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配偶者居住権:いつから適用される?メリットとデメリットを紹介

2020年09月08日
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配偶者居住権:いつから適用される?メリットとデメリットを紹介

平成27年の統計によると、広島県の均寿命は男性で81.08歳、女性で87.33歳でした。

多くのご家庭では、子どもたちは独立して家を出ていき、夫婦は老後をふたりで過ごされています。男女の寿命には大きな差があることから、夫が死亡後も妻がひとりで暮らさなければならないという状況は、珍しくありません。その逆に、妻が死亡して夫が取り残されるということもあるでしょう。

このような場合、問題となるのが、「住まい」です。遺産分割協議では、死亡した人(被相続人)の財産を、残された配偶者と子どもたちなどの相続人が分割します。このとき、遺産である住居の評価額が高額でその他の資産があまりない場合に、残された配偶者が住居の所有権を取得すると、その他の資産をほとんど取得できないということがありました。

このような事態を避けるために配偶者の居住権を確保するための制度が新設されました。建物の「所有権」とは別に、住み慣れた家に「居住」し続ける権利を確保するための制度となります。この制度にはデメリットもありますが、基本的には、残された配偶者にとってはメリットが大きい制度となっています。今回は、新設された配偶者の居住権を確保するための制度の概要や居住権取得の条件、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」のそれぞれのメリットとデメリットについて解説します。

1、配偶者の居住権とは

まずは、配偶者居住権の基本的な知識について、解説いたします。

  1. (1)配偶者居住権とは

    配偶者居住権は、死亡した方(被相続人)の配偶者が、配偶者と一緒に住んでいた建物に無償で住み続けることができる権利です。「居住権」という名前の通り、あくまで「建物に住む権利」であって、その建物の所有権ではありません。

    配偶者居住権は、被相続人の残す財産があまり多くないときに、重要になります。
    被相続人が残す財産が「配偶者と一緒に住んでいた家だけ」という事例はありえますし、家の評価額が残っているその他の財産に比べてはるかに高額ということもあります。このとき、配偶者のほかにも相続人がいて、配偶者が家の所有権を取得すると、配偶者が家以外の財産を取得することができないという問題が起こることがありました。

    配偶者居住権は、こういった事態を避けるために新設された権利なのです。

    新設された配偶者の居住権には、存続期間が比較的短期間の「配偶者短期居住権」と、原則として配偶者の終身の間存続する「配偶者居住権」の2種類が存在します。

  2. (2)配偶者短期居住権の適用期間は?

    配偶者短期居住権とは、被相続人の死亡と同時に配偶者に認められる権利です。居住できる期間は、遺産分割協議が終了した日もしくは相続が開始した日から6か月の、いずれか遅い方です。つまり、最低でも6か月間は、これまで住んでいた家に住み続ける権利があるのです。配偶者短期居住権は被相続人が死亡したのと同時にすべての配偶者が獲得できる権利であり、遺言書の有無などに左右されません。

    また、配偶者短期居住権を取得するための特別な手続きも必要なく、原則として、被相続人の配偶者には認められる権利となります。

  3. (3)配偶者居住権の特徴は?

    配偶者居住権とは、別段の定めがない限り、配偶者の終身の間、住んでいた家に無償で住み続けられる権利です。短期居住権とはちがい、必要な条件を満たしたうえで所定の手続きを行うことで、はじめて取得できる権利となります

2、配偶者居住権が適用される相続は、いつから開始したもの?

配偶者居住権を新設した改正民法は平成30年7月6日に成立しました。配偶者居住権については、令和2年4月1日から施行されています。配偶者居住権が適用される相続も、令和2年4月1日以降に開始した相続となります。

原則として、相続開始日とは被相続人が死亡した日になります
「死亡」には以下の三種類があります。

・失踪宣告による死亡の擬制
ある人が失踪して、生死不明の状態が7年間継続した場合、利害関係人は、家庭裁判所に対して失踪宣告を請求することができます。失踪宣告をされた人は死亡したものとみなされます。

普通失踪の場合、相続開始日は、失踪日から7年間の期間が満了した日になります。
また、戦争や船の沈没などで行方不明となり、その危機が去った後にも生死が1年間以上明らかにならない場合は「特別失踪」とされます。特別失踪の場合では、危機が去った時点が死亡日とみなされます。

・認定死亡
認定死亡とは、事故や災害で死亡していることが確実でありながら、死体が見つからない場合に、官公庁が「死亡」と認定して戸籍にも死亡と記載されることを指します。

・上記以外の死亡
病院やケガなどを原因とした一般的な意味での「死亡」であり、医学的に死亡が確認できることを指します。通常は医師による死亡診断書や死亡検案書などに記載されている死亡日時が死亡日となり、相続開始日となります。

いずれの場合も、「被相続人が死亡したことを相続人が知ったとき」ではなく、「被相続人が死亡した日」が相続開始日となる点に、注意してください。
配偶者居住権の制度は、被相続人の死亡日が令和2年4月1日以降である場合に適用されることになります。

3、配偶者居住権を取得する方法

上述した通り、配偶者居住権を取得するためには、条件を満たしたうえで指定の手続きを行う必要があります。その条件や手続きについて、具体的に解説いたします。

  1. (1)配偶者居住権を取得できる条件

    まず、配偶者居住権を取得できる大前提は、「配偶者が相続開始時点で、被相続人の財産である建物に居住していること」です。店舗と一体化している建物に住んでいる場合は、店舗も対象となります。
    また、被相続人の財産である建物に住んでいることにくわえて、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

    • 遺産分割協議で配偶者居住権が認められた
    • 遺言書に、配偶者居住権を遺贈する旨が記載されている
    • 被相続人とのあいだに死因贈与契約がある
    • 家庭裁判所の審判によって配偶者居住権が認められた


    つまり、遺産分割協議で相続人全員の合意が得られず、遺言書や死因贈与契約もなかった場合には、家庭裁判所の審判によらない限り、配偶者居住権を取得することはできないのです。

  2. (2)配偶者居住権は登記が必要

    先述したように、配偶者居住権はあくまで建物に「居住」する権利であり、建物を「所有」する権利とは異なります。そのため、配偶者居住権を取得していても建物の所有権は別の相続人が持っている、という事態が起こりえます。たとえば、夫が死亡して妻が配偶者居住権を取得したが、建物の所有者は長男である、という場合などです。

    配偶者居住権を取得したら、登記することを建物の所有者に求めなければなりません。登記しなければ、配偶者居住権があることを証明できず、所有者から建物を譲り受けた第三者に建物からの立ち退きを求められたら断れなくなる、というおそれがあるのです。

    配偶者居住権の登記は、配偶者居住権を取得した本人と、建物の所有者が共同で申請します。ただし、遺産分割調停や遺産分割審判で配偶者居住権が認められた場合には、配偶者居住権を取得した本人が単独で申請可能です。

4、配偶者居住権のメリットとデメリット

配偶者居住権には存続期間が比較的短期な配偶者短期居住権と、原則として配偶者が終身の間存続する配偶者居住権の二種類があることを説明しました。このどちらにも、メリットとデメリットがそれぞれにあります。

・配偶者短期居住権のメリット
配偶者短期居住権のメリットとは、「新しい住まいを見つけるまでの準備期間があること」です。配偶者短期居住権が有効なあいだは、住んでいる建物は相続財産にくわえられません。配偶者居住権が取得できなかった場合でも、配偶者短期居住権は認められますので、最低でも6か月は住み慣れた家に住み続けることができます。もし家を相続できなかったとしても、突然追い出される心配はなく、新しい住まいを見つける準備をすることができるのです。

また、配偶者居住権とちがって取得のための条件や手続きが必要なく、被相続人と一緒に暮らしてきた配偶者であれば、被相続人が死亡した時点で原則的に必ず取得できる点も配偶者短期居住権のメリットといるでしょう。

・配偶者短期居住権のデメリット
配偶者短期居住権は期間が限定されており、6か月の期間が過ぎたら建物への居住権がなくなります。そのため、まだ新しい住まいが見つかっていなくても、建物の所有者に立ち退きを求められてしまうおそれがあるのです。
立ち退きが求められなかったとしても、毎月に家賃の支払いを要求されるようになるなど、居住に制限が設けられる可能性もあります。

・配偶者居住権のメリット
配偶者居住権のメリットは、「住み慣れた家に終身住み続けることができること」と、「老後の資金を確保しやすいこと」です。
まず、配偶者居住権を取得できれば、原則的にはいつまでもその建物に住み続けることができます。所有者に対する家賃支払いなどの義務もありません。

そして、老後の資金を確保しやすいことも重要です。所有権や配偶者居住権などの権利は、相続財産の一種とみなされます。配偶者居住権の評価額は所有権の評価額よりは低く、たとえば所有権の評価額が3000万円なら配偶者居住権は1500万円という具合になります。しかし、所有権よりも評価額が低いために、他の相続人に渡す費用も少なくなるのです。結果として、所有権を相続する場合よりも、預金などのほかの財産を手元に残しやすくなります。

・配偶者居住権のデメリット
様々なトラブルが起きるリスクが潜在している点が、配偶者居住権のデメリットといるでしょう。
いちど配偶者居住権を取得してしまうと、その権利を他人に譲渡することはできません。売却することはできませんし、建物の所有者に権利を買い取ってもらうということもできません。そのため、居住している建物から出て別のところに住みたくなった場合でも、権利を別のものに引き換えることはできず、所有者との合意ができなければ無償で放棄するかたちになってしまうのです。

また、建物修繕義務についてもトラブルが懸念されます。配偶者居住権を取得して居住しているあいだの住宅の修繕費用は、通常の使用で発生する修理費用であれば居住者が負担します。しかし、建物の価値を向上させるようなリノベーションや屋根外壁の工事などは所有者が負担しなければなりません(アパートやマンションの大家と住居人の関係と同じようなものです)。住居に修理の必要が生じたとき、どちらが修理代を負担するのかという点で、トラブルが起きるおそれがあります。

5、まとめ

配偶者居住権は、被相続と一緒に建物に住み続けてきた配偶者が、被相続人が死亡した場合に取得できる権利です。配偶者居住権が適用されるのは、法律の施行日である令和2年4月1日以降に開始された相続となります。

住み慣れた建物から出ていく必要がなくなる配偶者居住権は、特にご高齢の方にとっては便利な制度です。しかし、居住権の獲得のためには条件や手続きが必要となりますし、建物の居住者と所有者とのあいだでトラブルが発生するおそれもあります。ご自身やご家族が配偶者居住権の行使を検討されている方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士にご相談ください。

弁護士だけでなく司法書士も在籍したワンストップサービスを提供しているベリーベストでは、相続人の方々のご事情や相続財産の状況にあわせた、最適なアドバイスを提供いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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