万引きは窃盗罪。窃盗罪の概要と量刑、逮捕後の対応を解説

2018年11月30日
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万引きは窃盗罪。窃盗罪の概要と量刑、逮捕後の対応を解説

2012年9月、広島県広島市内の銀行で他の客が記帳台に置き忘れてしまった封筒から現金を盗んだとして窃盗罪に問われ、1審2審とも有罪判決を受けていた男性が、2017年3月、最高裁判所において逆転無罪を言い渡されました。男性は、実に4年半もの時間をかけて無罪を勝ち取ったといえます。

当然のことながら、他の人のものを盗む行為は窃盗罪にあたります。軽い気持ちで犯してしまう人が多い「万引き」も、窃盗罪です。逮捕されて裁判で有罪判決を受ければ、懲役刑が下されてしまう可能性もあります。

窃盗を行ってしまった、もしくは、冒頭の男性のように、無実の罪で逮捕されてしまったとき、その後はどうなってしまうのかを、ご存じでしょうか。今回は、窃盗罪の概要や刑事手続きについて広島オフィスの弁護士が解説します。

1、万引きも窃盗! 窃盗罪とは

窃盗罪は、刑法第235条において「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と、定められている犯罪です。

窃盗罪に該当する手口は以下のとおりです。

  • お店の商品を代金も支払わずに持ち去る行為(万引き)
  • 置き忘れた荷物を持ち去る行為(置引き)
  • ポケットやカバン、着衣から財布を抜き取る行為(スリ)
  • カバンを無理やり奪う行為(ひったくり)
  • 不在の家に忍び込んで金品を盗む行為(空き巣)
  • 自転車泥棒


そのほかにも手口は多岐にわたります。平成29年に行われた県政世論調査によると、広島県に住む方々にとって「日常において被害にあうかもしれないと不安を感じている犯罪」の1位が「空き巣などの侵入窃盗」という結果が出ています。

当然、警察でも検挙に力を入れていて、検挙率は大幅に向上しているのです。つまり、広島県下で窃盗すれば、逮捕される可能性は高いといえるでしょう。

2、窃盗罪の刑罰とは?

窃盗罪の罰則は、前述のとおり「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と刑法で規定されています。

罰金刑で済まされる場合と、刑務所で10年間も服役するのとを比べると、量刑にかなりの幅があると感じるかもしれません。実際に、窃盗罪の量刑は、同じ罪名で処罰されるとしても、行為形態の悪質さなどによって異なります。たとえば、100円の菓子を万引きするのと、数億円の価値がある美術品を盗むのとでは、被害による経済的損失に大きな差があるためです。

また、前科の有無も量刑に大きな影響を与えます。たとえば万引きや置引きなどの手口で逮捕されたとしても、宝石などの高額商品を計画的に窃盗したケースなどではない限り、初犯で懲役刑の実刑判決を受ける例はほとんどないでしょう。

初犯で、行為の悪質性が低いとみなされれば、罰金刑で済まされたり、不起訴処分が下されたりするケースも少なくありません。起訴されてしまった場合、有罪となる率が非常に高い日本の司法手続きにおいては、起訴されずに済ませるメリットは非常に高いものとなります。

3、窃盗罪の証拠とは

窃盗罪の証拠は、まさに窃盗の瞬間を撮影した写真やビデオ映像、実際に目撃した人の証言などが中心となります。これらの証拠が完全な形で残っていることが期待できないケースも多数あります。なぜなら、防犯カメラの存在など気にせずに堂々と万引きする人はいないでしょうし、目撃者が誰もいないからこそ他人のものを無断で持ち去る人もいるのです。

そのため、窃盗罪の証拠は、間接的な証拠、法律用語では「情況証拠」が有効にはたらくことが多々あります。次のようなものが状況証拠と認められる傾向があります。

  • 犯行時間に犯行場所にいることが記録された防犯カメラの映像
  • 犯行場所から近い場所で被害品を所持しているところを発見された
  • 犯行現場に指紋が残されていた


刑事裁判では、直接的な証拠だけでなく、数多くの情況証拠が集められて窃盗罪が立証されることになります。

4、窃盗罪で逮捕された場合の流れ

窃盗罪を犯した場合、逮捕されず任意捜査を受けることがありますが、状況によっては逮捕されることもあります。たとえば、万引き現場を取り押さえられ、店員によって身柄を拘束されたなどのケースは「現行犯逮捕」となります。また、被害者が窃盗被害に気付き、警察の捜査結果で容疑者として判明し逮捕状をもとに通常逮捕されるというケースも考えられるでしょう。

逮捕されると、刑事訴訟法の規定に基づいて、捜査が進められることになります。

まず、逮捕から48時間以内は警察に身柄を拘束されます。この時点では、警察署の留置場に留置され、事件に関する取り調べを受けることになります。この48時間のあいだに、警察は事件を検察庁に送致するか否かを検討します。

検察庁に送致されると、送致を受けた検察官は24時間以内に勾留する必要があるかを検討します。「勾留(こうりゅう)」とは、引き続き身柄を拘束し、捜査を行うことを指します。検察官が「勾留の必要あり」と判断し、裁判所が勾留請求を認めた場合は、最大20日間の身柄拘束を受けることになります。

検察官は、勾留期間中に捜査を進め、起訴するかどうかを決定します。

他方、逮捕されたとしても、勾留されず、釈放になる場合があります。逃走・証拠隠滅のおそれがないと認められたケースでは、釈放されて「在宅事件扱い」となることも少なくありません。

在宅事件扱いとなった際の取り調べは、必要の都度呼び出しを受け、自宅などから通いながら受けることになります。ただし、在宅事件扱いとなったときは、たとえ釈放されても起訴されないわけではないことを覚えておきましょう。

身柄の早期釈放を目指すためには、刑事事件の対応経験が豊富な弁護士へ依頼することをおすすめします。弁護士に依頼すれば、状況に適した弁護活動を行います。早期釈放だけでなく、不起訴処分の獲得を目指すことも期待できるでしょう。不起訴となれば、前科がつくこともありません。

5、窃盗罪の時効

窃盗罪の時効は7年です。窃盗の事実が発生した日から7年が経過すると、検察官は公訴を提起することができなくなります。

時効を知ると、「7年間、逃げ続ければ罰を受けずに済む」と考えてしまうかもしれません。しかし、7年ものあいだ、警察の目につかないように生活し続けることは容易ではないでしょう。これまでの住居や職場にいてはすぐに居所が判明してしまいますし、住民登録もできない状態で転々と流浪することになります。

窃盗罪の解決は、時効の完成を待つのではなく、素直に罪を認めたうえで被害者に対する謝罪や被害弁償をして、刑事手続きの中で罪を償うことを強くおすすめします。7年間も身を隠し生活するよりも、ずっと将来に与える影響を最小限に抑えることができます。

6、窃盗事件における示談とは?

窃盗事件における示談とは、窃盗をはたらいた犯人と被害者とのあいだで行われる話し合いによって解決することを指します。

一般的に、窃盗行為を犯してしまうと、窃盗容疑による刑事罰を決めるための刑事裁判と、窃盗したものに対する損害賠償責任を果たすための民事裁判の両方が開かれることになります。

民事裁判では、主に窃盗行為によって被害者が受けた損失の賠償を決定することになりますが、裁判にはせず、法廷の外で話し合いによって円滑に解決することが示談です。加害者側とすると、示談を成立させて民事責任を果たすとともに、刑事的な責任についても情状してもらおうというのが示談の目的といえます。

示談が成立し、被害者にはすでに処罰感情がないことが示されると、窃盗による損害については当事者のあいだで解決していると判断されます。刑事裁判でも不起訴処分を得やすくなるだけでなく、万が一起訴されてしまっても、量刑が軽くなることが期待できます。

しかし、窃盗事件における示談を有効に生かすためには、素早い対応がカギを握ります。

まず、逮捕という事態を回避するためには、被害者が警察に被害届を提出するまでに示談を成立させる必要があるでしょう。同様に、勾留を防ぐためには逮捕から72時間以内に、起訴を回避するためには逮捕から23日のあいだに示談を成立させる必要があります。

逮捕・勾留・起訴を回避して、窃盗をしてしまった本人とその家族の生活や将来に与える影響を最小限に抑えるためには、逮捕後、速やかに弁護士を選任する必要があるでしょう。

また、無実の罪で逮捕されてしまった場合も、できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼することを強くおすすめします。逮捕から勾留が決まるまでの72時間は、弁護士以外の人物との接見が制限されます。早く帰りたいという気持ちから、してもいない窃盗を自白してしまう可能性は少なくなく、自らのウソによって、無罪となることが難しくなるケースは少なくありません。

弁護士を依頼することによって、証拠を精査したり、警察や検察に働きかけたりすると同時に、逮捕されてしまった方の精神的なサポートを受けることができます。弁護士は、冒頭で紹介した男性の事例のように、無罪を勝ち取るよう力を尽くします。

7、まとめ

窃盗罪の概要や刑事手続きの流れ、示談の重要性などを紹介しました。

万引きなど犯情軽微な手口では「たかがこれくらい」と軽く考えがちになりますが、どのような手口であろうと、「窃盗」であり、まちがいなく犯罪行為です。窃盗をはたらけば逮捕される可能性は否定できませんし、起訴されて有罪判決を受けてしまえば刑罰を受けるだけでなく、前科が記録されてしまいます。

ただし、窃盗事件では、被害者との示談を成立させることで不起訴処分や量刑の減免など有利にはたらくことが期待できます。

広島で窃盗事件を起こしてしまい、逮捕や刑罰に不安を抱えている方や、身に覚えのない窃盗事件に巻き込まれてしまった方は、ベリーベスト法律事務所・広島オフィスまでご連絡ください。窃盗事件の弁護や示談に精通した弁護士が全力でサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています