有罪判決が下されたらどうなるの? 弁護士に依頼したほうがいい理由

2022年07月20日
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有罪判決が下されたらどうなるの? 弁護士に依頼したほうがいい理由

広島県警の発表によると、令和元年の1年間に広島県警が認知した刑法犯の数は、1万1181件でした。警察が認知した事件のうち、すべてが検挙され有罪判決を言い渡されるわけではありませんが、広島県内では、多くの刑事事件が発生していることがわかります。

刑事事件への関与を疑われて、刑事裁判が開かれて有罪判決が下された場合、どのような処分を受けることになり、社会的にはどのような影響があるのでしょうか?

本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が、有罪判決が下された場合に起きることや有罪判決を回避するためにできることについて解説します。

1、有罪判決が下ったら前科がつく

刑事裁判が開かれて、有罪判決が下された場合は、「前科」がついてしまいます。以下では、前科がつくがつく場合とつかない場合との違いや、前科がつくことによって生じる影響を解説します。

  1. (1)前科がつく場合、つかない場合

    前科は、刑事事件の被疑者として捜査対象となり、刑事裁判が開かれて有罪になった場合のみにつきます
    前科がつくと、警察署等に有罪になった履歴が残ることから、再び事件への関与を疑われた際に不利に働く可能性があります。

    逆に、刑事事件になっただけでは、前科がつくことはありません
    原則的には、ご自身が罪を認めており、捜査機関がそれを把握している場合でも、有罪判決が言い渡されない限り、前科はつかないのです。

    とはいえ、日本の刑事裁判での有罪率は99.9%を超えており、刑事裁判が開かれると有罪判決が下される可能性が非常に高くなっております。
    ただし、刑事裁判が開かれない「不起訴処分」や「起訴猶予」等になる確率は、令和2年次では6割を超えています。
    つまり、罪を犯したからといって、必ずしも前科がつくというわけではないのです。

  2. (2)前科が付いた場合の直接的な影響

    前科が付いたとき、すなわち有罪判決を言い渡された場合には、刑事罰を受けることになります。
    刑事罰は、大きく二種類に分かれます。身体拘束を伴う懲役・禁錮・拘留などの「自由刑」と、金銭を支払う罰金・過料の「財産刑」です。
    自由刑、財産刑の両方が刑罰として規定されている犯罪もあれば、自由刑のみ、または財産刑のみが規定されている犯罪もあります。
    また、有罪判決を言い渡されても執行猶予が付く可能性もあります。

    たとえば、有罪となって「懲役2年、執行猶予3年」と言い渡された場合、3年間有罪判決を言い渡されなければ、服役する必要はありません。
    ただし、執行猶予付き判決であったとしても、有罪判決であることには変わりないため、前科は付いてしまうことになるのです

2、前科が付いたとき受ける社会的影響

以下では、前科がつくことによって生じる可能性のある、社会的な影響について解説します。

  1. (1)特定の職業に一定期間就けなくなる

    刑事裁判で有罪判決が言い渡された場合、その刑罰が禁錮以上のものであれば、弁護士・検事・裁判官・司法書士・公務員などの職業に就くことが一定期間できなくなります
    また、罰金以上の刑罰でも資格制限を受ける職種もあります。

    なお、「禁錮以上」とは、自由刑のうち、懲役と禁錮のことをいいます。
    懲役は、刑務所等で身柄を拘束して、労働をさせる刑のことです。
    禁固刑とは、1カ月以上刑務所等で身柄を拘束されるものの、労働をする義務はない刑のことを指します。

  2. (2)報道されたら職場や近所にバレてしまう

    全ての犯罪ではありませんが、刑事裁判の結果等が新聞やテレビ、ラジオ等で報じられることがあります。
    実名で報道されてしまえば、会社や近所の人、学校等にバレてしまう可能性があるでしょう

  3. (3)インターネット等で報じられてしまうとデジタルタトゥー化する可能性がある

    インターネットメディアやニュース等で有罪判決について報じられると、その履歴が半永久的に残ってしまうおそれがあります。
    インターネットに実名での有罪判決が掲載された場合、メディアの記事は一定期間を経過すると削除されることが多い傾向にあります。ところが、個人ブログやまとめサイト等に転載された情報が残ってしまうケースは少なくないのです。

    インターネットに一度実名が掲載されてしまうと、完全に消し去ることはできず、いわゆる「デジタルタトゥー」として情報が残り続けてしまう可能性もあります
    進学、就職、結婚、転職など人生における重大な局面で、前科が不利に働く可能性は大いにあります。
    さらに、ご自身だけでなく、子どもや配偶者、親戚等にまで悪影響が及ぶおそれもあるでしょう。

  4. (4)性犯罪の場合、一部地域では住所や罪名を申請しなければならない

    未成年に対する性犯罪で有罪判決を言い渡された場合、大阪府と福岡県では住所等を知事に届け出ることが義務付けられています(令和4年6月時点)
    住所等を報告しなかった場合や、虚偽の内容を報告した場合には、5万円以下の過料という罰則も設けられているのです。

    具体的には、未成年を対象とした痴漢・強制わいせつ・強制性交等・児童ポルノ所持等の犯罪を行った場合に、知事への住所等の届け出が義務付けられます。

    たとえば、大阪府の場合は、以下のような情報を届けなければならないのです。

    • 住所
    • 氏名
    • 生年月日
    • 連絡先
    • 罪名

3、有罪判決を回避するためにやるべき3つのこと

有罪判決を受けた場合は、前科が付きさまざまなデメリットが生じます。
罰金刑や身体拘束を伴う刑罰が言い渡される直接的な影響だけでなく、先述したような社会的な影響も生じるのです。
これらの悪影響を回避するためには、「前科を付けないこと」が重要です
以下では、前科の前提となる「有罪判決」を回避するためにやるべき3つのことを解説します。

  1. (1)被害者が存在する場合は、被害者との示談を急ぐ

    痴漢・窃盗・横領・傷害・器物損壊など、被害者が特定されており、被害者との連絡が可能な事件においては、被害者との示談を進めることが、有罪判決を回避するための有効な手段の1つとなります。
    被害者との示談を成立すると、「不起訴処分」になる可能性が高いためです。

    不起訴処分になれば、刑事裁判は開かれなくなるため、前科がつくことはありません

  2. (2)贖罪寄付を行う

    被害者が賠償金の受け取りを拒否している事件や、被害者が存在しない事件など、被害者との示談交渉ができない場合には、「贖罪寄付」を検討しましょう。

    贖罪寄付とは、罪を償う気持ちを示すために行う寄付です。
    具体的には、「日本財団」や「弁護士会」、「日弁連交通事故相談センター」などの団体が贖罪寄付を受け付けています。
    「贖罪寄付を行った」という事実を証明できる証拠を検察官に提出をすることで、起訴か不起訴かを判断する際に考慮される可能性があります。

  3. (3)弁護士に弁護人になってもらう

    不起訴処分を実現するために非常に効果が高いのが、弁護士を弁護人として選任して、検事への働きかけや被害者との示談交渉を一任する方法です
    弁護士は、示談交渉だけでなく、検事に提出する書類の作成、示談や贖罪寄付を行ったことを証拠として提出するなど、不起訴処分を勝ち取るための総合的なサポートすることが可能です。

    精神疾患が原因で罪を犯している場合には、「再犯をしないための環境構築」や、「医療機関との連携」なども、弁護士が手助け可能です。
    また、警察や検事の取り調べの対処法もアドバイスもできるため、供述によって不利な立場に追いやられるリスクを軽減することができるでしょう。

4、罪を問われる立場になったとき

なにかしらの犯罪の被疑者となり、警察や検事の捜査対象になっているときに取るべき対応は、置かれている状況や罪の重さによって異なります。

逮捕をされた場合は、逮捕後最長72時間は警察署に身柄を拘束されます。その後、検事が「勾留が必要である」と判断をして裁判官がこれを認めた場合は、最長20日間も身柄の拘束が継続します。

逮捕だけであれば、学校や職場の不在期間は最長3日間で済みます。
しかしながら、勾留された場合は、学校社職場を長期間不在にしなければなりません。その間に、刑事事件の被疑者になっていることがバレてしまう可能性もあるのです。

身柄の拘束を最小限にするためには、ご自身やご家族だけでなく弁護士によるサポートが欠かせません。
前科を付けないだけでなく、逮捕されたことの影響を最小限に抑えるという目的のためにも、できるだけ早く弁護士に相談しましょう

5、まとめ

刑事事件で有罪判決が言い渡されると、刑事罰を科されるだけでなく、前科もつくことになります。それによって職業が制限される場合があるほか、報道されたことで社会的信用が低下してしまうおそれがあります。
前科をつけないようにするためには、できるだけ早い段階で弁護士に依頼をして、不起訴処分を勝ち取るための弁護活動を開始することが重要です

広島県にお住まいで、ご自身やご家族が逮捕されたり、捜査の対象となったりされている場合には、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています