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庭木が原因で隣家とのトラブルに! 勝手に枝を切ることは違法!?

2020年08月12日
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庭木が原因で隣家とのトラブルに! 勝手に枝を切ることは違法!?

一戸建てにお住まいの方によくあるお悩みが、「隣の家の庭木が自宅の敷地内にはみ出してきて困る」というものです。庭木が生い茂ると、敷地を超えてくるだけでなく、葉が大量に落ちてくる、虫が発生するなどのトラブルも起きやすくなります。お隣さんに注意しても改善策をとってくれなければ自分の費用で処理せざるを得ないこともあるでしょう。こうした場合、法的にはどのような対応ができるのか、お隣の庭木トラブルで生じた損害を隣地所有者に請求できるのかについて、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。

1、隣家の庭木が原因で起こりがちな隣人トラブル

一戸建ての場合は全ての管理を自分で行う必要があり、トラブルにも自分で対処しなければなりません。そして、一戸建てで多くみられるトラブルのひとつに、隣家の庭木によるトラブルがあります。具体的によく起こるトラブルについてみていきましょう。

  1. (1)隣家の樹木の枝葉や根が自宅の敷地内に侵入してきた

    庭木のトラブルで一番多いのが、庭木の枝葉、根っこが自宅敷地内に侵入してきたというものです。樹木は枯れるまで成長し続けるものです。したがって、植えた当初は小さい庭木が年数を経て次第に大きくなり、気が付くと隣家の敷地内や近接する道路へ伸びてしまうことがよく起きるのです。

    枝が大きく伸びた場合は、隣の家の建物の一部や駐車中の自動車にあたって傷をつけることがあります。また、生い茂った枝葉のために日当たりが悪くなることもあります。枝葉が道路側に伸びた場合には、通行の妨げになったり、視界を遮って交通が危険になることもあり得ます。

    根っこが伸びすぎた場合は、建物の土台下に入り込んで建物を傾斜させたり、時には建物を破壊することもあります。道路の下から太い木の根っこが顔を出して、道路が盛り上がったり亀裂が入っているのを見かけたことがある方も多いでしょう。植物の力は想定以上に強いのです。

  2. (2)落ち葉が落ちてくる

    落葉樹の場合には、毎年、大量の落ち葉が落ちるものです。落ち葉はどんどんと積み重なっていきますし、雨にぬれると滑りやすくなり危険です。また、葉っぱが溝に落ちると溝が詰まってしまうこともあります。放っておけないために隣家からの落ち葉の掃除に追われてしまう方も少なくないのです。

  3. (3)虫が発生する

    樹木には虫がつきものです。木の種類によって発生する虫は違いますが、時には害虫が発生して、トラブルになることもあります。隣地から発生した害虫のために自宅の庭木が傷んだり、大量発生した虫が洗濯物に付着したり、時には、人が刺されてしまったという被害もあります。

2、勝手に枝を切るのはNG! 法的に可能な対応方法について

実際に庭木トラブルの被害に遭っている場合、敷地内に侵入してきた枝葉や根っこを切ってしまいたいという気持ちになることもあるでしょう。とはいえ、樹木そのものは隣家の所有物ですから、勝手に切ってしまってよいものなのか、不安にもなります。さて、このような場合はどうしたらいいのか、法律の定めを見てみましょう。

民法第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
1、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。


ここにいう竹木とは樹木一般のことを指しています。そして、第1項では枝について、第2項では根について、それぞれ侵入してきた場合の対処方法を定めていることがわかります。

  1. (1)枝を無断で切ることは違法

    法律上は隣地の木の枝が自宅敷地内に伸びてきた場合でも、その枝を所有者の許可なく勝手に切りとることは許されません。樹木も相手にとっては所有物ですから、勝手に切ってしまうと、その権利を侵害したものとして損害賠償請求されたり、刑法上の器物損壊罪で訴えられるリスクもあります。したがって、所有者に無断で枝葉を切るのは禁物です。まずは木の所有者に現状を説明し、枝を剪定(せんてい)してもらうように申し入れをしてみましょう。

  2. (2)根っこは切除可能

    これに対して、根は侵入された側が勝手に切除してもかまわないということになっています。このように枝葉と根で違いがある理由には諸説あります。たとえば、伸びた根を切り取っても木が枯れることはないが、枝葉を切り取ると木が枯れてしまう可能性が高いからという説、枝葉の侵入に比べれば根っこの侵入による被害(建物の倒壊など)のほうが大きいからという説などです。
    いずれにしても法律上、根は切除してもよい、枝葉は許可なく切除できない、この違いを覚えておきましょう。

  3. (3)枝を切ってくれない場合

    枝葉が自宅敷地内にどんなに侵入してきても、勝手に切ることは違法です。したがって、枝葉をどうにかしたい場合には、その樹木の所有者に剪定(せんてい)や伐採を求めるしかありません。

    意外と隣地の状況に気が付いていない場合も多いものです。ご近所関係だと言いにくいという方も多いのですが、被害が大きくなると解決が難しくなってしまいがちです。遠慮せずに、丁寧に事情を説明しましょう。

    話し合いがうまくいかない場合には、裁判所の調停制度を利用することもできます。調停は、裁判所を使って行う話し合いの一種であり、調停員が間に入って合意に向けた話を進めていくスタイルです。調停で話し合いが成立すればその合意に従って相手が剪定(せんてい)などをしてくれるでしょう。

    ただし、調停はあくまで話し合いによって進めるものですから、相手が応じなければ成立しません。そもそも、裁判所に呼び出しても出頭しないケースもあります。その場合は、調停が成立しませんので、相手に枝を切らせることはできないままです。

    このように、調停によっても問題が解決できない場合には、強制的に枝の切除を行うため、侵入してきた枝の切除を求める訴訟を提起する必要があります。この訴訟に勝訴すると、勝訴判決に基づいて、枝葉の切除を強制執行することになります。この裁判で勝訴するためには、枝葉が敷地内に侵入していること、侵入による被害や損害のおそれについて、被害を受けている側が立証しなければなりません。枝葉と被害の実態がよくわかるように写真を撮るなどの工夫が必要です。

  4. (4)相手の居場所が分からない場合

    樹木の所有者がわかっており、連絡が取れる場合には何らかの手段で対応が可能です。しかし、最近は、隣地に誰が住んでいるのかわからないことも増えています。また、そもそも誰も住んでいない空き家も急増しています。このように、樹木の所有者がわからない場合にはいったいどうしたらいいのでしょうか。

    この場合、隣地の住所地の不動産登記をとることで土地の所有者を確認することができます。まずは法務局で不動産登記を調べましょう。もっとも、不動産登記は古い状態で放置されている可能性もあります。つまり、登記上の所有者がすでに亡くなっていたり、所在不明で連絡がつかないこともよくあるのです。

    相手の居場所がわからなければ、調停も訴訟もできません。このような場合は、家庭裁判所へ不在者の財産管理人の選任の申し立てを行います。そして、裁判所から選任された財産管理人に、枝葉の切除を請求することになります。

3、損害賠償請求はできる?

さて、隣地の樹木によって実際に被害が生じてしまった場合は、その損害を賠償してほしいと思うでしょう。法的に、このような請求をすることは可能なのか、民法を確認しましょう。

民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の所有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2、前項の規定は、竹林の裁植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。


ややこしい用語が並んでいますが、要は、樹木の状態に「瑕疵」があるために被害を受けた人は、その樹木の所有者に対して損害賠償請求ができますよ、という規定です。そして「瑕疵」とは、樹木そのものや管理に何らかの欠陥がある状態を指しています。

つまり、樹木の管理を怠って伸び放題になり、他人に被害を与えるような状態になっていれば、樹木に瑕疵がある状態といえる可能性が高まります。そして、瑕疵が認められれば、それが故意(わざと)であろうが過失(うっかり)であろうが関係ありません。樹木の所有者は、被害を与えた相手に対してその損害分を賠償する責任を負うというわけです。

なお、相手が話し合いに応じず、やむなく裁判になった場合には調査費用や弁護士費用などの負担が増えていきます。このような費用も、相手の樹木の瑕疵という不法行為によって生じた損害といえるので、その一部を相手から回収できる見込みがあります。

4、弁護士に相談するメリット

ご近所トラブルでわざわざ弁護士に相談するのは気が引けるという方もいます。しかし、ご近所だからこそ弁護士に相談したほうがいい場合もあります。弁護士に相談するメリットは次のような点です。

  1. (1)やってはいけないことがわかる

    ご説明したとおり、隣地の樹木問題も法律の定めによってできることとできないことが分かれています。また、ご自身のケースでそれがそのまま適用になるのかは、被害の実態を法的に観点から確認しなければ確定できません。自分の判断で行ったことが結果的に違法だったということにならないために、まずは弁護士に法的な観点での適切な対処方法を確認することが望ましいでしょう。

  2. (2)直接やりとりしないで済む

    ご近所関係は、必ずしも円満というわけにはいきません。時には、ご近所トラブルで長年悩んでいるという方もいます。また、ゴミや騒音問題と異なり、庭木は所有者が大事にしている場合も多く、それを伐採してくれというのは言いにくい場合も多いでしょう。

    たとえ伐採を願い出てもまったく受け入れてもらえないこともあり、ご近所同士で険悪ムードが増していくリスクもあります。また、当事者間で話し合いをするとお互いに気持ちがヒートアップしてしまい前に進まないこともあります。そのような関係で話し合いを続けるのは精神的にも大きな負担です。

    このような負担を取り除いて、話し合いが進むように代理人として動いてくれるのが弁護士です。当事者同士では進まなかった話し合いが、弁護士が入ることによって解決方向に動き出すことはよくあることなのです。

  3. (3)相手が所在不明の場合にも手続きを進めることができる

    最近増えている空き家の場合や、誰が住んでいるかわからないという場合、一から調査して連絡先を突き止めるのはそれなりの手間がかかります。自分で調べても途中で行き詰まってしまうこともよくあります。また、隣地といえども、他人の権利関係を調べるのはなんだか気が進まないという人も多いでしょう。

    こうした場合に、弁護士に依頼することで所有者を探すこともできます。また、所有者が見つからない場合にも不在者の財産管理人選任制度を使って手続きを進められることもあります。

    もっともこうした手続きには、法務局や役所、家庭裁判所といった機関を通す必要があります。したがって、弁護士に依頼してもかなりの時間がかかることが予想されます。その間にも、樹木はどんどん大きくなって被害を拡大していきます。

    特に、長く太く伸びた根は、建物や敷地の土台下に少しずつ入り込み、気づかないうちに広く侵入しているケースもあります。枝葉と違って目に見えませんし、地面を掘り返して調査することも大変な手間がかかります。そのため、気が付いたときには家がわずかに傾き始めていたということも珍しくありません。特に、空き家のときには、これからかかる時間を想定して、早めに弁護士に相談することが大切です。

  4. (4)損害賠償の方法がわかる

    単純に「この部分の枝を切ってほしい」という場合であれば当事者の話し合いで解決できる場合もあります。しかし、金銭的な請求となると、途端に話が止まってしまうこともあります。相手とすれば、枝を何とかすれば問題は解決したものだと考えがちだからです。しかし、被害を受けた側からすればいろいろな損害が発生していることも多く、その損害分を相手から回収したいと考えるのも当然です。

    こうした食い違いについては、まず法的なアドバイスを受けることが重要です。お互いが自分の立場を主張し続けても平行線をたどるばかりで、前進しないことが多いからです。そして、どうしても話し合いがうまくいかなければ、弁護士を代理人として交渉を依頼することで、一気に話が進む可能性もあります。弁護士によって法的な説明がきちんとなされると、これは放ってはおけないということが相手にわかってくることもあります。双方の状況を理解しながら、冷静に客観的に、そして被害者の代理人として交渉を進めてくれる弁護士の存在は大きな支えになるのです。

    特に、一般的なトラブルに比べて、隣地トラブルは心理的な負担とストレスが大きく、冷静な判断が難しい場合もあります。長年我慢してきた思いがある場合には、そのストレスもさらに大きくなってしまいがちです。一人でストレスを抱えた状態は本当につらいものです。弁護士から客観的な意見を聞くことで、そうした負担から解放され、また、法的な対処方法を決めることで、気持ちが安定する場合があります。

    このように、隣地の植木問題について弁護士に相談することで、さまざまなメリットが得られます。悩みが深いときこそ誰かに相談して状況を改善していきたい、その思いに応えるのが弁護士だといえるでしょう。

5、まとめ

隣人トラブルの場合は、できるだけ波風を立たせたくない、おおげさなことにしたくないという方も多いものです。特に一戸建ての場合は、これからもご近所付き合いが続く可能性も高く、険悪なムードになると生活しづらくなるのではという不安も付きまといます。とはいえ、樹木はそんな気持ちとは無関係にどんどん成長し続けます。枝葉や根っこによる被害は放っておけばおくほど大きくなり解決が難しくなります。特に地面の下は目に見えないため根っこの被害は気が付いたときには深刻化しているケースもあります。まずは隣地所有者と率直に話し合いを行うこと、それでも解決できない場合は速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、隣地の植木問題にお困りの方のご相談もお受けしています被害を拡大させないため、早期解決のためにも、ためらうことなくご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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