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他人の犬にかまれた! 治療費や慰謝料は請求できるの?

2020年03月31日
  • 一般民事
  • 他人の犬にかまれたら
  • 広島
他人の犬にかまれた! 治療費や慰謝料は請求できるの?

知り合いの犬や他人が散歩させている犬が突然かみついてきたら、大けがをしてしまうケースもあります。犬にかまれたら恐ろしい狂犬病のリスクもつきまといます。

2019年には熊本県で狂犬病の予防接種をしていなかった犬が男児ら4人にかみついた事件が起こっており、東京都でも同じく狂犬病予防接種をしていなかった犬が女性にかみついて飼い主が書類送検される事件が起こっています。日本全国に犬を飼っている人はたくさんいるので、広島県も決して例外ではありません。

他人の犬にかまれたとき、飼い主へ治療費や慰謝料を請求できるのでしょうか?
今回は他人の犬にかまれたときの損害賠償を始めとした対処方法について、解説します。

1、他人の犬にかまれた場合、飼い主の法的責任は?

他人の飼っている犬にかまれたとき、飼い主にはどういった責任が発生するのでしょうか? この場合「刑事上の責任」と「民事上の責任」の2種類が発生するので、それぞれご説明します。

  1. (1)過失傷害罪(刑法209条)、狂犬病予防法違反

    法律上、犬は人の「持ち物(所有物)」として扱われています。物の持ち主は、所有物を適切に管理しなければなりません。その管理義務を怠り、人をけがさせた場合には刑法上の「過失傷害罪」が成立します。過失傷害罪の刑罰は30万円以下の罰金または科料です。

    ただし過失傷害罪は「親告罪」なので、被害者が刑事告訴しないと加害者が処罰されません。他人の犬にかまれて加害者を処罰してほしい場合、単に通報や報告するだけではなく「刑事告訴」が必要です。

    また犬を飼っている以上、狂犬病の予防接種は飼い主の義務です。それにもかかわらず予防接種をしていなかったら「狂犬病予防法違反」となり、やはり刑罰を科される可能性があります。予防接種を受けさせなかった場合、20万円以下の罰金に処されます。犬の飼い主が狂犬病の予防接種をしていなければ、告訴しなくても飼い主が書類送検されて処罰を受ける可能性があります。

  2. (2)民法上の動物占有者責任(民法718条)

    他人の犬にかまれたとき、民法上の動物占有者責任が発生する可能性もあります。
    民法では「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定されています(民法718条)。

    なお、民法718条には「動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない」ともありますが、現実に免責が認められるケースは非常に少ないといえるでしょう。

    散歩中の犬にかまれた場合や飼い主が側にいるのに犬が暴れてかみついた場合、または、飼い主が放置していたために犬が逃げて人にかみついた場合などには、飼い主に動物占有者としての責任が認められます。動物占有者責任が発生する場合、被害者は飼い主へ治療費や慰謝料等の各種の損害賠償請求が可能です。

2、他人の犬にかまれたら慰謝料を請求できる? 発生する賠償金の種類は

他人の犬にかまれたとき、被害者は飼い主にどのような賠償金を請求できるのでしょうか? 以下で賠償金の内訳をご説明します。

  1. (1)治療費

    犬にかまれたら、病院で検査や治療を受けなければなりません。特に感染症などにかかってしまった場合、治療期間も長くなりますし場合によっては入院治療も必要となるでしょう。薬代も発生します。これらの治療費や薬代、検査費用等は犬がかみついた咬傷(こうしょう)事故によって発生する損害なので、必要かつ妥当な範囲で飼い主に対して請求できます。

    なお、犬にかまれたときの治療には健康保険を適用できます。自己負担額を小さくするためにも、加入している健康保険組合や市区町村役場に「第三者行為による傷病届」を提出し、保険を適用して治療を受けましょう。

  2. (2)付添看護費、雑費

    被害者が入院治療を受けるとき、親族に付添看護してもらうケースがあります。また入院中はガーゼや包帯の購入などさまざまな雑費も必要です。これらの付添看護費用や雑費も飼い主へ請求できることもあります。

  3. (3)交通費

    病院に通院すると、交通費がかかるケースもあります。その場合、かかった交通費を損害として請求することができます。自家用車で通院した場合にはガソリン代や高速代、駐車場代も必要かつ相当な範囲であれば請求できます。

  4. (4)休業損害

    入通院のために仕事を休んだら、仕事ができなくなってその間の休業損害が発生します。休業損害も犬がかみついた事故によって発生した損害なので、飼い主へ請求することが可能です。

  5. (5)慰謝料

    犬にかまれて傷を負い、けがをしたら被害者は精神的苦痛を受けるものです。そこでけがの程度に応じて慰謝料が発生します。通常は、入通院にかかった期間が長くなると慰謝料は高額になります。また、通院だけで済んだ事案より入院が必要になった事案の方が慰謝料は上がります。

  6. (6)後遺症が残った場合

    犬にかまれただけで後遺症が残るケースはまれですが、時にはそういったケースも考えられます。たとえば大きな傷跡が残ったり手や足を動かしにくくなったりした場合などです。後遺症が残ったら、以下のような賠償金を請求できます。

    ・後遺症に関する慰謝料
    後遺症が残ったら被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、一般の傷害に関する慰謝料とは別に後遺症に関する慰謝料を請求できます。

    ・逸失利益
    後遺症が残ったことによって労働能力が低下した場合、一生の間に得られる収入が減少してしまうと考えられます。その場合、減少した収入を「逸失利益」として相手に請求できます。

    以上のように、犬にかまれたときには「治療費」や「慰謝料」のほかに、さまざまな損害賠償金も合わせて請求できる可能性があります。

  7. (7)被害者の過失について

    犬にかまれて損害賠償請求をするときには、被害者側の過失についても考慮されるので注意が必要です。
    動物占有者責任は不法行為の1種ですが、不法行為では「被害者に過失がある場合には被害者にも損害についての責任を一部負わせるべき」という考え方があります。これを「損害の公平な分担」といいます。そこで被害者に過失があると相手に請求できる賠償金を減額されてしまいます。これを「過失相殺」といいます。

    犬にかまれたとき、被害者側に不適切な行動があれば加害者に全額の賠償金請求をすることができません。たとえば被害者に以下のような行動があると、過失相殺される可能性が高くなります。

    • 犬を挑発していた
    • 全く知らない他人の犬に不用意に近づき、なでようとしてかまれた
    • 飼い主が「この子は人になれないのであまり近づかない方が良い」と言っているのにあえて近づいてかまれた
    • 犬が興奮しているのにかまわず近づいてかまれた


    反対に事故原因が以下のように、飼い主の責任によるものであれば、飼い主側の過失が高くなり、被害者の過失相殺はされにくくなります。

    • 飼い主がリードを外して放し飼いにしていた
    • 飼い主が目を離していた
    • 飼い主が被害者に「この子は大丈夫だから触ってみて」などと勧めた
    • 飼い主が犬をけしかけた

3、他人の犬にかまれたときの対応や手順

他人の犬にかまれたら、以下のように流れで対応しましょう。

  1. (1)損害賠償について話し合う

    まずは加害者との間で損害賠償について話し合いを行います。どのような損害が発生しているのか明らかにして、それぞれの損害金がいくらになるのか評価をしましょう。慰謝料などの評価方法や休業損害の計算方法がわからない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

  2. (2)加害者のペット保険や個人賠償責任保険が適用される場合

    加害者がペット保険や個人賠償責任保険に入っていたら、保険から賠償金が支払われる可能性があります。その場合、契約内容にもよりますが保険会社の担当者と示談交渉を進めることになるケースが多数です。

  3. (3)被害者の傷害保険が適用される場合

    被害者が傷害保険に加入していると、傷害保険から治療費などの損害金が支払われるケースがあります。犬にかまれたら保険の加入状況を確認するようにしましょう。なお自分の保険からお金を受け取ると、その分相手に請求できる賠償金が減額される可能性があります。

  4. (4)合意書を作成して支払いを受ける

    加害者や相手の保険会社と示談を進め、賠償方法について合意ができたら必ず「合意書(和解契約書)」を作成しましょう。口約束だけでは賠償金が支払われない可能性がありますし、後にトラブルを蒸し返されるおそれもあるからです。合意書を作成し、約束通りに支払いを受けられれば賠償問題を解決できます。

4、飼い主との交渉がうまく進まない場合には?

飼い主や保険会社と交渉しても相手の提案内容に「納得できない」ケースがあるものです。相手に誠意がなく逃げられたり音信不通になったりするケースもあるかもしれません。

そのようなとき、まずは一度内容証明郵便を使って賠償金の請求書を送付しましょう。請求書では損害の全額を一括払いするよう要求し、支払期日と入金先の口座を書き込みましょう。また「支払いがない場合には訴訟を起こす予定です」などと書き込んで相手をけん制するのも効果的です。

それでも相手が対応しない場合には、実際に訴訟などの裁判手続きをとる必要があります。
請求金額が60万円以下なら「少額訴訟」を利用できますし、弁護士に依頼せず自分で解決したい場合には、「調停」や「支払督促」を利用する方法もあります。

多額の損害が発生しているなら、当初から弁護士に依頼するのが良いでしょう。弁護士を通じて話し合いをすることにより、交渉が成立するケースも少なくありません。
どのような手段を使うのが最適か判断しにくい場合には弁護士がアドバイスしますので、お気軽にご相談ください。

5、まとめ

広島県でも犬を飼っている人は非常に多いので、「犬にかまれる事件」は決してひとごとではありません。すぐに治れば良いですが、時には重傷となってしまうケースもあるので注意が必要です。飼い主が不誠実で困っている場合、どのくらいの賠償金を請求できるか知りたい場合、相手との示談交渉を任せたい場合などにはベリーベスト法律事務所 広島オフィスまでご相談ください。弁護士がアドバイスいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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