風俗店での盗聴・盗撮がバレた!店側に慰謝料を請求された時の対策は?
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広島市は中四国地方で最大の都市で、流川を中心とした繁華街の一角には飲食店や風俗店が立ち並んでいます。多くの人々が夜の街を楽しむ一方で、飲酒に絡んだケンカや風俗店でのトラブルに巻き込まれる人も少なくないようです。
性風俗店は人の性的欲求を満たす場所であり、興味本位の行動を起こしやすい場所だといえます。もし、興味本位で店舗内の音声や様子を盗聴・盗撮行為が見つかってしまい、店舗側から慰謝料などの金銭を請求されたとすれば、どのように対応すべきなのでしょうか?
本コラムでは、風俗店における盗聴・盗撮トラブルの対処法について、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説します。
1、盗聴・盗撮はどのような罪に問われるのか?
風俗店での盗聴・盗撮トラブルについて詳しく知るためには、まず盗聴・盗撮について正しい知識を得ておく必要があります。
盗聴・盗撮が罪に問われることはあるのでしょうか?
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(1)盗聴が罪に問われるケース
意外に感じるかもしれませんが、日本の現行法では、一般的な「盗聴」を処罰するものが存在しません。
盗聴が犯罪にあたるのは、次のようなケースに該当する場合です。・ 盗聴器を仕掛けるために無断で住居や施設に侵入した場合
刑法第130条の住居侵入罪・建造物侵入罪にあたるおそれがあります。
・ 電話回線に盗聴器を仕掛けて通話を傍受した場合
有線電気通信法第9条、電気通信事業法第4条の違反にあたりえます。
・ 携帯電話を盗聴し、通話内容を第三者に漏えいした場合
電波法第59条の違反になりえます。
つまり、ICレコーダーなどを隠し持って店舗内の音声や風俗嬢との会話を録音する行為は、法律による規制を受ける「盗聴」とはならず、処罰の対象にもなりません。
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(2)盗撮が罪に問われるケース
盗撮行為を処罰する法律は主に2つです。
- 軽犯罪法
- 都道府県の迷惑防止条例
軽犯罪法では、第1条に掲げる33の行為のなかに「他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」が含まれています。(軽犯罪法第1条23)
いわゆる「のぞき」行為を処罰する規定で、風俗店の外部からサービス中の様子を盗撮するなどの行為があれば適用されるおそれがあるでしょう。
いわゆる迷惑防止条例は、都道府県ごとに定められているもので、規制されている行為は都道府県によって多少の差があります。
広島県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」をはじめ、各都道府県では、公共の場所・乗り物内での盗撮行為に限って処罰の対象としています。
つまり、風俗店内での盗撮行為は広島県では迷惑防止条例の処罰の対象外となっています。
ただし、東京都をはじめ一部の都市では、対象となる場所が公共の場所・乗り物内に限らないよう改正されており、店舗内の盗撮行為も処罰の対象となります。
また、今後は全国にも改正が進められる可能性があります。
2、店舗側が慰謝料を請求する理由や根拠
盗聴や盗撮行為が発覚し、性風俗店の店員から「慰謝料を払ってほしい」と言われるケースがあります。
風俗店で働く女性に代わり、お店側が盗聴・盗撮行為に対して慰謝料を請求するのは、性風俗サービスの特殊性によるところが強いといえます。
一般的には秘め事とされる性的な行為をサービスとして提供しているため、音声や映像などが記録されてしまうと、店舗の利用価値を著しく損なってしまうでしょう。
さらにその音声・映像などがインターネットやアダルトビデオとして流通してしまえば大損害を被ってしまいます。
また、サービスを提供する女性、いわゆる「風俗嬢」をお店の商品としてとらえている性質上、盗聴・盗撮によって商品価値が傷つけられたと解釈する風潮もあるようです。
なかには「風俗嬢がショックを受けて出勤できなくなったので慰謝料を支払え」と要求するケースもあります。
3、慰謝料を請求された場合の対応方法とは?
風俗店での盗聴・盗撮が発見されてしまうと、慰謝料の請求を受けてしまうおそれがあります。
「慰謝料を支払わなかったら警察に通報して刑事事件にする」と脅されてしまうため、やむなく金銭を支払ったという話も少なくありません。
風俗店側から慰謝料を請求された場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
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(1)安易に支払いに応じない
風俗店での盗聴・盗撮トラブルでお店側から慰謝料を請求されても、安易に支払いに応じてはいけません。
大前提として、精神的な苦痛を受けたことに伴う慰謝料は、盗聴・盗撮に関して店舗側には請求権がありません。
盗聴・盗撮によって精神的な苦痛を受けた被害者はあくまでも従業員として勤務している女性です。
「いますぐ手持ちの分だけでもいいから支払え」と脅され、一時的に少額を支払いでもすれば、その後はいろいろな理由をつけられてさらに金銭を要求されるおそれがあります。
「警察に通報する」「事件になれば前科がつく」などと脅されても安易に支払いに応じない方がよいでしょう。 -
(2)風俗嬢からの請求への対処法
風俗嬢からの慰謝料請求については、一応の法的根拠や道理が通っているため一概に「応じる必要はない」とはいえません。
なんとしてでも交渉のテーブルに引きずり出そうと考えて、本番行為があった事実を指して「レイプされた」と訴えられてしまうリスクもありますし、完全な無視を決め込むことは賢明ではないでしょう。
ただし、相手から提示される慰謝料額が適切な金額の範囲内であるとは限りません。風俗嬢からの請求であっても、被害の程度や過去の事例に照らして妥当な金額なのかをしっかりと検討し、交渉にあたるべきといえます。
4、風俗トラブルを弁護士に相談するメリット
風俗店での盗聴・盗撮トラブルが生じた場合は、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談すれば、危機的な状況から脱出できる可能性があります。
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(1)適正な相場内での示談交渉が期待できる
店舗側からの慰謝料請求に応じる必要はありませんが、風俗嬢が精神的苦痛を訴えて慰謝料を請求してきた場合は対応を余儀なくされるでしょう。
お店側と風俗嬢は密接につながりを持っているため、風俗嬢が多額の慰謝料を請求し、お店側と風俗嬢とで金銭を分配する計画かもしれません。
弁護士に依頼して代理人の立場で交渉してもらえば、被害の程度や過去の事例に照らして適正な範囲内での示談交渉が期待できます。
お店側としては期待はずれの展開となるため交渉は難航が予想されますが、無用な負担を抑えるためには、弁護士への依頼が最善策です。 -
(2)慰謝料請求そのものを回避できる可能性がある
弁護士は、さまざまな法律の知識と経験を積んでいるため、状況を詳しく把握することで、慰謝料の請求が妥当であるのかを判断することができます。
もし、お店側だけが慰謝料請求に躍起になっている、請求の理由が合理性を欠いているなどの状況があれば、慰謝料請求そのものが回避できる可能性も生じるでしょう。 -
(3)脅迫・恐喝などの犯罪への対処が可能になる
風俗店での盗聴・盗撮トラブルでは、店舗側から強い圧力がかけられるケースがあり、脅迫的な手段や態度で攻撃してくることもめずらしくないといえるでしょう。
あくまでも盗聴・盗撮の被害者は従業員である女性であって、お店側からの圧力はいわれのない脅迫のこともあります。
すでに脅迫を受けている、または脅迫を受けて慰謝料を支払ったというケースでは、刑法に照らせば脅迫罪や恐喝罪にあたる可能性があります。
盗聴・盗撮が発覚した時点で暴行を受けていれば暴行罪や傷害罪に、事務所から帰してもらえなかったなどの状況があれば監禁罪に該当することもあります。
弁護士が代理人となり、これらの犯罪行為に対する事件化を前提に交渉すれば、有利な展開が期待できるでしょう。
また、今現在、脅迫を受けている状況だったとしても、弁護士が相手側に警告することでお店側の強圧な態度が改善される可能性があります。
5、まとめ
風俗店での盗聴・盗撮はお店側や風俗嬢からの慰謝料請求を受けてしまうリスクがあるので厳に控えるべきです。
特に風俗店は経営母体に反社会勢力などが関与しているケースがあり、正当な交渉の流れが期待できない面があるほか、盗聴・盗撮が発覚したその場で暴行・恐喝・監禁といった被害を受けるかもしれません。
興味本位とはいえ、風俗店での盗聴・盗撮によってトラブルに発展した場合は、まず弁護士への相談を優先させましょう。
慰謝料請求の回避や、たとえ慰謝料の支払いが回避できない場合でも適正な相場の範囲内での決着が期待できるほか、脅迫などの犯罪被害への対抗も可能です。
もし、風俗店での盗聴・盗撮トラブルによって多額の慰謝料を請求されてしまいお困りであるようでしたら、ベリーベスト法律事務所 広島オフィスまでご相談ください。
慰謝料請求に関するトラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士が、できる限り穏便かつ金銭的な負担が少ないかたちでの決着に向けて尽力いたします。
ひとたび慰謝料を支払えば、さらに別の口実で金銭の支払いを求められてしまうケースも少なくありません。被害が深刻化してしまう前に、まずは当事務所までお気軽にご一報ください。
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