裁判所の督促状を無視すると財産を差し押さえられる? 対処法を解説

2023年08月29日
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裁判所の督促状を無視すると財産を差し押さえられる? 対処法を解説

「支払督促」とは、借金や各種料金、商品の代金などの支払いの催促を、簡易裁判所が申立人に代わって行う手続きです。広島県内であれば、広島地方裁判所に督促が申し立てられることになります。

債権者によって支払督促の手続きが行われ、裁判所から督促状が届いても、自分の手元にお金がなく、「無視するしかない」とそのままにしてしまうこともあるでしょう。しかし、その支払督促を無視していると、「強制執行により、預金や財産を差し押さえられてしまうのではないか」という不安を抱くことになります。

本コラムでは、裁判所から督促状が送られてきてから差し押さえにいたるまでの流れや、督促状が届いた後に強制執行(差し押さえ)を避けるための対応策について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。

1、督促状が裁判所から送られてくる流れ

差し押さえの前には必ず督促状が届いているはずです。「督促状」のなかには、業者からだけでなく裁判所から届くものがあります。

  1. (1)業者から来た督促状を無視するとどうなる?

    支払日までに入金をしなかった場合、借金をしている業者などからの入金を催促するハガキや電話が届くようになるでしょう。それでも支払いの意思を見せなければ、内容証明郵便を用いた督促状が届くようになります。

  2. (2)業者が裁判所に申し立てをする

    内容証明による督促も無視していた場合、債権者や債権業者は簡易裁判所に支払督促申立書を届け出て、「支払督促申立」へと移ることがあります。この申し立てが認められれば、特別送達という特殊な形の郵便物で「支払督促」と呼ばれる、より効力の強い督促状が裁判所から届きます。

    支払督促申立書が届いた後の対処によって、「財産を差し押さえされたら……」という事態が目前に迫ることになります。

  3. (3)裁判所からの支払督促を無視すると「差し押さえされたら」が現実に

    支払督促を送る際に使用される「特別送達」は、受け取りを拒否できないという意味で特殊な形です。たとえその場に置いていくような形でも、郵便局員は「送達完了」を記した「郵便送達報告書」という書類を簡易裁判所に提出します。したがって、あなたがいくら受け取り拒否を主張しても配達されたということになってしまうのです。

    このままでは、14日が過ぎた時点で「差し押さえされたら困る」という心配していた事態に陥ることになります。つまり、実際に差し押さえされてしまうということです。

    また、役所からくる公的に支払わなければいけないものの滞納には「差押予告通知」が配達されます。こちらも放置すると差し押さえされることになります。中でも税金や年金などの公的なものは、裁判所を通さずにいきなり差し押さえとなってしまいます。

    いずれにしても、裁判所から来た支払催促を無視したり、放っておいたりすることはおすすめしません。

2、知っておきたい差し押さえの流れ

テレビなどで見たことはあっても、実際に差し押さえを経験したことがある方はあまりいないでしょう。「差し押さえられたらどうしよう」という不安を抱くあなたに、差し押さえの具体的な流れを解説します。

  1. (1)差し押さえとは?

    支払督促が発行された後、裁判所から「仮執行宣言」が出されて、強制執行が行われます。この強制執行が一般的にいわれる「差し押さえ」です。

    まず、差し押さえをされたら、自由に財産を処分することが禁じられます。これは法律にのっとった財産処分を行う強制執行をするにあたり、所有者が内緒で財産を隠したり処分したりするのを防ぐための措置です。この後、裁判所の権限で、債務者の財産の一部が強制的に債権者のもとへと移ることになります。

    差し押さえを実行するときには「差押命令」の申し立てをしてからの執行となります。

  2. (2)差し押さえされるものとは?

    債権差押命令が出たのであれば、もう猶予はありません。金銭的価値のあるものは差し押さえされてしまう可能性があります。

    代表的なものとしては給料でしょう。給料は、たとえ口座に入っていても、基本的に4分の1は差し押さえられます。もし手取り額で33万を超えていた場合は、超えた分のすべてが差し押さえされてしまいます。

    また、家や建物などの不動産、車や自動車、銀行口座の預金、有価証券などの動産、生命保険の返戻金までも差し押さえの対象です。年金も差押禁止範囲変更を申し立てないと差し押さえられてしまいます。

    差し押さえされたら、不動産であれば競売にかけられます。銀行口座が差し押さえされたら、差し押さえされた時点に口座にあった預金から、請求額にあたる額が引き出されてしまうことになります。

  3. (3)差し押さえされないものは?

    金銭的価値がないものであれば、差し押さえされません。また、金銭的価値があったとしても2か月分の生活費として認められている現金66万円や、 服や台所用品などの生活に欠かせないもの、仕事に欠かせないもの、位牌などの祭祀関係、未発表の著作物、自分・親族がもらった勲章なども差し押さえされません。

    さらに、債務者のものではない他人のものは、もちろん差し押さえされることはありません。

3、督促状がきたときの対応策

裁判所から支払督促が届いたのち、どのような行動をすれば差し押さえされる事態を避けられるかについて知っておきましょう。

  1. (1)支払えるときはお金を支払う

    払えるお金があるのに支払っていないのであれば、期日までに支払うことをおすすめします。もし現金がないものの財産価値があるものを持っているのであれば、それらを手放すことも考える必要があるかもしれません。まずは返済に努めた方がいいでしょう。

  2. (2)支払えなくても相手に連絡

    無視は厳禁です。たとえお金を持っていなくても、まずは債権者へと連絡を取って相談することは、対応策としても有効となりえます。たとえば、次の給料日まで支払いを待ってもらったり、分割払いにしてもらったりするなどの対応策を認めてもらえるかもしれません。

  3. (3)異議があるときは異議申し立てをする

    督促状が来たとしても、身に覚えがなかったり、金額が間違っていたりする際には、2週間以内に異議申し立てをしましょう。

    裁判所から届く支払督促に同封されている異議申立書に記入して、支払督促を出した簡易裁判所へ返送してください。異議申し立てをしても、そのままあなたの言い分が通るわけではありません。債権者と債務者で、どちらが正当かを裁判で争うことになります。

    具体的に「どのように異議申し立てをすればいいか」と困惑しているようでしたら、弁護士への相談も検討してください。その際には、弁護士に依頼することで個人では難しい法律的な反論も可能となってくるでしょう。

4、差し押さえ前に弁護士相談すべき理由

督促された額に異議はなくても、分割払いの交渉などをして、差し押さえを逃れるための交渉は、弁護士に依頼することをおすすめします。差し押さえ回避のためのアドバイスを、借金問題での裁判経験豊富な弁護士からすることが可能です。

さらに、差し押さえされたら、と不安を抱えているよりも、前もって債務整理を検討することもひとつの手です。債務整理とは、法にしたがった手続きで、借金返済しやすい金額に整理したり、ゼロにしたりする方法を指します。債務整理を行えば、一定期間は再び借り入れを行うことやクレジットカードを使うことができないなどのデメリットはありますが、人生をやり直すことができるでしょう。

弁護士に対し、債務整理を正式に依頼した時点で、一時的に督促を止めることができるというメリットもあります。

5、債務整理とは?

債務整理には、任意整理や個人再生、自己破産などの方法があります。ここからは、過払い金請求とともに、3つの任意整理の方法について解説します。

  1. (1)過払い金請求

    借金の相手がカード会社や消費者金融業者で、以下の条件に当てはまる場合は、いわゆる「過払い金」が残っていることがあります。過払い金とは、払いすぎた金利を指します。

    • 平成22年6月18日より前に借り入れを行った債務が残っている
    • 借金を完済した翌日から10年がたっていない


    弁護士に相談いただければ、過払い金が存在するかどうかがわかります。もしも過払い金があれば借金の圧縮、もしくは返済につながるはずです。

  2. (2)任意整理

    特定の借金に対して、裁判所を通さずに債権者と借金の圧縮や支払い方法を交渉する債務整理方法です。どの賃金業者を対象にするかを選ぶことができるため、保証人がいて迷惑をかけたくない借金だけ債務整理を行わないという選択ができます。また、優先的に支払うことができるでしょう。

    交渉によって結果が大きく変わる債務整理方法のひとつです。弁護士に委任することをおすすめします。

  3. (3)個人再生

    裁判所に対して返済計画を提出して認められることで借金を大幅に減額してもらう債務整理方法です。住宅ローンが残っている自宅だけは除外して借金の整理を行える点が大きな特徴でしょう。

    弁護士に相談いただければ、個人再生が認められやすいようなアドバイスが行えます。

  4. (4)自己破産

    破産手続開始・免責許可申立書を裁判所に提出し、免責許可を得ることにより、借金をすべてゼロにすることができる手続きです。しかも、審査が開始されたと同時に給与差し押さえなどの差し押さえ(強制執行)を止めさせることも可能です。

    弁護士であれば、「差押命令」が届いた時点でも対応できることがあります。まずはひとりで悩まず、ご相談ください。

6、まとめ

裁判所から督促状が届いたときは、無視してしまうと仮執行宣言によって強制執行(差し押さえ)が行われることになります。
財産の差し押さえを回避したいという方は、支払督促を無視しないようにしましょう。

債務整理を検討している方は、まずは弁護士に相談することがおすすめです。弁護士に委任した上で債務整理を行えば、弁護士の受任通知が債権者に届いた時点で、一時的に督促がストップします。

実際に支払いに困っているときは、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が窮状を改善する手立てをご提案いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。ベリーベスト法律事務所では、債務整理のご相談は何度でも無料で受け付けております。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています