未成年の息子が広島電鉄宮島線で痴漢?! 痴漢容疑で逮捕された後の流れ
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平成30年、広島市内の電車内で女子高生の体を触ったとして成人男性が迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。この事件は、成人男性による、未成年者への痴漢行為でしたが、未成年者による痴漢も存在します。
未成年者が、迷惑防止条例違反で逮捕されたらどうなるのでしょうか。成人が逮捕された場合と同じように、刑務所に服役したり、罰金を支払ったりする必要があるのでしょうか。
今回は、「未成年の息子が広島電鉄宮島線で痴漢行為をして逮捕された」というケースを例に挙げ、実際にどのような手続きが踏まれ、どのように処罰が決定されるのかについて、広島オフィスの弁護士が解説します。
1、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
痴漢行為は、都道府県ごとに定められた「迷惑防止条例」によって禁じられている犯罪行為です。迷惑防止条例は、都道府県により呼称が異なり、広島県では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」がそれに該当します。
痴漢行為を禁じると記載されている条文は、同法第3条の「卑わいな行為の禁止」として規定されています。広島県内で行われた痴漢行為のほとんどがこの条例によって裁かれることになるでしょう。したがって、広島電鉄宮島線で痴漢行為をした場合も、こちらの条例違反として罪を問われることになります。成人が痴漢行為をし、迷惑防止条例違反として有罪となった場合は、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます。
なお、着衣の中に手を差し入れて直接肌に触れるなどの行為を伴う痴漢行為は、より罪が重い刑法第176条に定められた「強制わいせつ」容疑がかかる可能性があります。強制わいせつ罪として有罪になれば、6ヶ月以上10年以下の懲役に処されます。罰金刑の設定はなく、起訴され、執行猶予が付かない限り刑務所で服役することになるでしょう。
ただし、未成年者が痴漢行為をした場合は、逮捕されて取り調べを受けた以降は、成人とは異なる手続きが取られ、異なる処分が言い渡されます。
2、未成年者が痴漢容疑で逮捕された後の流れ
未成年者が罪を犯した事件は、本人の性別問わず「少年事件」と呼ばれます。
まず、14歳以上の未成年者が痴漢行為をすると、「犯罪少年」として逮捕され取り調べが行われることになります。しかし、14歳未満であれば「触法少年」と呼ばれる立場となり逮捕はされません。なぜなら、14歳未満の少年は刑事責任能力がないとみなされるため、処罰を下すことも罪を問うこともできないと法律上定められているためです。ただし、児童福祉法による処置が取られることになります。
本項では未成年者が痴漢行為で逮捕された後の流れを解説します。
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(1)まずは最大72時間、身柄を拘束される
未成年者が逮捕されたら、まずは警察署で警察官による取り調べを受けます。警察は、逮捕後48時間以内に身柄や事件を検察へ送致すべきかどうかを判断します。検察官に事件が引き継がれたら、さらに24時間身柄が拘束されて取り調べを受けます。
つまり、合計で72時間は警察署内の留置所に身柄が拘束されて、家族も面会できない状態が続く可能性があるということです。もし逮捕された後身柄が釈放されなければ、最長3日間、逮捕された少年と面会できるのは弁護士だけに限られます。
未成年者の場合、逮捕されたショックや孤独感などから、取り調べで不利な自白をしてしまうこともあるでしょう。早期に弁護士が接見し、適切なアドバイスをすることが重要です。 -
(2)送致後、勾留または観護措置
警察から送致を受けた検察は、送致から24時間以内に勾留や観護措置が必要かどうかを判断します。「勾留(こうりゅう)」とは、最長20日間身柄の拘束を受けることを指します。証拠隠滅や逃亡の危険性があると判断されたときに行われる措置です。
ただし、少年事件の場合は、「勾留に代わる観護措置」が取られることがあります。観護措置は最大10日間と定められており、延長されることはありません。観護措置が取られた場合は、少年鑑別所に入所してさまざまな観点から犯行に及んだ経緯や環境などを調査されます。
なお、逃亡や証拠隠滅の危険性がないと判断されたときは、在宅事件扱いとして勾留を受けず、自宅で過ごしながら取り調べを受けることもあるでしょう。 -
(3)家庭裁判所への送致、調査
少年事件は、全件送致主義といって原則としてすべての事件が家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所へ送致されるタイミングは、取り調べが完了した時点、もしくは勾留期間や観護措置が完了した時点となるでしょう。
家庭裁判所では、少年の育った環境や現在の環境などを把握するため、本人や保護者、学校などの関係者に事情を聞きます。また、心理テストなどで、少年が犯行に至った経緯を明らかにしようとします。場合によっては観護措置が実施されることもあるでしょう。
これらの手続きは、少年を裁くためではなく少年を更生させるため、社会に復帰させるために行われるものです。その結果、再犯する恐れがない、微罪で処分に値しないと判断されれば審判に持ち込まず、釈放されることもあります。 -
(4)少年審判による処分の決定
少年審判では、事件の内容や反省の度合いなどを考慮し、少年自身の更生を目的に処分を下します。犯した罪の重さではなく、更生のために何が最適か、で判断される点に注意が必要です。
少年法に基づく処分は、主に以下の5種類です。① 少年院・児童自立支援施設への送致
少年院送致とは、少年院に入院して更生を図るものです。非行を繰り返さないための教育や作業が行われます。年齢によって、少年院ではなく児童自立支援施設に送致されることもあります。どちらの場合も、親元を離れて暮らすことになり、学校などは休まなければなりません。
② 都道府県知事、または児童相談所長へ送致
児童福祉法による措置が妥当と判断されたとき、児童福祉機関などに送致されることになります。
③ 検察へ送致(逆送)
逆送とも呼ばれる措置です。家庭裁判所による各種保護処分ではなく、刑事処分を下すことが妥当であると判断された場合に、検察官に事件を引き継ぐことを言います。検察へ送致されると成人と同様の刑事事件の手続きが行われます。具体的には、16歳以上で故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合は検察官送致しなければならないとされています。痴漢容疑だけであれば、逆送されることはないでしょう。
④ 保護観察処分
月に数回保護観察官や保護司に面会して更生に必要な指導を受ける処分です。身柄の拘束を受けることなく帰宅できて、通学や通勤も可能です。
⑤ 不処分
不処分とは、事件に関わっていなかった、本人が深く反省してすでに更生したとみられる場合に、処分されることなく身柄が解放される措置です。
3、子どもが痴漢をした場合に弁護士に依頼すべき理由
少年事件においては、長期にわたる身柄拘束を受けてしまうことによって、学校生活などに大きな影響を及ぼしてしまうケースが少なくありません。逮捕からすぐに釈放されれば別ですが、家庭裁判所への送致の前に勾留を受けたり、観護措置などが行われたりする場合は、3ヶ月近くも学校や職場を休まなければならないこともあります。さらに、審判が開かれて、少年院送致などの処分が決定されると、さらに帰宅できない期間が続きます。学校や職場の不在時間が長くなれば、社会復帰が難しくなる可能性があるでしょう。
また、本人が逮捕されたという事実によって、絶望してしまったり、やけになってしまったりというケースは少なくありません。やってもいない犯罪をやったと発言してしまったり、警察に対して反抗的な態度を取ってしまったりすれば、早期解決が難しくなります。
これらの状況に陥ってしまうことを避けるためには、早急に少年事件に関する知見豊かな弁護士に相談することです。依頼を受けた弁護士は、子ども本人の心の支えになるだけでなく、少年事件における観護措置や勾留などの身柄拘束を伴う処分を回避できるよう各所に働きかけます。
さらには、本人の反省を促し被害者との示談を完了させるなど、さまざまなサポートを行うことができます。示談が成立したかどうかは審判においても大きな判断材料のひとつとなります。学校や職場への働きかけなどを通して、退学などをしないように説得するとともに、子どもの環境を整えて再犯しないことを力強く主張することもできるでしょう。
少年審判においては、「付添人」として同席し、子どもが更生し社会復帰するためのサポートを行います。子どもをサポートする体制があることや、処分によっては校正の妨げになることなどを裁判官等に主張します。
子どもが痴漢で逮捕された影響を最小限にするためには、少年事件の付添人実績がある弁護士に相談して、子どもにとって最適な環境を整えた上で、不処分や保護観察処分などの処分を目指しましょう。
4、まとめ
20歳未満の少年が痴漢をすると、成人同様に逮捕されることがあります。しかし、その後は少年法に基づき、更生を目指した処分が下されることになります。それでも勾留や観護措置などが必要と判断されると、身柄の拘束が続き、学校や仕事を辞めざるを得なくなる可能性があります。
そのような事態を避けるためには弁護士へ相談し、環境を整えること、そして被害者との示談を進めることが重要です。未成年の息子が痴漢事件を起こしてしまったら、なるべく早くベリーベスト法律事務所 広島オフィスでご相談ください。将来への影響を最小限に抑えるため、広島オフィスの弁護士が力を尽くします。
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