釣りや潮干狩りをしていたら、漁業調整規則違反で逮捕される場合とは?
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海で釣り遊びや潮干狩りといったレジャーにでかけた家族が逮捕されたと警察から連絡を受けると、大きな疑問を抱くかもしれません。
しかし、釣りや潮干狩りなど水産動植物を採取する行為についても、法律が定められているため、順守する必要があります。実際に広島県内でも呉市沖で密漁したナマコを買い取ったとして2人の男性が逮捕された事件がありました。
そこで、レジャーに行く際「知らなかった」では済まされない漁業調整規則違反の概要や抵触する可能性がある他の法令、万が一逮捕された場合の家族の対応について、広島オフィスの弁護士が解説します。
1、漁業調整規則違反の概要
一般の方にはなじみがないかもしれません。しかし、実は知らぬ前に違反してしまう可能性があるのが「漁業調整規則」です。まずは漁業調整規則について解説します。
漁業調整規則は、漁業法と水産資源保護法に基づいて各都道府県知事が定めている規則です。この規則の目的は主に水産資源の保護培養と漁業の取り締まり、漁業の調整を図ることにあります。
水産資源の保護培養とは、水面を水産動物が産卵したり繁殖したり、稚魚が育つのに適した状態に保つことです。そのため、水産動植物をむやみに採取したり処理や処分したりしないように遊漁の一部を制限または禁止しています。
つまり、釣りや潮干狩りの内容によっては「漁業法」、「水産資源保護法」、「漁業調整規則」の3つのうち、いずれか、もしくはすべての法律に違反する可能性があると言えます。
たとえば、広島では船からのまき餌釣りや、カゴを使用した遊漁、はえなわを使った遊漁が禁止されています。また、呉市の南部の海岸や大崎下島の西海岸の一部は、陸からのまき餌釣りを禁止している海区と指定されています。
このように制限がある海区や釣りが禁止されている海区で禁止行為にあたる遊漁をすると、逮捕される可能性があります。近くの港や防波堤などで遊漁をすることは問題がないように感じますが、実はどこででも許されているわけではないので注意が必要です。
また、川釣りもレジャーとして楽しむ方がいますが、川釣りには釣りをしてはいけない期間(禁漁期間)や禁止されている区域が存在します。
2枚貝やマダコ、さざえ、ウニ、わかめなどは第一種共同漁業権の対象となっているため、開放されている潮干狩り場以外で採捕すると法令違反にあたります。
さらに、アワビとナマコについては、漁業法の改正により令和2年12月1日から全国一律で採捕が禁止されており、違反者は最大で3年以下の懲役または3千万円以下の罰金に処せられる可能性があるのです。
漁業法の改正については、下記の記事にて、詳しく扱われています。
ただし、すべての採捕行為が逮捕対象となるわけではありません。これらの違反行為や違反地域は地域によって違いますので、釣りや潮干狩りなどをする際は、事前に現地の漁業調整規則を確認しておくことをおすすめします。
2、密漁に抵触する他の法律は?
一般の方が釣りや潮干狩りなどで、密漁に抵触してしまう法律にはどのようなものがあるのでしょうか。
もっとも可能性が高いものが漁業権の侵害です。たとえば、前述した第一種共同漁業権の対象となるあさり、しじみなどは潮干狩りでよく採取される種類ですし、釣れたマダコを持ち帰ることもあるでしょう。
しかし、都道府県知事から免許を与えられた漁業権を有する人のみが、共同漁業権のうちの第一種共同漁業権に該当する水産動植物を採取することが許されています。そのため、この行為は共同で一定の水面を利用して漁業を行う権利(共同漁業権)を侵害していると考えられます。
漁業権又は漁業協同組合の組合員の漁業を営む権利を侵害すると漁業法143条に定められた罰則に従い、罰金刑として20万円以下の刑罰に処されます。これは親告罪なので被害を受けた人からの告訴があって初めて罪に問われます。
さらに制限または禁止されている方法で遊漁を行うことは漁業調整規則違反に該当する可能性があります。有罪になれば、項目ごとに懲役刑や罰金刑が科されることになるでしょう。
他にも水産資源保護法違反として、禁止された有毒物などを使用して水産動物を採捕する行為も禁じられています。さらに、仕掛けている網から水産物を盗み取る行為は窃盗罪として刑法に問われる可能性もあるため、注意が必要です。
3、漁業調整規則違反などによる逮捕後の流れ
では上記で該当する密漁に問われ、逮捕された場合の流れについて確認していきましょう。
逮捕されると、まずは警察もしくは海上保安庁などで取り調べを受けることになります。48時間以内に被疑者の身柄を検察に送致するかどうかが判断されます。送致された場合は、検察でも同様に違反行為(網など使用していた漁具や方法、船舶の利用)や動機などについて取り調べを受け、24時間以内に勾留されるかどうかが判断されます。
逮捕されてから勾留が開始されるまでの72時間は、家族でさえも被疑者と直接話をしたり、面会したりすることはできません。そして、勾留が決定すると被疑者は原則10日間の身柄拘束を受けます。検察官が必要と判断すれば裁判所に勾留延長の請求を行うことで、最長10日の勾留延長が決定します。
このように起訴・不起訴処分の決定まで、最大23日間身柄が拘束され続けることになります。勾留開始以降は家族でも面会できますが、面会時間や1日に面会できる人数に制限があります。
検察は、取り調べが終わり次第、もしくは勾留期限が終わるまでに起訴にするか、不起訴とするかを決定します。起訴となれば裁判で罪を裁かれることになります。日本の司法制度では起訴されると99%が有罪となるというデータがあります。つまり、起訴されれば何らかの刑罰が処されることになり、前科がつく可能性が高いということです。不起訴となったときは、罪を裁かれることはありません。前科もつかず、速やかに日常へ戻ることができます。
4、漁業調整規則違反で家族が逮捕された際の対応
前述した通り、逮捕された直後から最長72時間は、家族であっても面会などが制限され、状況がわからない、知らせてもらえないということもあります。その場合、早急に弁護士に相談してください。
依頼を受けた弁護士であれば自由な接見が行えるため、本人と直接話をすることも可能です。状況を知るだけでなく、取り調べの際のアドバイスをするなど、早期に弁護活動を行えます。直接何かできなくとも、弁護士を依頼することによって、逮捕された本人の心を支えることができるでしょう。
さらに、起訴か不起訴かが決まるまでだけでも、23日間も身柄の拘束を受けることがあります。その間、学校や仕事へ行くことは当然できません。その不利益は非常に大きなものとなるでしょう。
そして、家族であれば前科がつくことだけは回避したいと考えることは自然なことです。そこで依頼を受けた弁護士は、被害者と加害者、当事者同士が話し合いを行う「示談」交渉を検討します。被害者がいる事件では被害者の処罰感情などが重視されるため、罪を裁かれる前に示談を成立させて、損害賠償と行うとともに許してもらうことを目指すのです。
そこで、漁業調整規則違反などで逮捕されたときは、告訴した漁業組合などとの示談成立を目指すことになります。ただし、逮捕された本人やその家族が直接謝罪に出向いて示談を申し出たとしても、話し合いをスムーズに進めることは非常に難しいでしょう。商売を邪魔された組合の立場からするとそう簡単に告訴を取り下げるという結論には至りにくいものです。
しかし、弁護士に示談交渉を依頼することによって、第三者の立場から被疑者の謝罪を伝えて示談に応じてくれるように交渉してもらうことができます。スムーズな示談成立となる可能性が高まるでしょう。たとえ示談が決裂したとしても、弁護士は検察官などに対して、示談が成立しなかった理由などを述べるとともに、示談を働きかけた実績を示します。
そのほかにも、依頼を受けた弁護士は、不起訴処分や勾留が長引かないよう働きかけたり、保釈請求を求めたりするなどの弁護活動を行うことができます。逮捕された本人が不当に重い制裁を受けずに済むよう、全力を尽くします。
5、まとめ
「このあたりで釣りをしないでください」という看板がある地域で遊ぶときは要注意です。無視して釣りをした結果、密漁行為と判断される可能性があります。
一般的に行われている釣りも、現地の漁業調整規則を確認してから行うと安心でしょう。万が一、海に遊びに行った家族が逮捕されてしまった場合は、慌てずに弁護士に相談してください。
旅行先で釣りをしていた家族が逮捕されてしまった、警察から連絡が来たなどの際は、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスへ相談してください。広島オフィスの弁護士が、早期釈放に向けた示談交渉などを請け負います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています