架空請求詐欺で逮捕された場合の対応方法と逮捕後の流れ
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「だまされる方が悪い」などという身勝手な理由から、軽い気持ちで詐欺を行う若者が増えています。架空請求詐欺の手口も巧妙化しており、組織的に行われることが多くなっています。
広島県内の特殊詐欺の被害も後を絶たない状況で、令和元年中の被害額は、約3億2000万円にもなります。組織として詐欺を行うことも多くなっているため、友人から「割のいい仕事があるから手伝ってほしい」などと誘われ、家族が詐欺に加担してしまうこともあるかもしれません。もし、家族が架空請求詐欺で逮捕された場合、その後どうなってしまうのでしょうか。
そこで今回は、架空請求詐欺で逮捕された場合の、身柄拘束が続く期間やその後の刑事手続きについて家族としてできることなどについてベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。
1、架空請求詐欺とは?
架空請求詐欺とは、実際には請求となる事実がないにもかかわらず、架空の事実を基に金品を請求する手法の詐欺です。たとえば、「○○の利用料金について請求します」という内容の請求書を送付し、お金を振り込ませるなどです。以下、典型的なケースを紹介します。
突然請求書がはがきやメールで送られてきて、金銭を請求するというものです。最近多いのが、有料サイトの利用料金の請求です。多くの方はインターネットを利用しているので、「間違って有料サイトをクリックしてしまったか」と、支払ってしまう方がいます。
② 当選したなど特別感を演出した請求
申し込んでもいないのに、「当選したので○○について購入する権利があります」と連絡してきて、お金を振り込むとその後連絡が取れなくなるというものです。特別感を演出することでついお金を支払ってしまうという人間の心理をついた詐欺になります。
③ 個人情報が漏えいしたとして情報を引き出す詐欺
たとえば、銀行協会などを名乗り、「あなたのパスワードが流出しましたので、すぐにパスワードの変更手続きをしてください」と連絡してくる詐欺です。その上で、パスワードを聞き出して悪用する場合やカードを提出させ現金自動預払機(ATM)からお金を引き出すものもあります。
④ 親族の被害弁償を請求する詐欺
警察や弁護士を名乗り、「息子さんが痴漢をしました」とか「交通事故を起こしました」と連絡してきて「今、示談をすれば逮捕されなくて済むのでお金を用意することができますか」と言ってくるものです。
2、どのような罪に問われるのか
架空請求詐欺では、詐欺罪、恐喝罪などに該当する可能性があります。
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(1)詐欺罪が成立する場合
詐欺罪が成立するためには、①欺罔(ぎもう)行為(だます行為)、②錯誤(だまされること)、③処分行為(財産を処分する行為)、④財産の移転(財産が加害者に移転すること)が必要になります。
架空請求詐欺の場合には、何らかの請求がなされた時点で、欺罔(ぎもう)行為はあったと言えるので、それによってだまされて、お金を支払ってしまったような場合には詐欺罪が成立しえます。一方、架空請求があったが、被害者がだまされずに哀れに思って金銭を支払ったような場合には錯誤に落ちいっていないので詐欺罪にはなりません。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」になります。起訴された場合は正式裁判となり、犯行が悪質な場合は初犯であっても執行猶予が付かず実刑判決となることもあります。 -
(2)恐喝罪が成立する場合
恐喝罪が成立するためには、①恐喝行為、②相手方の畏怖、③処分行為(財産を処分する行為)、④財産の移転(財産が加害者に移転すること)が必要になります。
架空請求詐欺では、文書で請求するだけではなく、電話で請求するケースもあります。その際、「明日までに全額振り込まなければ、お前の家に取り立てに行くからな」などと恐怖を感じるような高圧的な言動をする者もいます。
被害者が恐怖を感じ、お金を振り込んでしまったという場合、詐欺罪ではなく恐喝罪が成立しえます。だまされてお金を支払ったのではなく、恐怖でお金を支払ったからです。
恐喝罪の法定刑は、詐欺罪と同じく「10年以下の懲役」です。したがって、こちらも起訴された場合は正式裁判となり、犯行が悪質な場合は初犯であっても執行猶予が付かず実刑判決となることがあります。
3、架空請求詐欺で逮捕されたらどうなる?
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(1)逮捕後
警察に逮捕された後は取り調べが行われ、48時間以内に「釈放」するか「送検」するかが決められます。現行犯以外の場合、逮捕状を取る段階で調べは済んでいるので、基本的に送検される可能性が高いといえます。
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(2)送検後
検察庁に送致後は、24時間以内に勾留請求するか否かが判断されます。通常は裁判所に勾留請求がなされ、10日間の勾留となります。さらに必要な場合には10日間の延長が認められます。この期間内に検察官は、取り調べを行い、起訴するかどうかを判断します。
架空請求詐欺の犯人は、多くの人を対象に行っていることが一般的なので、余罪があれば、再逮捕となり勾留も繰り返されることになります。 -
(3)起訴
起訴された場合は、原則として起訴後勾留が始まります。ただ、保釈請求が認められれば、保釈金を納付して身柄を解放してもらうことができます。
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(4)刑事裁判
刑事裁判が始まると、法廷で期日が指定され、①冒頭手続、②証拠調べ手続、③弁論手続、④有罪・無罪の判決という流れで公判手続が進みます。判決が言い渡された翌日から14日以内に控訴しなければ、刑は確定します。
4、弁護士ができること
架空請求詐欺で家族が逮捕されてしまった場合、家族がしてあげられることは、弁護士を選任して、弁護活動をしてもらうことです。弁護士が行う弁護活動の内容については以下のとおりです。
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(1)逮捕直後
逮捕直後は、誰でも動揺するものです。身柄が拘束され、これからどうなるのか不安が募ります。
逮捕されてしまうと、家族でも被疑者と面会することはできません。しかし、弁護士は、捜査官の立ち会いなく被疑者と自由に面会することができます。そのため、今後の手続きの流れや、取り調べへの対応方法などをアドバイスすることができます。もちろん、家族からのメッセージを伝えることも可能です。これにより、被疑者も安心して警察官からの厳しい取り調べに対応することができるようになり、虚偽の自白をさせられることを回避できます。 -
(2)起訴前
検察庁に送検された後は、弁護士は不起訴になるよう働きかけをします。たとえば、被害者に対して、被害弁償をし、被害届を取り下げてもらうなどの示談交渉をします。示談が成立すれば不起訴となる可能性は高まります。また、勾留処分に対しても準抗告などの弁護活動を行い身柄の解放を求めることができます。
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(3)起訴後
起訴後は、直ちに保釈請求を行い、身柄の解放を求めます。保釈が認められれば、家に帰ることができます。また、被害者との示談が成立していない場合には引き続き示談交渉を進めていきます。弁護士という立場で被害者に連絡をするので、被害者も安心して示談交渉に応じてもらいやすくなります。
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(4)裁判手続開始後
裁判手続では、被告人に少しでも有利になるよう弁護活動を行います。具体的には、被害弁償の状況や家族や勤務先の人などを情状証人として呼ぶなどし、被告人を社会に戻しても問題のないことを説明していきます。無罪である場合はもちろん、有罪であっても執行猶予が付けば、刑務所に行くことなく通常の生活に戻ることができます。仮に実刑になる場合でも刑が軽くなるよう努めます。
以上のように、刑事事件で逮捕された場合には、すぐに弁護士に依頼することが重要になります。
5、まとめ
今回は、架空請求詐欺について解説してきましたが、刑事事件においては、迅速に弁護人を選任することが重要になります。間違って虚偽の自白をしてしまうと、後で「それは違う」と主張してもなかなか覆すことは難しくなるからです。
逮捕後、弁護士が早い段階で面会して、絶対に虚偽の自白をしないよう忠告し、被害者と示談を成立させることで、不起訴に持ち込める可能性が高まります。そのため、近親者などが逮捕された場合には迷わず弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 広島オフィスでは、刑事事件について経験豊富な弁護士が在籍しております。家族が逮捕されて困っているという場合には、ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています