借金で困っているとき、住宅ローンはどうする?持ち家を保持しながら債務整理する方法を解説
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最高裁判所の司法統計によりますと、平成29年の広島地方裁判所では破産が1485件、小規模個人再生が155件、給与所得者等再生が11件、それぞれ新規に受理されています。
住宅ローンを抱えながら別の借金を背負ってしまったというケースは、多重債務者が陥りやすいパターンのひとつです。そして最悪の場合、他の借金のために住宅ローンが払えず、家を失ってしまうことにもなりかねません。
家族や今後の生活のために家は残しつつ、何とか他の借金を整理する方法はないものだろうか……。このような切実なお悩みに、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士がアドバイスします。
1、借金や住宅ローンを滞納してしまうとどうなる?
よほどの悪質かつ違法性の高い業者でないかぎり、最初から暴力的・脅迫的な方法で借金返済を督促してくることはありません。一般的と考えられる債権者からの借金返済を督促するステップを、以下でご紹介します。
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(1)電話や督促状による取り立て
借金の約定弁済が滞ると、最初は電話によって入金が確認できないことや入金して欲しい日時などを伝える債権者が一般的のようです。その後も債権者によって入金が確認できない場合は、自宅に督促状が届きます。督促状には、滞納している借金の元本・利息・遅延損害金・支払期日などが明記されています。
しかし、なかには、電話を入れずにいきなり督促状を送達する債権者もいるようです。いずれにせよ、このときに督促された金額を期日通りに支払っておけば、それ以上の問題になる可能性は少ないでしょう。 -
(2)内容証明郵便が届く
借金した当初の契約や約款の内容にもよりますが、督促状を放置しておくと、借金返済の滞ったことを理由に債務者は期限の利益を失い、当初の契約に従って分割払いができなくなります。このタイミングで、債権者から借金の一括返済および遅延損害金の支払いを求める「内容証明郵便」が届きます。
内容証明郵便は、送付された債務者に対して特段の法的効力を持つものではありません。しかし、内容証明郵便は債権者が送付した事実および借金返済を請求する内容を日本郵便に証明してもらうことができます。つまり、債権者が裁判になった際の証拠とするために送付されると考えておいたほうがよいでしょう。 -
(3)裁判を起こされる
内容証明が送達されても返済しなければ、いよいよ裁判を起こされることが考えられます。債権者にとって、裁判は債務者に借金を返済させる目的があることはもちろんですが、この段階で支払うことができる債務者はほとんどいません。そこで、後述する差し押さえや競売のための前段階として提起していることが実情です。
債務者は被告として争うことが可能です。しかし、返済しない理由が「他の借金のせいで首が回らない」では、勝ち目はないといっていいでしょう。 -
(4)差し押さえ・競売
判決で支払い命令が出ても、ほとんどの債務者は借金や遅延損害金の支払いができません。この場合、債権者から給与や家、生命保険、預貯金などの財産を差し押さえられる可能性があります。
そして、家のように換価価値があるものは競売にかけられることになり、借金返済に充てられてしまうのです。また、差し押さえを受けた段階ではほぼ確実に勤務先や家族に借金の存在が知られることになるでしょう。
2、借金整理の方法。債務整理について
以下では、代表的な債務整理の方法を4つ、および過払い金請求についてご説明します。
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(1)自己破産
自己破産とは、借金のすべてを裁判所に帳消しにしてもらうための手続きのことです。
まず、裁判所に自己破産したい旨を申し立てます。裁判所に「支払い不能」の状態であることが認められると「破産開始」が決定されます。また、その後、借金の返済義務そのものが基本的に免除される「免責許可」決定を目指して手続きを進めることになります。ただし、たとえばギャンブルや浪費が原因の借金は「免責不許可事由」という事由に該当し、「管財」という手続きになることがあります。管財事件となると、管財人が選任され、管財人の報酬等、追加で費用が必要となります。
もちろん、無条件に借金がなくなるわけではありません。申し立てた人が所有する家など一定の価値がある資産はすべて没収され、債権者に返済されます。それでも返せなかった借金に対して、返済義務がなくなるのです。
自己破産は私財が没収されることに加えて、個人の住所氏名が官報や信用情報機関に掲載されてしまうため、少なくとも数年の間クレジットカードや住宅ローンを含む借金ができなくなります。さらに自己破産手続き中は警備員など就けない職業が一部あることなど、デメリットも数多くあります。したがって、自己破産はあくまで最終手段であることをご認識ください。 -
(2)個人再生
個人再生は、ある程度の自助努力による借金返済を前提としていること、保有している住宅等の資産は没収されないという点などで自己破産と異なります。
裁判所に個人再生手続きを申し立て手続きが決定されると、3年から5年の間で分割して返済する再生計画を立てます。このとき、返済額は最大で90%も減額になる場合があります。この再生計画について債権者の同意が得られ、裁判所からの認可がおりれば,その後は再生計画に沿って返済をしていくことになります。
個人再生でも、個人の住所氏名が官報や信用情報機関のリストに載せられることなどのデメリットがあります。したがって、個人再生に踏み切ることについては自己破産と同様に慎重な判断が必要です。 -
(3)特定調停
特定調停とは、簡易裁判所の調停委員を介して、債権者と返済計画や利息などについて話し合いにより合意を目指す方法です。債権者とは顔を合わせませんので、冷静な話し合いが期待できます。
ただし、調停委員は必ずしもあなたの味方ではないこと、話し合いの結果次第では借金の総額が減らない可能性があることに注意が必要です。 -
(4)任意整理
任意整理では、まず借金の金利相当分を利息制限法の上限金利(15%から20%)まで引き下げた前提で借金総額を再計算し、減額します。さらに原則として以後の金利支払いを免除とし、債務の元本を3年程度で返済する和解契約を債権者と締結します。そして債務者は、以後この和解契約に基づいて返済し、借金を整理していきます。
自己破産、個人再生、特定調停と異なり、任意整理の手続きに裁判所は一切介在しません。また、財産が差し押さえられることもありません。このため、借金があることの事実が家族や勤務先に知られることはまずないでしょう。このようなメリットから、任意整理を選ぶ人は多いようです。
任意整理は、債務者個人でも行うことが可能です。しかし、任意整理では債権者と直接交渉をする必要があります。この交渉を有利に成立させるためには、弁護士のように知見と経験に裏付けられた交渉力を持つ専門家を代理人とすることが一般的です。 -
(5)過払い金請求
過払い金請求とは、平成22年6月の法改正まで認められていた出資法上限(年29.2%)と、利息制限法の上限(借金額10万円未満の場合は20%、借金額10万円から100万円未満の場合は18%、借金額100万円以上の場合は15%)の差分を、本来よりも払いすぎていた金利として貸金業者に返金を求めることです。
ただし、過払い金請求は利息制限法の上限を超える金利の支払いがあった場合に払いすぎていた分の返還を求めるだけの手続きであり、借金の元本が減るわけではありません。また、取引が終了した時から10年を超えると時効となります。この点にも注意が必要です。
3、債務整理で住宅を残す方法とは?
前述した債務整理の方法のうち、自己破産では住宅ローンが免除される代わりに、抵当権が付着している家は差し押さえの対象となってしまいます。一方で、個人再生・特定調停・任意整理のいずれかであれば、債権者との合意ができていることを前提に住宅ローンが残っている家を処分せずに借金を整理できることが可能性があります。
特に個人再生では、債務者ができるだけ早く経済的に立ち直れるように、可能なかぎり家を残しつつ借金が整理することを目的とした「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度があります。
この制度は、銀行など住宅ローンの債権者から承諾を得ていることを前提に、住宅ローンなどの住宅資金貸付債権については従来通りあるいは返済スケジュールを変更したうえで債権者への返済を継続することを認めるものです。これにより、抵当権の実行によって家が差し押さえられる心配はなくなります。
4、まとめ
住宅ローンがある家を残しつつ借金を整理するためには、適切な債務整理の手段を選択することが必要です。もちろん、債務整理はあなたひとりで進めることも可能です。
しかし、そもそも債務整理の問題を抱えることなど、人生で数えることしかないでしょう。つまり、ほとんどの人にとって日々数多くの債務者と相対している百戦錬磨の債権者と交渉することは、最初から分が悪いのです。
だからこそ、少しでも良い結果とするためには弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士であれば、あなたの借金の状況を理解したうえで手続きを進めていきます。これにより、あなたの負担が大きく減ることはもちろんのこと、あなたが単独で問題解決に向けて取り組むよりも良い結果が期待できるでしょう。
問題が大きくならないうちに、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスへお気軽にご相談ください。借金問題の解決に豊富な知見を持つ弁護士が、借金問題の解決に力を尽くします。
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