シェアハウスにまつわる法律を解説! 運営トラブルを回避する方法
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広島市では空き家が増加しており、空き家の有効活用としてシェアハウスが注目を浴びています。空き家を利用してシェアハウス運営をおこなうことには、賃料を定期的に得られるメリットがあります。
しかし、シェアハウスは共同生活としての側面があるために、トラブルは発生しやすくなっております。
本コラムでは、シェアハウス事業を実際に始めるために確認すべき法律的ポイントや、トラブルを回避するための方法について、べリーベスト法律事務所 広島オフィスの弁護士が解説いたします。
1、シェアハウス運営に関係する法律とは
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(1)そもそもシェアハウスとは
シェアハウスとは、一つの住宅を親族ではない複数の人が共同で生活する居住形態、またはその賃貸住宅のことを指します。
最近の賃貸住宅では、個室スペースのほかに共用のキッチン、お風呂、トイレなどの設備が付属していることが一般的です。一方、一般的なシェアハウスでは、こうした設備が個室内ではなく共用スペースに設けられており、共用スペースでは入居者同士のコミュニケーションが生じます。
また、個室スペースには、ベッドや家具、テレビ、冷蔵庫、エアコンなどの生活必需品が設置済みであることが多いために、入居者が新たに用意する必要がなく、初期費用がおさえられるというが、シェアハウスの特徴とされています。 -
(2)シェアハウス運営に関する法律
シェアハウスを運営するにあたって留意すべき法律には、次のようなものがあります。
① 借地借家法
入居者との契約形態を定期建物賃貸借契約とする場合には、借地借家法が関わります
② 民法
入居者との契約形態を普通建物賃貸借契約とする場合には、民法601条が関わります。
③ 建築基準法・消防法
シェアハウスの建物は、建築基準法と消防法の定めを遵守していなければなりません。具体的には、用途変更、用途に応じた建築確認、非常用照明装置や火災警報器の設置、防火対象物使用開始届などを適切に実施する必要があるのです。
2、シェアハウス事業を始めるために必要な法対応
シェアハウス事業を始める際に最も大切なことは、入居者との契約形態を決めることです。シェアハウスの場合、普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約のいずれを採用するかが重要なポイントになるのです。
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(1)普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の違い
普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約との最大の違いは、契約の更新に関する定めです。
普通建物賃貸借契約では、賃貸人が解約申入れや更新拒絶をするためには正当な事由が必要となります。つまり、正当な事由がなければ、いつまでたっても入居者に出ていってもらうことができなくなるのです。
それに対して、定期建物賃貸借契約では、期間が満了すれば必ず契約が終了します。改めて契約をし直すこと(再契約)はできますが、再契約するかどうかは賃貸人が決めることができる点が、普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借の最大の違いです。 -
(2)定期建物賃貸借契約のメリット
シェアハウス運営をする側からすれば、定期建物賃貸借契約を採用するほうがメリットは大きいといえます。
定期建物賃貸借契約のほうが、契約を終了させること、つまり、入居者に退去してもらうためのハードルが低いためです。
シェアハウスでは、入居者が共同生活をするための一定のルールが設ける必要があります。しかし、いくらルールを作っても、ルールを守らずにトラブルを起こす入居者は生じてしまうものです。こうした場合には、定期建物賃貸借契約であれば、契約期間が満了したタイミングで契約を完全に終了させて、問題がある入居者に出ていってもらうことができます。この点が、シェアハウスでは定期建物賃貸借契約が好んで利用される大きな理由なのです。
定期建物賃貸借契約の場合、期間に関する制限はなく、数カ月などの短い期間で設定することも可能です。ただし、期間を一年以上とした場合には、期間満了の一年前から六カ月までの間に、賃貸人から賃借人に対して契約が終了することを通知しなければなりません。
3、入居者との契約時に気を付けること
シェアハウスの場合、オーナーがシェアハウスに同居しているケースは少ないため、借主が入居後にどのような生活をしているかを把握することが困難です。
トラブルを防止するためには、契約の時点で下記の対策を実施することが重要になります。
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(1)入居者の本人確認を徹底する
賃貸借契とは、借主と貸主との信頼関係がベースとなる継続的な契約です。まずは、入居者がどのような人物であるのか、しっかりとした本人確認をおこなうことが肝心です。
本人確認の方法としては、運転免許証やマイナンバーカード、外国人の場合は在留カードなど、顔写真付きの公的な証明書の提示を求めることが一般的です。また、本人確認と同時に所得証明や保証人の同意書などを提出させることで、入居者に関する情報をさらに厳密に確認できます。 -
(2)建物の内覧
シェアハウスは、一般の賃貸借物件に比べて、建物ごとの個性に多様性があります。
トラブルを予防するためには、入居希望者には現地を自分の目で確認してもらい、納得したうえで申し込んでもらうことが重要になるでしょう。内覧には時間と手間がかかりますが、入居後に「こんなはずではなかった」という苦情に発展するリスクを軽減することができるのです。 -
(3)契約書を必ず作成する
実際に契約する際には必ず賃貸借契約書を作成しましょう。インターネット上で国土交通省が公開しているひな形を参考にすることもできます。ただし、個別の事情は建物によって異なるため、万全を期すためには弁護士等の専門家に事前に確認することをおすすめします。
4、トラブルを回避するための方法
契約の段階では「問題がなさそうだ」と判断した人でも、入居後になってトラブルを起こすこともあり得ます。
入居後に起こるトラブルを回避するための対策について、解説いたします。
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(1)ルールを細かく設定する
入居者同士のトラブルを防ぐためには、生じる可能性のあるトラブルを想定したうえで、それを予防するためのルールを設定しておくことが大事です。他人同士が共有スペースでコミュニケーションを行う必要のあるシェアハウスでは、マンション等に比べて、入居者間のトラブルが発生するリスクがとくに高くなっています。そのため、通常の賃貸物件よりも細かくルールを定めておくことが重要になるのです。
具体的には、下記のようなポイントを考慮してルールを定めましょう。
① 衛生対策- 共用スペースの清掃に関するルール
- ゴミ出しのルール
- 感染症などが発生したときのルール
- 喫煙に関するルール
② 安全対策
- 玄関の施錠やカギの管理に関するルール
- 個室の施錠やカギに関するルール
- 火気の利用に関するルール
- 災害時の避難や連絡に関するルール
③ 秩序対策
- 共用スペースの利用規定
- 騒音についてのルール
- 来客の宿泊や訪問に関するルール
- ペット飼育に関するルール
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(2)ルールの共有と徹底
ルールを定めるだけでなく、ルールを入居者全員にしっかり理解してもらい、共有することも重要です。
入居時にしっかりと内容を説明することはもちろん、入居後もルールを守り続けてもらうために、建物内のわかりやすいところに掲示したり定期的にルールを知らせるメールを送ったりするなどの工夫をして、周知徹底を図りましょう。
また、貸主側が定期的に巡回をおこなう、ルールを守らない人に関する苦情窓口を設置するなどの方法によって、契約違反・ルール違反の状況が起きていないか現場を把握するように努めることも大切です。
そして、実際にルールを守らない人がいた場合には、見逃さずにきちんと注意しましょう。違反を見逃すとモラルの崩壊がすすみ、結局はトラブルが大きくなってしまいます。ルール違反には、貸主側が毅然とした態度で接しましょう。 -
(3)弁護士に相談する
実際にトラブルが生じたときには、入居者同士で解決させようとせずに、運営者が責任を持ってトラブル対応にあたりましょう。
とはいえ、法律的にはどんな解決が最善であるのが、貸主が判断するのは難しいときもあります。そんなときには早めに弁護士に相談して、適切な対応方法についてアドバイスを受けることをおすすめします。
5、まとめ
本コラムでは、シェアハウス運営にあたって留意すべき法律や契約時のポイントについて解説いたしました。
シェアハウスのニーズは増えており、不動産活用の方法として今後も広まっていく可能性が高いでしょう。しかし、シェアハウスには、入居後のトラブルや苦情が多いというデメリットがあります。
シェアハウスの運営を検討するなら、まずは弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。べリーベスト法律事務所 広島オフィスにまで、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています