未成年(高校生)の息子が盗撮で逮捕。親ができる対応とは?
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少年事件と呼ばれる未成年者が起こす犯罪事件には、刑法に違反するものから、盗撮をはじめとした迷惑防止条例違反にあたるものまで、さまざまなものがあります。もっとも、全国の動向同様、広島県下でも少年事件の件数は年々減少傾向にあることは喜ばしい限りです。
しかし、最近では学生のほとんどがスマートフォンを所持しており、未成年でも日々気軽にカメラや動画撮影を楽しめるようになりました。男子高校生が、友人同士で見せ合う目的で盗撮行為をしていたというケースも報道されています。盗撮事件は未成年でも起こしてしまう可能性がある犯罪のひとつなのです。
そこで、今回は未成年の息子が盗撮で逮捕された場合の、その後の流れや問題が起こった場合の解決方法などを詳しく解説していきます。
1、未成年の盗撮はどのような事件として扱われるのか?
未成年者が罪を犯した場合、成人とは違う扱いとなり、裁かれる方法も異なります。未成年者の盗撮の場合も同様であり、「少年事件」に分類されることとなるのです。
少年事件には少年法が適用されます。少年法第1条には「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正および環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」と定められています。
つまり、成人とは違い、罪を犯しても少年が更生する可能性を信じて、保護するという目的があるのです。少年事件として扱われるのは、罪を犯した14歳以上20歳未満の少年・少女もしくは、刑罰法令に触れる行為をしたときに14歳未満であったために法律上は罪を犯したことにならない少年・少女です。
この基準となる20歳未満ですが、犯罪行為をした時点ではなく、少年審判での処遇が決まった時点が基準とされます。そのため、19歳のときに起こした犯罪でも、20歳以降に処分される場合には少年法は適用されません。
2、未成年が盗撮で逮捕された後の処遇の流れについて
未成年者が逮捕された場合、成人の逮捕とは処遇の流れが異なります。年齢によっても手続きが異なるので、その点に気をつけなくてはなりません。
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(1)逮捕・勾留
14歳未満の未成年者の場合、触法少年と呼ばれ、刑事事件を起こした場合でも罪に問われることはありません。しかし、警察に逮捕されることはないものの、児童少年相談所で身柄を保護されて、事件について話をしなくてはいけない場合があります。
14歳以上になると刑事責任能力が生じるため、成人と同様に警察に逮捕されて、逮捕から48時間以内に取り調べを受けることになります。その後検察に送られますが、検察の捜査は送致から24時間以内なので、最大72時間でさらに捜査のための勾留が必要かどうかを判断します。
検察が勾留を必用だと判断した場合、裁判所に勾留請求がされます。勾留請求が認められると、そこから10日間勾留されることとなり、さらに延長10日間が加わることもあるので、最大20日間、少年鑑別所などに勾留されることになります。 -
(2)家庭裁判所送致
少年事件が裁かれるのは家庭裁判所となっており、検察の捜査後は家庭裁判所へ送られます。成人による刑事事件では、この時点で場合によっては検察の裁量で不起訴になることがあります。
しかし、少年事件においては不起訴処分に相当する制度がありません。そのため、検察から家庭裁判所へ全件送致されることになります。ただし、捜査の結果犯罪の嫌疑がないと判断された場合には送致されません。 -
(3)少年審判
少年審判は家庭裁判所で行われますが、審判の前に調査官によって逮捕された未成年者の調査が行われ、観護措置をすべきか判断されます。
観護措置となると2週間~最大8週間少年鑑別所で収容され、心理テストや面談を行うことで、少年の精神状態や犯罪を起こした原因などを調査して、更生方法を判断します。観護措置が請求されなかった場合には釈放されます。
家庭裁判所に送致された後に、教育的な観念から少年審判の必要がないと判断された場合には審判は行われず釈放されますが、必要だと判断された場合は、少年審判がプライバシーの保護のため、非公開で行われます。
少年審判で受ける処分は、下記の3種類が考えられます。- 不処分:犯罪を行ったとされず、処分の必要はないと判断され、無罪ということで釈放されます。
- 保護観察処分:この場合は自宅に帰ることができますが、日常生活を過ごしながら保護観察官による生活指導を受けて更生を図ります。
- 更生施設への送致:少年院や児童養護施設・児童自立支援施設に送致され、施設で更生に向けた生活を送ることになります。
3、少年事件と成人犯罪で異なる3つのポイント
未成年者は心身共に成人よりも未熟なので、逮捕後の流れも成人とは異なり、勾留の条件も厳しくなっています。大きな違いは、以下の3点になります。
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(1)原則として全て家庭裁判所に送致される
前述したように、少年事件では裁判所に送致される前に不起訴となることはありません。少年事件の際は犯罪行為が行われていないと判断されない限りは家庭裁判所に送致されます。そして、家庭裁判所に送致された後に審判を開くべきか検討されるのです。
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(2)原則として保釈制度はない
少年事件では成人犯罪のような保釈制度はありません。
しかし、犯罪の嫌疑なしと判断された場合には釈放されるので、無実であることが証明できる証拠を集めて提出すれば家庭裁判所に送致される前に釈放される場合もあります。また、証拠隠滅や逃亡の恐れがないと判断されれば勾留が延長されることもないですし、観護措置によって鑑別所に収容されることもありません。 -
(3)原則として公開の裁判は開かれない
少年事件は少年法61条にも規定されているように、未成年者の更生後の生活を考慮して非公開の裁判が行われます。もちろん、国民の知る権利や報道の自由といった議論もありますが、未成年者の成長による更生と変化する可能性を重視して、実名や顔、写真などの報道は禁じられています。
4、学校などに知られずに解決する方法はあるのか?
もし少年事件を自分の子どもが起こしてしまった場合、親心としては学校などには知られずに穏便に解決したいと考えるものでしょう。
少年事件の場合は、成人犯罪とは違って勾留満期を待たずして家庭裁判所に送致され、犯罪の事実がないと判断され、不処分となれば釈放されます。そのため、逮捕からスムーズに手続きが進めば、学校に知られる前に穏便に事件を解決することができます。
しかし、捜査が困難で勾留期間が長引くと、学校や勤務先に逮捕の事実が知られ、対応も難しくなり、退学・解雇などになってしまう可能性は否定できません。警察と学校間で事件が起きた際に学校に連絡をするという協定がむすばれていることもあるため、逮捕の知らせを受けた瞬間から、親は弁護士に相談するなど対応策を考えなくてはいけません。
少年事件は、成人犯罪以上に時間との勝負であるといえるでしょう。
5、少年事件では早期釈放やその後のサポートが大切!
少年事件では、早期釈放やその後のサポートがもっとも大切です。親の力のみでは解決が難しい問題となります。弁護士にサポートを依頼することで、早期釈放や示談などの解決方法の可能性が考えられます。
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(1)身柄拘束中の接見
もし未成年者が逮捕されてしまった場合でも、逮捕の段階では弁護士以外の接見が制限されます。接見とは、面会や差し入れを直接行える制度です。
勾留中でも証拠隠滅などの恐れがある場合には家族の接見が禁じられるケースがあるので、ひとりで心細くなっている未成年者に的確なアドバイスやサポートを行うためにも、弁護士は必要となります。 -
(2)調査官との話し合い
家庭裁判所に送致されると、調査官が少年や保護者と面談をして非行の原因を調査します。
この際に付添人弁護士をつけることで、少年の弁護を行い、被害者への謝罪や被害の弁償にもあたることができます。調査官が処分に対して厳しい意見を述べた場合でも、反対する意見を積極的に述べることができます。 -
(3)学校・職場への対応
警察から学校や職場へ逮捕の情報が伝わっている場合には、学校や職場に対して、退学または退職させられないように働きかけることが弁護士には可能です。
また、まだ学校や職場に事件が伝わっていない場合には、内容を学校や職場に知られないよう警察や検察、家庭裁判所の調査官を説得します。これらを行うには、早い段階で弁護士に依頼する必要があります。 -
(4)被害者の対応・示談交渉
被害者へ示談交渉や謝罪を行いたい場合、未成年者自身が謝罪は手紙でできたとしても、示談交渉を行うことができません。保護者が代わりに行うことはできますが、被害者にとっては加害者の親とも接触したくないと考えるケースは少なくありません。やはり第三者である弁護士を挟んだほうが、交渉をスムーズに進めることができるでしょう。
示談交渉は金額の決定や示談書に書いてもらう内容なども含め、あらゆる方向での知識と経験が求められます。経験豊富な弁護士に任せたほうが得策といえます。
6、まとめ
未成年者が盗撮事件を起こしてしまった場合、学校や職場へ知られないように、また、勾留されないようにするためにも、逮捕からすぐに弁護士に相談して動く必要があります。
未成年者だからこそ、親や家族だけではない、今後の生活やサポートが必要になります。少年事件に対応した経験が豊富なベリーベスト法律事務所 広島オフィスへご相談ください。子どもの更生を最優先事項とし、力を尽くします。
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