残業代を請求するときに必要となる証拠はなにか?
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広島市が発表している「経済センサス 基礎調査結果」によると、平成26年7月時点で広島市内の宿泊飲食サービス業および生活関連サービス業を営む事業所は11965件あり、従業員数は79000名を超えています。他店に負けまいと営業時間後も店舗改革に臨む店舗も少なくないでしょう。
そのようななか、残業代が出ないことに不満や疑問を抱いていても、口に出せないような雰囲気の職場もあるのではないでしょうか。特にサービス業においては残業代の計算も複雑で、最初から出ないものと諦めてしまっている場合も多いかもしれません。
しかし、残業代は本来支払われるべきものですし、退職した後でも請求できるため、在職中はいいだしにくい残業代請求も、退職後はいいやすいのではないでしょうか。そこで今回は、残業代請求の核ともいえる証拠の集め方や、有効な証拠について解説していきます。
1、証拠を集める際のポイント
残業代を請求するためには、どれだけ残業をしたかを客観的に証明する証拠が求められます。残業代に限らず、何かを請求する際には、その権利を証明する証拠の存在を避けては通れないものなのです。
まずは、残業代の証拠集めのポイントを見ていきましょう。
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(1)証拠は請求者が用意する
もちろん、何も証拠がない状態で雇用主に対して残業代を請求したとしても、素直にこれまで未払いの残業代があることを認めて、支払ってくれれば問題はありません。
しかし、多くの場合は証拠を求められることになりますし、さまざまな理由をもとにあきらめるように仕向けられるものでしょう。このようなケースで弁護士に依頼したとしても、弁護士は依頼人が持つ証拠をもとにしか動けません。残念ながら、弁護士が問題となっている職場に、直接足を踏み入れて証拠を探すといったことはできないのです。
したがって、弁護士に依頼するかどうか決める前でも、できるだけ早い段階で証拠集めをしておきましょう。また、どのようなものが証拠になるかわからない場合は、弁護士にアドバイスをもらいながら集めることも有効な手段となります。
残業代の証拠は1日、1週間といった短期間で集まるようなものではありません。残業代の請求をしたい、とまではいかなくとも、残業代が支払われないことに不満がある場合は、少しでも証拠を集め、手元に保管しておくようにしましょう。 -
(2)集めるべき証拠の期間
残業代の請求権は法律で2年と時効が定められています。時効が来てしまうと、残業代の請求権は消えてしまいます。途中、時効を中断させることはできるものの、基本的には2年以上前の残業代を請求することは不可能になります。
したがって、可能であれば2年分の証拠を集めることが望ましいといえます。
しかし、日々の積み重ねとなる証拠がない限り、2年分の残業代未払いの証拠を一度に集めることは簡単ではありません。そのような場合は、1年分の証拠が集まっていればその金額を2倍にし、推定2年分の金額として請求することができることもあります。しかし、これはあくまでも「推定」であることから、2年間同じ分量の残業をしていたと認定されることは難しいものです。つまり、しっかり証拠を集められないときは、減額される可能性があることを覚えておきましょう。
他方、雇用者側に不法行為があるケースなど、行為が悪質とみなされるときは、請求できる期間が2年以上になるケースもあります。したがって、残業代未払いがあり、証拠を集められるときは、可能な限り多く集めて保管しておくことをおすすめします。
2、残業代請求で有効な証拠とは
残業代の請求のために証拠を集める際、何を集めたらよいかわからないと思う方もいるでしょう。たとえば労働時間だけ証明できる証拠があったとしても、そのうち何時間が残業扱いなのかがわからなければ、思ったように交渉が進まない場合があります。
証拠を集める際には実際の労働時間の他に、定時などの記載がある労働条件がわかるものも集めておくとよいでしょう。以下に証拠となるものの代表例を紹介します。
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(1)労働時間を証明する証拠
実際に働いていた時間を第三者にも納得できる形の証拠が求められます。タイムカードや日報がない職場でも、労働時間を証明する方法があるかもしれません。弁護士に相談してみることをおすすめします。
・ タイムカード
タイムカードは出退勤の時刻が記録されているため、労働時間を証明するために非常に有効な証拠となります。また、3年の保管期限が義務付けられているため、さかのぼって証拠として手元に残すことも比較的容易な場合が多いでしょう。
タイムカードに管理者が確認したサインなどがあるものであれば、より強い証拠となります。
・ 日報
日々の日報はタイムカードよりも管理者が確認する可能性が高く、出退勤時間が記入されている場合は、相手側が残業を認識しているという強い証拠になりやすいです。
これらの原本を手に入れることは難しいかもしれませんが、コピーや、携帯で撮影した写真でもかまいませんので、可能な限り集めておきましょう。
なお、タイムカードなどで勤怠管理がされていない職場もあると思います。そのような場合でも残業代の請求は可能です。できれば辞めてしまう前に、少しでも証拠になりそうなものをひとつでも多く残しておきましょう。たとえば、自分のメモに記入しておく、家族と出退勤時間のやりとりをメールで送っておく、SNSで出退勤の時間をつぶやいておくことなどでも証拠を残す有効な手段と考えられます。 -
(2)労働条件を証明する証拠
労働条件を証明するものとしては、就業規則や雇用契約書などを保存しておくことをおすすめします。これらの資料には、定時の労働時間だけではなく、残業代の計算に関する記述もされているものです。つまり、正確な残業代を把握する上で重要な証拠となります。
コピーでも構いません。可能な限り手元に保存しておきましょう。
なお、雇用契約書には記載のない項目が就業規則にあるケースも考えられます。雇用契約書などと就業規則の内容が違う場合には思うような結果にならない場合もあるため、注意が必要です。
証拠はどれが有効か、なかなか判断が難しいものです。不安を感じた方は、弁護士などの専門家に相談しながら証拠を集めるのも有効な方法です。
3、証拠を集める際の注意点
もしあなたが退職前で、退職後に残業代請求を行うことを決めているとしたら、今が証拠集めのチャンスといえるでしょう。しかし、証拠を集める際に、雇用者側に気づかれないように行うことが大前提です。
万が一、あなたが残業代請求を行うための証拠を集めていると知られたら、立場が悪くなったり、証拠を処分されたりすることも大いに考えられるからです。確認した証拠は、必ず自分の手元に残しておくようにしましょう。
前述しましたが、弁護士は、警察やサスペンスドラマのように職場に乗り込んで証拠を探すことはできません。できることは、あなたが集めた証拠をもとに代理人として交渉したり、法的に求められる書類の作成が中心となります。依頼人が集めた証拠が手がかりのすべてになる可能性が高いため、不安な方はまず弁護士に相談して、必要な証拠を確実に、手元に保管していくようにしましょう。
4、まとめ
今回は、証拠の重要性や有効な証拠、そのポイントについて解説しました。残業代の請求には、いかに客観的な証拠を集め、残業の事実を証明するかが鍵となります。残業が続いているときは特に、精神的にも体力的にもつらいかもしれません。しかし、未払い分を回収するために、日々残業の記録をしておきましょう。
また、今回紹介した証拠はほんの一部に過ぎません。どのような職場に、どのような形態で働いているかによって、有効な証拠は変わります。弁護士は、証拠集めそのものはできなくても、どのようなものが証拠になるかなどのアドバイスが可能です。また、契約書など企業内にしかないと考えられる資料を開示するよう請求することができます。
残業代の証拠集めに悩んでいるときや、集めた後どうすればよいか迷ったときは、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスにお任せください。具体的なアドバイスとともに、少しでも多く残業代を取り戻せるようサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています