新型コロナの影響で解雇・リストラを言い渡されたらどう対応すべき?
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新型コロナウイルスの影響により、全国的に休業要請や営業自粛を受けて職の安定が脅かされています。
令和2年4月29日付けの東京新聞では、新型コロナウイルスの影響による解雇・雇止めの推移が4月27日時点で見込み数を含めて3391人にのぼることが報じられました。3月と比べても解雇や雇止めにあった人は約3.8倍も増えているようです。
新型コロナウイルスの流行を原因として解雇を言い渡されてしまった場合、どのように対応すべきなのでしょうか? 本コラムでは、解雇を言い渡されてしまった場合の対応方法をベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそもリストラと解雇の違いとは?
会社から解雇された状況を、俗に「リストラされた」と呼ぶことがあります。一般的な会話のなかでもは「リストラ=解雇」というイメージが定着していますが、それぞれの意味を掘り下げると、本来の意味は別のものです。
解雇とは、使用者である会社が、労働者の同意を得ることなく一方的に雇用契約を終了させることをいいます。解雇する場合のルールは労働基準法によって厳格に定められています。
一方のリストラは、正しくは「リストラクチャリング」といい、環境の変化などに柔軟な対応を取ることで事業を効率的に再構築するという意味があります。リストラとは、会社が倒産を避けるために人員削減することだけを指すのではなく、会社内で急成長している分野に資金を集中させる、収益を増やすために経営改革を断行するといったこともリストラの一部です。
とはいえ、やはり日本では、一般的に「リストラ=解雇」という意味で用いられています。本来の意味では、業務改善のための配置転換を受けたケースでも「リストラを受けた」といえますが、家族や周囲の人に説明すると「解雇された」と誤解されてしまうでしょう。
2、新型コロナによる解雇は整理解雇?
新型コロナウイルスの影響による解雇はいわゆる「整理解雇」にあたる場合が多いでしょう。整理解雇には厳格な要件が必要とされておりており、これに合致しない解雇は不当解雇となります。
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(1)整理解雇の4要件
「整理解雇」は、会社の経営状態が芳しくないような場合に行われます。
整理解雇が適法に認められるためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。① 人員整理の必要性
人員整理が認められるには、経営悪化などの事実が経営指標や数値をもって客観的に証明されていることが求められます。
② 解雇回避努力義務の履行
人員を整理する前に、労働者に対する影響が少ないほかの方法によって最善を尽くした状況が必要です。
時間外労働の縮減や配置転換、役員報酬の減額などの方策なしに最優先で人員削減をとる場合は解雇が認められません。
③ 解雇する従業員選定の合理性
整理解雇の対象者を選定する基準は、合理的かつ公平なものであることが必要です。たとえば、反抗的な組合員から優先的に解雇するような人選は不公平として無効になる可能性があるでしょう。
④ 手続きの相当性
整理解雇を実施するまでの間に、労働者本人や労働組合に対する説明や協議が尽くされていないと解雇は認められません。
3、新型コロナの影響で解雇やリストラを言い渡されたときにすべきこと
新型コロナウイルスの影響で会社から解雇を言い渡されてしまった場合、労働者はどのような対応をとるべきなのでしょうか?
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(1)解雇を受け入れる場合の注意点や確認すべきこと
解雇を受け入れて再就職を目指すのであれば、解雇にあたっての補償がなされているのかをしっかりと確認しましょう。
解雇をおこなう場合、原則として30日前には予告が必要です。これを短縮するには、日数に応じて解雇予告手当の支払いが必要になります。また、解雇理由を確認するために「解雇理由証明書」の交付を求めましょう。そこに整理解雇ではない理由が示されている場合は、不当解雇として抗議するべきです。 -
(2)解雇に納得しない場合に確認すべきことや対応方法
解雇に納得できない場合は、次のような対応を検討すべきでしょう。
① 不当解雇の撤回を要求
解雇の理由が合理的ではない、解雇手続きに違法性があるといったような場合は、解雇の撤回を要求しましょう。不当解雇と認められる場合は解雇そのものが無効となるので、従業員としての地位を回復できます。解雇の撤回が認められた場合、出勤できなかった日数分の賃金請求も可能です。
労働者と使用者との間で話し合うことによって解雇が撤回されれば、復職できますので、まずは話し合いによる解決が最優先です。
② 退職の意思がないことをはっきりと伝える
会社から退職を勧められる「退職勧奨」は、実質的に解雇と同じものとして扱われることがあります。会社としては「解雇ではなく、あくまでも労働者自らの意思で退職した」ということにしたいと考え、この退職勧奨を行います。中には「退職しないと懲戒解雇する」「将来、不利になる」といった脅迫まがいの退職勧奨も少なくありません。
解雇同様の退職勧奨を受けた場合でも「退職する意思はない」とはっきり伝えましょう。また、退職勧奨を受けていた場合は、誰がどのように退職を勧めてきたのかを証明するために、メモや録音などの方法で証拠を残すことをおすすめします。
③ 弁護士に相談
不当な解雇を言い渡された場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。労働者が個人で対抗しても、会社が素直に解雇を撤回するケースは多いとはいえません。労働関係の法律に詳しい弁護士が対応することで、解雇の撤回や解雇予告手当や未払い賃金の請求など、法律にのっとった対応を企業に迫ることができます。
また、会社との合意によって、金銭解決による退職ができる場合もあります。
4、解雇(リストラ)トラブルに対して弁護士ができること
解雇をめぐるトラブルに巻き込まれたとき、頼りになるのは弁護士です。弁護士に詳しく状況を説明すれば、整理解雇の要件をすべて満たしているのか、解雇が妥当なのかなどを正確に判断できるでしょう。
また、労働者が個人で会社と交渉するのではなく、弁護士が代理人として交渉し、違法な点があれば厳しく指摘していくことで、解雇が撤回できる可能性もあります。
不当解雇を争う場合、最終的に裁判に発展することもあります。そのような場合でも弁護士は労働者の味方となって、解雇が違法であることを主張していきます。
5、まとめ
新型コロナウイルスの流行を理由に解雇されてしまいお困りの方は、まずはベリーベスト法律事務所 広島オフィスまでご相談ください。労働法に通じた弁護士が丁寧にご事情を伺い、あなたの代理人として会社と闘います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています