200g未満のドローンなら、規制にひっかからない? 逮捕される可能性は?

2020年03月27日
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200g未満のドローンなら、規制にひっかからない? 逮捕される可能性は?

技術の進歩によってドローンが開発され、気軽に高所からの撮影ができるようになりました。しかし、人が多い中での落下事故や官邸でのドローン使用などの問題が発生し、ドローン規制が行われるようになりました。

広島県でも、海上自衛隊呉地方総監部(広島県呉市)の周辺区域でドローンを飛ばしたとして、小型無人機等飛行禁止(ドローン規制)法違反容疑で介護職員の男(50)が書類送検される事件が起きています 。

200g未満のドローンは基本的に航空法上の無人航空機とはならないため、自由に飛ばすことができると思われている方もいるようですが、実際には、200g未満であっても小型無人機等飛行禁止法をはじめ細かい規制がありますので、その点は注意が必要です。

そこで、今回は、200g未満のドローンの規制と逮捕された場合のその後の手続きについて解説したいと思います。

1、無人航空機と模型航空機の違いについて

  1. (1)無人航空機とは

    無人航空機とは、「人が乗ることができない飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」と定義されています。具体的には、ドローン、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプターなどが該当します。

    ただし、ドローンやラジコン機であっても、重量が200g未満のものは、「無人航空機」ではなく「模型航空機」に分類されます。模型航空機は、航空法の規制の対象からは外れます。

    無人航空機の場合、改正航空法の規制対象となるので、飛行区域(空港周辺、人家の密集地域、150m以上の上空)が制限されるだけでなく、飛行のためのルールが設けられています。具体的には、次のとおりです。

    • 日中に飛行させる
    • 目視の範囲内で飛行させる
    • 人や物とのあいだに30m以上の間隔を作る
    • 催し場所の上空では飛行させない
    • 危険物の輸送禁止
    • 物件投下の禁止
    • 飲酒時の飛行禁止
    • 飛行前確認
    • 衝突予防
    • 危険な飛行の禁止


    無人航空機を規制区域で飛行させるには、国土交通省の許可が必要です。

  2. (2)模型航空機とは

    模型航空機とは、ゴム動力模型機、重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)200g未満のマルチコプター・ラジコン機などをいいます。模型航空機の場合、無人航空機の飛行に関するルールは適用されず、空港周辺や一定の高度以上の飛行について国土交通大臣の許可を必要とする規定のみが適用されます。

2、200g未満の模型航空機が規制対象になる場合とは?

  1. (1)航空法の規制

    航空法では、200g未満のドローンは「模型航空機」に該当するので、無人航空機の飛行ルールは適用されません。ただし、航空法134条の3第1項において、「何人も、航空交通管制圏、航空交通情報圏、高度変更禁止空域又は航空交通管制区内の特別管制空域における航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのあるロケットの打上げその他の行為で国土交通省令で定めるものをしてはならない。」と定められています。つまり、航空機の飛行を妨げとなるような行為は模型航空機であってもしてはならないわけです。

    また、「前項の空域以外の空域における航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為で国土交通省令で定めるものをしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に通報しなければならない。」という規制もあります。

    これは、航空交通管制圏、航空交通情報圏、高度変更禁止空域または航空交通管制区内の特別管制空域以外の空域であっても飛行に影響を与える場合には、国土交通省に通報しなければならないということです。この規制も模型飛行機に適用されます。

    さらに、「何人も、みだりに無人航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある花火の打上げその他の行為で地上又は水上の人又は物件の安全を損なうものとして国土交通省令で定めるものをしてはならない。」との規制もあります(航空法134条の3第3項)。

    この規制は、地上、水上にいる人や物の安全を損なう飛行はしてはならないということです。これも模型飛行機の適用があります。

    具体的には、航空法施行規則239条の4に規定があり、次のような行為をしてはいけません。

    ① 無人航空機に向かって花火を打ち上げたり、石、ガラス瓶、金属片など無人航空機を損傷するおそれのある物を投げたり発射したりすること
    ② 無人航空機の飛行を妨害するおそれのある電波を発射すること
    ③ 無人航空機の遠隔操作又は自動操縦を妨げること

  2. (2)小型無人機等飛行禁止法

    小型無人機等飛行禁止法は、国などの対象施設の敷地又は区域及びその周囲おおむね300メートルの地域の上空において飛行が禁止されるというものです。
    規制の対象となる小型無人機等とは、次のものになります。

    ・ 小型無人機(ドローンなど)
    飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他の航空の用に供することができる機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの

    ・ 特定航空用機器
    航空法第2条第1項に規定する航空機以外の航空の用に供することができる機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができる


    また、防衛大臣が指定する対象防衛関係施設や国土交通大臣が指定する対象空港、それらの指定敷地等の上空において小型無人機等を飛行させる場合には、当該施設の管理者による同意を得ることが必須となります。

    その上で、対象施設周辺地域において例外的に小型無人機等の飛行を行おうとする者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、その旨を当該小型無人機等の飛行に係る対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会に通報する必要があります。

    これらに違反した場合には、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処せられます。

3、その他、問題になる法規制

航空法以外の法令では重量による区別はほとんどないため、重量に関わらず規制の対象となります。

① 電波法
ドローンを動かすためには無線のコントローラーが必要になるので、電波を発することになります。基本的には特別な許可は必要ありませんが、海外製品の場合、電波の周波数が規制対象になることもあるので注意が必要です。また、技術適合者マークが付いていない物を使用するのも違法になります。

② 公園条例
200g未満のドローンでも、さまざまな公園で飛行を禁止しています。規制対象か確認し、規制対象の公園で飛ばす場合には許可を取る必要があります。

③ 重要文化財保護法
重要文化財の周辺もドローンを飛ばすことが禁止されています。重要文化財の周辺でドローンを飛ばす際は、施設の管理団体への確認が必要になります。

④ プライバシー侵害
関係法令に違反しない範囲での飛行であっても、私人などを許可なく撮影した場合、プライバシー侵害として訴えられる可能性があります。

⑤ 道路交通法
公道でのドローンを離着陸させる行為は道路の使用にあたるので、警察の許可なしに行うと道路交通法違反になる可能性があります。

⑥ 河川法
河川でドローンを飛ばす場合、河川を管理している行政があるので禁止されていないか確認する必要があります。

⑦ 港湾法
港湾区域や港湾施設におけるドローンの飛行は、港湾管理者の管理行為に服します。こちらも禁止されていないか確認する必要があります。

⑧ 港則法・海上安全交通法
海上安全交通法では、「船舶交通の安全に支障を及ぼす行為を行ってはならない」という規制があるので、該当する港でドローンを飛ばす場合には、国土交通省(海上保安庁)の許可を受ける必要があります。

⑨ 条例
条例によりドローンの飛行が規制されている場合があります。そのため、法令だけでなく、飛ばす予定の地域の自治体の条例も確認する必要があります。

⑩ 民法
第三者の所有する土地の上空で無人航空機を飛行させる場合、所有権の侵害とされる可能性があります。

4、逮捕されてしまったら?

  1. (1)逮捕される場合とは?

    これまで見てきたように、いろいろな規制があるドローンですが、これら法令を守らずドローンを飛ばしていると、逮捕される可能性があります。ドローンは目立つので、通報などもされやすいからです。

    もっとも、規制されているエリアであることを知らずドローン飛ばしてすぐに逮捕される可能性は低いでしょう。ドローンが落下して物や人にあたり、破損またはケガをしたような場合に逮捕される可能性があるといえます。

    また、皇居周辺や政府の重要施設は安全を守る必要性が高いので、この地域で許可なくドローンを飛ばせば逮捕される可能性は高いでしょう。

  2. (2)逮捕後の流れ

    警察に逮捕されると、被疑者の身柄は警察署内の「留置所」に留め置かれ、嫌疑不十分、微罪、厳重注意で済むと判断される場合などでない限り、逮捕後48時間以内に、検察官の元に送られます。

    送検されると、検察官は裁判所に勾留請求をします。そして、被疑者は裁判所に連れて行かれて裁判官から質問を受けて(勾留質問)、裁判官が勾留決定をします。送検後勾留決定までの時間は、24時間と制限されています。検察官が勾留請求しない場合や、裁判官が勾留決定しない場合には、被疑者は勾留されずに釈放されます。

    勾留決定されると、原則として10日間、警察の留置所内に身柄を留置され続けます。その間、捜査官による取り調べを受けます。10日間で捜査が終わらない場合、さらに10日間、勾留期間を延長することができます。検察官は、勾留期限が切れるまでに起訴するかどうかを決定します。

    起訴になれば、起訴後勾留がはじまり、不起訴になると、被疑者は釈放されます。その他、起訴猶予というのがあります。これは、証拠が不十分なので、取りあえず起訴はしないけれども様子を見るという決定です。

    起訴後は、被疑者は被告人となって、刑事裁判で裁かれることになります。裁判になると、法廷で期日が開催されて、裁判官の面前で、被告人として裁かれることになります。裁判では、検察官と弁護人相互が主張・立証を行い、証人尋問や被告人質問が行われます。
    すべての審理が終わると、裁判官が判決を言い渡します。不服がある場合には控訴することができますが、控訴しなければ、刑が確定します。

    なお、罪を認めていて軽微な事案の場合、略式起訴となり、罰金の納付書により罰金を支払うという方法の場合もあります。ドローンを規制エリア内で飛ばし逮捕されたような場合には、略式起訴になるケースの方が多いかもしれません。いずれにせよ、逮捕されたら、すみやかに弁護士に依頼し、不起訴にしてもらうことが重要です。

5、まとめ

今回は、ドローンについての規制と逮捕された場合の手続きの流れについて解説してきました。ドローンは新しい分野であるため、法律が追いついてないところもあり、今後も法改正がなされていくものと予想されます。

悪意はなくても知らないうちに法律や条令に違反しているということは誰しも起こりうることです。万が一、逮捕されたという場合には、すみやかに弁護士に依頼することが重要です。

ベリーベスト法律事務所広島オフィスでは、刑事弁護の経験豊富な弁護士がおります。お困りの場合はぜひご相談ください。

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