「明日から来なくていい」と言われたら? 対処方法について弁護士が解説

2021年01月07日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 明日から来なくていい
「明日から来なくていい」と言われたら? 対処方法について弁護士が解説

広島県の商工労働局が発表している「広島県経済の動向」によると、令和2年9月と10月の県内経済は「新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続いているものの、持ち直しの動きがみられている」と判断されました。11月の後半から日本国内の感染者数が再び増大していることから、今後の広島県内の経済状況が8月以前の状態まで落ち込むおそれは、充分にあると言えるでしょう。

経済状況が厳しくなると、労働者としては「解雇」のおそれが生じて、不安になるはずです。
もし、「明日から会社に来なくていい」と上司に突然に言われたら、どういう意味だと考えますか?
解雇でしょうか?退職勧奨でしょうか?それとも、パワハラでしょうか?
その上司がどういった意味をこめて発言したのかによって、対処方法は異なります。

本コラムでは、上司に「明日から会社に来なくていい」と言われたしまった場合の、状況ごとの具体的な対処方法について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、「来なくていい」の真意を確認する

上司に「明日から来なくていい」と言われたら、ショックを受けたり、憤りを覚えたりするでしょう。ですが、相手がどういう意味で言ったのかによって、とるべき対応は異なります。

  1. (1)「来なくていい」には3つの解釈

    「明日から来なくていい」という発言には、次のように3つのケースが考えられます。

    • 解雇
    • 退職勧奨
    • パワハラ


    これはそれまでの経緯や発言前後のやりとりの内容によって、個別に判断する必要があります。

  2. (2)まずは真意を確認する

    来なくていいと言われたときには、可能であれば「それはどういう意味ですか?」「なぜですか?」などと、上司にその真意を確認しましょう。

    解雇なのか退職勧奨なのかパワハラなのか、また上司個人の考えなのか会社としての通告なのか、回答によって発言の重みや対処方法が大きく違ってきます

    ただし、問いただしても、はっきりとは説明してくれないケースも少なくありません。
    特に解雇の場合、実際に解雇するためにはさまざまな条件があるため、わざと明言しない可能性もあります。

    それでもその後の対応のために、回答内容はメモにするなどして記録しておきましょう。
    会社は労働者が請求した場合、解雇理由証明書を交付する義務があります。会社が解雇理由証明書を交付してくれない場合は、ボイスレコーダーでやりとりを録音しておくのも一つの手です。

    来なくていいと言われるとショックも大きいと思いますが、「解雇だ」などと思い込みで行動すると、対処方法を誤り、不利益を被る可能性もありますので、可能であれば真意は確認しておきましょう。

2、解雇の意味だったときにすべきこと

上司に確認したところ解雇の意味であるとわかった場合、次のような行動をとりましょう。

  1. (1)解雇の種類を確認する

    解雇には次の3種類があります。

    • 普通解雇:懲戒解雇や整理解雇以外の理由で会社から一方的に解雇すること
    • 懲戒解雇:就業規則に違反したことなどを理由とした懲戒処分としての解雇
    • 整理解雇:会社の経営悪化などを理由とした人員削減、リストラ


    解雇の種類によって、その後の対応方法が大きく違ってきます。
    解雇を通告された場合は、まずどの解雇なのかを確認しましょう

  2. (2)解雇の理由を確認する

    解雇は労働者から仕事を奪い、労働者は生活の糧を失うことになります。
    そのため会社が勝手な都合で簡単に従業員を解雇できないように、労働基準法は解雇を禁止するケースを定めています

    また、労働契約法第16条は、次のように解雇を制限しています。
    「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

    普通解雇でも懲戒解雇でも整理解雇でも、この規定に違反した場合には違法です。
    たとえば、従業員をリストラする前に、コスト削減などできる限りのことを尽くしていなければ、解雇は不当とみなされることがあります

    そのため、解雇理由はしっかりと確認しておきましょう。
    もし、身に覚えのない理由であったり、合理性や相当性がなかったりする場合には、不当解雇として解雇撤回や損害賠償を求めることができます。

  3. (3)解雇予告があったか確認する

    会社が従業員を解雇する場合、原則として、少なくとも30日前に解雇予告しなければいけません。ただし、解雇に労働者の責めに帰すべき事由がある場合には、解雇予告は不要とされています。

    30日前までに予告しなかった場合、会社は30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(労働基準法第20条)。この手当は、「解雇予告手当」と呼ばれます。

    もし、「明日から来なくていい」という発言が即日解雇を意味していて、事前に解雇予告がなかった場合は、解雇予告手当の支払いを求めることができます

3、退職勧奨だったときにすべきこと

退職勧奨とは、会社が従業員に退職を促すことです。退職勧奨は、従業員が自ら退職届を書いて辞めることにつながります。従業員が自ら退職届を提出することは、「従業員が退職に合意している」という点で、解雇とは大きく異なります。退職勧奨の場合には、その後の行動で気をつけなければいけないことがあります。

  1. (1)「わかりました」は言わない

    退職勧奨を受けたものの退職するつもりがない場合は、「わかりました」などと発言をしてはいけません。退職に合意したとみなされるおそれがあります

    会社は合理的な理由などなく従業員を辞めさせることはできないため、退職勧奨に強制力はありません。

    在職し続けたい場合には、退職する気はないことをはっきりと伝えましょう。

  2. (2)出勤は続ける

    「明日から来なくていい」という退職勧奨に対して本当に出勤をしなくなれば、退職を受け入れたと判断されるおそれがあります。

    退職勧奨を拒否する意思表示とともに、辞めるつもりがないということを行動でも示しましょう。

  3. (3)証拠を集めておく

    しつこく退職勧奨を受けたり嫌がらせをされたりする場合には、退職強要のおそれがあります。

    強要をやめさせるためには会社と交渉したり、裁判を起こしたりする必要がありますが、そのためにはどのようなことをされたのかがわかる証拠が必要です。

    上司の発言を録音したりメモしたりするなど、証拠を集めておきましょう。
    また、すぐに労働組合や労働基準監督署、弁護士などに相談してください。

4、パワハラの意図があるときにすべきこと

「明日から来なくていい」という上司の発言は、特に法的な意味はない上司からのパワハラの可能性があります。以前から暴言を吐かれるなどをしていて、パワハラの可能性が高い場合は、次のような対応をとりましょう。

  1. (1)パワハラ発言には従わなくていい

    「役立たず」「もうクビだ」などと言われたり、大声で叱責されたり、物を投げつけられたりするなど、日常的にパワハラを受けていた場合は「明日から来なくていい」という発言もパワハラの一種である可能性があります。たとえパワハラであったとしても、労働者と会社の契約関係上、パワハラを理由に勝手に休むと無断欠勤扱いとなりますので、注意が必要です

  2. (2)パワハラを訴える

    日常的にパワハラを受けていると、仕事が苦痛になったり業務に支障がでてきたり、うつ病などの精神的な疾患を患う可能性があります。

    理不尽なパワハラに黙って耐えている必要はありませんので、会社にパワハラを報告したり、労働基準監督署などの相談窓口を利用したりするなどして、状況の改善を試みましょう。

    また、常軌を逸するようなパワハラ被害を受けている場合は、違法と判断され、損害賠償を請求できる可能性があります。労働審判や損害賠償請求などの法的措置をとる場合は、パワハラ受けた事実と明確なパワハラの証拠を集めて、弁護士への相談も検討されることをおすすめいたします。

    ●なぜ証拠が必要なのか
    パワハラに法的に対処する場合、明確な証拠とパワハラを受けた客観的な事実を証明できなければ、慰謝料や損害賠償請求しようとしても認めてもらえない、もしくはかなり少額となる可能性があります。
    そのため、法的な対処を望む場合は、証拠を集めて法的にどのような対処が可能なのか、弁護士に相談するとよりスムーズです。

5、弁護士に相談した方がいいケース

「明日から来なくていい」という発言をめぐって、不当解雇などで会社とトラブルになっている場合、一度弁護士に相談されることをおすすめいたします。以下では、弁護士に相談した方がいいケースについてご紹介いたします。

  1. (1)突然の解雇だった場合

    「明日から来なくていい」として解雇を言い渡された場合、まずは解雇手続きが正当なものなのかどうか検討する必要があります。

    解雇予告がなかった場合や合理的な理由などがない場合は、不当解雇の可能性があります。

    在職を希望する場合は、そのまま解雇を受け入れず、弁護士に相談しましょう。
    弁護士は事実関係を確認したうえで会社と交渉し、解雇予告手当を請求したり解雇の撤回を求めたりします。

  2. (2)しつこく退職勧奨を受けた場合

    会社側が連日のように「ほかの仕事の方が向いている」「もう会社に来るな」などと、退職を促してきても、辞めるつもりがない場合は受け入れる必要はありません。

    自ら退職届にサインすれば自己都合退職となるため、会社都合退職に比べて失業保険などの面で不利となってしまう可能性もあります。

    退職を決断する前に、弁護士に相談されることをおすすめいたします。
    弁護士は退職勧奨をやめるように会社に求め、必要に応じて裁判などの対応をとります。
    退職を決意された場合でも、できるだけ良い条件で退職できるようにアドバイスいたします

  3. (3)パワハラを受けている場合

    日常的にパワハラを受けていると、次第に心身ともに疲弊してしまいます。
    転職することも一つの手です。しかし、収入が途絶えれば生活に困ってしまう可能性があります。常軌を逸するようなパワハラは違法となる可能性がありますので、退職せずに、会社に対して法的な対処をとる場合には、明確な証拠を集めて、弁護士に相談しましょう。

    パワハラ被害を受けた事実や集めた証拠をもとに、弁護士はパワハラをやめるように会社に求めたり、会社や上司に慰謝料を請求したりして、事態の改善と被害回復を目指します。

6、まとめ

「明日から来なくていい」という発言は、自分を否定されたようでつらい思いをすることでしょう。
弁護士は、ご相談内容によって会社に解雇の撤回を求めたり損害賠償請求をしたりするなど、できるだけ良い形で解決できるように努めます。まずはベリーベスト法律事務所 広島オフィスへお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています