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事業譲渡と株式譲渡の違い|メリット・デメリットや選択のポイント

2022年10月04日
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事業譲渡と株式譲渡の違い|メリット・デメリットや選択のポイント

広島商工会議所が会員企業130社を対象に行った調査によると、令和4年5月の各企業の景気判断の状況を示す「景気動向指数(DI)」は前月から4.7ポイント上昇してマイナス10.9となり、2カ月ぶりに上向きとなりました。ただし依然としてマイナスの水準であり、全体的には、「景況はよくない」と捉えている企業が多いと考えられます。

他社の事業を買収し、または他社に事業を売却する「M&A」を実施する際には、主な手法として「事業譲渡」や「株式譲渡」などが挙げられます。これらは、法律上の効果やメリットとデメリットが異なるため、状況に合わせて適切な手続きを選択することが大切です。

本コラムでは、事業譲渡と株式譲渡の違いについて、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。

1、事業譲渡と株式譲渡|両者の違いは?

まずは、法的な観点から、事業譲渡と株式譲渡の概要と、両者の違いについて解説します。

  1. (1)事業譲渡とは

    事業譲渡とは、会社の事業を他社へ譲渡する取引です。

    事業の用に供されている設備・機械・店舗などの資産、知的財産権やノウハウ、従業員との雇用関係などを、契約によって譲受人(譲受会社)へ引き継ぐことになります。

  2. (2)株式譲渡とは

    株式譲渡とは、会社の株式を他人へ譲渡する取引です。

    M&Aの文脈では、特にオーナー株主が後継者や買収先へ株式を譲渡して、会社支配権を移転する取引を意味します。

  3. (3)事業譲渡と株式譲渡の違い

    事業譲渡と株式譲渡の法律上の違いは、事業譲渡が「事業」の移転であるのに対して、株式譲渡は「会社の支配権」の移転、つまりオーナーの変更であるということです。

    事業譲渡の場合、会社から「事業」を切り出して、譲受人に移転します。
    これに対して株式譲渡の場合には、会社の組織や事業を温存したうえで、会社全体に対する支配権を譲受人に移転することになります。

2、事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡は、会社から事業を切り出して譲渡する取引であることから、以下のようなメリットとデメリットが存在します

  1. (1)事業譲渡のメリット

    事業譲渡の主なメリットは、以下のとおりです。

    ① 譲渡する事業を選べる
    たとえば、不採算事業と好調な事業が同じ会社に併存している場合に、好調な事業のみを事業譲渡して残りを清算するなど、譲渡する事業を選べるメリットがあります。

    ② 簿外債務を譲渡の対象から除外できる
    事業譲渡では、資産・債務・契約関係などを個別に移転するため、引き継ぎたくないものは譲渡の対象から除外できます。
    たとえば、譲渡人(譲渡会社)側に簿外債務が存在することが懸念される場合、簿外債務を事業譲渡の対象から除外することで、譲受人側が負うリスクを軽減することができます。
  2. (2)事業譲渡のデメリット

    事業譲渡の主なデメリットは、以下のとおりです。

    ① 譲渡の手続きが煩雑
    事業譲渡を行うには、株主総会の特別決議による承認が必要になる可能性があります(会社法第467条第1項、第309条第2項)。
    また、事業譲渡の対象とする契約関係を譲受人に移転するには、契約の相手方の個別承諾が必要です。
    さらに、不動産などの登記資産や自動車などの登録資産を譲受人に移転するには、個別に移転登記や移転登録の手続きを行わなければなりません。

    ② 許認可は譲渡できない
    事業に行政庁の許認可が必要な場合、事業譲渡によっては、許認可を譲渡人から譲受人へ引き継ぐことはできません。
    行政庁の許認可は、あくまでも会社の状況を個別に審査して与えられるため、勝手に譲渡することはできないのです。
    したがって、許認可が必要な事業を譲渡する場合、譲受人側で新たに許認可を取得する必要があります。


    このように、譲渡手続きが煩雑になる点が、事業譲渡のデメリットです。

3、株式譲渡のメリット・デメリット

株式譲渡は、会社全体に対する支配権の移転であることから、以下のようなメリットとデメリットが存在します

  1. (1)株式譲渡のメリット

    株式譲渡の主なメリットは、以下のとおりです。

    ① 譲渡の手続きがシンプル
    株式譲渡は、株式譲渡契約を締結することによって、シンプルな手続きで行うことができます。
    また、会社の資産や契約関係を個別に移転することもないため、契約相手の個別承諾を取得したり、移転登記や移転登録の手続きを個別に行ったりする必要もないのです。

    ② 会社の組織・事業を温存できる
    株式譲渡の場合、会社から組織や事業を切り出すことなく、従前の会社の状態をそのまま温存することができます。
    そのため、株式譲渡の実行後も、従前の事業をスムーズに運営し続けることができます。
  2. (2)株式譲渡のデメリット

    株式譲渡の主なデメリットは、以下のとおりです。

    ① 譲渡する事業を選べない
    株式譲渡は、会社全体に対する支配権を移転するものであるため、会社の一部の事業だけを対象にすることはできません。
    たとえば、対象企業の中に不採算部門と好調な部門がある場合、株式譲渡ではどちらかだけを対象にすることはできず、両方に対する支配権を移転することになるのです。

    ② 予期せぬ簿外債務を引き継ぐおそれがある
    株式譲渡では、会社が権利義務の主体となっている資産・債務・契約関係などをすべて譲受人が引き継ぎます。
    特に債務については、不適切な会計処理などにより、帳簿上に表れていない債務(簿外債務)が存在するおそれがあります。
    株式譲渡では、譲渡対象会社の簿外債務が後から判明した場合、譲受人が不測の損害を被る事態になりかねません。
    したがって、株式譲渡を実行する前に、入念なデューデリジェンスを行うことが求められます。

4、事業譲渡と株式譲渡、どちらを選択すべき?

M&Aを実行する際、事業譲渡と株式譲渡のどちらを選択するかは、状況に応じて総合的に判断する必要があります
対象となる企業や当事者の状況を分析したうえで、最適な手続きを選択するようにしましょう。

  1. (1)会社全体か一部の事業か

    「会社全体が欲しい」という場合には株式譲渡、「一部の事業だけ欲しい」という場合には事業譲渡を選択するということが、もっとも基本的な判断基準になります。

    対象企業の事業内容や強みをふまえて、譲渡人と譲受人の双方にとってどちらの形が望ましいのか、よく検討しましょう。

  2. (2)簿外債務のリスク

    株式譲渡を行うにあたって最大の懸念点となるのが、簿外債務のリスクです。
    譲受人が簿外債務のリスクを強く懸念する場合には、あえて事業譲渡を選択することも検討することになるでしょう。

    ただし、株式譲渡についても、契約締結・実行前の段階で十分なデューデリジェンスを行うことで、簿外債務のリスクを軽減することができます。
    譲受人としては、簿外債務リスクに対する懸念の強さに加えて、デューデリジェンスにかけられるコストや時間などを考慮したうえで、事業譲渡と株式譲渡のどちらを選択するか判断するべきでしょう。

  3. (3)手続きがシンプルなのは株式譲渡

    株式譲渡の手続きは、事業譲渡に比べてかなりシンプルなものとなります。

    事業譲渡では煩雑な手続きが必要になり、多くの時間や人件費を要することになります。
    これに対して、株式譲渡は会社の支配権をそのまま移転するものであるため、株式譲渡契約の締結などのシンプルな手続きで済ませられます。

    簿外債務のリスクが強く懸念されるなど、特段の事情がない限りは、手続きがシンプルな株式譲渡を選択したほうがよいでしょう。

5、M&Aの検討・実施は弁護士にご相談を

M&A取引を検討する際には、弁護士に相談することをおすすめ致します

弁護士は、事業譲渡・株式譲渡・合併・会社分割などの手法選択、法務デューデリジェンス、相手方との条件交渉など、M&A取引に必要な手続きや対応を一貫してサポートすることができます。
事業譲渡契約書や株式譲渡契約書等の作成についても、弁護士に一任することができます。

自社事業売却、他社事業買収などを検討されている場合には、まずは弁護士にご相談ください。

6、まとめ

事業譲渡は、会社から事業を切り出して譲渡する取引です。
「譲渡する事業を選べる」「簿外債務を除外できる」などのメリットがある一方で、手続きが煩雑な点がデメリットとなります。

これに対して、株式譲渡は、会社全体の支配権を移転するものです。
手続きがシンプルな点が大きなメリットですが、一部の事業だけを支配権を移転することはできず、簿外債務を引き継いでしまうリスクがあります。

事業譲渡と株式譲渡(あるいは他のM&A手法)のどれを選択するかについては、対象会社や当事者の状況に応じて、個別に検討や判断を行う必要があります。
ベリーベスト法律事務所は、M&A手法の選択から、契約の締結と実行に至るまで、クライアント企業のM&A取引の成功を一貫してサポートいたします
M&Aを検討されている企業経営者の方は、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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