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裁判上の和解とは? 民事裁判でのメリットと流れについて弁護士が解説!

2022年01月17日
  • 一般民事
  • 裁判上の和解
裁判上の和解とは? 民事裁判でのメリットと流れについて弁護士が解説!

広島市は中国地方のなかでも大きな都市であるため、人口も多く栄えています。そして、人口が多いということは、それだけ日常的なトラブルも多くなるということです。

話し合いでトラブルが解決しない場合には、やむをえず裁判を起こすこともあるでしょう。たとえば、「スポーツ中にケガをしたが、相手が誠実に話し合いに応じてくれないため、民事裁判を起こして損害賠償を請求したい」と考えられる方もいるでしょう。

ところで、裁判をしようと民事訴訟の仕組みについて調べてみたら、「和解」をするケースが多いと知って驚かれる方も多いようです。実は、裁判をしたからといって必ずしも裁判所によって判決が下されるわけではないのです。本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が、民事訴訟の流れと「和解」の仕組みについて、メリットやデメリットもあわせて解説します。

1、和解は「裁判外」と「裁判上」の二種類が存在

「和解」とは、争いがあった場合に当事者同士が話し合い、譲り合って問題を解決することをいいます。
和解が成立するためには、当事者の両方が譲歩する必要があります。当事者の一方だけが譲歩しても、和解は成立しません
また、法律上の手続きにおける和解は、「裁判外の和解」と「裁判上の和解」の二種類に分かれます。以下では、それぞれの特徴について解説します。

  1. (1)裁判外の和解

    「裁判外の和解」は、「私法上の和解」ともいわれます。
    民法第695条に規定されている契約の一種であり、裁判所は関与しない点が特徴です。

    裁判外の和解は、当事者間で問題解決のためにお互いが譲歩して、和解成立以降はその問題について争わないことを合意することで、成立します。
    ただし、双方で合意した内容が守られない場合は、契約不履行として合意を解除することもできるのです。

  2. (2)裁判上の和解

    「裁判上」の和解では、裁判所が関与します。また、裁判上の和解には、成立した場合はその内容が和解調書に記載されて、確定判決と同一の効力を有する、という特徴があります。
    たとえば、和解でお金を支払うと合意したにもかかわらずそれを守らずにいると、もう一方は民事執行法が定める手続きにしたがい、強制執行することができるようになるのです

    なお、裁判上の和解には「訴え提起前の和解」と「訴訟上の和解」があります。

    「訴え提起前の和解」は、訴えを起こす前に、当事者双方が簡易裁判所に申し立てて行う和解です。民事訴訟法第275条に規定されている手続きで、将来の訴訟を回避するために行われます。

    「訴訟上の和解」は、訴訟中に当事者が互いに主張を譲歩して、権利関係を認め訴訟を終了させる合意をすることをいい、民事訴訟法第267条に規定されています。

2、裁判上の和解のメリット

裁判所に訴訟を提起したにもかかわらず、なぜ「判決」ではなく「和解」で訴訟を終了させるのか、不思議に思う方もいるかもしれません。しかし、裁判上の和解にはさまざまなメリットがあります。以下では、裁判上の和解のメリットとデメリットについて、解説します。

  1. (1)解決が早い

    和解をすると訴訟が終了するため、後から、「内容に不服があったから」となどの理由で上訴される可能性がなくなります。つまり、紛争を確実に早期解決することができるのです。また、裁判に関する時間や手間、費用なども軽減することができます。

  2. (2)勝ちではないが負けでもない

    訴訟においては、勝訴するか敗訴するか、どのような判決が下されるか裁判が終わるまでわかりません。
    しかし、和解では双方が譲り合うことが必要になりますので、ある程度は請求を認めてもらうことができるでしょう。
    ただし、支払い額を減額したり、分割払いに応じたりするなど、相手側の要求にも譲歩をする必要があります。
    このように、和解は譲歩することによって双方が敗訴するリスクを軽減し、一定の成果を確保できるという点がメリットとなります。ただし、勝訴すれば得られたであろう利益は得られなくなるという点は、デメリットともみなせます。

  3. (3)相手が和解内容を履行する可能性が高い

    和解は当事者の双方が、内容に合意することによって成立します。もちろん、譲歩している部分に対しては不満もあるでしょうが、話し合って得られた結果であるため、判決よりも和解内容を履行してもらえるという期待を持つことができるのです。
    ただし、相手側が和解内容を履行しない場合は、判決と同じく強制執行をする必要があります。

  4. (4)柔軟な内容にできる

    判決は訴訟で提起された内容についてのみ判断することになりますが、和解にはそのような制約はありません。
    そのため、訴訟で取り上げなかった事項についても、和解では当事者の合意で定めることができます

3、和解までの流れ

和解は裁判手続きの中で、いつでも行うことが可能です。以下では、一般的な訴訟の流れと、和解の代表的なタイミングについて説明していきます。

  1. (1)一般的な訴訟提起から終了まで

    民事裁判では、まずは訴訟を提起すべきか否かの検討を行い、裁判外での和解ができない場合は訴訟を提起します。
    訴状が裁判所に受理されると、訴状を受け取った被告は答弁書を提出します。
    そして、当事者の主張や証拠の提出、証人尋問などを経て、裁判官は心証を形成し、判決を下します。
    下された判決の内容に不服がある場合は、上級の裁判所に控訴、さらに不満がある場合は上告することになります。
    このように、裁判で判決が確定するまでには長い時間がかかります。そのため、内容に不服があって控訴した場合などは、長期間争う覚悟が必要となるのです。

  2. (2)和解のきっかけ

    和解は前述したとおり、訴訟手続きの中でいつでも行うことができます。裁判官が和解を勧告することもあれば、当事者の申し出によって行うことも可能です。
    双方が妥協できるのであれば、訴訟を早期に終了させられるため、和解を検討することは大きなメリットがあります
    また、裁判所も強制的な判決を下すより、当事者の合意によって争いが解決することを歓迎するため、裁判官によって和解をすすめられる場合があります。

  3. (3)証人尋問の前後での和解

    公判では、双方の主張や証拠が出尽くした後に、証人尋問を実施します。
    多くの場合は、双方の主張が出そろった段階で判決のおおよその見通しが立つため、証人尋問の前後で、裁判官がそれまでの審理によって得られた心証に基づいて和解をすすめることが多くなるようです。

  4. (4)判決前の和解

    公判で双方の主張や証拠を提出して問題を整理していくと、裁判所も当事者も争いごとの状況の理解がすすむものです。そこで、裁判官は判決を下す前に、和解による解決をすすめるケースがあります。
    敗訴のリスク、裁判が長引くことのデメリットから、判決前のタイミングで和解を受け入れることが多くなるからです。

4、和解をしたら、その後どうなる?

上述したように、裁判上の和解は、判決と同一の「効力」を持ちます。
以下では、和解の持つ「効力」について、解説します。

  1. (1)和解の効力

    裁判上の和解が成立すると、裁判所は、和解の内容を記録する公文書である「和解調書」を作成します。
    この「和解調書」は、確定判決と同一の効力を持ちます。具体的には、以下のような効力があるのです。

    ● 訴訟終了効
    裁判上の和解が成立すると、裁判は終了します。

    ● 執行力
    もし、相手側が和解の内容を守らない場合は、「和解調書」に基づき、強制執行の申し立てをすることができます。

    ● 確定効
    裁判上の和解が成立した場合、無効を申し立てることは原則としてできません。
  2. (2)和解の内容に納得がいかなくなったら?

    裁判上の和解をした後に、考えを改めたり気が変わったりして、「やはり、納得ができなくなった」と和解をやり直したくなる方もおられるでしょう。

    前述したように、裁判上の和解には「確定効」であるため、原則として、和解内容を覆すことは困難です。
    しかし、交渉によって、和解の内容を変更することが可能な場合もあります

    たとえば、「交通事故などで和解をしたが、その後当時にはなかった後遺症が出てきて、通常の生活を送ることが困難になり、困窮したため和解の内容を変更したい」といったケースが考えられます。
    交通事故においては、和解当時に予測できなかった障害が後から発覚することは、たびたび起こる事態です。そのような場合には、和解は後遺症が発生しない前提で結ばれたものであるとして、交渉によってその後の後遺障害の慰謝料や逸失利益を請求することが可能になるケースがあります。
    なお、示談当時予測できなかった後遺症については、示談の効力を限定して後日発生した損害賠償請求を認めた判例があります。(最高裁昭和43年3月15日判決)

5、まとめ

本コラムでは、「裁判上の和解」について民事訴訟の裁判の流れや、和解に伴うメリットとデメリットについて解説しました。

裁判ですべての決着をつけようとすると、時間・費用に関する負担や精神的な負担が、当事者の双方にとって重くのしかかります。したがって、多少納得がいかなくても譲歩しあい、和解を選択することで、最終的には裁判で決着をつけるよりも良い結果が得られるというケースは、多々あるのです

ただし、裁判上の和解には法的な効力があります。納得できないままに和解を受け入れてしまうと、のちに後悔しても取り返しがつけかなくなるというリスクがあります。

裁判上の和解を検討されている方は、お早めに、弁護士にまでご相談ください
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、「民事訴訟を提起したが和解をすすめられたて迷っている」「和解をしたいが、どうすればいいのかわからない」という方からのご相談も受け付けております。民事事件の経験豊富な弁護士が、和解手続きの相談や書類作成などについて、全力でサポートいたします。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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