アルバイトを雇う時には条件の通知が必須! 労働契約書の作成方法とは

2019年05月24日
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アルバイトを雇う時には条件の通知が必須! 労働契約書の作成方法とは

広島労働局では、労働者ばかりでなく事業主に向けても総合労働相談コーナーを設けています。しかし、できればトラブルが起きないように雇用契約の基本は理解しておくか、法律を熟知した専門家に確認しておきたいものです。

特にアルバイトやパートは正社員に比べ業務上の責任が軽いと見なされる風潮があるためか、雇用する際の手続きやリスク管理も不十分なものとなりがちです。特に個人や小規模事業者が新たに人手を調達するときには、どういった手順でアルバイトやパートを雇えばよいのか不明な場合もあるでしょう。

そこで今回は、アルバイトやパートを雇う際にどのような書面が必要なのか、それらの書面はどういう場合に役立つのかについて、広島オフィスの弁護士が解説します。

1、アルバイト・パートを雇う際に必要な書面とは?

アルバイトやパートを雇う場合、労働者と雇用契約を結びます。このとき、法律で作成や交付が必要とされている書面と、法律上必要ではないもののトラブルを避けるために作成したほうがよい書面があります。

以下では、雇用契約締結の際に作成すべき書面について確認していきましょう。

  1. (1)雇用契約書と労働条件通知書

    まず結論から言いますと、雇用契約書の作成や交付は必ずしも必要ではありません。法律(労働基準法およびパートタイム労働法)においては,労働条件を明示する書面が作成・交付されていれば問題はないとされています。

    これは、労働時間や業務内容、賃金といった、労働させる上での諸般の条件を通知する書面です。

  2. (2)労働条件の明示について

    労働基準法第15条第1項には、使用者に課される労働条件明示義務が定められています。

    ここで、特定の事項については「厚生労働省令で定める方法」、すなわち労働基準法施行規則第5条第3項に規定のある「書面の交付」により明示しなければならないとされています。

    労働条件を明示した代表的な書面が労働条件通知書であり,記載すべき事項は以下の6項目です。

    • 契約期間
    • 就業場所、業務内容
    • 有期雇用の更新基準
    • 始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩、休日、就業時転換
    • 賃金の決定、計算・支払いの方法、締め日と支払い時期
    • 解雇事由など、退職関連


    これらに加え、会社に定めがある場合には、以下の項目も記載する必要があります。

    • 昇給
    • 退職手当の定めの適用対象範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払い時期
    • 臨時賃金、賞与・最低賃金額
    • 労働者負担の食費、作業用品その他
    • 安全・衛生
    • 職業訓練
    • 災害補償・業務外の傷病扶助
    • 表彰・制裁
    • 休職


    パートやアルバイトを雇う場合にも、いつからいつまで、どこで何をさせるか、就業時間や休憩、賃金、退職といった重要事項はきちんと書面に記して、渡さなければなりません。人員を募集する前に決めておくことを強くおすすめします。

  3. (3)雇用契約書について

    雇用契約書は、法律上の作成・交付義務はありません。しかし、のちのちのトラブルを避けるためには作成したほうがよい書類です。

    なぜなら、労働条件通知書はあくまでも一方的な通知にすぎないためです。したがって、記載された内容に労働者側が同意したことの証拠にならない可能性があります。のちに労働条件について争いが生じた場合、労働者側の署名や捺印のある雇用契約書があれば、使用者側にとって有利となるでしょう。

2、雇用契約書や労働条件通知書を作成する場合の注意点

雇用契約書や労働条件通知書を作成するにあたり、失念しがちなポイントや注意しておくべき点について説明します。

  1. (1)必要な記載事項と独自ルールの記載

    労働条件通知書は労働基準法施行規則で記載すべき事項が定められています。しかし、それとは別に、会社や事業所における独自のルールを決めておきたい場合もあるでしょう。

    たとえば、通勤に関する事項や社内レクリエーションの定めといったルールが考えられます。こうした事項についても、労働者との間で合意したという事実を示したければ雇用契約書に書いておくとよいでしょう。

    ただし、独自ルールを労働条件通知書などで定め合意を得ていたとしても、労働基準法などに違反する内容であれば法的に認められません。作成する際は法に触れていないかどうかを入念にチェックする必要があるでしょう。

  2. (2)控えの作成と労働者への交付

    パートやアルバイトで働く労働者は、使用者から契約書や労働条件通知書を渡されていないというケースも少なくありません。

    雇用契約の内容や条件は使用者だけがわかっていればよいというものではなく、労使がお互いに確認できるような状態にしておく必要があります。書面は控えを作り、労働者にもきちんと渡しておくようにしましょう。

  3. (3)試用期間のパート・アルバイトについて

    試用期間はあくまで仮の契約状態だとして、契約書などを渡さなくともよいと考える使用者もいます。

    しかし、たとえ試用期間であっても、雇用契約が結ばれている点には変わりありません。したがって、労働条件通知書の交付は必要です。

3、雇用契約書や労働条件通知書を確実に作成するために

  1. (1)内容の不備はトラブルの元

    雇用契約書や労働条件通知書は、記載漏れがないように注意して作成しなければなりません。

    使用者の立場から特に気をつけたいのが、制裁(懲戒)に関する事項です。労働者が業務上望ましくない行為を働いた場合、使用者には制裁を加える権利があります。しかし、制裁を加えるにはあらかじめ制裁の内容や条件を明示しておかなければなりません。

    労働条件通知書や就業規則に制裁の規定がない場合や、規定があったとしても不明確な場合は、労働者を処罰できないことになりかねません。アルバイトの不適切な行動をとらえた動画や画像がWeb上に広がり、会社の評判を低下させる事件も起きている昨今、各書面の記載内容にはいっそうの注意を払う必要があるといえるでしょう。

  2. (2)各書面のチェックには顧問弁護士サービスの活用を

    雇用契約書や労働条件通知書が大事といわれても、具体的な記載内容がわからない方もいるでしょう。もしくは、作成してみたものの不備はないのかが気になるなどの懸念をお持ちの方もいるかもしれません。

    そのような場合には、弁護士事務所が提供している「顧問弁護士サービス」を活用するという方法があります。これは、弁護士や税理士、社会保険労務士、弁理士が連携し、契約書の作成や適切かどうかの内容チェックなどを必要なときに必要なだけ行うサービスです。ベリーベスト法律事務所でも提供しています。ぜひご検討ください。


    安全・確実に事業を行いたいという方は、弁護士からのアドバイスを受けながら書面を作成されることをおすすめします。

4、まとめ

今回は、アルバイトやパートを雇う際に重要となる雇用契約書や労働条件通知書について説明しました。

人を雇う場合、業務内容や賃金だけではなく、さまざまな取り決めが必要となります。中には実際に雇ってからトラブルが起きてしまい、取り決めておいたほうがよかったと後悔する事項があることに気づくケースもあるでしょう。

アルバイトやパートを雇おうと考えていて、必要な手続きや書面がよくわからないということもあるでしょう。これでよいのか不安だと思われたら、ぜひベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士に相談してください。契約書のチェックから法的なアドバイスまで、ていねいに対応します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています