ストーカーやネットストーカー被害にあったときの対処方法を弁護士が解説

2018年10月02日
  • 性・風俗事件
  • ストーカー
  • 弁護士
  • 広島
ストーカーやネットストーカー被害にあったときの対処方法を弁護士が解説

最近では、ストーカーに対する規制が昔よりは厳しくなっていますが、ストーカー被害に遭っていた女性やその家族が加害者に殺害されるなど、痛ましい事件が発生し続けています。

また、最近では物理的なつきまといや待ち伏せなどの被害だけではなく、SNSなどを使ったネットストーカー被害も増えています。ストーカー被害に遭う方は女性が圧倒的に多く、安全に暮らしていくためには、適切な対処方法を抑えておく必要があります。

今回は、「ストーカー行為」の意味やストーカーに対する規制内容、被害に遭った場合の対処方法について、弁護士が詳しく解説いたします。

1、ストーカー行為とは

そもそもストーカー行為とはどのような行為を言うのでしょうか?
弁護士にご相談に来られるご相談者の方の間では、「つきまとったりしつこく電話をかけたりすること」と理解されていることが多いですが、実際の「ストーカー行為」の定義は、もう少し複雑です。

  1. (1)ストーカー行為とつきまとい等の行為

    ストーカー規制法によると、ストーカー行為とは、特定の対象者に対する恋愛感情や、それが満たされなかったことに対する怨恨(えんこん)の感情により、以下に記載する「つきまとい等の行為」を何度も繰り返すことを意味します。
    「つきまとい等の行為」が1回や2回程度であれば「ストーカー行為」にはならず、何度もしつこく繰り返すことによって「ストーカー行為」になります。
    ストーカーは犯罪行為ですので、しつこくストーカー行為を続けていると刑事事件の被疑者や被告人となり、刑事処分される可能性があります。

  2. (2)つきまとい等の行為とは

    ストーカーになる可能性のある「つきまとい等の行為」は、以下の8つです。

    ① つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき
    ② 監視していると告げる行為
    ③ 面会や交際の要求
    ④ 乱暴な言動
    ⑤ 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等
    ⑥ 汚物などの送付
    ⑦ 名誉を傷つける
    ⑧ 性的しゅう恥心の侵害


    以下で、弁護士がそれぞれについて解説を加えます。

  3. (3)つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき

    物理的なつきまとい、待ち伏せ、押しかけやうろつき行為は典型的なつきまとい等の行為です。
    加害者が被害者を尾行したり、通勤や通学途中で待ち伏せをしたり、道路に立ちふさがったり、家や職場に押しかけてきたり、家や職場、学校などの周辺をうろついたりするケースなどがあります。

  4. (4)監視していると告げる行為

    加害者が被害者に対し、監視しているかのように告げる行為もつきまとい等の行為となります。
    たとえば、弁護士が過去にご相談を受けた事例でも、被害者が帰宅したら直後に「お帰りなさい」と電話がかかってきたり、被害者がよくアクセスしているインターネット上の掲示板に、「お帰り」「いつも見てるよ」などの書き込みをされたりしたものがありました。メールが送られてくるケースもあります。

  5. (5)面会や交際の要求

    被害者が拒絶しているのに、面会や交際、復縁などを要求する行為もつきまとい等の行為です。
    一方的にプレゼントを贈り、受け取るよう強要する場合もあります。

  6. (6)乱暴な言動

    被害者が交際を断ると、ストーカーは逆上して、被害者に対し「死ね」と言ったり大声で「バカヤロー」などと怒鳴ってきたり、家の前で車のクラクションを鳴らし続けたりするケースがあります。このような乱暴な言動も「つきまとい等の行為」となります。

  7. (7)無言電話、拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等

    物理的に押しかけなどをしなくても、無言電話や拒否をしたにもかかわらずしつこい電話FAXの送付メールなどによって被害者につきまとう加害者も多いです。最近の法改正により、電子メールなどによるつきまといも規制対象となりました。電子メールだけではなく、ツイッターやフェイスブック、LINEなどのSNSやブログを使った行為もつきまといと評価される可能性があります。ただし電子メールやSNSで「つきまとい等の行為」になるのは、被害者の身体の安全や住居等の平穏、名誉が害される場合や、不安感があおられて被害者が自由に行動できなくなるような場合に限られます。

  8. (8)汚物などの送付

    ストーカーは、被害者に対して、汚物や動物の死体など、人に不快感や嫌悪感を生じさせる物を送りつけてくることがあります。このような行為もつきまとい等の行為となります。

  9. (9)名誉を傷つける

    被害者を誹謗(ひぼう)中傷したり名誉を傷つけることを告げたり広めたりして、精神的に追い詰めようとするストーカーも多いです。このような名誉を傷つける行為も、つきまとい等の行為となります。

  10. (10)性的しゅう恥心の侵害

    ストーカーは、被害者に性的な嫌がらせをして満足を得ようとすることが多いです。たとえばわいせつな写真を被害者の自宅や職場に送りつけてきたり、電話やメールなどによって卑わいな言葉を投げかけてきたりします。職場やネット上などに被害者の裸の写真をばらまく悪質な加害者もいます。

上記のような8種類のつきまとい等の行為を、同じ被害者に対して繰り返し行うと「ストーカー行為」となります。
ストーカー行為は「ストーカー規制法」という法律によって規制されます。この法律は、近年ストーカー被害が後を絶たないことから、より厳しく改正されています。
ストーカー行為は犯罪ですので、被害を受けたら警察に刑事告訴するなどして、加害者の処罰を求めることができます。

2、ネットストーカーとは

最近で、インターネットの普及に伴って「ネットストーカー」が増えており、弁護士への相談件数も多くなっています。ネットストーカーとは、ネット上のメールやSNS、ブログコメントなどによってストーカー行為をする人のことです。
たとえば、以下のような例があります。

  • Twitterなどで、「居場所は知っている」「今帰ってきたね」「これから会いに行く」などと書きこむ
  • ブログコメントなどで「殺す」「家を燃やす」「ペットを殺す」などと脅迫する
  • SNSやネット掲示板などにわいせつな内容の投稿する


また、ネット上では「リベンジポルノ」が行われることがあります。リベンジポルノとは、過去の交際相手や元の配偶者が、交際中や婚姻中に撮影した性的な画像や動画をネット上などに公開することです。
リベンジポルノ行為をされると、被害者のプライバシーも名誉も大きく害されてしまうので、「リベンジポルノ防止法」という法律によって厳しく禁止されています。

ストーカーの加害者は、つきまとい等の行為と同時にリベンジポルノも行うことが多いです。この場合、ストーカー規制法違反とリベンジポルノ防止法違反の両方が成立し、犯人の責任はより重くなります。

3、ストーカー被害に遭ったときの対処方法

もしもストーカー被害に遭ったら、どのように対応したら良いのでしょうか?
弁護士としてのアドバイスは、以下の通りです。

  1. (1)警察に相談する

    まずは警察に相談をしましょう。
    ストーカー行為は犯罪行為なので、警察に取り締まってもらうことができるからです。
    つきまとい等の行為があった場合、被害者が警察に被害申告すると、警察が加害者に対し「警告」してくれます。その際加害者に「二度とつきまとい等の行為をしません」などの誓約書を書かせることも多く、これによって、加害者によるつきまとい等の行為が収まる可能性もあります。
    また、つきまとい等の行為が繰り返されてストーカー行為となっている場合には、被害者が刑事告訴しなくても、警察が加害者を逮捕することができます。この場合、加害者が裁判にかけられて刑罰を与えられる可能性があります。与えられる刑罰は、1年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑です。
    警察に一人で相談に行くのが不安な場合には、弁護士が同行することもできるのでお気軽におっしゃってください。

  2. (2)禁止命令を申し出る

    警察から警告を受けても加害者によるつきまとい等の行為がやまない場合や、つきまといが悪質なので警告だけでは足りないと考える場合には、公安委員会に対して「禁止命令」の申し出をしましょう。
    以前のストーカー規制法では、まずは警察による「警告」をしてもらわないと禁止命令の申し出ができませんでしたが、法改正により、今は警告の過程を経る必要がなくなっています。
    公安委員会がストーカー行為に対する規制が必要であると判断したら、相手に対し禁止命令を出してくれます。
    加害者が禁止命令違反でつきまとい等の行為を続けたら、逮捕されて処罰される可能性が高いです。この場合に加害者に与えられる刑罰は、2年以下の懲役刑または200万円以下の罰金刑です。

    公安委員会に禁止命令の申し出をするときにも、弁護士が代理することができるので、お気軽にご利用ください。

  3. (3)刑事告訴する

    改正後の新しいストーカー規制法では、加害者の処罰において、被害者による刑事告訴が必須の要件ではなくなっています。そこで、被害届を提出するだけでも、刑事事件にして犯人を処罰してもらえる可能性があります。しかし、より重く罰してもらうためには、刑事告訴をした方が効果的です。その方が、相手に対するプレッシャーにもなります。

    また、ストーカー被害を受けている場合、ストーカー規制法違反以外の犯罪も同時に成立する可能性があります。たとえばリベンジポルノ禁止法脅迫罪強要罪暴行罪傷害罪器物損壊罪などが成立するケースも多いので、これらの被害を受けているなら合わせて告訴しましょう。
    刑事告訴も弁護士が代行することが可能です。弁護士が告訴を行った方が警察でも受け付けられやすいので、お困りでしたらご相談ください。

  4. (4)弁護士に相談して内容証明郵便を送る

    ストーカー被害に遭ったとき、いきなり警察に相談することに気が引けるという方も多いですし、警察に相談したら仕返しされるのではないかと不安を感じる方もおられます。
    そのようなときには、弁護士相談が非常に効果的です。
    弁護士は、被害者の立場になって親身にアドバイスを行いますし、相手に対して警告文を送付したり、代理人として交渉したりすることも可能だからです。
    弁護士名で内容証明郵便を送ると、加害者に与えるプレッシャーも大きくなるので、効果的にストーカー行為を辞めさせられます。また、弁護士が代理人となった場合には、弁護士が話し合いの窓口となるので、加害者が直接被害者に連絡することは許されません。
    ルールに反して相手が被害者への接触を辞めない場合には、次にご紹介する接近禁止の仮処分が認められやすくなったり、刑事告訴が受け付けられやすくなったりします。

  5. (5)接近禁止の仮処分を申し立てる

    弁護士が内容証明郵便で警告書を送っても、加害者がストーカー行為を辞めない場合には、裁判所で「接近禁止の仮処分」という手続きを申し立てる対策方法もあります。
    接近禁止の仮処分とは、被害者の身に危険が及ぶ急迫の可能性がある場合において、裁判所から相手に対し、被害者への接近を禁ずる命令をしてもらうための手続きです。仮処分に違反して相手がストーカー行為を続ける場合には、ストーカー規制法違反や脅迫罪などで、逮捕してもらえる可能性が高くなります。
    接近禁止の仮処分は法律的に専門的な手続きですが、弁護士であれば、スムーズに進めることができます。相手がしつこい場合には、弁護士までご相談ください。

  6. (6)ネット上の投稿削除請求をする

    ネット上でリベンジポルノ被害や誹謗(ひぼう)中傷被害を受けた場合には、その投稿がネット上に残っている限り、被害がどんどん拡散してしまうおそれがあります。そこで、問題となる投稿を削除させなければなりません。そのためには、プロバイダーに連絡を取り、任意で削除させるか、仮処分を申し立てる必要があります。
    また、ストーカーが匿名で投稿しており正体が分からない場合には、発信者情報開示請求という手続きによって、相手の素性を明らかにする必要もあります。

    仮処分や発信者情報開示請求についても法律的な知識とノウハウが必要になりますので、弁護士が対応するとスムーズです。ネットストーカー被害に遭われているなら、お早めに弁護士までご相談ください。

  7. (7)損害賠償請求(慰謝料請求)をする

    ストーカー行為をされると、被害者は非常に大きな精神的苦痛を受けるものです。そこで、加害者に対し、損害賠償請求(慰謝料請求)をすることができます。
    ストーカー被害の慰謝料の金額は、ケースによって大きくばらつきがあります。
    安いケースでは数十万円ですが、高額なケースになると数百万円以上になる事例もあります。
    一般的に慰謝料が高額になるのは、次のようなケースです。

    • ストーカー行為を辞めると約束して念書も交わしたのに、その後もストーカー行為を続けていた
    • 被害者が精神障害になり、生活に支障をきたすようになった
    • 教授が学生にストーカーをした(優越的な地位や関係を利用した)
    • 被害者にまったく落ち度がなかった


    このような事案では、慰謝料が200~300万円程度になることが多いです。

    反対に、慰謝料が安くなるのは以下のようなケースです。

    • 被害者側に落ち度があった
    • ストーカー行為がさほど悪質ではなかった


    たとえば、被害者が元の交際相手からお金を借りたまま、返さず放置したなどの事情があると、被害者側に落ち度があると言われやすいです。
    また、ストーカー行為が行われた期間が短い場合、被害者に対して何度か手紙を送りつけたり無言電話をかけたりしただけで、それ以外に実際に押しかけてきたり名誉毀損(きそん)的な行為をしたりしなかった場合などにも慰謝料が低くなる可能性があります。

    弁護士にご依頼いただいた場合には、弁護士が適切な慰謝料の金額を算定しますし、損害賠償請求手続きも弁護士が代行して進めるので、依頼者の方にかかる負担が非常に小さくなります。

4、ストーカーの証拠はできるだけ保存しておく

ストーカー被害に遭ったときには、できるだけたくさんの証拠をそろえておくことが重要です。
警察に被害相談に行くにも弁護士に法律相談するときにも、証拠が必要だからです。
ストーカーの証拠としては、以下のようなものが考えられます。

  • 電話の着信履歴
  • 相手から届いたメール
  • 相手から書き込まれたSNSの記録
  • 相手から届いたFAX
  • 相手が嫌がらせで送ってきた物やその写真
  • 相手がネット上などでばらまいた写真や画像、動画など
  • 相手との会話の録音


上記のようなものを、データやプリントアウトした紙、画面を撮影した写真やICレコーダーなどの形で保存しておきましょう。証拠の集め方が分からない場合にも、弁護士にご相談いただいたらアドバイスいたします。

5、弁護士費用の相場について

弁護士にストーカーへの対応を依頼すると、弁護士費用がかかることが不安だと感じる依頼者の方も多いです。
ストーカーへの対処にかかる弁護士費用の金額の相場は、とるべき対応によって異なってきます。
ベリーベスト法律事務所では、弁護士費用の支払方法について、ご相談者の状況に応じて柔軟に対応しておりますので、お困りの際にはお気軽にご相談ください。

6、ストーカー被害に遭ったら弁護士へご相談ください

ストーカー被害に遭われた場合、早期に被害対処をしておかないと、大きな事件に発展する可能性もあります。
近年でもストーカー被害に起因して、被害者やその家族が殺害されたり傷つけられたりする事例が後を絶ちませんし、ストーカー被害の相談件数も増加傾向にあります。ストーカーの相談件数は、平成25年には1466件でしたが、平成29年には2426件にも及んでいるのです。

ストーカー被害に遭われたとき、被害者がお一人で対応することは非常に困難ですし、下手に相手を刺激すると、さらなる被害が発生してしまうおそれもあります。どのような対応をとるにも法律の専門家である弁護士によるサポートを受けることをおすすめします。
当事務所の弁護士は、ストーカーの被害相談に積極的に取り組んでおり、初回相談無料で対応しております。ストーカー被害でお困りのケースでは、お早めに弁護士までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています