未成年の息子が友人に暴行して逮捕! 暴行罪の刑罰、家族のすべき対応を解説。

2018年10月04日
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未成年の息子が友人に暴行して逮捕! 暴行罪の刑罰、家族のすべき対応を解説。

平成25年6月、広島県呉市で16歳の少女が友人らから集団暴行を受けて死亡した事件が発生し、世間を騒がせました。該当の事件は、「気に入らないことをしたから、ちょっとだけ制裁を加えてやろう」と首謀者が暴行を加え、引くに引けなくなり、やがて集団暴行に発展。最終的には殺人、死体遺棄につながってしまった事件です。わが子には関係ないと考えるかもしれません。

しかしながら、本人にとっては遊び半分の行為が、刑法で定められている「暴行」罪にあたるケースが多々あります。そして、相手にケガをさせるつもりがなかったとしても、冒頭の事件のように、思いもよらない事態に発展してしまうことも少なくありません。

もし、自身の子どもが暴行容疑で逮捕されたときは、家族として子どもの心身をケアし、更生に向けて行動することが大切です。ここでは未成年の暴行について、処分の内容や逮捕の可能性、家族がするべき対応について広島オフィスの弁護士が解説します。

1、暴行罪とは?

まずは暴行罪について、どのようなケースが該当するのかなど、傷害罪との違いとともに解説します。

  1. (1)暴行罪の意味と行為の具体例

    暴行罪は、刑法第208条によって「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」罪を問うことを定めています。

    ここで示す「暴行」とは、「人の身体に対する不法な有形力の行使」です。「有形力(ゆうけいりょく)」とは物理的な力が該当します。暴行罪が該当する行為は、いわゆるけんかなどで想像する「暴力」だけではありません。

    具体的には、以下のようなケースが暴行罪における「暴行」に該当するとされています。

    • 殴る、蹴る、胸ぐらをつかむなどの行為
    • 頭突きをする
    • 人に対して農薬を散布する
    • 驚かすために人に向かって石を投げる


    重要なポイントは「相手が負傷しなくても」暴行を加えた時点で、暴行罪が成立する点です。なお、上記のような行動が伴う「いじめ」は、当然のことながら、「暴行」罪が問われる可能性があります。「いじめ」というマイルドな言葉で置き換わり、報道されるケースが多々ありますが、「暴行」の罪が問われる犯罪行為なのです。

    ただし、冒頭のケースのように集団で暴行を加えた場合は、「暴力行為等処罰に関する法律」違反として罰せられる可能性が高まります。また、暴行の結果、相手がケガをしてしまった場合は、「傷害」罪に問われることになるでしょう。もちろん、これらの罪のほうが、重い刑罰を科せられることになります。

  2. (2)友人同士のけんかも暴行罪になる?

    友人同士で口論になり、お互いに殴り合うようなけんかに発展した場合も、刑法上では暴行罪が成立します。

    たとえ先に手を出したのが相手方であったとしても、やり返した結果、相手がケガをしてしまうと、正当防衛が適用されず傷害罪に問われる可能性があるでしょう。ただし、本当に友人同士のけんかであるならば、周囲の人に止められるなどしてその場で鎮静化することが多いものです。通報によって警察が駆けつけたとしても、口頭注意で終わるケースも珍しくありません。

    一方で、知り合いではない相手と飲食店や路上でけんかをして騒動になった、という場合は逮捕される可能性が高まります。さらに、暴れた結果、店内のモノを壊していれば「器物損壊」罪に問われることになります。被害者がいる場合や、モノを壊しているケースでは、損害賠償請求される可能性も考えられるでしょう。

  3. (3)未成年の処分内容

    暴行罪で有罪になれば、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処されることが、刑法で規定されています。ただし、未成年の場合は殺人や強盗のような重大事件でない限りは、刑事裁判ではなく少年審判が開かれることになるでしょう。

    少年審判は原則非公開で行われ、家庭裁判所が処分を決定します。少年審判では、大きく分けて以下のいずれかの処分が言い渡されます。

    • 保護処分:自宅での保護観察処分や更生施設(少年院、児童養護施設など)への送致
    • 検察官送致:重大事件の際など、家庭裁判所から検察へ事件が送られ、刑事裁判にかけられる措置
    • 不処分決定:処分の必要性がない場合や犯罪をしたと認められない場合の措置
    • 都道府県知事または児童相談所長送致:家庭環境などの保護に欠ける18歳未満の少年に対する措置

  4. (4)未成年でも逮捕される?

    未成年が暴行罪で逮捕されるかどうかは、年齢によって異なります。

    「犯罪少年」と呼ばれる14歳以上の未成年は、成人と同様の刑事責任能力があると判断されるため逮捕されることがあるでしょう。その場合は、逮捕から最大23日間身柄を拘束され、取り調べを受けることになる可能性が高まります。

    一方、14歳未満の未成年は「触法少年」と呼ばれ、刑事責任は問われません。刑事責任を問わないため、「逮捕される」という事態は起こらないと考えてよいでしょう。ただし、補導はされますし、警察から事情を聞かれることはあります。さらに、「行為が悪質である」、「家庭環境に問題がある」などと判断され場合は、都道府県または児童相談所長送致の処置が取られたり、児童相談所で身柄を保護されたりすることがあります。

2、未成年の子どもが暴行罪で逮捕されたときの対応

未成年の子どもが暴行事件を起こして逮捕されてしまったとき、家族はどのような対応をするべきでしょうか。家族を守るためにできることについて紹介します。

  1. (1)家庭におけるサポート

    未成年が起こした事件において家族が担うもっとも重要な役割が、家庭におけるサポートです。事件を起こしたことで大きく傷つき、不安を抱えている子どもをサポートしてあげるようにしましょう。たとえば、すでに存在していた家庭内の問題を解決したり、生活環境を整えたりすることが、子どもの更生を促すきっかけとなります。

    未成年の加害者は自分の非を即座には認められないことがありますが、辛抱強く対話していくことが大切です。家庭内での更生が可能と判断されれば、更生施設に送致する必要がないとして、早いタイミングで身柄を釈放される可能性が高くなります。

  2. (2)示談交渉

    未成年は、成人が罪を犯したときとは異なり、刑罰による制裁ではなく、更生や教育を目的とした処分が下されます。よって、示談が成立したからと言って必ずしも処分が軽くなるわけではありません。しかし、たとえ加害者が未成年であっても、被害者からの損害賠償請求があれば支払い義務を負うことになるものです。そのため、示談は被害者との賠償金トラブルを清算するために役立ちます。示談内容に事件を口外しない項目を盛り込むことで、周囲に知られるリスクを抑えることもできるでしょう。

    また、警察が介入する前に示談を成立させることで、被害届が提出されず、逮捕を回避できる可能性も高まります。また、謝罪の意を示す意味でも示談には効果があると考えられます。

  3. (3)学校への説明

    暴行事件を起こして逮捕された場合、警察から学校や会社へ直接連絡されることはあまり多くはありません。しかしながら、家庭裁判所の調査過程や被害者からの口外で事件が知られてしまう可能性があります。特に、勾留され、長期拘束に至ってしまったり、最終的に少年院など更生施設へ送られてしまったりする場合は、病欠だと言ってごまかし続けるのも無理がでるでしょう。

    隠し続けることが難しい一方、事件が学校に知られてしまうと事件の様態や学校の考え方によっては、退学などの厳しい処分を受ける可能性も考えられます。保護者として学校や会社へ事情を説明するなどして子どもが社会復帰しやすいように働きかける必要があります。

    自身の子どものことですと冷静に説明できない可能性もあります。第三者でありかつ法律に精通している弁護士に依頼して、子どもの弁護活動とともに、子ども自身の社会復帰を全面的に支援してもらうことをおすすめします。

3、まとめ

今回は、未成年の暴行事件における逮捕の可能性や処分内容、家族の対応について解説しました。示談交渉や家庭内での更生は、家族が単独で対応するには限界があるものです。周囲の目や焦りなども加わり、思い通りの結果にならないことも多々あるでしょう。

子どもが起こした事件だからこそ、家族だけで何とかしようとするのではなく、弁護士をはじめとした専門家のサポートを受けることをおすすめします。親自身が視野を広く持ち対応することが、子どもが心の傷を負うことなく社会復帰できるように働きかけることへつながるでしょう。

未成年の暴行事件でお悩みの方はベリーベスト法律事務所・広島オフィスにご相談ください。広島オフィスの弁護士が、本人に寄り添い、将来への影響を最小限に抑えるため、適切なアドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています