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バイトテロを起こした従業員に対し企業は損害賠償請求できるのか

2023年06月29日
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  • 損害賠償
バイトテロを起こした従業員に対し企業は損害賠償請求できるのか

広島県内で飲食店や小売店を経営する企業では、日々の業務のために、従業員として若者や未成年のアルバイト従業員を雇っている場合が多いものです。近年では、「バイトテロ」とも呼ばれる、アルバイト従業員による不適切動画の投稿やそれによる影響などについて、ニュースでもたびたび取り上げられています。

アルバイト従業員による不適切動画の投稿は、風評被害を生じさせ、場合によっては企業の存続にさえ関わる深刻な事態につながることが少なくないため、企業側にしてみれば、損害賠償請求を検討することもあるでしょう。そこで本コラムでは、アルバイト従業員が不適切動画をSNS上に投稿した場合に損害賠償の責任をアルバイト従業員に追及できるか否かについて、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。

1、相次ぐアルバイト従業員による不適切動画の投稿

YouTubeやInstagram、TikTokにTwitter など、気軽に動画や画像を投稿できるSNSが普及したことに伴い、アルバイト従業員店員による「バイトテロ」動画が問題視されるようになりました。
近年に問題となった「バイトテロ」の具体的な事例としては、下記のようなものがあります。

  1. (1)調理中のから揚げを床にこすりつけた事例

    平成30年以前に、大手カラオケチェーンの店舗に勤務するアルバイト従業員が、から揚げを厨房の床にこすりつけてからフライヤーで揚げようとする様子を撮影した動画が投稿される、という事件がありました。
    会社側は、このような行為に加担した人物を特定するために警察に被害届を提出するなどの対応を行いました。

  2. (2)氷を投げたり調理器具を不衛生に扱ったりした事例

    平成31年、大手牛丼チェーンで勤務するアルバイト従業員3名が、ふざけあいながら氷を投げたり調理器具を下半身に当てたりする様子を撮影した動画が投稿される事例がありました。
    会社側は、3人を退職処分としています。

  3. (3)店で使用するトレーで下半身を隠してふざけていた事例

    平成31年、大手定食チェーン店で、アルバイト従業員が店で使用するトレーで下半身を隠してふざける様子を撮影した動画が投稿されるケースがありました。
    会社側は、3人を退職処分として、法的措置も検討しました。
    また、この事態を受けて、会社は日本国内にある全350店舗を丸1日休業として、従業員教育と店内清掃に充てるという対応を行ったのです。

2、不祥事を起こしたアルバイト従業員の責任はどう追及できる?

不適切な動画を撮影する若者は、拡散を目的とするのではなく、自分の身近な人を面白がらせたり武勇伝を自慢したりする目的で動画をSNSに投稿しているのだと思われます。しかし、SNSは、本人の意図しないところまであっという間に動画が拡散されてしまいます。これにより、企業は風評被害を受けて売り上げに甚大な影響が生じてしまい、謝罪の発表や再発防止策の提示など、消費者や株主に向けた対応にも追われることになるのです

多くの企業テロは、不適切な動画を投稿したアルバイト従業員従業員店員に、懲戒などの社内処分を下しています。
また、不祥事を起こしたアルバイト従業員には、刑事上の責任と民事上の責任を法的に追及できる可能性もあるのです。
アルバイト従業員が行った行為が刑法上の罪に該当する場合には「刑事上の責任」が発生することになり、会社側は刑事告訴などを行うことで責任を追及することができます
また、アルバイト従業員が行った不法行為によって生じた損害に関しては、示談や民事裁判を通じて「民事上の責任」を追及することにより、賠償を請求できる可能性があるのです。

3、不祥事を起こしたバイトは刑事上どんな罪になる?

不適切動画を投稿するなどの不祥事を起こしたアルバイト従業員が抵触している可能性のある刑法上の罪と、量刑などについて解説いたします。

  1. (1)名誉毀損罪

    刑法230条1項では、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」は、「その事実の有無にかかわらず」刑罰の対象になる、と規定されています。これが「名誉毀損罪」です。
    不適切動画の投稿などは、法人である会社の名誉を毀損したものとして、名誉毀損罪になる可能性があるのです
    名誉毀損罪の量刑は、3年以下の懲役・禁錮、または50万円以下の罰金となっています。

  2. (2)威力業務妨害罪

    刑法234条では、「威力を用いて人の業務を妨害した者」は「威力業務妨害罪」に違反する、とされています。
    バイトテロのような不適切動画をSNS上へ投稿する行為も、動画の内容によっては威力業務妨害罪となる可能性があるのです
    威力業務妨害罪の刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

  3. (3)器物損壊罪

    刑法261条では、「他人の物を損壊し、又は傷害した者」は器物損壊罪に違反する、とされています。
    具体的には、他人の物を壊したり汚したりする行為が、器物損壊罪の対象となり得るのです。
    バイトテロについても、会社の調理器具や食材などの物を不適切な行為によって使えなくようにした事例では、器物損壊罪にあたる可能性があります
    器物損壊罪の量刑は3年以下の懲役、または30万円以下の罰金・科料となっています。

4、不祥事を起こしたアルバイト従業員に対する損害賠償請求はどうなる?

  1. (1)アルバイト従業員に対する損害賠償請求

    不祥事を起こしたアルバイト従業員に対しては、損害賠償を請求できる可能性があります。

    ただし、不適切動画の投稿といった事例では、食材費や清掃費などの直接的な損害よりも、風評被害に伴う消費者の買い控えや不適切な事態の対応のために強いられた休業などによる間接的な損害の方が大きいでしょう。
    買い控えや休業によって営業利益が失われたことを「損害」とみなしてアルバイト従業員に請求するためには、高度な立証が必要となります。
    また、多額の千万円や一億円を超える多額の損害賠償を請求したとしても、加害者側の資産には限界があるため、すべての損害を賠償させられる事例は稀である、といわざるを得ません。

  2. (2)実際の裁判例ではどうなったか

    平成25年、個人経営の飲食店がアルバイト従業員の不適切動画の投稿によって営業停止に追い込まれてしまい、営業を再開することなく破産宣告を受ける、という事件が起こりました。
    平成27年、該当の飲食店はアルバイト従業員4人に対して民事訴訟を行い、1385万円の損害賠償を請求しました。
    しかし、最終的には原告と被告は「和解」を行い、200万円の和解金が店側に支払われる、というかたちで終結しました

5、動画の撮影者に対しても損害賠償請求できるのか?

損害賠償は、不適切な行為をした本人だけでなく、その動画を撮影している者に対しても請求できる可能性があります。
不適切動画が投稿されて会社に損害を与えた場合には、不適切な行為そのものだけでなく、撮影と投稿までの一連の行為が「不法行為」とみなされるためです。
そのため、不適切な行為をしたアルバイト従業員とそれを撮影したアルバイト従業員は、不法行為を共同して行ったとみなされて、連帯して責任を負わなければならないのです。

6、アルバイト従業員の親の法的責任を問うことはできるのか?

  1. (1)親に対する法的責任は問うことができない

    「バイトテロ」行為をするアルバイト従業員の大半は、未熟で判断能力に欠ける未成年や若者であると考えられます。
    しかし、相手が未成年であっても「親は、未成年の行為の責任を代わりに負う」ということには原則としてなりません。

    刑事上の責任に関しては、該当する罪について親が「教唆」したり「幇助」したりしていない限り、責任を追及することはできません。

    民事上の責任に関しては、民法712条に「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と規定されています。
    そして、民法714条1項では、責任能力のない未成年者に関しては原則として親などに損害賠償責任があることが規定されているのです。
    しかし、「責任能力のない未成年者」とは、一般的に、小学生などの「子ども」を指します。
    未成年であっても、アルバイト従業員が許される年齢であれば、「責任能力がある」と判断されることが大半なのです。そのため、この場合にも、損害賠償責任を親に問うことは難しいでしょう。

  2. (2)法的責任はなくても親が実質的に負担することも多い

    上述したように、未成年の親であっても、息子や娘の損害賠償責任を代わりに負担する法的な「義務」は存在しません。
    しかし、実際には、義務はなくても子どもの不始末の責任を親が代わって取る、ということもあります
    そのため、被った損害について、親に賠償金を負担してもらえる可能性もあります。

7、まとめ

本コラムでは、アルバイト従業員が不適切動画をSNS上に投稿した場合の損害賠償責任について解説いたしました。
アルバイト従業員本人は軽い気持ちで不適切動画を投稿したとしても、それが拡散されて、会社側に多大な損害が生じる、という結果になるおそれがあります。

バイトテロによる風評被害を最小限に抑えて、一部でも損害賠償を適切に追及するためには、弁護士に相談することが不可欠です
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスには、企業法務と民事訴訟のどちらにも対応できる、経験豊富な弁護士が在籍しています。就業規則の改訂や社内研修などを通じた予防策などについてのアドバイスも可能です。
バイトテロの問題について不安やお悩みを抱えている経営者の方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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