飲食店で出された料理で食中毒に! 慰謝料や損害賠償は請求できる?
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広島県内では、令和元年内に飲食店などで10件の集団食中毒が発生したことが報告されています。この集団食中毒では、203名の方に腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの症状がみられました。
「食中毒の症状に苦しみ、仕事も休まざるを得なかった」という場合や「食中毒の症状が重度であり、後遺症が残った」という場合などには、食中毒を出した店側に対して、慰謝料をはじめとする損害賠償を請求することを検討しましょう。
本コラムでは、食中毒を起こした飲食店に対して慰謝料などの損害賠償を請求する方法について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説いたします。
1、食中毒になったら飲食店に慰謝料を請求できる!
飲食店で提供されたものが原因で食中毒になった場合は、店側に対して、次のような責任を追及することができます。
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(1)民法にもとづく不法行為責任・債務不履行責任
飲食店の故意や過失によって食中毒になった場合、民法で規定されている「不法行為」による損害賠償責任を追及できます。
また、契約上の債務が履行されずに食中毒が生じたときには、「債務不履行」にもとづく損害賠償を請求できる可能性があるのです。
損害賠償の具体的な内訳としては、まず、食中毒を治療するために病院に行った際にかかる「治療費」や入院・通院にかかる費用を請求することができます。
また、食中毒の症状があるために仕事を休業せざるをえないような場合には、休業によって生じた損害の補償を請求できる可能性があります。
そして、「食中毒」になったという事実によって生じた精神的苦痛に対する賠償金も、「慰謝料」というかたちで請求することができるのです。慰謝料の金額は、入院や通院の期間や症状の程度などに基づいて算定されます。
また、食中毒による症状が重く、後遺症が残った場合には、「将来に得るはずであったが、後遺症が残ったために失われた利益」である「逸失利益」を請求できる可能性があります。 -
(2)製造物責任法(PL法)にもとづく賠償責任
飲食店側に故意や過失がない場合であっても、食中毒が発生すれば、製造物責任法(PL法)にもとづく賠償責任を追及できる可能性があります。
一般的には、PL法といえば家電などの製品の欠陥に対して責任を追及するための法律、というイメージがあるようです。しかし、飲食店が提供する料理は家電メーカーが製造する家電と同じように「製造物」として扱われるため、PL法の対象になるのです。
2、飲食店にはPL法の賠償責任を追及できる!
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(1)PL法とは
PL法とは、製品の欠陥によって被害を受けた消費者などを保護する目的で制定された法律です。
製品の欠陥によって生命や身体、財産に被害を受けたという事実を証明することができれば、被害者は製品の製造会社などに損害賠償を請求できるとされています。
そのため、店側に損害賠償を請求するためには、その飲食店の提供した飲食物によって食中毒の症状が出ということを証明する必要があります。 -
(2)店側の故意過失がなくても責任追及できる
PL法の賠償責任は、会社や店側に「故意」や「過失」がない場合でも追及できます。
この点が、不法行為責任との大きな違いです。
ちなみに債務不履行責任とPL法の賠償責任の双方が追及できる場合には、請求者が選択することができます。 -
(3)PL法にもとづく賠償責任の要件・内容
PL法における賠償責任の要件は、以下のようになっています(製造物責任法第3条)。
- 製造業者などが欠陥のある製造物を製造したり加工したり、輸入もしくは氏名などを表示した製造物であること
- 引き渡したこと
- 欠陥があること
- 他人の生命や身体、財産を侵害したこと
- 欠陥と損害に因果関係があること
損害賠償の範囲や損害額の算定については、不法行為と同様に考えるとされています。
つまり、生じた損害が「通常生ずべき損害」であれば当然に賠償し、特別の事情によって生じた損害については、それが「予見すべき損害」であった場合には賠償する、という運用になっているのです。 -
(4)民法改正に伴いPL法の時効も長期化
令和2年の民法改正にともない、造物責任法の内容の一部も改訂されました。
具体的には、生命または身体の侵害によって生じたPL法にもとづく損害賠償請求権が、「損害及び賠償義務者を知った時から5年」に変更されたのです。改正前は「損害及び賠償義務者を知ったときから3年」であったので、2年間の延長となります。
また、製品などを引き渡したときから10年で損害賠償請求権が消滅することを定めた規定についても、中断や停止などがある「時効期間」を定めたものであることが明記されました。
3、「食中毒かも?」と思ったときには
お店で飲食をした後に、下痢や腹痛、発熱、嘔吐といった食中毒のような症状がみられたときに取るべき対応について、解説いたします。
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(1)病院の医師の診察を受ける
食中毒の症状が発生したら、まず、速やかに病院に行きましょう。
病院にいけば、症状を悪化させずに回復させるための治療が受けられるのはもちろんのこと、飲食店での飲食と食中毒の関係を示す診断書などを医師に作成してもらうことで、「食中毒になった」という事実の記録を得ることができる可能性があります。 -
(2)保健所に連絡して判断を待つ
「食中毒である」との診断を医師から受けた場合には、市区町村の保健所に連絡する必要があります。保健所に連絡すると店に調査が入り、食中毒発生の背景や原因が特定される可能性があります。
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(3)飲食や治療費などの領収書は保存しておく
飲食代を支払ったときに受け取る領収書(レシート)は、「その店で食事をした」ことを示す証拠となります。
また、病院でかかった治療費や薬代などの費用、病院に行くためにかかったタクシー代などは、「損害金額」を示す証拠となるので、後日に損害賠償を請求する際に必要となります。
4、弁護士に相談するメリットとは
飲食店での食事により食中毒になり、慰謝料をはじめとする損害賠償の請求を検討しているなら、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)店側と直接交渉しなくてもよくなる
食中毒の症状がひどく体力や気力が失われている場合や、症状は回復したが仕事や家事が忙しく余力がない場合には、自身で直接お店とやりとりをすることは精神的にも体力的にもかなりの負担となってしまいます。
弁護士に依頼すれば、店側との交渉を代行させることができます。
また、飲食店に対して弁護士の名義で内容証明郵便を送付することで、こちら側が本気で損害賠償を請求するつもりであることが相手側に伝わり、示談成立までの手続きが手早く進む可能性が高くなるのです。 -
(2)適切な損害賠償額を算定できる
食中毒の症状が重度である場合には、後遺症が残ってしまい、その後の生活に大きな影響が及ぼされてしまう可能性があります。
弁護士であれば、後遺症によって生じた逸失利益や精神的苦痛に関して請求できる損害賠償の金額を、相場や判例に基づきながら、適切に算定することができます。そのため、食中毒の症状の程度が深刻であるほど、弁護士に相談すべき理由は増すといえるでしょう。 -
(3)示談交渉のトラブルに対処できる
個人が飲食店と示談交渉をすると、お互いの主張がぶつかり合い、双方が感情的になることで、トラブルに発展する可能性が高くなります。
法律の専門家である弁護士なら店側とのトラブルにも冷静に対処することができます。
また、店側が顧問弁護士を示談交渉に代行させた場合には、法律と交渉のプロが相手となるので、個人で交渉に臨んでも利益を正当に主張できなくなる可能性が高まります。このような場合は、消費者の側でも弁護士に示談を代行させることで、対等な立場での交渉が可能になるのです。
5、まとめ
食中毒で飲食店に慰謝料や損害賠償を請求する際には、飲食代や治療費などの領収書が重要な証拠になるので、大切に保管しておく必要があります。
そして食中毒による被害の程度が大きかったり、店側との示談交渉が揉めてしまったりした場合には、弁護士に相談することで、損害賠償を適切に請求して自身の利益を守ることができます。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、弁護士が飲食店における食中毒やその他の消費者トラブルについて、民事裁判の経験豊富な弁護士がご相談を承っております。
飲食店の料理により食中毒になるという被害を受けて苦悩されている方は、ぜひ、べリーベスト法律事務所 広島オフィスにまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています