相続手続きに必須な戸籍謄本! 急いで取り寄せるべき理由を広島の弁護士が解説
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身内が亡くなると、葬儀の手配や行政手続きなどやるべきことがたくさん発生します。また、相続開始に伴い、相続に関してもさまざまな手続きが必要になります。その中でも重要なのが「戸籍謄本」の取得です。
今回は、「戸籍謄本」とはどのようなもので、なぜ急いで取り寄せた方がよいのか、時間がない場合にはどうすればよいかなどについてベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。
1、戸籍謄本とは?
戸籍とは、日本人の国籍に関する事項と、親族的な身分関係を登録・公証する公文書です。具体的には出生、婚姻、離婚、死亡など個人の一生が記録されているものです。戸籍の原本は本籍地をおいている市役所などで管理されており、戸籍に入っている本人であっても原本を入手することはできません。その代わりに戸籍原本の写しを請求することができます。
戸籍原本の写しには「戸籍謄本(こせきとうほん)」と「戸籍抄本(こせきしょうほん)」の2種類があります。戸籍謄本は、戸籍原本の内容すべてを写している書面で、戸籍抄本は、戸籍原本の内容一部のみを抜粋して写している書面です。戸籍抄本については、個人事項の写しになるので、誰のものがほしいかを指定して請求する必要があります。
なお、最近は、ほとんどの地方自治体でコンピューター化がされていますので、紙原本の写しではなく、戸籍内容をプリントアウトしたものが証明書として交付されます。戸籍謄本にあたるのが「戸籍全部事項証明書」で、戸籍抄本にあたるものが「戸籍個人事項証明書」になります。
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(1)戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の記載事項
戸籍に書かれている内容は、以下のとおりです。
・ 本籍地
本籍とは「戸籍を特定するための行政区画・土地の名称・地番」のことです。住所とは異なります。住所と本籍が同じ場合もありますが、同じ場所でも住居表示と地番が異なる場合には同一にはなりません。また、生まれたところを本籍にしておいて、その後他の地域に移り住むということもあるため、現在の住所とは違うところに本籍がある人も多くいます。
・ 氏名
戸籍の筆頭者の氏名が表示されます。戸籍の筆頭者は、その戸籍に記載される人の氏となる人です。結婚して夫の氏を名乗ることを選択した場合には、「夫」が筆頭者になり、妻の氏を名乗ることにした場合には「妻」が筆頭者になります。
・ 戸籍事項、戸籍編製
戸籍事項欄には、その戸籍の編成や消除、改製、氏の変更などに関わる事項が記載されます。
・ 戸籍に記録されている者
戸籍に載っている人の名前、生年月日、配偶者区分、父母の名、父母から見た続柄が記載されます。
・ 身分事項(出生)
身分事項欄には、戸籍上の出来事が記載されます。はじめに「出生」として、「出生日」、「出生地」、「届出日」、「届出人」記載されます。出生日は、生まれた日、出生地は、生まれた場所(病院などの所在地)を指します。届出日は、出生届を市役所などに提出した日、届出人は、出生届を提出した人(通常は親)が記載されます。
・ 身分事項(婚姻)
結婚した場合には、身分事項に「婚姻」と記載され、具体的内容として「婚姻日」、「配偶者氏名」、「従前戸籍」が記載されます。婚姻日は、婚姻届を提出した日です。配偶者氏名は、結婚した相手の氏名です。従前戸籍は、この戸籍の前に入っていた戸籍のことです。ここには、従前戸籍の本籍とその筆頭者名(親の名前)が記載されます。
子どもがいる場合には、この後にさらに身分事項が続きます。 -
(2)除籍謄本、改製原戸籍謄本
戸籍に掲載されている人が全て死亡または別の戸籍に移動した場合には、その戸籍は「除籍」となり、除籍となったときから150年間保存されます。この除籍となった謄本も取ることができます。
この他、「改製原戸籍」というものがあります。改製原戸籍は、戸籍制度が変更されて、戸籍を作り変えた場合に、その元となる戸籍です。
相続の手続きで必要となる戸籍は、
① 被相続人の出生から死亡までの戸籍
② 相続人全員の現在の戸籍
が必要になります。・ 被相続人の出生から死亡までの戸籍
被相続人の出生から死亡までの戸籍という場合、死亡した事実が記載される戸籍は、被相続人が載っている戸籍に妻など生存者がいる場合に「戸籍謄本」、生存者が誰もいない場合には「除籍謄本」ということになります。そして、出生の事実が記載された戸籍謄本は、現在の「戸籍謄本」か「除籍謄本」の前の戸籍ということになるので、「改製原戸籍」ということになります。
・ 相続人全員の現在の戸籍
相続人が全て生存している場合には、現在の戸籍謄本をとればそれで終わりです。相続人の中にすでに死亡している人がいて、子どもがいる場合、代襲相続(相続人の子どもなどが相続人の代わりに相続人になること)が発生します。その場合、死亡している相続人の出生から死亡までの戸籍が必要になります。そのため、被相続人の戸籍と同様、死亡した事実が記載された「戸籍謄本」または「除籍謄本」と出生の事実が記載された「改製原戸籍」が必要となります。
2、相続の際、急いで取り寄せたほうがよい理由
これまで戸籍の種類や内容について説明してきましたが、相続手続きを開始する際には被相続人と相続人全員の戸籍謄本などを取得しなければならず、これはとても時間がかかる作業です。葬儀の手配や行政手続きだけでも相当な時間をとられます。具体的には、死亡届、火葬許可証・埋葬許可証、世帯主変更届(死亡から14日以内)などです。
この他、「相続放棄」や「限定承認」をする場合、相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。相続放棄というのは、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がないことです。限定承認というのは、被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐものです。
このように、相続手続きには期限があるものがあり、早期に判断しなければならないことがたくさんあります。遺言がなく、相続人が複数いる場合には遺産分割について協議しなければならず、遺産分割協議書を作成して、遺産の各種名義変更をしていくことになります。
このとき、戸籍謄本の添付が必要となります。遺産分割協議については期限があるわけではありませんが、相続開始時点では、悲しみから「相続財産なんていらない」と言っていた人が、後になって財産が欲しくなり、権利を主張してくるということはよくあることです。
その結果、遺産分割について非常にもめるということがあります。また、遺産分割協議が調わないと、固定資産税などが共同相続人に法定相続分の割合でかかってきます。
そうならないためにも、すみやかに遺産分割協議を済ませ遺産の名義を変更することが大切です。名義を変更するためには、被相続人と相続人の戸籍謄本などが必要になるため、相続が開始したらすみやかに取っておくことが重要なわけです。
特に、被相続人の戸籍は、出生から死亡までの全ての戸籍が必要となるため、複数の市町村に取り寄せる必要がある場合があり、手間と時間がかかります。
また、被相続人が高齢で亡くなられた場合、相続人も高齢ということがあり、相続人が、遺産分割協議が成立する前に亡くなるという場合もあります。そうなると、相続人の子などが相続人となるので相続人の範囲が広くなります。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要になりますが、親族関係が希薄になるので、話し合いがつかずトラブルになりやすくなります。
被相続人が多数転籍しているような場合、除籍謄本が多数あり、自治体も広範な地域にわたる場合もあります。そうなると、除籍謄本の取得がかなり大変になります。したがって、時間と手間のかかる登記簿謄本の取り寄せは早くはじめることが大切です。
3、戸籍謄本・除籍謄本の取り寄せ方
戸籍謄本や除籍謄本は、請求者本人または代理人が直接、市区町村役場の窓口に行って取得することができますが、遠方にある場合や平日休みが取れない場合には、郵送で取り寄せることも可能です。本籍のあったところの市区町村役場に戸籍は保管されているので、本籍を何度も移転しているような場合には、それぞれの市区町村役場に請求する必要があります。
代理人が役所に取りに行く場合、本人からの委任状と、代理人の本人身分証明書と印鑑を持参する必要があります。委任状の書式は通常、市区町村役場などのホームページからダウンロードできます。また、郵送で請求する場合、請求書を市区町村役場のホームページからダウンロードして記入して、身分証の写し、手数料分の定額小為替、切手と宛先を書いた返信用封筒を同封しますが,請求前に自治体に問い合わせるとよいでしょう。通常であれば1週間程度で手元に届きます。なお、最近は、マイナンバーカードを持っていれば、コンビニで戸籍謄本も取れます(一部対応していない自治体があります)。
4、時間がないときは弁護士へ相談を
戸籍謄本は、代理人や郵送でも取れると説明しましたが、多数の戸籍謄本を取り寄せる必要がある場合、手間と時間がかかります。平日働いている方の場合、郵送といっても複数の自治体に請求するとなると相当の手間がかかります。
このような場合、行政書士や司法書士に依頼して取得してもらうことも可能です。また、弁護士に依頼することができます。弁護士は裁判の場合に相談するものと思っている方もいるかもしれませんが、法律関係書類を取り寄せる業務もしています。
弁護士に依頼するメリットとしては、戸籍謄本の取得の手間がはぶけるだけでなく、遺産分割協議書の作成や相続放棄の手続きについても相談できるという点です。相続人間で協議がまとまらない場合などでも、公正な第3者として弁護士が介入すると法律的な議論ができるので話がまとまりやすくなります。
5、まとめ
今回は、戸籍謄本についてかなり詳しく解説しました。戸籍は、本籍地ごとに管理されているため、被相続人が本籍を転々と変えている場合、移動先の自治体に個別に取り寄せなければなりません。
慣れない作業だとミスすることも多く、非常に手間のかかる作業ですので、弁護士に依頼して安心して相続手続きをはじめてみてはいかがでしょうか。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、戸籍の取り寄せはもちろん、遺産分割協議書の作成や相続放棄など相続に関する相談を受け付けています。相続に関わることでお悩みやご不安を抱えているようでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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