【後編】子どもを置いて家出してしまった! 離婚するとき親権はどうなる?
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子どもを置いて家出してしまったことを後悔される方は少なくありません。万が一、離婚する際には、親権への影響を気にすることもあるでしょう。そこで前編では、親権についての基礎知識から離婚までの流れについて解説しました。
後半は、引き続き広島オフィスの弁護士が、裁判において親権決定の際重視される原則や、子どもを置いて家出してしまった際に受ける影響について解説します。
3、親権決定の際重視される4原則とは?
親権を争う裁判において、日本では圧倒的に多く、父親よりも母親を親権者に定める判決のが多く出されています。なぜならば、家庭裁判所は「子どもの利益」を最優先に重視するためです。「母親が女性だから有利」だというわけではない点に注意が必要です。
子どもの利益(福祉)最優先とするために重視されている項目は、いずれも法律ではありませんが、次に解説する4原則にもとづきます。
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(1)継続性の原則
子どもの生活環境はむやみに変えるべきではなく、子どもが現状に問題なく生活しているのであれば、その現状を継続すべきという考え方です。したがって、父親側、母親側に限らず、これまでの養育実績が多いか・少ないかという点が考慮されます。具体的には、「父母のどちらが子どもと長く過ごしていたか」という点が裁判所のが大きな判断基準になるのです。
もし母親が専業主婦である場合、父親は外で働いていることが多いものです。母親が育児放棄あるいは祖父母のもとにずっと預けているわけでもない限り、これまで子どもと長い時間を過ごしてきたのは父親ではなく母親になるわけですから、結果として母親優位とされるわけです。 -
(2)子どもの意思の尊重
親権が変わることで大きな影響を受けるのは、子ども自身です。自らの意志や主張ができる年齢であれば、それを尊重すべきであるという考え方です。
そこで、家庭裁判所では、子どもの意志や意見を尊重するため、10歳以上の子どもであれば意見の聴取が行われることがあります。特に15歳以上の子どもであれば、人事訴訟法32条4項の規定により裁判所は子どもの意見陳述を聴かなければならないとされています。 -
(3)兄弟姉妹不分離の原則
原則、兄弟姉妹は同じ環境で育つことが望ましいとする考え方も重視されます。しかし、これまで兄弟姉妹が別々に育てられた場合は、この原則が該当しないケースもあります。そのときは、「(1)継続性の原則」が優先される可能性が高いでしょう。
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(4)母性優先の基準
子どもが乳幼児であれば母乳が必要だという考え方から派生した基準で、「母親優先の基準」とも呼ばれています。しかし、最近では、ミルクなどの普及によって男性でも乳幼児育児は可能ですし、本質的な目的である「子どもの利益」と反する可能性があることから、そのほかの項目に比べれば重視されていません。
ただし、乳幼児であればあるほど、いわゆる母性的ともいえるきめ細やかな監護が必要不可欠です。したがって、母親だから必ず優先されるというのではありません。たとえば、母親が育児放棄や虐待をしていたケースなどでは、父親側に親権が認められる可能性が高いでしょう。
4、子どもを置いて家出したら親権は?
母親・父親に関係なく、裁判所が親権者を判断する際に子どもを置いて家出した事実がプラスにはたらくことは、基本的にないと考えられます。特に子どもが配偶者あるいは近親のもとにいる場合は、なおさらです。ただし、「たった一晩だけの家出」などのケースでは大きな影響はないでしょう。
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(1)子どもを置いた家出が親権獲得に与える影響
前述のとおり、「継続性の原則」は裁判所が親権者を決定する際に考慮する判断基準のひとつです。あなたが家出したあと子どもが配偶者またはその近親と同居しており、さらに問題なく生活している場合は、あなたが家出している期間の長さに比例し配偶者が親権者として有利になる可能性があります。
また、あなたが家出したことで子どもの心があなたから離れると、親権獲得はさらに難しくなると考えられます。 -
(2)子どもを置いて家出しても親権獲得に影響がないケース
前述のとおり、裁判所が親権者を決定するうえでもっとも重視するポイントが、「子どもの幸福にとって、父母のうちどちらが親権者としてふさわしいのか」ということです。
したがって、あなたが子どもを置いて家出し子どもが配偶者のもとにいたとしても、配偶者が以下のようであれば親としての優劣比較によりあなたが親権者と認められる可能性があります。- 薬物依存や盗癖、さらには子どもへの虐待など、明らかな犯罪傾向が認められる場合
- 子どもの養育よりも、異性関係やギャンブルなど自己のために時間とお金の浪費を優先させている場合
- 食事や衛生面など、子どもの生活環境が劣悪な場合
- 心身ともに健全とは認められない場合
- 別居後の相手方から、子どもを略奪した場合
もし配偶者が上記に該当しない場合であっても、親権をあきらめる必要はありません。
家庭裁判所の調査などにおいて、あなたが親権を獲得し養育するほうが子どもにとって幸福であることを理解してもらうことが重要なのです。それにより、子どもを置いて家出した事実はあまり考慮されなくなる可能性もあります。弁護士に相談することで、血路を見いだすことができるかもしれません。まずは相談してみるとよいでしょう。
5、まとめ
子どもを置いて家出した事実を覆すことはできません。したがって、親権獲得を目指すためには配偶者よりもあなたが親権者としてふさわしい事実を裁判所に理解してもらうことが必要になります。
その際、弁護士があなたの心強いパートナーになるでしょう。離婚全般の問題解決に実績のある弁護士であれば、法的なアドバイスや家庭裁判所の調査などにおいて提出する陳述書の書き方などについてサポートします。また、あなたの代理人として調停や裁判に出席することも可能です。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、離婚に関するご相談を承っております。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています