経営者も罰せられる? 従業員の不法就労が発覚した場合の対策を解説
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飲食店の経営をしていて、外国人を雇用しているものの、在留期間が終わりそうな人がいました。
「ちょっとくらいオーバーステイさせてもばれないのでは?」と考えているものの、不法就労によりどういった罰則を科されるのか気になる、そんな方もいらっしゃると思います。
そんな経営者さまのご疑問に広島オフィス所属の弁護士がお答えします。
1、不法就労とは
外国人の方を雇いうとき、不法就労をさせてしまうと、ご自身が罰則などの不利益を受けることがあります。では、不法就労とは何でしょうか。
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(1)在留資格には種類がある
不法就労のお話をする前に、予備知識として、在留資格にはいろいろな種類があることを知っておく必要があります。
外国人が日本に在留するには、在留資格が必要です。在留資格とは、外国人が日本に在留し活動することができる身分又は地位で、活動によって類型化されているものと思えばわかりやすいでしょう。
そして、在留資格には「留学」「短期滞在」などいろいろな種類がありますが、ざっくり言いますと、この在留資格によって、就労ができるかどうかが大きく変わってきます。
そして、就労ができるかどうかについては、在留資格が、① 身分系の在留資格か、② 非身分系の在留資格かという区分が重要です。① 身分系の在留資格:永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者などのことで、入管法別表第2というところに書かれているもの
② 非身分系の在留資格:①以外の在留資格のこと -
(2)出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」)19条1項
在留資格のうち、先ほど述べた①身分系の在留資格を有する外国人については、就労活動についての制限が、基本的にはありません。日本人の配偶者である外国人が就労するには、基本的には制限がないということになります。
しかし、②非身分系の在留資格を有する在留資格を有する外国人については、その在留資格に基づく活動の範囲内の就労は認められますが、在留資格外活動となる就労活動は、原則として認められません(入管法19条1項)。例外として、資格外活動としての就労をすることの許可(これを通称「資格外活動許可」といいます)があり、許可の範囲内であれば、就労活動をすることができます。
具体例をあげますと、「教育」の在留資格で日本に来た外国人の方は、申請の際に予定されていた小学校で授業をして報酬をもらう、ということについては在留資格内の活動として認められますが、この外国人の方がコンビニでレジ打ちなどのアルバイトをすることは、資格外活動にあたるため、原則として認められないことになります。そして、この方がコンビニでレジ打ちのアルバイトをするためには、資格外活動としての許可が必要になるわけです。 -
(3)不法就労の意味
ようやく本題になるのですが、不法就労とは、入管法で、以下にあたるものをいうとされています。
・ 入管法19条1項に違反する就労活動
先ほどご説明した入管法19条1項の規定に違反するような就労活動は、できません。
・ 不法入国者や不法上陸者、不法残留者の行う報酬その他の収入を伴う活動
在留資格の期限が切れてしまった方や、不法入国をした方は、収入を伴う活動を禁止されています。
2、不法就労によって雇用主が問われる法的責任は?
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(1)雇用主の責任
・ 不法就労助長罪
外国人労働者を雇い、この外国人の就労が不法就労になった場合、雇用主はどのような責任を問われるのでしょうか。
結論から言いますと、不法就労助長罪という罪があり、これにあたることになります(入管法73条の2第1項)。
不法就労助長罪とは、
① 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
② 外国人に不法就労活動をさせるために自己の支配下においた者、又は
③ 業として、外国人に不法就労をさせる行為又は②の行為に関しあっせんした者
に成立する罪です。
そして、不法就労助長罪にあたると、3年以下の懲役か、300万円以下の罰金か、又はその両方を科すとされています(入管法73条の2第1項)。
重い法定刑がありますから、注意が必要です。
・ 雇用者の強制退去
また、外国人雇用者自身が外国人である場合は、雇用者も、強制退去事由にあたり(入管法24条1項3号の4)、退去強制される可能性があります。 -
(2)知らなくても罪が成立することに注意!
また、気を付けていただきたいのは、知らなかったでは済まされないということです。
どういうことかといいますと、入管法73条の2第2項で、ざっくりいいますと、以下の点について知らなかったとしても、不法就労助長罪が成立するとされています。- その就労活動が、外国人の在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であること
- その外国人労働者がその外国人の活動を行うに当たり資格活動の許可を受けていないこと
- その外国人労働者が不法入国者や不法上陸者、不法残留者であったこと
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(3)在留資格等をよく確認する必要がある
先ほど述べたように、知らなかったとしても不法就労助長罪が成立することになりますので、外国人の方を雇うときは、在留資格をよく確認する必要があります。
在留資格の確認の仕方などは、後述します。
3、「バレないから大丈夫」ではない!
バレないからいいや、と思われている使用者の方もいらっしゃいますが、外国人の方は、在留カードによって在留資格を管理されていますので、いずれわかってしまうおそれがあります。
また、バレないからいいかと思って不法残留(オーバーステイと呼ばれることも多いようです)している外国人の方を雇い続けていたりしますと、不法就労が判明した際に自分に不法就労助長罪が成立するほか、不法残留している外国人の方が強制送還された場合などに、その外国人の方が働けなくなったことにより、納期が遅れ、大切な取引先を失う恐れがあります。
そのため、オーバーステイにならないよう、ちゃんと手続きをしてもらいましょう。
4、在留カードを確認する際の注意点
それでは、外国人労働者を雇う際、どのような書類のどのような点をチェックしたらよいのでしょうか。
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(1)見るべき書類
まずは、以下の書類で、その外国人の方がどのような在留資格を持っているのか確認します。
中長期滞者の場合は、在留カードにより確認することができます。
それ以外の場合は、旅券(パスポート)状の認印によって確認することができます。
また、就労資格証明書や在留資格証明書という書類もあります。
これらを見てみると在留資格が確認できますので、見せてもらうとよいでしょう。 -
(2)見るべきポイント
上記の書類を見せてもらったら、以下の点などを確認します。
- 在留資格を持っているか
- 在留期間はいつまでか
- 在留資格は何か
- 在留資格に基づく活動の要旨
- 就労してもらおうとしている活動が、在留資格外活動にあたるかどうか
- 在留資格外活動になる場合、資格外活動許可を受けているかどうか
- 資格外活動許可を受けている場合、許可の範囲
これらを確認し、就労してもらうことが不法就労にならないことを確認してから雇用するようにした方が安全です。
なお、入管法ではありませんが、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称雇用対策法と呼ばれています)においても、28条1項で、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、在留資格や在留期限などを確認しなければならないとされています。
5、まとめ
外国人の方を雇う場合には、以上に述べたように、入管法のしくみを理解したうえで、就労してもらってもよいかどうかを正しく判断することが必要です。
しかし、在留資格の種類が多い上、資格外活動にあたるかどうかの判断に悩むものもありますから、ご自身で判断することが難しいこともあります。
また、入管法は複雑ですので、ここでご説明しきれなかった注意点などもあります。
一歩誤ってしまうと、就労してもらう外国人の方にも、ご自身にも大きな不利益が生じてしまいますから、少しでも迷われたり、ご不安に思われたりしたときは、弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています