会社再建のための各手続きの特徴と弁護士に依頼するメリットについて
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「毎月の支払いのことで頭が一杯で、本業に身が入らない」という経営者は結構います。後継者もいないし、いっそのこと倒産してしまった方が楽なのではないかと考えたこともあるかもしれません。
しかし、会社を再建する方法はいろいろあります。債権者に債権カットをお願いするのは申し訳ないと思うかもしれませんが、破産してしまう方が債権者に迷惑を掛けることになります。
そこで、今回は会社再建の方法と各手続きの特徴について解説しながら、弁護士に依頼するメリットについて説明していきます。
1、会社再建の方法はどのような方法があるか?
会社再建の方法には、大きく分けて、「任意整理」と「法的整理」があります。任意整理は、債務者と債権者のみで行う「純粋な私的整理」と第三者を介して行う「事業再生ADR」があります。法的整理には、「民事再生」と「会社更生」があります。
「任意整理」は、基本的に債権者の同意が得られた場合に実行できるものです。それに対し、「法的整理」は、一定の可決要件を満たす同意を得られれば、反対の債権者に対しても法的効果を及ぼすことができます。
これだけ見ると、法的整理の方が良さそうですが、法的整理は、裁判所が関与するので、手続きが厳格で時間も費用もかかるというデメリットがあります。これに対し、任意整理は、債権者の同意という部分のハードルは高いものの、同意を得られれば、短期間でコストも掛けずに処理することが可能です。裁判所の関与もないため、手続面での制約を受けることなく自由に再生計画を実施することができるというメリットがあります。
このように、それぞれの手続きには一長一短があって、どちらが優れているということではなく、債務者の状況や債権者の数など個別の事情に応じて選択されるべきものです。
2、各手続きの特徴
任意整理と法的整理のそれぞれの手続きの特徴について説明します。
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(1)任意整理
① 純粋な私的整理
資金繰りに窮して弁済期に弁済ができないと、債権者から差し押さえを受けたり、訴えられたりする可能性があります。そうなる前に、債権者に事情を説明して返済の猶予を求めたり、一部債権をカットしてもったりするなどして再建を図るのが、「私的整理」です。
法的整理の場合、「倒産」となるので信用の毀損(きそん)が大きく、また、取引先も含めて一律に処理されるのに対して、私的整理の場合には、大口債権者(金融機関)の同意を得て、返済の猶予や債権の一部カットをしてもらうというものなので、取引先の債務は通常どおり弁済できるなど柔軟な対応が可能になります。また、私的整理は非公開で行われるため、外部に知られることはなく信用の毀損も最小限で済みます。
基本的に債権者の同意が必要なので、債務者は、不要な財産の処分、債務の減免と猶予について債権者と協議を行い、合意を得る必要があります。債権者の理解が得られそうな場合に有効な手続きです。
② 事業再生ADRなど
事業再生ADRは、「過剰債務に悩む企業」の問題を解決するため、平成19年度産業活力再生特別措置法の改正により創設され、平成25年度産業競争力強化法により引き継がれた制度です。基本的には私的整理と変わりませんが、間に中立的な機関が入ることで公正さを担保し、解決を図るというものです。「一般社団法人事業再生実務家協会」が法務省より認証を受けています。
これと似たような制度として、「中小企業再生支援協議会」による支援協議会スキーム、「地域経済活性化機構(REVIC)」による再生支援、RCCによる再生支援スキームなどがあります。
それぞれ、目的や対象が微妙に異なるので、自社がどの機関でADRするのが適切なのか見極める必要があります。私的整理では債権者の同意を得られるかが微妙だが、法的整理は避けたいという場合に適した制度と言えます。 -
(2)法的整理
① 民事再生
民事再生は、民事再生法による会社再建手続です。民事再生法の目的は、「経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。」と定めています。
簡潔に民事再生を説明すると、債権者の多数の同意を得て再生計画を定め、裁判所の認可のものと、債権カットなどの利害を調整して債務者の再生を図るということです。個人事業主や中小企業はもちろん、大企業でも利用できるものです。私的整理で債権者の合意を得ることは難しいと判断した場合などに選択されます。
民事再生の特徴は、再生手続開始前の経営陣が継続して事業を行うができるということです。大企業であれば経営に失敗したのなら、前の経営陣は退陣すべきとなるのですが、中小企業の場合、社長の人脈や手腕によって経営が成り立っているということも多いので、現経営陣に引き続き経営することを認めています。
② 会社更生
会社更生は、会社更生法による会社再建手続です。会社更生法の目的は、「窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする。」と定めています。
民事再生法の目的と似ていますが、民事再生法では、「債務者」となっているところが、会社更生法では、「株式会社」となっています。民事再生は、「個人」や「株式会社以外の法人」も対象ですが、会社更生法は「株式会社」のみが対象です。
会社更生法は、株式会社の中でも大規模な株式会社の再建を想定しています。大規模な株式会社の倒産となると、その影響も大きいので、担保権者や租税債権者すら手続きに取り込む強力な効力を持つ法律となっています。そのため、大企業で租税債権や担保権が多くある企業などが利用します。
また、調整の対象も民事再生法が「債権者」としているのに対し、会社更生法は、「債権者」「株主」「その他利害関係人」としています。大規模な株式会社の場合、その影響は債権者にとどまらず、株主や従業員などの利害関係人にも及ぶので、利害調整の対象が広くなっています。
会社更生法の手続きは非常に厳格で、時間もコストもかかります。会社更生の開始決定後の経営は、更生手続開始前の経営陣は原則として退陣し、更生管財人が行います。ただし、適正を調査した上で、更生手続開始前の取締役も管財人になることができます。
3、各手続きの流れ
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(1)純粋な私的整理
純粋な私的整理は、法的整理と異なり決まった手続きやスケジュールというものはありません。ただ、大まかな流れとしては、
① 弁護士との事前の打ち合わせ
② 財産状況の把握
③ 金融機関への説明会の開催(複数回実施)
④ 再建計画案について債権者と合意
となります。 -
(2)事業再生ADR
事業再生ADRは、
① 事業再生実務家協会に事前相談
② 事業再生ADRの申し込み
③ 債権者に「一時停止通知」を発する
④ 計画の決議
⑤ 計画の実行
となります。計画の決議で同意を得られなければ法的整理に進むことになります。 -
(3)民事再生
民事再生は、次のような流れになります。
① 弁護士などと事前相談
現状がどのような状態なのかを説明していただき、申立費用や予納金の額、必要な書類などについて説明を受けます。
② 申立の準備作業
財産状況の把握や民事再生手続を行う上で必要な人員の確保、当面の資金の確保などを行います。
③ 民事再生の申し立て
裁判所に対して、予納金を納付した上で、民事再生申立を行います。弁護士に委任している場合には弁護士が行います。裁判所より弁済禁止の保全処分が出ると、支払いはストップすることになります。あわせて、弁護士等を監督委員に選任しますので、以後は監督委員の同意のもと手続を進めていくことになります。
④ 債権者説明会の開催
申立後すぐに第1回債権者説明会を開催し、債権者に対して謝罪し、これまでの経緯や今後の流れについて説明します。
⑤ 民事再生手続開始決定
裁判所は、再生が可能と判断した場合、申し立てから1、2週間程度で、民事再生手続開始決定を出します。これで、再生手続がスタートします。
⑥ 債権調査・財産評定
債権調査は、債権を届け出てもらい、その内容が正しいか確認する作業です。財産評定は、会社に財産がどのくらいあるのかを評価するものです。
⑦ 再生計画案の提出・認可
債務免除の割合を示して、弁済計画を定めるのが、再生計画案です。債権者の過半数の同意が得られれば裁判所は再生計画認可決定を行います。
⑧ 再生計画の履行
再生計画に従い履行していきます。 -
(4)会社更生
会社更生は、次のような流れになります。
① 弁護士などと事前相談
現状がどのような状態なのかを説明して頂き、申立費用や予納金の額、必要な書瑠などについて説明を受けます。
② 申し立ての準備作業
財産状況の把握や民事再生手続を行う上で必要な人員の確保、当面の資金の確保などを行います。
③ 会社更生・保全の申立て
裁判所に対して、予納金を納付した上で、会社更生の申立を行います。弁護士に委任している場合には弁護士が行います。
④ 保全管理人の選任
裁判所によって弁護士等の保全管理人が選任されます。
⑤ 会社更生手続の開始決定
保全管理人からの報告を受けて、裁判所が更正の可能性があると判断した場合には手続きの開始決定がなされます。
⑥ 更生管財人の選任
開始決定後、更生管財人が選任されます。更正管財人は経営能力に長(た)けた人が選任されます。
⑦ 債権届出・財産評定
債権調査は、債権を届け出てもらい、その内容が正しいか確認する作業です。財産評定は、会社に財産がどのくらいあるのかを評価するものです。
⑧ 更生計画案の提出・認可
担保権、先取特権、更正債権などの権利について優先順位を考慮して、弁済計画を定めるのが、更正計画案です。権利の種類により異なる可決要件が定められており、それぞれの要件を満たした場合に裁判所は更正計画認可決定を行います。
⑨ 更正計画の履行
管財人は更生計画に基づいた債務の弁済を行います。
4、弁護士に相談するメリット
これまで説明してきたとおり、会社再建する方法はいろいろあります。どの手続きが最適かを判断するのは再生手続の経験がないと難しいものです。倒産法の経験豊富な弁護士に依頼すれば、適切な手続きのアドバイスが得られるでしょう。
また、任意整理であれば、債権者と債権カットや弁済の猶予などについて交渉しなければなりません。これは債務者の立場では非常につらいものです。場合によっては厳しい叱責(しっせき)を受けるでしょう。弁護士がいれば、これらの交渉を任せることができるので、精神的に楽になります。
法的整理を行う場合には、各種申立書の作成など専門的な内容の書面を作成しなければなりません。その点、弁護士に依頼すれば申立書の作成から提出まで任せることができます。
5、まとめ
今回は、会社再建について解説してきましたが、会社再建で大事なことは、資金繰りが厳しくなる前にできるだけ早く会社再建に向けて動き出すことです。
そのためには、早い段階から弁護士に相談することが大事になります。今回説明したように、会社再建を弁護士に依頼するメリットはたくさんありますので、迷われている方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、会社再建について経験豊富な弁護士が在籍していますので、いつでもお気軽にご相談ください。
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