ネットで購入した商品が届かない......。泣き寝入りしないための対処法
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国民生活センターが発表している情報によると、2020年年度の12月31日時点で、インターネット通販に関する相談が20万508件、インターネットオークションに関する相談が3,339件、寄せられていました。
2017年以降、インターネット通販に関する相談件数は20万件以上を上回り続けており、数多くの人がネット通販のトラブルに苦しんでいることがうかがえます。
「ネットで購入した所品が届かない」という事態が起こると、金銭的にも損失であるだけでなく、精神的なストレスも多大に発生してしまうでしょう。消費者としての権利を主張して、泣き寝入りせずに対応するべきです。
本コラムでは、買ったはずの商品が届かない場合に、消費者ができる対応について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィス所属の弁護士が解説いたします。
1、商品が届かない! 民法上取るべき方法とは
商品が届かない場合、民法上、「債務不履行」(民法415条1項)にあたる可能性があります。
「債務不履行」とは、ざっくりいうと、債務の本来の趣旨に従った履行をしないことをいいます。
債務不履行の代表的なものには、
① 履行遅滞(民法412条)
② 履行不能(民法412条の2)
③ その他の債務不履行
の3つがあります。
このうち、インターネットによる通信販売でも起こりやすい履行遅滞と履行不能について、詳しくご説明します。
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(1)履行遅滞の場合、まずは履行を求める
履行遅滞とは、簡単にいいますと、履行することができるのに、履行すべき時期が来ても、履行しないことをいいます。
履行することがそもそもできない場合は、後でご説明する「履行不能」というものになります。
履行すべき時期について、「✕✕日までに納品します」と記載されている場合のように、はっきりとした期限があるときは、その日が履行すべき時期になることがほとんどです(民法412条1項)。なお、通信販売の広告には、通常、「商品の引き渡し時期」を表示しなければならないとされていますので、広告に記載されている場合が通常です(特定商取引に関する法律(通称「特定商取引法」といいます)11条)。
しかし、期限を特に決めていない場合は、「履行してください」というような履行の請求がないと、履行遅滞になりません(民法412条3項)。そのため、注文時、ウェブサイトには「準備ができしだい発送します。」などと表示されており、はっきりした期限が決まっていなかった場合は、まず、履行を求めることが必要です。
履行を求める方法について、法律でこれと決められている方法があるわけではありません。そのため、履行を求める方法は、メールなどでもかまわないのですが、メールですと、業者から後で「それはうちのメールアドレスではない。」といわれるケースもありえます。メールアドレスの使用者を証明するのは大変ですから、弁護士が履行を請求する場合は、内容証明郵便などで、履行を求めることが多いです。
履行遅滞の場合、
① 強制執行をする(民法414条)
② 損害賠償請求をする(民法415条)
③ 解除(民法541条)
などの方法があります。
① 強制執行をする場合
強制執行をするには、公正証書や確定判決、支払督促などの「債務名義」といわれるものが必要です。
ネット通販で購入した場合であっても、「債務名義」をもっていないのが一般的ですし、「債務名義」を手に入れるには時間がかかるのが通常ですから、いきなり強制執行をすることはできないのが通常です。
② 損害賠償請求をする場合
損害賠償請求をする場合、天災で遅れた場合のように、帰責性がないときは損害賠償請求ができなくなるといわれています(民法415条1項ただし書き)。そのため、新型コロナウイルスがはやる前にマスクを注文していて、新型コロナウイルスによって品薄になり、仕入れが遅れたため、納品が遅くなっているような場合は、業者に帰責性がないとされ、損害賠償請求ができないと判断される可能性があります。
③ 解除をする場合、催告が必要!
解除をするには、「✕✕日までに履行してください」などと、相当の期限を決めて履行を求める必要があります。ざっくりいいますと、履行を求めることを「催告」といいます。期限を決めないで催告した場合も、相当の期限がくれば解除ができるとした裁判例がありますから、期限を明らかにして催告しないと解除ができなくなるわけではありません。しかし、いつまでも履行を待つのも精神衛生上よくありませんし、いつ裁判を起こすかといった方針を立てにくいですから、催告の際、一定の期限をもうけておいた方がよいかと思います。
なお、一定の期限をどのように決めたらいいかは難しいところです。しかし、催告の際に決めた期限が短すぎた場合であっても、相当の時間がたてば解除ができるとされた裁判例もありますから、催告の際に決めた期限が少し短くても後で解除ができなくなるわけではありません。 -
(2)履行不能の場合
履行不能とは、ざっくりいいますと、社会通念上、履行ができないときのことを言います。
履行不能の場合、履行そのものを請求しても、意味がありません。
そのため、
① 損害賠償請求をする(民法415条)
② 代償請求をする(民法422条の2)
③ 解除をする(民法542条1項1号)
などの方法があります。
① 損害賠償請求について
天災によって履行ができなくなった場合は、損害賠償ができなくなるといわれています。そのため、マスクの売買契約であっても、新型コロナウイルスによって、工場が止まってしまったため履行不能になったような場合には、業者に帰責性がないとされ、損害賠償請求ができないとされる可能性もないではありません。
② 代償請求について
代償請求とは、たとえば、中古住宅の売買をしたところ、不動産業者がその物件に火災保険をかけていましたが、その物件が燃えてしまって不動産を渡すことができなくなった場合、かけていた保険金請求権を、譲渡するように求める場合が典型例です。
ざっくりいいますと、代償請求権とは、契約していた物を渡すことができなくなったときに、履行ができなくなったその原因と同じ原因によって、契約していた物にかわる権利や利益を得たときに、その権利や利益を譲渡するよう求めることができる権利のことをいいます。
③ 解除について
履行遅滞の場合は、解除の前に「催告」をすることが必要でした。
ですが、履行不能の場合は、履行できないものはできないので、催告しても意味がありません。そのため、催告をせずに、解除をすることができます。
解除をするための方法については、特に法律上決まった方式があるわけではありません。しかし、弁護士が解除をする際には、「解除をします」という内容の内容証明郵便を送るのが多いように思われます。
2、特定商取引法上の制度について
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(1)法定返品権
民法の制度について説明してきましたが、民法以外にも、法律上、ネットショッピングなどの通信販売で事業者から商品を購入する消費者を保護するしくみがあります。
特定商取引法には、商品を受け取ってから8日以内であれば、申し込みの撤回や解除ができる旨の規定があります(特定商取引法15条の3)。
送料は購入者が負担しなければなりませんが、届いた商品の品質に疑問があった場合には、使いやすい制度です。 -
(2)定期購入問題
また、「初回500円!」とのうたい文句で商品を購入させる通信販売サイトもあります。そのため、お試しで1回だけ購入するつもりが、いつの間にか高額な定期契約の申しこみになっており、解約ができない、というトラブルが多発していました。
そこで、特定商取引法施行規則では、通信販売業者に対し、商品を2回以上続けて購入する必要があるときは、その旨、金額、契約期間その他の販売条件を表示しなければならないと定めました(特定商取引法施行規則8条7号)。
業者がこれに違反していた場合、消費者にとって不利益な事実をあえて伝えなかったとして、取り消すことができる可能性があります(消費者契約法4条2項)。
3、クレジットカードで決済していた場合は支払いを止める手続きを
また、クレジットカードで決済した場合、クレジットカードの支払いを止める手続きをしておかなければ、引き落とされてしまいます。
割賦販売法では、クレジットカードを使って、商品を購入した場合、商品の購入契約が解除されたときは、クレジットカード会社にも解除を主張できるとしています(割賦販売法30条の4)。本来、クレジットカード会社との契約は、売買契約とは別の契約なので、売買契約の解除などを主張できず、クレジットカード会社が引き落としをしてしまいます。そのような事態を避けるために作られた制度です。
とはいえ、この制度を利用するには、クレジットカードを使った、2か月以上、3回以上の分割支払いの場合で、支払総額が4万円以上であるとき(ただしリボルビング方式と呼ばれる方法の分割支払いの場合は3万8000円以上)とされています。
したがって、一括払いや2回払いのときは、クレジットカード会社からの支払い請求に応じる必要があります。
とはいえ、法律上の決まりはないですし、可能性は低いですが、クレジットカード会社に相談すると、支払いを止めてくれるケースもありえますから、まずはクレジットカード会社に相談してみてもよいかもしれません。
4、店側と連絡が取れない場合
店と連絡が取れない場合、その原因としては、店が倒産してしまった場合、そもそも詐欺だった場合など、いろいろなケースが考えられます。
こちらがお金を払ってしまった後で、店が在庫もないまま破産してしまった場合、債務不履行解除したとしても、すべてのお金を回収することはかなり難しいといわざるを得ません。破産する場合、通常は、債権者に返金をするためのお金が残っていないからです。
詐欺にあった可能性がある場合、いろいろな方法があります。
まず、① 警察に相談するという方法が考えられます。警察に相談し、被害届が受理されると、捜査が始まります。実際に詐欺であった場合、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(通常、「振り込め詐欺救済法」とよばれています)により、犯罪に使われた口座にあったお金から、一定程度被害回復分配金を受けられる場合があります。しかし、詐欺をしたお金を、犯人らが使ってしまっているケースも多く、お金が返ってこないケースも多くあります。
そのほか、② 特定商取引法などで、消費者団体による団体訴訟の制度がありますが、差し止め請求が認められているにすぎず、お金を取り返したいという要望にこたえるものではないのが現状です。
5、ネットショッピングのトラブルの相談先
ネットショッピングのトラブルがあった場合、いろいろな相談先があります。
電話番号が「188(いやや)」で、覚えやすいです。
また、通話料金(携帯電話会社と通話料定額の契約をしていても、ナビダイヤル料金がかかりますので注意が必要です)はかかりますが、相談料は無料です。
消費生活センターなどにつながり、相談ができます。
② 国民生活センター
消費生活センターに平日電話がつながらない場合などに、かけてみるとよいでしょう。
③ 新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットライン
国民生活センターが、新型コロナウイルスの給付金をかたった消費者被害については、フリーダイヤルの相談窓口をもうけているようです(0120-213-188)。
④ 警察署
刑事事件として取り上げてほしいときは、最寄りの警察署の電話番号を調べて、相談してみましょう。
⑤ 弁護士
弁護士に相談するのもひとつの方法です。相談や依頼をする際に有料になるため、商品の金額によってはかえって高くついてしまいから、高額な被害にあった場合や、公的機関に相談したものの、思うように動いてくれない場合などに検討してみるとよいでしょう。
6、まとめ
被害にあわないように、ネットショッピングをするときは、よく情報を確認することが必要ですが、それでも被害にあってしまうことはあります。
弁護士への相談をお考えの際は、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所 広島オフィスへお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています