婚外子の養育費を請求するためにはどうすればよい?

2020年12月03日
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婚外子の養育費を請求するためにはどうすればよい?

広島県庁の統計によると、平成29年の広島県の出生数は2万2,150人でした。また人口1,000人あたりの出生率は7.9で、全国で10番目に高い出生率となっています。

子どもが出生した場合には、お金には替えがたい喜びがある反面子どもを養育するための費用が必要になることも事実です。養育費を負担することは親の義務といえますが、子どもが婚外子の場合、養育費はどのようになるのでしょうか。

本コラムでは、婚外子の養育費を請求するための方法をベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説していきます。

1、婚外子とは

婚外子(こんがいし)とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことをいいます。
法律上の婚姻関係がある夫婦の間に生まれた子どもは嫡出子(ちゃくしゅつし)と呼びますが、婚外子は非嫡出子(ひちゃくしゅつし)と呼ぶこともあります。

日本の法律では法律婚が重視されており、これまで嫡出子は厚く保護されてきました。
しかし、近年は事実婚のカップルにも一定の保護を与え、事実婚のカップルから生まれた婚外子についても嫡出子と同じ相続分を認めるなど、法律上の保護を拡大する考え方が広まっています。

2、婚外子の養育費は請求できる?

婚外子であっても、父親に養育費を請求することは可能です。
話し合いで父親に養育費を請求することもできますが、法的に養育費を請求できる権利を取得するためには父親による「認知」が必要になります。

養育費の支払い義務は、法律上の親子関係がある場合に生じるものです。
しかし婚外子は、母親とは分娩(ぶんべん)の事実をもって法律上の母子関係が生じるものの、父親とは血縁関係があってもそれだけでは法律上、父子関係は生じません。

したがって、養育費を請求する権利を取得するためには、「認知」によって父親との間に法律上の親子関係を生じさせる必要があるということになります。

3、認知の方法

認知は、次の3つの方法で行うことができます。

  1. (1)任意認知

    任意認知とは、父が自らの自由意思で子どもを認知する方法です。
    任意認知は、認知届という書類を役所に提出し、手続きを行います。もし、認知する子が他人の嫡出子として戸籍に記載されているような場合、それが事実とは異なることを裁判で明らかにする必要があります。
    また、成人の婚外子を認知する場合は、子の承諾が必要になります。

  2. (2)裁判認知

    裁判認知は、強制認知ともいわれます。
    裁判認知は、子どもからの請求によって裁判所が強制的に認知を認める方法です。子どもから認知を請求する場合は、まず家庭裁判所における調停で当事者が調停委員を含めて話し合います。そして、調停で認知について合意が成立しなかった場合には、子どもは認知の訴えを裁判所に提起することができます。

    裁判では、裁判所が父子関係の有無を判断して判決を下します。
    なお、認知の訴えは父が死亡した後でも可能ですが、死亡後3年を経過すると請求することができなくなります。

  3. (3)遺言認知

    遺言認知は、父が遺言で子どもを認知する方法です。
    遺言認知は任意認知の一種ですが、生前は認知することができない事情がある場合に婚外子にも相続権を与えるためなどになされる認知です。

4、認知の効果

婚外子の認知がなされると、次のような効果が生じます。

  1. (1)扶養義務の発生

    法律上の親子には、お互いに扶養義務があります。
    そのため認知がなされると父が子どもを扶養する義務が生じることはもちろんですが、子どもにも父が年老いた場合などには扶養する義務が生じることになります。

  2. (2)相続権の発生

    法律上の親子には、お互いに相続権があります。
    そのため認知がなされると、父が死亡した場合には婚外子に相続権が認められることになります。なお、認知された婚外子の相続分は、嫡出子と同じ相続分になります。

  3. (3)親権を変更できる可能性が生じる

    婚外子については、出生と同時に母親が親権者となります。
    しかし認知がなされると、事情によっては親権者を母親から父親へ変更できる可能性が生じます。

  4. (4)戸籍に記載される

    認知されると、婚外子の戸籍の父親の欄には父親の氏名が記載されることになります。
    また、父の戸籍にも、認知した旨が記載されることになります。

5、婚外子の胎児も認知できる?

認知は、婚外子がおなかにいる胎児の時点でもすることができます。
母子手帳の交付を受けた場合には胎児がいることを証明できるので、母子手帳が交付された後、胎児を認知することができます。
胎児認知は、国籍や相続権を胎児に取得させるためになされることが多いものです。
なお、胎児を認知するには、母の同意が必要です。

6、婚外子の養育費はどうなる?

  1. (1)養育費の取り決め方法

    養育費に関する取り決めは、原則として父親と母親との話し合いによって決めていきます。
    話し合いがまとまったときには、養育費の不払いがあったときでも対処しやすいように強制執行認諾文言付き公正証書にしておくことが重要です。
    話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。
    調停では調停委員を交えて話し合いますが、調停でも合意に至らなければ裁判官が養育費の取り決めに関する審判をすることになります。

  2. (2)養育費の算出方法

    養育費の金額は原則として父母が合意できればいいものなので、金額に決まりはありません。
    しかし実際には、裁判所が作成している「養育費算定表」が参考にされています。


    具体的な算出方法は、まず裁判所のホームページなどに掲載されている「養育費算定表」の中からご自身のケースに該当する表を見つけます。
    そして「養育費算定表」で、養育費を支払う父の年収と養育費を受け取る母の年収を当てはめていきます。
    その結果それぞれの年収が交差する部分にある表の数字が、ご自身のケースにおける標準的な相場であることが分かります。
    このように算出した相場をもとに、父母で話し合いなどによって具体的な養育費の金額を決めることになります。

    なお、ベリーベスト法律事務所では、無料で利用できる養育費計算ツールを公開しています。ツール上に年収や子どもの年齢を入力することで、養育費の相場を確認することができます。ひとつの目安として利用してみてください。

  3. (3)養育費不払いへの対処法

    父からの養育費の支払いが滞った場合には、メールや内容証明郵便などで請求するほか法的な対応をすることもできます。
    養育費の不払いに対する法的対応には、直接相手の不動産や債権などの財産を差し押さえる強制執行などの方法があります。
    強制執行をする場合には、強制執行認諾文言付きの公正証書や調停調書・審判調書などが必要になるので、養育費の取り決めの際に不払いに備えた対処をしておくとよいでしょう。

7、婚外子の養育費請求で悩んだときには

婚外子の「認知」にあたっては、調停や裁判では専門的な知識が要求されるので弁護士に相談することをおすすめします。
裁判によらない場合でも、弁護士はご相談者さまに代わって相手側と話し合いをすることもできます。
また、養育費の取り決めや不払いがあったときの対応方法についても弁護士は熟知しています。そのため婚外子の養育費請求で悩んだときには、まずは早めに弁護士に相談することが大切です。

8、まとめ

本コラムでは、婚外子の養育費を請求するための方法を解説していきました。婚外子の養育費の請求には、原則として「認知」が必要になります。そして「認知」された上で、養育費を取り決めていくことになります。しかし、認知や養育費の請求をめぐってトラブルになることも少なくありません。
認知や養育費のことでお悩みの場合は、まずはベリーベスト法律事務所 広島オフィスまでご相談ください。弁護士がお客さまと一緒に最善の方法を考え、アドバイスいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています