旨の変更登録申請を行わなければならないと定められています。
変更登録の申請先(手続き場所)は、新住所地を管轄する運輸支局です。
なお、軽自動車の場合は、運輸支局ではなく、軽自動車検査協会になります。 -
(2)変更登録申請を怠った場合は罰金が科される可能性も
車検証の住所変更を怠った場合、「50万円以下の罰金」が科されるおそれがあります(道路運送車両法第109条第2号)。
「罰金」は「過料」と異なり、受けてしまうと刑事罰として前科がついてしまいます。
実際に罰金が科される事例は少ないですが、多額の経済的損失や前科がつくことを回避するため、車検証の住所変更は確実に行っておきましょう。
5、まとめ
「引っ越し作業で忙しくて役所に行くタイミングがなかった」などの理由で、引っ越し時の住所変更手続きをつい放置してしまう人は数多くおられるようです。しかし、住所変更を怠ると、生活上の不利益を被るばかりでなく、場合によっては法律上のペナルティを受けてしまうおそれもあります。そのため、必要な手続きを調べたうえで、漏れなくきちんと手続きを行うことが大切なのです。
また、住民票の変更だけでなく、不動産をお持ちの方の場合は、住所変更登記が必要です。住所変更登記は、令和3年の不動産登記法の改正により、令和8年4月1日より義務化されることになっています。令和8年4月1日より以前の住所変更についても変更の登記の申請が必要となるため、併せて行っておきましょう。住民票コードを提供することで、オンラインでの手続きが可能です。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています